2023年02月27日 <オフィシャルインタビュー公開!>ウィントン・マルサリスが3月にセプテットで来日ツアー開催!

©Piper Ferguson
数多くのグラミー賞を受賞し、現代最高のジャズ・トランペット・プレイヤーであるウィントン・マルサリスが、2023年3月に東京と大阪で、来日コンサートを開催。4年ぶりの来日に先駆けてインタビューを行った。
【オフィシャルインタビュー】
2019年5月のウィントン・マルサリスの来日公演には本当に驚き、感銘を覚えた。それは、これぞジャズという技巧と創造的野心が渦巻くものであったからだ。その実演は達者な奏者を擁する5人編成=クインテットでなされたが、ウィントンのお眼鏡にかなった腕利き奏者たちが一丸となった表現の聴き応えのあることと言ったなら。キレキレのアンサンブル部と雄弁なソロが渾然一体となって聴き手に押し寄せる醍醐味と快感は、まさに選ばれたジャズ・アーティストだけが送り出せるものだった。1980年初頭に鳴り物入りでデビューして以降、すっとジャズ界の前線に位置し、シーンをリードしてきた実力と矜持が、そこには横溢。彼は名実ともに、ジャズ・セレブであることをまっとうしていた。一行は綺麗にスーツを着こなし、その佇まいもまた良し。気品、そしてその奥に渦巻く獰猛とも言える即興精神発露のあり方に、ジャズの凄さを実感するのはあまりに容易だった。
そして、うれしかったのは、そんなウィントンの久しぶりの演奏に触れた観客の歓声だった。それはまさに、ずっと彼のコンサートを待ち望み、その期待を超える熱演を受けて熱い反応が湧き上がるというもの。それを受けてウィントン自身も、自分は日本のファンから公演を待ち望まれてきたと実感できたのではなかったか。
「この前の日本でのコンサートは、とても良い雰囲気に包まれ、昔から知っている多くの素晴らしいミュージシャンにも会えました。日本の人々や文化にはいつも深い親近感を抱きます。日本で演奏することができ、また日本の皆さんと強い関係を持てることは常に光栄に思います」(引用する発言は、昨年12月にメールで取ったものだ)
ところで、前回の公演を見て痛感させられたのはずっと第一線を歩んできた彼がまったく疲弊することなく、今のアコースティック・ジャズをアグレッシヴに創造していたことだ。かような、唯一無二の精力的な活動を支えているものはなんなのだろう。
「両親や兄弟と常に音楽に囲まれて育ったことですね。また、ニューオーリンズの偉大な音楽の伝統、ディジー・ガレスピーやジェリー・マリガンなどの巨匠たちやマーカス・ロバーツやカルロス・エンリケスなどの同世代のアーティスト、さらにはジョー・ブロックやショーン・メイソン(ともにピアノ)などのまだあまり知られていない若手まで多くの素晴らしいジャズ・ミュージシャンと演奏する機会を得ていることなどが挙げられます。また、ジャズ・アット・リンカーン・センター(ウィントンが音楽監督を務めるニューヨークの総合的なジャズ機構/施設)や世界各国/各界のジャズ愛好家から多大なる支援を長年に渡って受け続けられていることも、今の私を導き支えてくれています」
ときに、Covid-19のパンデミックはすべての人に大きな陰を投げかけた。ウィントンも、それは例外ではない。彼はニューオーリンズのジャズ表現/教育の第一人者として名高い父親のエリス・マルサリスを、新型コロナで2020年に失ってもいる。
「もちろん、パンデミックは個人的にも大きな喪失でした。しかしながら、ジャズという音楽の重要性やジャズの癒しの力を新たに確認することもできました。今後はより高いレベルに到達するために、私は邁進しますよ」
さて、今回のウィントンの来日公演は、クインテットによる前回のコンサートからさらに奏者を加えた7人編成=セプテットで行われる。「今回はセプテットで訪れる予定です。ニューオーリンズの音楽からコンテンポラリー・ジャズまでいろんな演奏ができるので、気に入っている編成なんです」と、彼はそのセプテットを説明する。
そのメンバーは前回の来日公演にも加わったジャズ・アット・リンカーン・センター・オーケストラの中枢にいるピアノのダン・ニマーとダブル・ベースのカルロス・エンリケスにくわえ、渡辺貞夫や渡辺香津美の公演で来日したこともある辣腕ドラマーのオベド・カルヴェールが同行。そして、ウィントンとともにフロントをなす管楽器奏者はテナー・サックスのアブディアス・アルメンテロスとトロンボーンのクリス・クレンショー、そしてアルト・サックス奏者のクリス・ルイスという選ばれた精鋭だ。
