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2022年、詩をテーマにした舞台作品「100年の詩物語」をスタートする兵庫県立芸術文化センター。第1回は南野陽子、林田一高(文学座)を迎え、MONO代表であり、劇作家、役者としても活躍する土田英生書き下ろしの朗読劇『アネト』を11月23日(水・祝)に同劇場で上演する。
神戸で活躍した詩人、竹中郁の詩を折々に織り込みながら、姉と弟の2人の物語を「手紙の朗読」という形式で綴る本公演。開催を前に取材会を行った土田が、作品のコンセプトや、朗読劇の醍醐味などを語った。


作・演出の土田英生

ある日、神戸で暮らす女性の元に手紙が届く。それは養子に出されたという「弟」からの手紙だった。姉は弟に返事を書く。折々に地元出身の詩人、竹中郁の詩を添えてーー。その日から生涯にわたる二人の手紙のやり取りが始まる。互いを思いながらすれ違う姉弟(あねと)、それぞれの人生と情愛を、手紙と手紙に添えられた詩の朗読を通して描く。

竹中郁の詩を朗読するのは、関西で活動する男女8人の俳優。「ミュージカルはお芝居の間に歌が入ります。今回は詩の朗読をミュージカルの歌の部分だと捉えて、手紙で二人のやり取りをしながら、間に竹中郁さんの詩を挟み込んでいくという形で物語を展開させようと思いました」。

「各々の人生の節目や壁にぶつかったとき、孤独に苛まれたときに、会ったことがない、だけど血のつながった姉弟にお互いが手紙を出し合います。二人の人生の断片を、手紙を通して感じてもらえたら」と話す土田だが、「どういう状況で人が関係を結んでいるか」ということを大事に思うからこそ、「やっぱり血がつながっているからね」という描き方はしたくないと言う。

「先天的なもので人の関係は決まらない。自分がどういう形で人と触れ合っていくか、どういう気持ちを持って関わるかによって、関係が決まると思っています。この二人は手紙のやり取りがあるからこそ関係性を積み上げられるはずだし、どこかに「僕にお姉ちゃんがいる」「いざとなったら弟がいる」という思いがあるからこそ、実際に会うことは最後の切り札とお互いが思っている関係というのがいいなと。姉と弟でありながらソウルメイトみたいな存在というか」。


朗読劇と銘打っている以上、演劇ではできないもの、舞台上で本を読むからこそ成立するものを上演したいと意気込む。「朗読劇ならではの表現をしっかり作って、演劇に負けないひとつのジャンルとして発表できたら。また、朗読劇で改めて“この人にはこんな魅力があったんだ”と思うことがあります。今回、南野陽子さんの違った一面が見えてくるといいなと思いますし、林田さんは文学座で実績のある俳優さんですから力は問題ないと思います」と、主演の二人にも期待を寄せる。

竹中の人生からも着想を得たという『アネト』。土田は、竹中の詩を通して世界の見え方が変わることも目的にしていると話す。「ときには物語と全く関係ない詩も朗読します。そうすることで、ちょっとずれるからこその面白さが出るんじゃないかなと思っています。竹中さんの詩は割と日常の何げないことを書いている印象があって。でも、何げないことの見え方が竹中郁さんとしか言いようがない。自分にはない視点です。まるで竹中さんのレンズをかけて世界を見ているような面白さがあります」。

朗読劇の代表作ともいえる『ラヴ・レターズ』を学生時代に読み、仰天したと話す土田。「幼なじみが手紙のやり取りをしているのですが、二人は結ばれない。ドラマだったら、結ばれない理由を作ったり、二人の間に横槍が入ったりとか、理由づけをして物語を進めますが、実際の人生ってそうじゃないですよね。僕は『ラヴ・レターズ』を読んだ時、フィクションと分かっていても驚きの連続で、あえて書かれていないからこそ信じられるというか、人生ってそういうもんだなという気がしました。そのときの驚きみたいなもので自分自身の好みが形づくられたのだと思うのですが、僕は演劇でもそうしたいと思っています。その中で朗読劇は“盗み聞き”の面白さを出せるのが魅力だなと思っています」。

◎取材・文/岩本和子



11/23 WEDNESDAY・HOLIDAY
兵庫県立芸術文化センタープロデュース
100年の詩物語
朗読劇「アネト~姉と弟の八十年間の手紙~」
【チケット発売中】
■会場/兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
■開演/14:00
■料金(税込)/一般 ¥3,500/U‐25チケット ¥1,500
■出演/南野陽子、林田一高
■朗読アンサンブル/池川タカキヨ、石畑達哉、高阪勝之、髙橋明日香、竹内宏樹、立川茜、東千紗都、松原由希子
■作・演出/土田英生
■詩/竹中 郁
■お問合せ/芸術文化センターチケットオフィス TEL 0798-68-0255 
      (10:00AM‐5:00PM/月曜休み ※祝日の場合翌日)


2022年9月30日、惜しまれながら閉館した大阪・茶屋町のミニシアター「テアトル梅田」。そこで起こった数々の出来事や関西における映画館の移り変わりをたっぷり詰め込んだMEG推しVOL.02イベント『「テアトル梅田 さよならトークイベント」~32年の思い出と、これからのミニシアターについて~』が、9月22日大阪・関西大学梅田キャンパス KANDAI Me RISEで開催された。テアトル梅田の宣伝担当、瀧川佳典さんの呼びかけで集まったのは、関西の映画史を彩るキーマンばかり。懐かしの映画館の話題や、あの大ヒット作の快進撃、その舞台裏ではどんなことが繰り広げられていたのか、さまざまなエピソードが語られたこのイベントをレポート!


