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京都市・京都芸術大学内にある京都芸術劇場 春秋座は、7/20(土)・21(日)の2日間にわたり大人もこどもも楽しめるイベントとして「瓜生山サマーパーク」を開催します。パフォーマンスの上演、さわって楽しむ体験型の展示、インクルーシブ遊具の遊び場、ワークショップなどを通して、子育て世代はもちろん、これまでに劇場に足を運んだことのない方々が気軽に劇場体験できる企画となっています。

主なイベントを紹介します。

<パフォーマンス>
① 藤村港平×ひびのこづえ× 川瀬浩介『MAMMOTH』
大昔に絶滅したはずのマンモスがよみがえりおどりだす。
ひびのこづえさんの衣装、川瀬浩介さんの音楽、そしてダンサーの藤村港平さんが繰り広げる、未来への希望に満ちたダンスパフォーマンス!

② マームとジプシー『しずくとなみだ』
作・演出:藤田貴大/出演:成田亜佑美
藤田貴大さんが主宰する演劇団体マームとジプシーからのとっておきの「ことば」たちをお届けします。


『MAMMOTH』(撮影:出口敏行)

<体験型展示>
タッチ、コスチューム!
ひびのこづえさんの衣装を体感!さわってOK、着てOK、踊ってもOK!


<おとなもこどもも楽しめるワークショップ>

ひびのこづえ「ちいさな生きもののブローチをつくる
ひびのさんが舞台やテレビの仕事で衣装を作ったときに残ったきれいな生地や衣装の断片を使って、ちいさな生きものを作ります。絵を描くことや縫い物が苦手でも大丈夫!
定 員:各回30名 
対 象:4歳から大人まで(小学生以下は保護者も参加、付き添いのみの参加はNG)
材料費:1,000円
持ち物:はさみ(一人一本)、色鉛筆


藤田貴大「地図のワークショップ」 
「朝、最初に話した人は?」「会場までの道のりは?」それぞれの風景をみんなで再現して街の地図を作ります。どんな物語が立ち上がるでしょう。
定員:10名
対象:小学生(小学3年生以下は保護者同伴)


<インクルーシブ遊具の遊び場>
アネビーインクルひろば
子ども達の新しい「できた!」を育む楽しい遊具。アネビーは子どもたちの一人ひとりの特性に寄り添いながら、共生できる遊び環境をつくります。特別な誰かのためでなく、どんな子どもも自由に伸び伸び遊んで...ごちゃまぜになる環境づくりを目指しています。多人数で一緒に遊ぶことで、自然と子どもたちの間で新しい「ルール」や「ことば」が生まれます。身体的な体幹やバランス能力だけでなく、協調性やコミュニケーションの力も育みます。共生できる遊び環境が広がる出発点となるよう、子ども達が遊ぶ姿を見て、遊具の魅力をご体験ください。
※仮設のため、遊具の使用は小学生以下とします

協賛:株式会社アネビー https://www.aneby.co.jp/


<映画上映・講演会>
講演会+対談『「遊び」って何だろう?』
身体を成長させるためのタンパク質やビタミンと同じように、脳にも発達に必要なものがあります。それが「感覚」です。「遊び」とは、子どもたちが自分の発達に有利になる感覚刺激を脳で受け取るための、真剣で自由な行動なのです。

講師:
横山 諭 (遊び環境アドバイザー/株式会社アネビー 教育研修部 部長)
松野敬子(小規模保育園Cherry’s Hug東向日園の園長。いんふぁんとroomさくらんぼ代表理事。社会安全分野 / 学術博士。神戸常盤大学子ども教育学科非常勤講師)

◎協賛:株式会社アネビー https://www.aneby.co.jp/

映画『こどもかいぎ』上映会
子どもたちが「かいぎ」をする保育園を1年間に渡って撮影したドキュメンタリー。子どもたちから繰り広げられる奇想天外な発想と、まっすぐな言葉に、思わず笑い、時にハッとさせられます。保育園は多くの子どもたちが初めて社会と出会う場所。 そこで未来の子どもたちは何を考え、無限の可能性をどのように伸ばしていくのでしょうか?いつも全力で、まっすぐな子どもたちの姿には、「答えの無い世界で、私たちはどう生きていくのか」を考えるためのヒントがあふれています。さあ、いよいよ小さな賢者たちの、世界一おかしくて、世界一だいじな会議、はじまります!