「とても優秀なメンバーをバンドに揃えています。私が作った『The Democracy! Suite』を演奏する予定です。他にもいろいろな曲を演奏しますし、私もとても楽しみでしょうがありません」
ウィントンが具体的に名前を出した『The Democracy! Suite』(Blue Engine、2020年)はジャズ・アット・リンカーン・センター・セプテット名義で録音したアルバムで、リズム・セクションは来日メンバーと同一だ。コロナ禍のなかじっくり作られた楽曲が収められており、その表題にあるように民主主義を尊重し希望を託した、力強く陽性にスウィングする一作だ。
真摯に現況を見据え、大志とともにジャズの力を謳歌する。そして、そこにはニューオーリンズ・ジャズ期から脈々と積み重ねられてきた豊穣な伝統と今を呼吸する清新さのマジカルな交錯が横たわる。そうした内実をウィントン・マルサリスは様々な角度や作法で提示し、ジャズのあるべき姿やその本質を鮮やかに見せてくれるはずだ。
●ウィントン・マルサリス(トランペット) プロフィール
1961年、ジャズ発祥の地であるルイジアナ州ニューオーリンズに生まれる。父親はジャズ教育にも力を注いだ同地のゴッドファーザー的存在であるピアニストのエリス・マルサリス。サックス奏者の兄ブランフォードをはじめ兄弟たちもジャズの道に進むという音楽一家に育ち、ウィントンはジュリアード音楽院在学中に大御所アート・ブレイキーのバンドに抜擢された。そして、弱冠19歳で『ウィントン・マルサリスの肖像』でデビューし、以後クラシックの作品も含め80作近いアルバムを発表し、グラミー賞も多部門にわたり獲得している。1996年にはNYの芸術総合施設であるリンカーン・センターのジャズ部門の芸術監督に就任し、その活動はより多彩かつ活発となり、また20世紀最良の米国音楽様式であるジャズを大局的見地のもと扱うようになった。そんな彼は現在米国ジャズ界の際たる実力者であり、セレブリティであるのは疑いがない。
ウィントン・マルサリス・セプテット in Japan 2023
〈東京・新宿文化センター 大ホール〉
日時:2023年3月23日(木) 18:30開演 / 17:30開場 ※小曽根真、中村健吾ゲスト出演
2023年3月24日(金) 18:30開演 / 17:30開場
料金:SS席 18,000円/ S席 12,000円/ A席 8,000円/ B席 6,000円/ U-20 3,000円
〈東京・サントリーホール〉
日時:2023年3月25日(土) 15:00開演 / 14:00開場
料金:SS席 18,000円/ S席 12,000円/ A席 8,000円/ P席 8,000円/ B席 6,000円/ U-20 3,000円
〈大阪・フェスティバルホール〉
日時:2023年3月27日(月) 19:00開演 / 18:00開場
料金:SS席 17,000円/ S席 11,000円/ A席 7,000円/ B席 5,000円/ U-20 3,000円
※出演者情報、チケット情報などは公式サイトをご確認ください。
【主催・制作・招聘】サンライズプロモーション東京
【お問合せ】サンライズプロモーション東京 0570-00-3337(平日12:00-15:00)
【公式ページ】wynton-marsalis-japan.srptokyo.com
【公式SNS】
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2023年02月02日 <オフィシャルインタビュー到着!>まもなく来日!ジャズ・ピアニスト ブラッドメルドー日本公演

グラミー賞受賞アーティストである、ジャズ・ピアニスト ブラッド・メルドーが2月3日(金)東京オペラシティ コンサートホールを皮切りに、来日ツアーを行う。4年ぶりの来日に先駆けて実施したメールインタビューでは、今回の公演に向けての意気込みを語った。
【オフィシャルインタビュー】
――2019年の来日公演におけるトリオとソロによるショウは日本のファンにはいまだ瑞々しい記憶として残っています。あなたは、あの時のことで何か印象に残っていることはありますか。