左から樋野香織さん、戸村文彦さん、古野紀代子さん、瀧川佳典さん、松本富士子さん、坂本潤也さん、小山岳志さん、菅野拓也さん、多田祥太郎さん


■関西ミニシアターの先駆け、あの劇場の元支配人が登壇!
今回のイベントは9名のゲストがそれぞれの思い出を持ち寄り、テアトル梅田はもちろん、関西の劇場の軌跡やミニシアターの未来について語り合うというもの。会場には、100人以上の観客が参加。懐かしの劇場や映画のタイトルが登場するたびに、大きくうなずく人が多く、思い出の掘り起こしイベントとなった。

まず最初に登壇したのは、1985年に開館した扇町ミュージアムスクエアの映画館元支配人・坂本潤也さんと、2001年に大ヒット作『アメリ』を宣伝した元株式会社ツインの矢部佐織さん。

当時の扇町ミュージアムスクエアは、「劇団☆新感線」と「南河内万歳一座」の稽古場が2階にあり演劇の聖地。記憶に残った作品のひとつとして、坂本さんは「『バタアシ金魚』ですね。映画館としては、90年ごろから上映の回数を増やしていった、その頃の作品です」と振り返った。

また、テアトル梅田が開館してのち、1996年から映画宣伝を担ってきた矢部さんは「テアトル梅田の上映作品を何本宣伝したのか数えてみたところ179本あったんです。『アメリ』はもちろんですが、『親指スター・ウォーズ』『いかレスラー』など会社に入って無我夢中でやっていたころの作品が記憶に残っています」。また『シュリ』などのアクティブな韓国映画が大ヒットしているなかで、あえて心温まる良作もあることを伝えたい!という思いから、イ・ジョンヒャン監督『おばあちゃんの家』を自社配給したことも語った。


■1990年、テアトル梅田が開館。ヒット作品が続々登場
話はテアトル梅田の開館へと進む。初上映作品は『白く渇いた季節』と『スイッチング・チャンネル』、その後モーニングショー、レイトショーも開始。95年以降『恋する惑星』『トレインスポッティング』『ムトゥ 踊るマハラジャ』といった歴代興行収入ベストテンに入る作品が続々登場した。今のように先売りシステムがなかったので、当日券を買うために列に並び、自由席に座るスタイルだった。

実は『恋する惑星』は扇町ミュージアムスクエアでも続映されていたそうで、ウォン・カーウァイ監督と金城武さんが来館、舞台挨拶まであったことを坂本さんが明言。興行収入も好調で「うちはこれで大変おいしい思いをさせていただきました。テアトルさんすみません!」と豪快に笑った。

1995年にテアトル梅田で働き始めた瀧川さんは、映画好きではあったものの、レイトショーなどのミニシアター特有の文化をここで初体験したそうだ。「夜遅い時間の上映にもかかわらず、お客様がたくさんいらっしゃる。こんな世界があるのだなと本当に驚いた」と言う。

■そして、大ヒット映画『アメリ』が公開!予想をはるかに超えた大化けムービー!
そして、2001年テアトル梅田の歴代興行収入第1位の『アメリ』が公開される。宣伝を担当した矢部さんは「当時、テアトル梅田では、初日の前夜祭でオールナイト、初日は朝から夜まで9回上映し、さらにその夜オールナイトをするというすごいスケジュールでした」と振り返る。会場からも上映回数の多さに驚きの声があがり、それを受けて瀧川さんは「『アメリ』の勢いは止まらず、結果204日上映しました。この作品、当初はホラー映画だと思って買い付けてきたところ、ふたを開けてみたら全く違った。それなのに、映画は大ヒットした、という面白いエピソードもありますね」と言うと会場は笑いに包まれた。

その後『アメリ』はミニシアター以外の劇場でもどんどん拡大上映を展開。矢部さんは、「ミニシアターでヒットした『アメリ』が新たな劇場で上映されることで、ミニシアターの構図を変えていったと言ってもいい。梅田にも大小多数の劇場がひしめき合った時代です」と、当時のアメリ旋風が思わぬ方向へと進んでいったことを解説。

ここで、1998年5月から2002年11月までテアトル梅田の5代目支配人を務めた松川さんからのビデオメッセージがモニターに映された。「『アメリ』はオールナイトに加え、2スクリーンで5週間も上映を行ったことを思い出します。缶バッジを作ったり、スタンプラリーを行ったり。ムック本もよく売れました」と当時を振り返った。