◎協賛:株式会社アネビー https://www.aneby.co.jp/

あらゆる方々が気軽に劇場に足を運び、様々な芸術を観て、触って、感じる体験を味わうことにより、劇場にもっと親しんで欲しいという取り組みです。しかもどの作品・企画も現在第一線で活躍するアーティストによるものです。皆さんによって特別な体験となる2日間、ぜひ足をお運びください!

■クラウドファンディング挑戦中!
この企画では、継続的に地域にひらかれたイベント開催を行い次世代へ芸術のバトンを渡す取り組みを広く展開したいと考えております。以下の通り、クラウドファンディングに挑戦中です。あたたかいご支援をお願いします。
*【京都芸術劇場春秋座】瓜生山サマーパークを成功させ芸術の力を次世代につなぎたい*
実施期間:2024年6月28日(金)10:00~7月31日(水)23:59
目標金額:100万円

ご支援はこちらからお願いいたします

7/20 SATURDAY・21 SUNDAY
瓜生山サマーパーク
◼️時間/両日11:00-17:00
◼️会場/京都芸術劇場 春秋座ホワイエとその周辺(京都芸術大学内)
◼️料金/入場無料(要事前申込・一部ワークショップは有料)
◼️申込受付開始/7月1日(月)12:00~
◼️お申込み方法/Peatixからお申し込みください。 https://uryuyama-summerpark.peatix.com
主催:京都芸術大学 舞台芸術研究センター
協賛:株式会社アネビー


左:髙浦幸乃(NDT1所属ダンサー)中:エミリー・モルナー(NDT芸術監督)右:唐津絵理(愛知県芸術劇場芸術監督)
©Tatsuo Nambu

才能豊かな気鋭振付家と世界中から集まった選りすぐりのダンサーたちによる共同制作で、オランダのハーグを拠点に新作上演を続けている、世界的なコンテンポラリー・ダンスカンパニーであるネザーランド・ダンス・シアター(NDT)。5年ぶりとなる来日ツアーは愛知県芸術劇場・高崎芸術劇場・神奈川県民ホールの3劇場で開催。これに先立ち5/22にオランダ王国大使館で記者会見が行われ、NDT芸術監督のエミリー・モルナーとNDT1に所属する日本人ダンサーであり本公演に出演する髙浦幸乃、今回の統括プロデューサーを務める愛知県芸術劇場芸術監督で、Dance BaseYokohamaアーティスティックディレクターの唐津絵理の3 名が登壇した。

今年は人気振付家による全5作品を、会場/公演日ごとに異なる組み合わせで3作品ずつ上演する特別プログラム。2020年より同職にあるエミリー・モルナーは「NDTの芸術的ヴィジョンを堪能できるプログラムで、5作品すべてがNDT1(※今回来日する23〜37歳までのダンサーが所属するカンパニー)のために作られた多様で革新的な精神が感じられるラインナップ。私たちのダンサーによる卓越した技巧と幅広い表現力によって、世界中で絶え間ない進歩を遂げるコンテンポラリー・ダンスの最前線を目の当たりにできるはず」と語った。

愛知県芸術劇場の公演日は2日間。7/12(金)は、日本での本格的なデビューとなるシャロン・エイアール&ガイ・ベハールが手がける、16名のダンサーがヌーディーなボディスーツに身を包んで繊細かつ強靱な肉体のアンサンブルを披露する《ジャキー》(2023年初演)、舞台上に置かれた机20台をダンサーがランダムに出入りしながら休みなく踊り続ける、巨匠ウィリアム・フォーサイスの代表的な「テーブルダンス」が展開する《ワンフラットシング,リプロデュースト》(2000年初演)、そして日本人ダンサー2人が登場しジャパニーズ・ホラー的な要素も垣間見えるガブリエラ・カリーソ(※ピーピング・トム芸術監督)による映画的な世界観の《ラ・ルータ》(2022年初演)の3作品を。7/13(土)は《ワンフラットシング,リプロデュースト》と《ラ・ルータ》に加えて、降りしきる雪を背景にブラームスの2つのチェロ・ソナタにのせて紡がれる幻想的な世界を描くクリスタル・パイトの《ソロ・エコー》(2012年初演)の3作品を上演する。