A.日本に訪れたときの記憶は、どれも魔法のようです。私の出身地とは全く異なる場所ですが、同時に観客との強い結びつきがあり、ある意味、故郷のように感じています。
――来日時、公演以外のオフの時間で楽しみにしていることはありますか。
A. 東京と大阪に来るたびに、携帯電話のマップも持たずに、どこに行くのか決めずにホテルを出ます。そして、新しい街を発見するのです。私はいつも街のリズムを感じ、香りを感じ、そして人々の生活の営みを見つめ、その中に美しさや不思議さを見いだす「人間観察」をすることが好きです。
――翌年(2020年)、世はCovid-19のパンデミックに入りましたが、ツアーはともかく、あなたは悠々と活動を継続していたように思います。アルバム・リリースは、『Suite: April 2020』、『Jacob's Ladder』、ジョシュア・レッドマンとのカルテット、オルフェウス室内管弦楽団との『Variations On A Melancholy Theme』など活発でした。近く、ソロによるザ・ビートルズ曲集も出ますよね。
A. そうですね、活動を続けることができ、とても感謝しています。
――現在トリオで、そして少し後にはクリスチャン・マクブライドらとのクインテットで米国を回りますよね。今、ツアーはどんな感じで進んでいますか。
A. 素晴らしいです。クリスチャンと演奏するのは、空高く舞い上がる魔法のじゅうたんに乗っているようです。彼は最高です。
――先に触れましたが、あなたはザ・ビートルズ曲集を出します。あなたはライヴでもよくザ・ビートルズの曲を演奏していますが、なぜ今回その『Your Mother Should Know: Brad Mehldau Plays The Beatles』を出そうと思ったのでしょう?
A. 私がアレンジしたコンサートのプログラムから生まれた機会でした。パリで行われた様々なアーティストによるコンサート・シリーズのひとつで、ビートルズの全リストを紹介するものでした。ビートルズの全曲の中から、ストーリーを見出し1時間のレコードの中におさめるという、楽しいチャレンジでした。
――今回の日本公演では東京と大阪でソロ・ピアノによる公演を行います。やはり会場によって流れは変わるんでしょうね。たとえば、『Suite: April 2020』や『Your Mother Should Know: Brad Mehldau Plays The Beatles』、『Your Mother Should Know: Brad Mehldau Plays The Beatles』らの内容とも違ったものになるのでしょうか?
A. はい。ビートルズの曲や、「Suite: April 2020」から何曲か入れる予定です。また、私のオリジナル曲や、自分なりに曲を解釈した演奏など、さまざまな曲を演奏予定です。
――また、東京では2日、東京フィルハーモニー交響楽団と公演を行います。今、事前にどのような青写真を描いていますか。どんな曲を取り上げるのでしょうか?
A. 私が書いたピアノ協奏曲を演奏します。3楽章構成です。また、東京フィルハーモニー交響楽団と一緒に演奏します。オーケストラと一緒に演奏できることをとても楽しみにしています!指揮は、私がよく一緒に仕事をしている素晴らしい指揮者、クラーク・ランデルです。
――これまでもオーケストラとの公演は行っていると思いますが、大掛かりなぶん苦労する部分もあるかと思います。オーケストラと一緒に演奏する醍醐味はどんなところにあるのでしょうか?
A. 大変ですが、多くのミュージシャンの中に入って、大きな音のパレットを体感できるのは素晴らしいことです。
――指揮者として同行するクラーク・ランデルはとても音楽把握力が高く、視野の広い指揮者であると言われています。彼と演奏を共にする期待を語ってください。
A. クラークは驚くほど多才です。最近ではウェイン・ショーターのオペラの初演を指揮し、ジャズのリズムに優れた感覚を持っています。また、クラシック界でも同様に優れている指揮者です。
――オーケストラ用の譜面は誰が書いたものになるのでしょうか?
A.私が書きました。
――日本公演の後は少しブレイクを置いて、スペインをはじめ欧州を回りますね。ツアー/ライヴでこうありたいと、心がけていることはありますか?