そのほか、磯村一路監督、田中麗奈主演の『がんばっていきまっしょい』が上映にこぎつけるまでの裏話も披露。最初は上映する予定がなかったが「非常に誠実で感動的な作品だったので、ぜひ観てほしいとスタッフにもすすめたんです。すると瀧川君が観てくれて、うちでもやりたいと言ってくれた」と話す。瀧川さんは「当時を思い出して、泣きそうになりました」としみじみ。ビデオは瀧川さんが撮影してきたもの。さまざまな記憶がよみがえったに違いない。

その後、2002年に『ピンポン』が公開、こちらは歴代興行収入第5位になった。また、2006年には細田守監督の『時をかける少女』を公開。それ以降、アニメ作品も積極的に紹介していくようになる。こうしてテアトル梅田は、さまざまなファンを取り込みながら、大阪のミニシアターを牽引するリーダーとなっていった。


■最新システムの登場や、シネコンの登場に翻弄されるミニシアター
続いて登壇したのが、映画宣伝パブリシストとして活躍する菅野拓也さんと、心斎橋パラダイスシネマや梅田ガーデンシネマの支配人として映画館の移り変わりに身を置いてきた伝説の支配人、松本富士子さんだ。

菅野さんは、劇場「心斎橋シネマ・ドゥ」で映画人生をスタート。「テアトル梅田と拡大上映した『ピンポン』が歴代興行収入第1位で、連日満席が続き、グッズも飛ぶように売れました」と当時を語る。

また、心斎橋シネマ・ドゥはソニー系列の劇場で、35ミリフィルムではなく、ソニーが開発した「デジタルベータカム」を使ってのデジタル上映を行っていた。「データさえ作ってあれば、フレキシブルに上映できていた」と言い、フィルムからデジタルへと移り変わるなかで、オリジナルの強みを発揮した新たな劇場の現場を語った。

それを受けて松本さんも、「梅田ガーデンシネマは、テアトル梅田に憧れて、追いつけ追い越せでやっていましたね。それは、大阪のほかのミニシアターさんも同じだと思います。劇場として一番観客を動員したのはロベルト・ベニーニ監督・脚本・主演作の『ライフ・イズ・ビューティフル』。当時のアカデミー外国語映画賞などを受賞して日本でも大注目。ゴールデンウィークから公開して、終わったのが秋口だったので、今では考えられないようなロングランでしたね。邦画では、癒し系の金字塔とされる『かもめ食堂』が人気で、良い時代でした。また、是枝裕和監督や西川美和監督とのご縁をいただいて、このお二人の作品は梅田ガーデンシネマで行うことが多かったです」と思い出を振り返った。

それでも劇場は2014年2月に閉館。「閉館が決まると、お客様や監督さんや俳優さんから、たくさんのお声を頂戴したので感無量でした」と続けた。


■シネコンが都市部に続々登場で、ミニシアターの過渡期に!
さらに松本さんは、「2007年ごろから、シネコンが都市部にでき始めて、ミニシアターを含む映画館の興行形態ががらっと変わった過渡期だったと思うんです」と、当時の様子を話す。2011年の1月に梅田ピカデリーが閉館、5月に大阪ステーションシティシネマが開館して「いわゆる既存館がなくなり、シネコンに変わった時期。本当に時代が大きく変わったなと実感しました」。

矢部さんが「邦画はよく入るのですが、洋画が入りにくくなった」と言うと、松本さんも「ミニシアターの黄金期は良質な洋画が主流だったのですが、良質なだけではお客様に来ていただけない時代になった。作家性のある監督の名前でも呼び込むのは難しかったですね」と付け加えた。

続いてモニターに映されたのは9代目の支配人、山内さんからのビデオメッセージ。2008年の4月から8年間テアトル梅田を引っ張った人物だ。たくさんの思い出の中から2009年のロビーの改装を担当したことをあげ、明るい木漏れ日が差すような空間をコンセプトに「日曜日のレイトショーを終えてすぐ改装にとりかかり、5日間24時間体制で工事を実施。レイアウトから予算、設計まですべてに関わったので、大変だった思い出があります」と話した。さらに「僕が在籍する少し前から、シネコンの進出や心斎橋、難波にもスクリーンが増加。その後、梅田にも劇場が出来て、変化が大きかったですね。デジタルに移行したり、商業施設の再開発などで人の流れも変わりました。テアトル梅田は残念ながら閉館してしまいますが、紡いできた歴史や思いは今後シネ・リーブル梅田で受け継いでいきたい」と語った。

また、2011年は東日本大震災があった年。関西などローカルな地域に対しての宣伝費も減ってしまった。「関西の媒体が、東京の記事を流用することが多くなった」と矢部さんも変化を実感。次への展開を模索する時間が続いた映画業界だったが、「そんななかで大ヒット作が出ると、劇場としてはほっとしますよね」と松本さんが問いかけた。それが、テアトル梅田の歴代興行収入第3位、2016年公開の片渕須直監督『この世界の片隅に』だった。


■『この世界の片隅に』は287日連続上映を記録
ここで、この作品の上映に真っ向から向き合った10代目の支配人、古野紀代子さんが登壇。「入社したころによくミニシアター黄金時代の話を聞いていたのですが、そんな体感をしたことがなかったんです。でも『この世界~』の上映が始まった時『映画ってここまでお客さんが入るんだ!』と驚きました」と古野さん。