©Tatsuo Nambu

現在総勢27名のNDT1団員のうち日本人ダンサーは3名。今回はメンバーとして初めての日本凱旋となる福士宙夢と、前回の2019年に続き2度目となる刈谷円香、髙浦幸乃の2名が来日。5作品すべてに出演する高浦幸乃(2015年からNDT1所属)は「これまでも常に進化し革新を追求してきたNDTだが、エミリーが監督になって更にそのクリエイティヴィティが高まったと感じる。彼女が紹介する振付家にはダンサー出身者だけでなく、サーカス団員や演劇人など多彩で今後のコラボにも期待している。今回のステージはどれもユニークで全くタイプの違う5作品。それぞれが客席に届くスピードも同じではなく、ダイレクトなものもあれば、観れば観るほど面白くなる作品もあるので、日本のお客さんがどのように受け止めてくださるか、その反応がとても楽しみ」と意気込みを語った。

◎Interview&Text/東端哲也

7/12 FRDAY・13 SATURDAY 【チケット発売中】
NDT(ネザーランド・ダンス・シアター)
プレミアム・ジャパン・ツアー 2024
◼️会場/愛知県芸術劇場 大ホール
◼️開演/7月12日(金)19:00 7月13日(土)14:00
◼️料金(税込)/SS¥14,000*完売(パンプレット付¥15,000 *完売)
         S¥13,000 A¥10,000(U25¥5,000)
         B¥7,000(U25¥3,500) C¥5,000(U25¥2,500)
◼️お問合せ/愛知県芸術劇場 TEL.052-211-7552
※4歳以下入場不可



心を揺さぶる音楽体験、未来を変える力に。

「音楽は分かち合うことにより、更に価値あるものとなる」 ―――― ドイツの至宝と呼び声高いバリトン歌手ベンヤミン・アップル、ROLEXのアンバサダーでもあるメキシコ人ピアニストのジョルジュ・ヴィラドムスが、メキシコからスタートさせた音楽の旅。彼らと確かなる思いで繋がったアジアの若いアーティストも加わり、ブラームスをはじめ宝石のような美しい音楽を届けます。

このツアーは単なる音楽イベントではありません。困難な環境にある子供たちの未来を拓くという特別なプロジェクト。こども家庭庁を通じ、学習体験の機会に恵まれない子供たちの無料招待枠を設け、チケットを購入しコンサートに足を運ぶことで社会貢献ができる仕組みになっています。

プロジェクトに加わったアジアのアーティスト、ヴァイオリニストの石上真由子、クラリネッティストの兒嶋賀奈子、そして作曲家キム・ジェドクの三人に、「WANDERLUST」コンサートツアーについて話を聞くことができました。

―まず、ドイツ歌曲界のスター、ベンヤミン・アップルが歌うドイツリートを聴くことができるというだけでも注目ですが、さらに多方面で活躍するジョルジュ・ヴィラドムス、そして皆さんが加わり、一層華やかさを増していますね。
子どもたち参加型のコンサートプロジェクトというのは今までになかった試みではないでしょうか。

兒嶋賀奈子:もちろん先ずはベンヤミンの歌声を軸にピアノ、ヴァイオリン、クラリネットが紡ぎだす美しいプログラムを楽しんでいただきたいです。通常のコンサートとの違いは、お客様はチケットを購入することで体験が乏しい環境にある子どもたちへの支援を、合唱で参加する子ども、生徒たちはただ舞台で歌うだけでなく貧困について考える機会を、招待した子どもたちにとってはクラシックのコンサートとに行ってみた、という経験を。音楽を聴いた、というだけでなく目には見えないお土産付きのコンサートです。企画したきっかけは私がローザンヌ高等音楽院で出会ったピアノ教授のジョルジュが「音楽は人々と分かち合うことでより価値あるものとなる」という信念からスイスとメキシコに設立した財団「Crescendo Con La Musica」の活動です。それぞれ支援内容は違いますが、メキシコでは既に2校を設立、困難な環境にある子どもたち、4000人以上が今までに学んでいます。その活動をお手伝いしたことから私も日本で音楽を分かち合うという価値観を広めたいと思いました。