A.家にいるときは、なるべく家族と一緒にいるようにしています。音楽と家庭のバランスをとることが大切だと思っています。
――とにかく、疲れを見せることなく、好奇心旺盛に様々なことに挑戦する姿に驚いています。この後の欧州ツアーでは英国人オペラ歌手と公演を共にすることもありますよね。そんな多彩なあなたのことをジャズ・ミュージシャンと呼ぶのは適切なのでしょうか? クラシックからロックまでしなやかに向き合うあなたの表現/活動については別な形容があってもいいのではと思っています。
A. いい質問ですね。私は今でも自身のことをジャズ・ミュージシャンだと思っています。なぜなら、私にとってジャズは他のすべての分野の中で「ホーム」だからです。でも、例えば、イアン・ボストリッジとのプログラムはジャズではないので、あなたがおっしゃるように聴きに来た人を混乱させることがあるかもしれませんね。
――最後に、これまでの質問の答えと重複するかもしれませんが、今度の日本公演についての抱負を語っていただけますか?
A. できるだけ良い演奏をすること、そして観客とつながることです。
(インタビュアー:佐藤英輔)
<ブラッド・メルドー:プロフィール>
今のジャズ・ピアニストのスタイルを規定できる破格の音楽家がブラッド・メルドーだ。右手と左手の斬新な噛み合いが導く清新にして自由なハーモニーやメロディ感覚や揺らぎは、彼以降のピアニストへ多大な影響を及ぼし続けている。1970年、フロリダ州生まれ。NYのザ・ニュー・スクール大学を経て、1995年にワーナー・ブラザースからデビュー。すぐにジャズ界の寵児として認められた彼は、日本でのソロ・ピアノ公演をまとめた2004年作『ライヴ・イン・トーキョー』以降はクラシックからロックまでをアーティスティックに扱うノンサッチに在籍している。そして、自在の指さばきを“魔法の絨毯”とするかのように、黄金のジャズ衝動を介して多様な活動を展開している。
<公演スケジュール>
ブラッド・メルドー ピアノソロ
◆2月3日(金)19:00開演 東京オペラシティ コンサートホール:タケミツメモリアル(東京)
◆2月4日(土)15:00開演 紀尾井ホール (東京)
ブラッド・メルドー with 東京フィルハーモニー交響楽団
◆2月5日(日)15:00開演 東京オペラシティ コンサートホール:タケミツメモリアル(東京)
◆2月6日(月)19:00開演 東京オペラシティ コンサートホール:タケミツメモリアル(東京)
ブラッド・メルドー ピアノソロ
◆2023年2月7日(火)19:00開演 住友生命いずみホール (大阪)
※プログラムの詳細、チケット情報などは公式サイトをご確認ください。
【来日公演公式サイト】 https://brad-mehldau-japan.srptokyo.com/
【主催・招聘・制作】サンライズプロモーション東京
【お問合せ】サンライズプロモーション東京 0570-00-3337(12:00-15:00)

ジャニーズ事務所「ふぉ~ゆ~」の越岡裕貴が映画初出演にして初主演を果たした。作品は2020年の舞台作品を映画化した「まくをおろすな!」だ。試写当日は舞台版の製作総指揮で、今回初監督・プロデューサーを務めた清水順二が来名。撮影秘話などを聞かせてくれた。