この作品は2時間9分という長編アニメ。だからこそ、上映時間の確保が一番の悩みだったそうだ。次々と新作が到着する中、とにかく続けたい、と本社に掛け合いながら上映を継続。通常は行わない早朝や夜の時間を使って1日も欠かさず上映した結果、287日という最長ロングランが実現することになり、いつしかテアトル梅田は『この世界の片隅に』のファンから西の聖地と呼ばれるように。「片渕須直監督には何度もイベントに来ていただいて、本当にありがたい作品でした」と振り返った。

■ファンのパワーが劇場の空気を変えた!?
そんな古野さんが、在職中に実感したのはファンのパワー。『セトウツミ』や『ディストラクション・ベイビーズ』は関西出身の俳優・菅田将暉のファンが多数詰めかけ「女子高生がたくさん映画を観に来てくれて、館内の空気が普段とは違いました。ミニシアターに来るのが初めてという方も多かったように思います。特に『セトウツミ』は、劇場が笑いに包まれて、終わったあともみんな笑顔になって。見ているこちらも幸せでした」。ファンのチカラが劇場のムードを変えることを実感した1本となった。




■映画とドラマはどう違う?サブスクの影響は? ミニシアター、映画の未来を考えてみよう!

ここで、新たなゲストを迎えて、ミニシアターと映画の未来を考えるコーナーへ。
新登壇者は塚口サンサン劇場の戸村文彦さん、パルシネマしんこうえんの支配人・小山岳志さん、シネ・リーブル神戸の支配人・多田祥太郎さん、映画の宣伝を行う樋野香織さんの4人。

塚口サンサン劇場といえば、絶叫上映や応援上映などさまざまなイベント上映で全国に名を馳せる名物シアターだ。「すべてはお客様に映画館へ足を運んでもらうためのきっかけのひとつ。映画だけでお客様に来てもらえる時代は終わってしまったと感じているので、映画館の強みをいかして、映画以外のことで映画の良さを感じさせることはできないかと思い、イベント上映をやっています」と戸村さんは返答した。

さらに、「それによって、久しぶりに大きなスクリーンで映画を観た、面白いな、と劇場に通ってくださる方が増えた。うちは、映画館であることをいったん忘れよう、お客さんと一緒におもしろいことをやって行こう!そして、映画館を好きになってもらいたい。そう思いながら活動しています」と続けた。

神戸の新開地で52年続く名画座の支配人を務める小山さんは、映画サロンのお茶会など新しい取り組みを実施。「1スクリーンで2本立て。コロナ禍で状況は厳しくなってきたけれど、2本立ての前にモーニングショーを行ったりしています」と小山さん。自身の映画館を紹介しながら、次の映画館を指名する「映画館のリレー」という取り組みも話題になっており、Twitterを賑わせている。

シネ・リーブル神戸の多田さんは、シネ・リーブル梅田でも支配人を経験した人物。関西のテアトル系列の今後を担う人材だ。そして、樋野さんはテアトル梅田最後のロードショー『よだかの片想い』の宣伝を担当している。

ドラマと映画がどう違うのか、というテーマに対し、「映画というのは、先ほども『セトウツミ』で話題に出たように、共感だと思う。同じ時間を同じ空間で共有する、楽しかったねと笑って映画館を出てくるあの時間の共有は、映画館でしか体験できないと思う」と菅野さんが言うと、同じく映画宣伝を行う樋野さんも「私も共感だと思いますね。同じ空間での映画体験。パソコンなどのモニターで観るよりも、スクリーンで観たほうが記憶にも残るし、SNSで感想をつぶやくことも、やはりみんなで想いを共感するためにあるのでは?」と続けた。

最近では、ネットフリックスなどのサブスクリプション(サブスク)で映画を観る人も増えている。環境さえ整えばパソコンやスマホで好きな時に映画を観ることができる時代。

戸村さんは「ネットフリックスが出てきた時、『なんて良い時代なんだ!』と思ったんです。過去の名作がこんなに手軽に観れるんだと。だったらどんどん観てください、そして映画に興味を持って!と。僕は、絶対にこれを追い風にできる!と思った」と言うと、小山さんも「最初は意識していましたが、うちは名画座なので上映作品はすでに配信しているものもある。だから、あまり影響は感じませんでしたね。とにかく映画を観てもらい、次に関連作品を上映する時にぜひ劇場にきてほしい。どこでどんな方法で映画を観るにせよ、映画を人生の中に組み込んでもらえたら」と続けた。

また、コロナ禍で自宅に巣ごもりしたことで、ネットで久しぶりに映画を観た、という人が多かったことも話題に上った。「自分が昔、映画をよく観ていたことを思い出す大人世代も多かったのでは?」と戸村さんは言う。「だから劇場で80年代、90年代の作品をかけてみたんです。すると、今まで来なかった世代がたくさんやってきた。そういう人たちが『トップガン』のリバイバル上映や最新作の『トップガン マーヴェリック』を観に行ったのだと思う。それなら、サブスクとは敵対せずに映画館がのっちゃえ!と。その方が絶対に良い関係になると思ったんです。映画館で映画を観ると時間も場所も拘束される、途中でやめることも難しい。だからこそ、自分がいかにその映画をポジティブに楽しめるのか、それもまた、映画の楽しみ方のひとつだと思います」と話した。