―皆さんがこのプロジェクトに参加した動機を教えてください。

兒嶋賀奈子:祖母が国際的に奉仕活動をしているゾンタクラブに所属をしているためチャリティーが身近にあったこともありますが、両親から「食事に困らず、お勉強ができる、それは当たり前ではなく、たまたま生まれたところがラッキーだっただけ」と言われて育ちました。でも、私はその幸運を自分の努力の結果だと勘違いしていた時期があり、ローザンヌ高等音楽院で才能溢れる仲間に刺激を受けつつも圧倒され、前向きな気持ちになれない時期がありました。その頃にジョルジュの財団の活動をお手伝いし、体験格差や貧困問題に対して取り組む責任を感じるようになりました。

石上真由子:そもそも国も両親も選べずに生まれるわけですから、人生のほとんどは運ですよね。色々な体験をしてこそ、自分は何が好きで、何が苦手なのかを把握できるはずが、その機会が乏しいと学びたいという意欲や好奇心を育むことも難しくなります。賀奈子ちゃんから、ジョルジュの単なる音楽人の育成ではなく、音楽を通した包括的教育の活動を聞き、そこから日本の体験格差、教育格差に目を向けて芸術体験をフックに支援活動をスタートさせようとしている彼女の気持ちに賛同し一緒にやろう、となりました。もちろんベンヤミン、ジョルジュというスター二人との共演、編曲を担当する若き俊英、キム・ジェドクさんの参加も楽しみです。

キム・ジェドク:現在はドイツに暮らしているのですが、ジュネーブ高等音楽院に在籍していた時に友人になった賀奈子から今回のプロジェクトに編曲で参加しないかと誘われました。コンサートの全体的なアイデアを彼女から聞き、企画書を読み、ビジョンと目的が自分の価値観と共鳴すること、実は私自身も貧困にある人々へのボランティア活動をしていたこともあり、今回も自分のスキルが貢献できることから参加を決めました。


バリトン ベンヤミン・アップル


―来日されるベンヤミン・アップルさんについても教えてください。

石上真由子:ベンヤミンはあのドイツ歌曲の大スター、ディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウの愛弟子です。彼自身もレーゲンスブルグ大聖堂少年合唱団からキャリアをスタートしています。

キム・ジェドク:ベンヤミン自身がクワイアの経験があるので、小学生、高校生たちが合唱で参加するモーツァルトの『アヴェ・ヴェルム・コルプス』は、編曲しながら本番を楽しく想像しています。

―ジョルジュさんについても詳しく教えてください。

兒嶋賀奈子:彼はローザンヌ高等音楽院の教授であり、Crescendo Con La Musica財団の創設者でもあります。ロレックスのアンバサダーとしても活躍し、なんとVOGUEの表紙を飾ったことも。スイスではこれまでに60以上の奨学金を音楽学生に授与しています。

―それは本当に素晴らしい活動ですね。ところで、今回は子どもたちを招待されていますが、プログラムそのものは王道という印象です。

キム・ジェドク:子どもたちを招待し、また合唱に参加もしてもらうのですが、内容を子ども向けにする必要はないと考えました。

石上真由子:ドイツリートの世界観がメインのプログラムになります。シューベルト、シューマンにブラームス、まさに王道が並びます。「あ、どこかで聴いたことあるな」という曲も多く、歌詞もあるので、普段クラシックのコンサートにあまり行かない方や子どもたちにも親しみやすいと思いますし、ハイネの詩が好き、という方にも足を運んでいただきたいですね。

兒嶋賀奈子:個人的には高校生のころから憧れていた真由子さんとの共演も楽しみです。合唱で参加してくれる小学生、高校生たちにはベンヤミンと共に歌ったという経験は一生の宝物になるでしょう。もしかしたら将来そこから日本を代表する声楽家が生まれることがあるなら、アーティスト冥利に尽きます。

キム・ジェドク:ユニークな編成ですが、バリトンとクラリネットは響きの相性が良く、弦楽器とクラリネットの相性の良さは言うまでもないので楽しみにしていただきたいです。

―キム・ジェドクさん、韓国でも子どもの教育格差や体験格差は社会問題として認識されているのでしょうか?