映画「まくをおろすな!」は、清水順二率いる演劇ユニット「30-DELUX」が2020年に公演したミュージカル時代活劇を原案としている。コロナ禍になって以降、若い世代が次々と夢を諦めて舞台を去っていくことに、清水は歯痒さを募らせていた。しかし彼は自らが新しい世界=映画に挑戦することで、何か夢を示せるのではないかと考えた。主人公のブン太こと紀伊国屋文左衛門に「ふぉ~ゆ~」の越岡裕貴、モン太こと近松門左衛門にはモデル・俳優として活躍する工藤美桜を起用。フレッシュなバディ物に仕立て上げた。
歴史上の人物は他にも、吉良上野介義央、浅野内匠頭長矩、松尾芭蕉、由井正雪、大石内蔵助、大岡越前守忠相、堀部安兵衛らが登場。彼らは「生類憐れみの令」で知られる五代将軍徳川綱吉の御代に騒乱を巻き起こす。越岡の共演には同じくジャニーズの寺西拓人や原 嘉孝、高田 翔、室 龍太、さらには岸谷五朗、竹中直人、緒月遠麻、坂元健児と、巧者ぞろい。監督の清水も浅野内匠頭役で出演している。

清水が「舞台と映画のハイブリッド」と言ったとおり、劇場内で撮影されたシーンとロケ地で撮影されたシーンが自由自在に交錯。激しい殺陣やアクションで緊迫した空気を作ったかと思えば、歌ありダンスありでスクリーンを賑やかに彩り、コメディさながらの掛け合いで客席に笑いを生む。やりたいことを存分に詰め込んだような作品だが、その過程には映画の世界であまり行われない入念な「稽古」があったという。これは舞台経験豊かな俳優が多く参加していたゆえの裏話で、創作の方法からしてハイブリッドだったからこそ、ちょっと見たことのない映画が誕生。カット数1100以上というのも驚かされる。
「まくをおろすな!」はエンタテインメント映画で間違いないが、清水いわく「時代劇だけど現代劇として描きたかった」という想いが根底にある。端的なところでは時代考証にとらわれないセリフからうかがえる一方、背景が現在の日本と重なって見える点にはゾッとさせられる。経済格差、政治不安、疫病蔓延……。誰かが引き金に手をかければ簡単に暴発してしまいそうな社会の物語は、言い表しようのない余韻を残して終わるのだった。
なお、清水は中京大学体育学部卒で、生粋の名古屋っ子であることから「ナゴヤ色」も意識。SKE48の井田玲音名と田辺美月のほか、岡崎市出身でWAHAHA本舗所属の俳優・我善導、岐阜県下呂市出身のお笑い芸人・流れ星☆ちゅうえいなど、ナゴヤ文化圏にゆかりのある面々を積極的にキャスティングして、映画により華やかさを添えつつ地元愛をも込めた。地元・中部地区では1月20日(金)から順次公開される。
ちなみに、新たに立ち上げられた演劇のプロジェクト「30-DELUX NAGOYA」が、2023年3月2日(木)~5日(日)、名古屋市中川文化小劇場にて新作舞台「SHAKES」を公演予定。映画の後は、彼らの生のステージも体験してみてほしい。
◎Interview&Text/小島祐未子

1/20 FRIDAY~109シネマズ名古屋ほかにて上映
映画「まくをおろすな!」
(2023年製作・113分・日本)
監督・プロデューサー:清水順二
脚本:竹内清人
音楽:杉山正明
出演:越岡裕貴、工藤美桜/寺西拓人、原 嘉孝、高田 翔、室 龍太/緒月遠麻、坂元健児、田中 精、椙本 滋、清水順二/竹中直人、岸谷五朗
配給:ショウゲート
公式サイト https://www.makuoro.com/
2023年01月15日 <ゲネプロレポート!>和のテイストでおくる新感覚「幕末歌劇」が三重県四日市市で開催!配信も決定!

日本人が大好きな幕末という時代、新選組という存在を、ミュージカルと生演奏で彩った新感覚のステージ「しんみゅ 幕末歌劇 新選組 ~土方・藤堂の篇~」が四日市でツアー初日の幕を開けた。ここでは、前日に行われたゲネプロの様子をレポート!