劇場支配人を経て、現在は映画のプロモーションを手掛ける古野さんも、「映画に必要なのは、圧倒的な体感」だと言う。「3D や4Dではなく、映画そのものから伝わるチカラとみんなが同じ画面を見ているあの感覚。それを体験し、シェア出来るからこそ『トップガン マーヴェリック』は大ヒットにつながったと思う。映画にはまだまだパワーがある。でもそれには、圧倒的な体感ができる作品があることが大前提。ずっと長くお客様に来てもらうという点では別の仕掛けが必要になる。私もそこはいつも模索しています」と力強く話した。

大人世代の話がでたが、一方、20代前半の若い世代はどうなのか。「おでかけのひとつとしてシネコンに行く機会はあるが、ミニシアターにはなじみが少ないことを実感している」という声が菅野さんからあがった。「シネコンならチケットを買う方法がわかるけれど、自分でミニシアターに行ってチケットを買う方法がよくわからないという人もいる。それも先ほど戸村さんがおっしゃった、すべてのお客様に足を運んでもらうための工夫をすることなのかな思います。ミニシアターの敷居を飛び越える施策を考えて行かないといけないなと実感しています」。



現役支配人の多田さんは、「ネットフリックなどでは、映画を観ている人よりもオリジナルのドラマなどを観ている人のほうが多いのではないかと感じている。オリジナルコンテンツを観ることに精一杯で、映画館へ新作を観に行く時間がないのかも。過去の映画はアーカイブとしてそこに並んでいるだけの様な気もするので、それなら、こういう映画がありますよ、と監督の特集上映を組むなどして、映画館で提示するのが良いかもしれません。それは、映画館にとってチャンスなのでは」と述べた。
それを受けて瀧川さんも「テアトル梅田ではここ2年ほど、レトロスペクティブを数多く上映してきました。その中で感じたのは、作品の奥深い魅力をお客様同士で伝え合っていただける映画サロンのような場を提供することも大切だということ」と続けた。

古野さんも、「監督特集などのパッケージで提示していくことは一つの方法だと思いますね。昔劇場で働いていた時、1週間限定のレイトショー作品なのに、なぜこんなに若い人たちが来てくれるのだろう、と思うことがあったんです。すると「ここでしか上映されていないので来ました」と。若い世代はスマホでマップ検索が出来るので、映画館の場所が分かれば来てくれる。さらに、その映画館でしか観ることのできない独占性のある作品があれば、若い世代を取り込むための強みに出来るのかなとも思います」と締めくくった。

最後、会場にはテアトル梅田を振り返る約5分のムービーが流された。そこには、過去に上映された作品のチラシや名場面、みんなを迎えてくれた明るいロビー、名物の外階段など、劇場の日々と思い出をたどるたくさんの瞬間が詰まっていた。

30周年を迎えたその日はコロナ禍で休館中、映画館を愛してほしいという思いを携え、コロナ禍で何度も足止めされながらも出来る限り続行した映画サロン“しねまぼっこ”など、たくさんの出来事がよみがえる。

映像のバックに流れたBGMのタイトルは『You Were There』〝あなたはそこにいた″。この言葉が、テアトル梅田を愛したすべての人へ、劇場からの最後のメッセージとしか思えない。

『You Were There』。
映画ファンの人生に寄り添い、さまざまな文化や人間の喜怒哀楽を体験をさせてくれたテアトル梅田。32年間、いつも変わらず「そこ」に居させてくれて、ありがとう!
迎え入れてくれてありがとう! そして、たくさんの感動をありがとう!

こうして、温かく大きな拍手に包まれながら2時間のイベントを終えた。

◎取材・文/田村のりこ



歌舞伎俳優の坂東玉三郎が、昨秋に続いて名古屋・御園座にお目見え。
10月1日、特別公演の幕を開けた。今年は歌舞伎「三姫」の一人である大役、八重垣姫にふんして観客を魅了。恋して、泣いて、奮起して、走って……と、表情豊かな八重垣姫から目が離せない!

歌舞伎の世界で「三姫」に挙げられる八重垣姫は、「本朝廿四孝(ほんちょうにじゅうしこう)」という全五段の浄瑠璃作品において四段目に当たる「十種香」「狐火」に登場する。時は戦国時代、武田信玄と長尾(上杉)謙信の対立が背景にあり、両家の和睦を図ろうとした将軍・足利義晴は、武田家の嫡男・勝頼と長尾家の娘・八重垣姫を許嫁とする。その後、将軍が暗殺されると両家は犯人探しを命じられ、期限までに究明できなかった償いとして勝頼は切腹。ここまでが上演される場面の前段で、「十種香」「狐火」では勝頼死後の物語が展開していく。


定式幕が引かれるとまず、舞台美術の美しさ、中央に立つ青年の麗しさに見惚れてしまう。「これぞ歌舞伎」と言いたくなるような絢爛豪華な装置と衣装は実に鮮やかだが、黙って階段に身を乗り出す青年の存在感もハンパなく、せりふがなくても「ずっと見ていられる」といった感覚を覚える。やがて左手の障子があくと、黒を基調とした衣装の腰元・濡衣が、右手の障子があくと、輝く髪飾りと真っ赤な振袖がまぶしい八重垣姫が姿を現す。青年をはさんだ左右のコントラストがまた素晴らしく、計算し尽くされた演出に心臓の高鳴りが止まらない。