キム・ジェドク:はい、韓国でも子どもの教育格差、体験格差は大きな社会問題です。大学時代にホームレスや社会的弱者の人々のために音楽を提供する活動に参加していたときに痛感しました。数年間その支援活動を継続することでコミュニティとしての連帯感のようなものが生まれたことは、自分でも意外なほど大きな喜びとなりました。今回招待したアートにアクセスすることが難しい環境の子どもたちには、まず何よりも楽しんでもらいたい。そして、コンサートに参加してくれる学習環境に恵まれている側の子どもや学生さんたちには、ぜひ、自分たちがこれから担う社会における責任のようなものを感じ取ってもらえればと思います。


ピアノ ジョルジュ・ヴィラドムス


―参加される子どもたちについても教えていただけますか?

兒嶋賀奈子:アートにアクセスしてもらいたいと子ども達を招待するだけでなく、もう一歩進んだ取り組みにも挑んでみました。従来の演奏家と聴衆という構図から、子供たちや学生たちと一緒にコンサートを作り上げるという試みです。恵まれていると見過ごしてしまう格差に対し、自分たちは何ができるのかを考えてもらう機会にもなります。その私たちの取り組みに国立音楽大学附属高校が参加を快諾してくださったことにも感謝していますし、立命館小学校からはただ参加するだけでなく、子どもたちに深く見えない貧困について考える機会にしたいと色々ご提案いただいたことも嬉しかったです。慶応大学の有志の学生さんが裏方に入ってくださっているのも胸が熱くなります。

石上真由子:クラシック音楽の課題として客層の高齢化があります。自分たちの未来のお客様を自分たちで開拓していくという意味でも、子どもたちや学生たちに聴いてもらう、参加してもらうことに積極的でありたいです。このままクラシック音楽がオワコンになってしまったら、子どもたちに支援をするどころか、音楽家は自分たちが職を失っていくことになりかねないので。

キム・ジェドク:スイスの筆記具ブランド カラン・ダッシュが音楽家の我々とはまた異なる視点からの協力をしてくださっているのもこのコンサートのユニークなところです。最近は自宅で楽しめるコンテンツが沢山あり、わざわざお金を払ってコンサートに出向くというハードルはますます高くなってきています。おそらくクラシックのコンサートは今回が初めてという子どもたちが多いでしょうから、今後も行きたい、聴きたいと思ってもらうためにも責任はなかなか重大です。

兒嶋賀奈子:クラシックコンサートの高齢化と言えば、母はコンサートから帰ってくる度に「いつもクラシックのコンサートに行くと自分が若いような錯覚をしてしまうのよね。もっと若いお客様が増えないと困るわね」と必ずのように口にします。音楽的な感想よりそっち?って(苦笑)。

キム・ジェドク:若い世代は出かけなくても十分に娯楽がある社会で育ってきているので音楽を提供する側の意識変革も求められていると感じています。一人では叶えられない何かを提供できるように私たちも知恵を絞っていくことが必要と考えています。

―皆さん、ありがとうございました。コンサートの成功をお祈りしています。

取材:松井陽子


ヴァイオリン 石上真由子


クラリネット 兒嶋賀奈子


編曲 キム・ジェドク


WANDERLUST 公演情報
【出演者】
•バリトン: ベンヤミン・アップル
ドイツ歌曲史上に燦然と輝くディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウの愛弟子。低音から高音までを印象的な柔らかい響きで歌い上げ、今最も聴くべきアーティストとして高く評価されている。昨年11月にも来日し、そのリサイタルはNHKに収録され放送された。