「しんみゅ 幕末歌劇 新選組」の生みの親「蓮×歌」とは、脚本・演出の時雨らら、音楽監督の印南俊太朗、殺陣の南武杏輔、俳優の椿木沙也加によるプロジェクトだ。彼らはそれぞれの分野で培ったものを活かし、新選組を題材に芝居あり、歌あり、踊りあり、アクションありのエンタテインメントを作り上げた。今回の「土方・藤堂の篇」では、新選組副長として知られる土方歳三と若き精鋭・藤堂平助を軸に物語が展開する。
冒頭はミュージカルやオペラ同様、オーバーチュア(序曲)で始まる。生演奏の迫力もさることながら、ギターやドラム、ピアノ、バイオリンといった洋楽器と、太鼓や篠笛、三味線といった和楽器が混ざった編成の面白さにも引きつけられる。新選組組長・近藤勇のもとには腕に覚えのある若き武士たちが続々と集まり、舞台は青春活劇の様相。その中で、近藤にも組織にも忠誠を誓う副長の土方は、志士たちから厚い信頼を寄せられていた。伊藤甲子太郎のもとで剣術を磨き、新選組の門を叩いた藤堂も、土方を兄のように慕うことに。しかし、時は日本という国の転換期。志はあっても、日本の行く末に対する考え方には自然と違いが生じ、内部分裂。藤堂は家族のような仲間と恩師との板挟みで苦悩する。

国を思って激しくぶつかり合う志士たちの姿と、約3時間の舞台を駆け抜ける俳優たちの姿が重なって、切なく哀しい結末ではあるが、終始、爽快なものを感じた。近藤の妻・ツネ、恋する遊女たち、かわら版記者のサキなど、女性たちが作品に艶っぽさや柔らかさ、温かみを添えていた。
ゲネプロ終了後には土方役の徳山秀典、藤堂役の江田剛、近藤役の菊地まさはる、ツネ役で三重県鈴鹿市出身の棚橋幸代が、熱気も冷めやらぬなか取材に応じてくれた。
徳山:四日市市から話をいただいてから制作段階にも加わり、数年をかけて公演が実現しました。和の要素を取り入れた、世界一おもしろい日本のミュージカルを目指しているので、三重から世界への第一歩を見ていただきたいですね。
江田:藤堂平助は人が好きなんだろうなと思います。懐っこくて興味も幅広い。そんな人物が徐々に葛藤していくんですよね。自分は殺陣やアクロバットが得意なので、それを活かして自分なりの藤堂を演じたいと思います。
菊地:2018年の鈴鹿市のミュージカル「杉本市長と私」以来で三重県の舞台に立たせていただきます。生のパワーがぶつかり合う熱い作品なので、それが客席にもあふれていけばいいなと。お客様にはリラックスして楽しんでほしいですね。
棚橋:ツネは近藤の妻として大きく構えたところはありますが、それでも別れの時には弱さがこぼれてしまう。その両面を踏まえて演じています。本当に素晴らしい作品になっているので、是非一度見てみてください!
なお、四日市公演は1月15日で閉幕するが配信が決定している。
2月6日(月)からは東京・草月ホール公演が開幕する。
◎Interview&Text/小島祐未子

1/14 SATURDAY 1/15 SUNDAY まで開催中
蓮×歌「しんみゅ 幕末歌劇 新選組 ~土方・藤堂の篇~」
■会場/四日市市民文化会館 第2ホール
■開演/1月14日(土)13:00/18:00、15日(日)13:00
■料金(税込)/SS席(パンフレット付) ¥10,000 S席 ¥8,000 A席 ¥6,000
■お問合せ/(公財)四日市市文化まちづくり財団 TEL 059-354-4501
★好評につき、オンライン配信が決定しました!