ただし、圧巻はやはり稀代の女方、玉三郎だ。前述の青年・簑作は長尾家に仕えたばかりなのだが、その姿は勝頼の錦絵とそっくりで、八重垣姫は瞬く間に恋に落ちる。ついには、濡衣に仲を取り持ってほしいと懇願するが……。この恋する乙女の一喜一憂が、とんでもなくカワイイ!! 勝頼に会えたと思って大喜びしたかと思えば、勝頼ではないと言われて泣いたり命を絶とうとしたり、もう大騒ぎ。結局、濡衣が根負けし、簑作が本物の勝頼であるという真相を告白。八重垣姫は安堵する。ところが、「狐火」で可憐さは一転、自身の父が仕掛けた罠から勝頼を救おうと奔走。凛とした表情で窮地に立ち向かう。


八重垣姫は、めまぐるしく変わる心模様の表現力に加え、重い衣装をつけながら軽やかに振る舞う体力・体幹が必要とされる。玉三郎は、長年にわたって積み上げてきた至芸を存分に味わわせてくれた。歌舞伎を観たことがない人、歌舞伎を難しいと思っている人もいるだろうが、一生に一度でもいいから玉三郎の舞台に触れてほしい。同時代に生きていて、これほどのアーティストを見逃すなんて本当にもったいない。


なお、勝頼を演じた中村橋之助をはじめ、中村福之助、中村歌之助と、成駒屋の三兄弟が昨秋同様そろって登場。福之助、歌之助は、“ご注進”と呼ばれる役柄のデフォルメされた演技で客席を沸かせた。また、三代目市川猿之助(現・猿翁)のもとで修行を積み、現在は新派で活躍する喜多村緑郎と河合雪之丞も共演。上背のある緑郎が迫力を増した謙信をつとめる一方、雪之丞は持ち前の繊細な演技で濡衣の複雑な心理を巧みに表していた。

◎Interview&Text/小島祐未子

10/23 SUNDAY まで開催中
「坂東玉三郎 特別公演」
■会場/御園座
■開演/14:00
※10/7(金)・10/17(月)は休演。
■料金(税込)/A席 ¥18,000 B席 ¥10,000 C席 ¥7,000
■お問合せ/御園座 TEL052-222-8222


この夏の野外フェス以降、海外アーティストの来日が本格的に始まっている。今までライヴの延期や中止が相次ぎ、ヤキモキした音楽ファンも多いことだろうが、その鬱憤を晴らすかのようにこの秋以降は注目の来日公演が目白押しだ。その中でも、名古屋クラブクアトロには大注目すべきラインナップが冬まで続く。今回はその選りすぐりのアーティストをまとめて紹介する。どれも見逃せない必見ライヴだ。


10/26WED
SQUAREPUSHER<スクエアプッシャー> JAPAN TOUR (振替公演)
SPECIAL GUESTS:HUDSON MOHAWKE (DJ SET)、DAITO MANABE

度重なる公演延期を経てついに新日程決定!初公開音源多数の最新セットに、真鍋大度 / ライゾマティクスがヴィジュアルを担当する今回限りのA/Vライブは、通常のコンサートの枠に収まらないスペシャルなイベントになることは間違いない。そしてゲストに、8月に最新アルバムをリリースしたハドソン・モホークがD Jセットで急遽参戦決定!見どころの多い楽しみなライヴだ。スクエアプッシャーとモホークが所属する〈WARP〉のポップアップも会場に登場し、グッズ販売も充実。
<LIVE INFO>
■開演/18:30
■料金/前売¥7,000

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11/01TUE
PALE WAVES<ペール・ウェーヴス>JAPAN TOUR 2022

2019年のジャパンツアーも記憶に新しいペール・ウェーヴスは、ヘザー・バロン・グレイシー率いる英インディーロック・バンド。ゴスなビジュアルとニューウェーブサウンドといった80年代のアティテュードを、彼ららしく現代にアップデートさせている。2018・19年とサマーソニックに連続出演。2021年2月にセカンド・アルバム『 Who Am I?』をリリースし UKアルバム ・ チャート初登場3位を獲得、今年8月にはサード・アルバム「Unwanted」をリリース。ツアーも確実に重ね、早くも成熟期を迎えつつある大注目のバンドだ。
<LIVE INFO>
■開演/19:00
■料金/前売 ¥7,500

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11/15TUE
BIG THIEF<ビッグ・シーフ> Japan Tour 2022

4人のメンバー全員がバークリー音楽大学出身。今、USインディーフォーク界を牽引している実力派バンドがビッグ・シーフ。2019年の2枚のアルバム『U.F.O.F.』、『Two Hands』が高評価を受け、『U.F.O.F.』はグラミー賞のオルタナティヴ・ミュージック・アルバム部門にノミネート。今年2月には2枚組の最新アルバム『Dragon New Warm Mountain I Believe in You』をリリース。コロナ禍でソールドアウト公演が延期~中止となり、まさにファン待望の初来日公演がやっと実現する。
<LIVE INFO>
■開演/19:00
■料金/前売 ¥7,000