•ピアノ: ジョルジュ・ヴィラドムス
ローザンヌ高等音楽院教授。クレッシェンド・コン・ラ・ムジカの創設者。ロレックスのアンバサダーとしても活躍。

•ヴァイオリン: 石上真由子
日本音楽コンクール等、内外で多数受賞。国内外でオーケストラとの共演を重ね、メディア出演も多数。ソリストとしてだけでなく、室内楽にも力を入れている。ENSEMBLE AMOIBE主宰

•クラリネット: 兒嶋賀奈子
14歳からクラリネットを吉田誠に手ほどきを受け、東京音楽大学付属高校で松本健司に師事。ローザンヌ高等音楽院でフローラン・エオーとパスカル・モラゲスのもとで研鑽を積む。数々のコンクールで入賞。

•編曲: キム・ジェドク
ヨーロッパで活躍する現代音楽作曲家。今年(2024年)、パリのイルカム・マニフェストやビエンナーレ・ヴェネツィアにて世界初演を予定。彼の作品はヨーロッパの名門アンサンブルやオーケストラによって演奏されている。

賛助出演: 国立音楽大学附属高等学校 立命館小学校合唱部 立命館小学校コールリッツ
後援: 在日スイス大使館  在日メキシコ大使館  しがぎん経済文化センター

<主催者からのコメント>
コンサートツアー「WANDERLUST」は音楽を通じて社会貢献に興味のある方には、ぜひご参加いただきたいイベントです。チケットは公式ウェブサイトから購入可能で、皆様のチケット代には、こども家庭庁を通じて無料招待した子ども達の分のチケット代が含まれています。
一流のアーティストと一緒に音楽の力を体験し、多くの子供たちに希望を届ける手助けをしませんか?このコンサートは、音楽の美しさとその社会的な力を感じる絶好の機会です。皆様のご来場を心よりお待ちしております。

【東京公演】
■7月30日(火)開演/19:00
■会場/浜離宮朝日ホール
【京都公演】
■8月3日(土)開演/16:00
■会場/ロームシアター京都サウスホール
■料金(税込)/全席指定 各 8,800円 

チケットおよび公演の詳細はコチラ→https://kotetto.com/


オペラにリサイタル、歌唱付き管弦楽作品のソリストとして引く手数多、聴衆を魅了し続けているカウンターテナー藤木大地が、住友生命いずみホールで初のソロリサイタルを行う。「いずみホールは憧れのコンサートホール。ここでリサイタルを行うのが夢だったんです!」と熱く語る藤木大地。元々はテノールとして歌手人生のスタートを切ったが、行き詰まりを感じ、歌手を辞めて制作の現場に回る事も考えて、ウィーンで文化経営学も修めたという。たまたま風邪をひいたことがきっかけで、裏声の歌唱に可能性を見出し2011年にカウンターテナーへ転向。翌年には日本音楽コンクールで史上初のカウンターテナーとして1位を獲得。2013年にはボローニャ歌劇場にてヨーロッパデビュー。2017年にはウィーン国立歌劇場デビューを果たし、現在の大活躍に至っている。多忙を極める藤木大地に、あんなコトやこんなコトを聞いてみた。



――藤木さんにとって、いずみホールは特別なコンサートホールだそうですね。

2014年にオーケストラアンサンブル金沢(OEK)のニューイヤーコンサートのソリストとして、初めていずみホールのステージに上がりました。2012年に日本音楽コンクールで優勝したことを受けて、OEKの音楽監督だった井上道義さんから「他のやつらとやる前に、まず俺とやろう!」と声を掛けて頂いたのです。舞台から見ると客席が丸く、包み込んでくれるような形をしていて、ちょうど良い大きさです。音響も素晴らしく、僕はホールの色も気に入っています。実は宮崎県の高校生の時に、毎日新聞主催の全日本学生音楽コンクール声楽部門を受けていて、地区大会を勝ち上がれば決勝はいずみホールで歌えたのですが、残念ながら決勝に勝ち上がることはありませんでした。それだけに初めてステージに立てた時は嬉しかったです。