2023/1/14(土)夜公演 ※アーカイブ配信あり
オンライン開場: 17:30 / 開演: 18:00 / 終演: 20:30
チケット販売期間:2023/1/8(日)~2023/1/22(日)19:00まで
アーカイブ配信: 2023/1/15(日) 18:00 ~ 2023/1/22(日) 23:59
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2022年10月17日 〈会見レポート〉南野陽子と林田一高による朗読劇『アネト』について作・演出の土田英生に聞いた
2022年、詩をテーマにした舞台作品「100年の詩物語」をスタートする兵庫県立芸術文化センター。第1回は南野陽子、林田一高(文学座)を迎え、MONO代表であり、劇作家、役者としても活躍する土田英生書き下ろしの朗読劇『アネト』を11月23日(水・祝)に同劇場で上演する。
神戸で活躍した詩人、竹中郁の詩を折々に織り込みながら、姉と弟の2人の物語を「手紙の朗読」という形式で綴る本公演。開催を前に取材会を行った土田が、作品のコンセプトや、朗読劇の醍醐味などを語った。

作・演出の土田英生
ある日、神戸で暮らす女性の元に手紙が届く。それは養子に出されたという「弟」からの手紙だった。姉は弟に返事を書く。折々に地元出身の詩人、竹中郁の詩を添えてーー。その日から生涯にわたる二人の手紙のやり取りが始まる。互いを思いながらすれ違う姉弟(あねと)、それぞれの人生と情愛を、手紙と手紙に添えられた詩の朗読を通して描く。
竹中郁の詩を朗読するのは、関西で活動する男女8人の俳優。「ミュージカルはお芝居の間に歌が入ります。今回は詩の朗読をミュージカルの歌の部分だと捉えて、手紙で二人のやり取りをしながら、間に竹中郁さんの詩を挟み込んでいくという形で物語を展開させようと思いました」。
「各々の人生の節目や壁にぶつかったとき、孤独に苛まれたときに、会ったことがない、だけど血のつながった姉弟にお互いが手紙を出し合います。二人の人生の断片を、手紙を通して感じてもらえたら」と話す土田だが、「どういう状況で人が関係を結んでいるか」ということを大事に思うからこそ、「やっぱり血がつながっているからね」という描き方はしたくないと言う。
「先天的なもので人の関係は決まらない。自分がどういう形で人と触れ合っていくか、どういう気持ちを持って関わるかによって、関係が決まると思っています。この二人は手紙のやり取りがあるからこそ関係性を積み上げられるはずだし、どこかに「僕にお姉ちゃんがいる」「いざとなったら弟がいる」という思いがあるからこそ、実際に会うことは最後の切り札とお互いが思っている関係というのがいいなと。姉と弟でありながらソウルメイトみたいな存在というか」。

朗読劇と銘打っている以上、演劇ではできないもの、舞台上で本を読むからこそ成立するものを上演したいと意気込む。「朗読劇ならではの表現をしっかり作って、演劇に負けないひとつのジャンルとして発表できたら。また、朗読劇で改めて“この人にはこんな魅力があったんだ”と思うことがあります。今回、南野陽子さんの違った一面が見えてくるといいなと思いますし、林田さんは文学座で実績のある俳優さんですから力は問題ないと思います」と、主演の二人にも期待を寄せる。
竹中の人生からも着想を得たという『アネト』。土田は、竹中の詩を通して世界の見え方が変わることも目的にしていると話す。「ときには物語と全く関係ない詩も朗読します。そうすることで、ちょっとずれるからこその面白さが出るんじゃないかなと思っています。竹中さんの詩は割と日常の何げないことを書いている印象があって。でも、何げないことの見え方が竹中郁さんとしか言いようがない。自分にはない視点です。まるで竹中さんのレンズをかけて世界を見ているような面白さがあります」。
朗読劇の代表作ともいえる『ラヴ・レターズ』を学生時代に読み、仰天したと話す土田。「幼なじみが手紙のやり取りをしているのですが、二人は結ばれない。ドラマだったら、結ばれない理由を作ったり、二人の間に横槍が入ったりとか、理由づけをして物語を進めますが、実際の人生ってそうじゃないですよね。僕は『ラヴ・レターズ』を読んだ時、フィクションと分かっていても驚きの連続で、あえて書かれていないからこそ信じられるというか、人生ってそういうもんだなという気がしました。そのときの驚きみたいなもので自分自身の好みが形づくられたのだと思うのですが、僕は演劇でもそうしたいと思っています。その中で朗読劇は“盗み聞き”の面白さを出せるのが魅力だなと思っています」。
◎取材・文/岩本和子

11/23 WEDNESDAY・HOLIDAY
兵庫県立芸術文化センタープロデュース
100年の詩物語
朗読劇「アネト~姉と弟の八十年間の手紙~」
【チケット発売中】
■会場/兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
■開演/14:00
■料金(税込)/一般 ¥3,500/U‐25チケット ¥1,500
■出演/南野陽子、林田一高
■朗読アンサンブル/池川タカキヨ、石畑達哉、高阪勝之、髙橋明日香、竹内宏樹、立川茜、東千紗都、松原由希子
■作・演出/土田英生
■詩/竹中 郁
■お問合せ/芸術文化センターチケットオフィス TEL 0798-68-0255
(10:00AM‐5:00PM/月曜休み ※祝日の場合翌日)