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11/21MON
Elephant Gym "Dreams in Japan" Tour

7月のFUJI ROCK FESTIVAL ’22でのパフォーマンスも好評を博したElephant Gymは台湾・高雄出身のスリーピース・バンド。感情的でメロディアスなベースラインを中心に据えたアンサンブルで、洗練された楽曲構成のセンスや高いテクニックを見せつける。インストゥルメンタルを基調とした初期から、自ら歌を歌うことや様々な楽器を取り入れることで、幅広い音楽性を体現しつつある。
今や世界各国にてリリース&ツアーを実施。2020年の東名阪ワンマンツアーは全公演ソールドアウト。今年5月には3rd Full Album「Dreams」リリースしている。
<LIVE INFO>
■開演/19:00
■料金/前売 ¥4,800


12/02FRI
Stella Donnelly <ステラ・ドネリー>

オーストラリア・パース出身のS.S.W。2017年にリリースしたシングル「Boys Will Be Boys」でオーストラリアの音楽見本市、Bigsound 2017のリーバイス・ミュージック・アワードを受賞したことで世界的な注目を集めた。2019年にデビュー・アルバム『ビウェア・オブ・ザ・ドッグズ』をリリースし、フジロックで初来日。同年12月に行われたツアーは追加公演含め全て即日完売。待望の再来日公演、女性が生きやすい世界をというメッセージを歌にのせるステラに今回も注目したい。
<LIVE INFO>
■開演/20:00
■料金/前売 ¥6,000


12/05MON
LOUIS COLE BIG BAND
JAPAN TOUR 2022

今年5月のサンダーキャット来日公演に、ラマーとして急遽参加し、そのセンスとテクニックで歴史的ツアーを大いに盛り上げたルイス・コール。先日最新アルバム『Quality Over Opinion』がフライング・ロータスのレーベル〈BRAINFEEDER〉からリリースされることが発表され、先行シングル「Let it Happen」「I’m Tight」も型破りなセンスが光るミュージックビデオと共に話題沸騰中だ。そんな超人ルイス・コールが自身のバンドを率い、更に6名のホーンセクションを加えた「ルイス・コール・ビッグバンド」としてジャパンツアー開催決定!
<LIVE INFO>
■開演/19:00
■料金/前売 ¥7,150


’23 1/11WED
Ginger Root JAPAN TOUR 2023

Ginger Rootはカリフォルニアをベースに活動するキャメロン・ルーによる音楽プロジェクト。ヴルフペックやトロ・イ・モアなどUSインディー・アーティストに加え、日本のシティーポップからの影響も公言すし、”アグレッシヴ・エレベーター・ソウル”と自称するサウンドが早くから注目を集めた。昨年には80年代の日本の歌謡番組をオマージュしたMVを制作した「Loretta」や、「美少女戦士セーラームーン」から影響を受けた「Junban District(10番街)」をリリースするなど、次世代の旗手として大きく期待される。
<LIVE INFO>
■開演/19:00
■料金/前売 ¥7,000

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2/13MON
Wet Leg <ウェット・レッグ>

昨年6月に1stシングルをリリース以降、世界中の音楽ファンを魅了し、デイヴ・グロールやロード、ジャック・ホワイトらも彼女たちに注目している。デビューアルバム『Wet Leg』を4月にリリースするや、見事全英アルバムチャート第1位を獲得!2〜4位までの合計を上回る驚異的なセールスとなった。その中毒性の高いキャッチー且つクールな楽曲群は音楽ファン、音楽メディアのみならずファッション界隈からも高い評価と熱い支持を得ている。そんな大注目バンドの初来日ツアーが決定!
<LIVE INFO>
■開演/19:00
■料金/前売 ¥6,000

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【各公演共通情報】
■お問合せ/
名古屋クラブクアトロTEL.052-264-8211
※Elephant Gymのみ ジェイルハウス TEL.052-936-6041
■注意事項/
全公演オールスタンディング・整理番号付
未就学児入場不可
ドリンク代¥600別途必要
価格は全て税込
スケジュールは変更になる場合があります


愛知県芸術劇場の芸術監督である勅使川原三郎が、9月に控える再演と新作、ふたつのダンス公演の記者会見を行った。会見には、ダンサーとして、また近年は振付家やアーティスティック・コラボレーターとしても勅使川原を支える佐東利穂子も参加。昨年の夏に好評を博した「風の又三郎」については再演の経緯や狙いなどを、「ダンス・コンサート」シリーズの最新作にあたる「ライヴミュージック&ダンス 天上の庭」については着想点や、世界的チェロ奏者ヨナタン・ローゼマンとの初共演に向けた心境などを聞かせてくれた。


勅使川原三郎 Photo by Akihito Abe

ダンス「風の又三郎」は地元・愛知のバレエ関係者との連携を図り、東海圏ゆかりの若手ダンサーを対象にオーディション・ワークショップを実施。2021年の夏休み期間にファミリー・プログラムの一つとして初演された。宮沢賢治の同名文学を題材にしたそのステージは、身体、音、光、舞台美術などが巧みに絡んだ美しい画の連続で観客を魅了。子どもと大人が分かち合える稀有な時間を生み出した。今年は9月3日(土)・4日(日)に公演。