――いずみホール主催のオペラでは2度ステージに立たれていますね。

はい、2015年にモーツァルト「魔笛」で、2019年にはモンテヴェルディ「ホッペアの戴冠」でキャストとして出演させて頂きました。嬉しかったのですが、やはりリサイタルをやりたい気持ちがより強くなりました。昨年(2023年)の「びわ湖の春 音楽祭」のリサイタルを、ホールの方に聴いていただいたのがきっかけになったのでしょうか、今回のリサイタルが決まりました。

――今回の「午後の特等席」は、どのようなコンサートでしょうか。

平日の午後に音楽を楽しむコンサートとして、住友生命いずみホールさんがとても大切にされているシリーズとお聞きしています。夜出かけるのは難しいというシニアの方が増えたようで、その中には昼間のライトなコンサートではちょっと物足りないという方もいらっしゃるそうです。そういう方に満足していただけるプログラムを作って欲しいと依頼されました。ただ、2、3曲は誰もが知っている曲も入れて欲しいという難易度の高いリクエスト。悩んだ末に、ご覧のプログラムに決まりました。通常、プログラムを考える場合、前半と後半に割って考えることが多いです。今回だと、後半は委嘱作品で固めようと思いました。昨年亡くなられた いずみシンフォニエッタ大阪 音楽監督の西村朗先生に書いていただいた曲を歌えるのが嬉しいです。

――西村さんに委嘱された『木立をめぐる不思議』という曲ですね。

歌手人生の中で初めて委嘱した作品です。東京オペラシティリサイタルホールで「B→C」のコンサートに出演させて頂いた時(2015年9月)に、西村先生にお願いしました。出版されていないので、これまで僕しか歌っていない12分ほどの曲です。大阪では2019年に、ザ・フェニックスホールで歌っています。その時のピアニストも今回と同じ松本和将さんです。初演のリハーサルには西村先生も立ち会って頂きました。
最後に歌う連作歌曲『名もなき祈り』は、2019年の「東京春祭」歌曲シリーズ のために加藤昌則さんに委嘱をした全6曲構成の作品で、詞は全て違う方が書いています。作者不詳の「Indian Prayer」から始まり、ラテン語の祈祷文「Sancta Maria」そして、たかはしけいすけさんの「空に」、サラ・オレインさんの「Pray Not, Amen」、宮本益光さんの「今、歌をうたうのは」という作品を経て、最後にエピローグという形で1曲目が戻って来ます。全体で20分ほどの祈りの曲ですが、1曲ずつでも演奏可能。関西では2020年にびわ湖ホールで全曲を歌いましたが、大阪で歌うのはこれが初めてとなります。



――前半のプログラムはバラエティに富んでいます。

後半に皆さんがあまりご存知の無い委嘱作品を演奏するので、前半は有名な作曲家の作品を1曲ずつ選びました。1曲目はモーツァルトの合唱曲から「アヴェ・ヴェルム・コルプス」。この曲だけがラテン語なので、最初に歌います。誰もが知っている曲をとのリクエストに応える形で、シューベルトの歌曲「魔王」とメンデルスゾーンの「歌の翼に」を選びました。前半最後のシューマンの「女の愛と生涯」は昨年、浜離宮朝日ホールと名古屋のHITOMIホールで全曲歌い、またやりたいと感じたので、大阪のお客さまにもお聴きいただこうと思い今回取り上げます。

――委嘱作品は、藤木さんの為に作曲家が当て書きされます。生きている作曲家との曲作りが、シューベルトやシューマンの作品を勉強する時に役立つことなどありますか。

僕は、生きている作曲家と一緒に曲作りをするのが好きです。例えば、譜面にフォルテと書いてあるところを「ここはピアノで歌ったらどうでしょうか? 」とご本人に言って歌ってみると、意外にそっちの方が良いね、ということがよくあります。となると、シューベルトやシューマンでも同じことが言え、必ずしも譜面に書いてあることが絶対だと思い過ぎないように心掛けています。そんなことを、生きている作曲家との作業は僕に教えてくれます。