【勅使川原三郎】
「風の又三郎」はすぐに再演の話が出たくらい成果が素晴らしかった。他の都市や外国にも持っていける作品です。ファミリー・プログラムだからと言って子どもに合わせることはせず、大人も子どもも共有すべきは何かと考えました。原作に描かれた出会いや戸惑い、喜び、発見、あるいは季節の変化と人生の転換期……、それらは誰もが感じ得ることですよね。再演にあたって、前回からのメンバーは1年で大きく成長したでしょうし、新しいメンバーは新しい風を吹き込んでくれるでしょう。大事なのは、愛知県芸術劇場が成長の場となることであり、地元の人がいかに参加できて、芸術を活性化できるのかということ。ダンサーたちとは「愛知でつくる作品」という誇りを共有しています。


佐東利穂子 Photo by Akihito Abe

【佐東利穂子】
「風の又三郎」は、あらためて名作だと思います。(舞台上に流れるナレーションとして原作の一部を)朗読していると、読むのが面白くて、なおさら生き生きとしていくのを感じます。目に見えているものだけでなく、まさに風、リズムが運ばれてくる。そしてある瞬間、子どもの頃に感じた淋しさや不安が深く感じられるのです。ダンスとの構成も合っているので、踊り続けていくことで作品を大きく豊かにしていけたらいいなと考えています。


風の又三郎初演風景(C)Naoshi Hatori

続いて16日(金)・17日(土)に発表される新作「天上の庭」には、勅使川原も出演。佐東とともに、フィンランドの若き俊英ローゼマンのチェロとじっくり向き合う。曲目はCMでもよく耳にするJ.S.バッハ「無伴奏チェロ組曲」、カサド「無伴奏チェロ組曲」という二つの組曲からの楽章に加え、コダーイ「無伴奏チェロ・ソナタ Op.8」。特にストーリーはなく、音楽とダンスから成る純度の高いパフォーミングアーツだ。


勅使川原三郎、佐東利穂子 Photo by Bengt Wanselius

【勅使川原】
「天上」とは地上に対する言葉として、浮世から離れた世界を指しています。現在の難しい社会情勢の中で、私自身、日常の煩わしい話に飽き飽きしていて、物事が純粋にそのままあったらいいなという想いがあります。文学的なメッセージは一切なく、純粋に音楽とダンスで何ができるか追求したい。庭で遊ぶような、戯れるような、遊戯性をもった作品になると思います。ローゼマンは若手のほうですが、その人間性が表れたような穏やかな演奏には高い音楽性を感じます。私と佐東とローゼンマン、三人三様のあり方や音楽性がどう調和するか。チェロの音色は楽器の中でも人間の声に近いと言われ、形も近いので、もうひとり人間がいるような気もするんですね。大地と密接で、身体の奥底から響いてきて空間に広がる感覚。人間の身体と、より近いのは確かです。
【佐東】
ローゼマンとは初めてのコラボレーションですが、プログラムを考えている最中にリハーサルの機会を設けられたのは良かったと思っています。好き嫌いではなく、この三人ならば何があり得るか、ニュートラルに話ができましたから。彼の音楽を身体で感じている、全身で聞いているという感覚を得られたのも面白かったですね。生のチェロの演奏、チェロの曲だけで踊るのは初めてなので、今とても楽しみです。


ヨナタン・ローゼマン(チェロ) Photo by Tuomas Tenkane

なお、会見当日の朝にはローゼマンから佐東にメールが届いたそうで、「ここ数カ月、お二人に会う光栄を授かり、とても多くのインスピレーションを受けています。勅使川原さんの芸術に対する考えは啓示的で、私自身の考えも活気づき、ユニークで特別なものを創りたいという気持ちが増しています。このような想いは初めて」とコメント。刺激的な現場を共にして意欲を燃やしている様子がうかがえ、ますます期待が膨らんだ。

◎Interview&Text/小島祐未子








9/3 SATURDAY・9/4 SUNDAY
ダンス「風の又三郎」
愛知県芸術劇場芸術監督 勅使川原三郎 演出・振付
【チケット発売中】
■会場/愛知県芸術劇場大ホール
■開演/9月3日(土)・4日(日)15:00
■料金(税込)/全席指定 S席 ¥4,000(U25 ¥2,000・中学生以下 ¥1,000) A席 ¥3,000(U25 ¥2,000・中学生以下 ¥1,000)
※3歳以下入場不可。

9/16 FRIDAY・9/17 SATURDAY
勅使川原三郎 ライヴミュージック&ダンス「天上の庭」
【チケット発売中】
■会場/愛知県芸術劇場コンサートホール
■開演/9月16日(金)19:00、17日(土)16:00
■料金(税込)/全席指定 S席 ¥7,000(U25 ¥3,500) A席 ¥5,000(U25 ¥2,500)
※未就学児入場不可。

■お問合せ/愛知県芸術劇場 TEL052-211-7552