――ピアニストの松本和将さんのことを教えてください。

松本さんはドイツで学ばれドイツ語を理解されます。彼とやるとなれば今回のようにドイツ語の作品が多くなりますが、松本さんはそれだけでなく、僕の節目となる公演では決まってピアノを弾いていただく信頼するピアニストです。西村先生の『木立をめぐる不思議』の初演もそうでした。ですのでいずみホールのコンサートは、やはり松本さんにお願いをしました。



――以前からカウンターテナーは喉の負担が多く、いつまでも歌えるとは思っていないと仰っています。もしもカウンターテナーとしての歌唱が厳しくなった時は、以前のようにテナーとして歌い続けられますか。

僕は今、思い通りに声をコントロールできるので歌うことが楽しいのですが、声が出なくなると、きっと歌いたくなくなると思います。元々テノールで思い通りの表現が出来なかったのでカウンターテナーへ転向した訳で、またテノールへ戻って歌い続けていくとは思えません。

――カウンターテナーとしては今がピークなのか、まだまだ進行形でピークは先なのか、藤木大地の現在地はどこでしょうか。

昔から知っているアメリカのコーチに最近の歌を聴いて貰った所、まだまだ上手くなっていると言われました。自分でも自由に声をコントロール出来ているように思うので、多くの皆様に現在の僕の歌をお届けしたいと思っています。

――ウィーン国立歌劇場での活躍は記憶に新しいところですが、メトロポリタン歌劇場や、ミラノスカラ座といった所へ挑戦する気持はお持ちでしょうか。

一度の人生なので、スカラ座やメトで行われていることを、ソリストとして身を持って体験したいとは思います。どんな時も実力を磨いて、いつか来るかもしれないチャンスを掴めるようにしようと心掛けています。

――最後にメッセージをお願いします。 
  
結構悩んで考えた結果、とても素敵なプログラムを、素晴らしい住友生命いずみホールでお届けできることになりました。ぜひ初夏の午後のひと時を、ご一緒しませんか。劇場でお会いしましょう。

取材・文 磯島浩彰


午後の特等席 vol.8 藤木大地
日時:7月2日(火) 開演:14:00
出演者:藤木大地(カウンターテナー)
    松本和将(ピアノ)
料金:一般 ¥5,000、U-30 ¥2,000

◆演奏曲目
W.A.モーツァルト:アヴェ・ヴェルム・コルプス
F.シューベルト:魔王 D328
F.メンデルスゾーン:歌の翼に op.34-2
R.シューマン:連作歌曲《女の愛と生涯》
西村朗:木立をめぐる不思議 /藤木大地委嘱作品(2015)
加藤昌則:連作歌曲「名もなき祈り」/藤木大地委嘱作品(2019)

◆チケット料金+¥3,000で
〈アフタヌーンティープラン〉あり ※数量限定

お問合わせ:住友生命いずみホールチケットセンター 06-6944-1188
公演詳細ホールHP↓
https://www.izumihall.jp/schedule/20240702


2023年、多くの共感と笑いと涙であふれた本舞台。全公演ソールドアウトの中、大阪・兵庫3公演の再演が決定した。主人公の壮介を中井貴一が、妻と娘、愛人未満の女、カッコイイバーのマダムといった、壮介を取り巻く女たちをキムラ緑子が演じる。



内館牧子終活小説の第一弾、「終わった人」は、快調に突っ走った田代壮介の人生が50歳に差し掛かったところでいきなり窓際にとばされ、そのまま定年退職となる。退屈で死にそうな中、「定年って生前葬だな」と壮介、「恋をしたら」と娘、「そうよ、恋よ、リタイアした人こそ、恋が生きる活力」と妻。そこに最高の仕事と最高の恋の相手があらわれるも、それからの人生がジェットコースター、舞い上がったり、舞い降りたり。しかしジェットコースターは急停車。勝負をかけた女には手ひどく振られ、引き受けた会社が突然の倒産、牢獄のような人生が残された。これぞまさに内館牧子のエンターテイメント!この運命を真正面から受けて懸命に生きていく壮介を演じるのは中井貴一。そして内館牧子の手による女はどれもこれも手ごわい。愛人にしようとするがどこまで行ってもメシだけオヤジを卒業させてくれない久里。すべてを見通している娘道子。カッコイイバーのマダム美砂子。牢獄の番人となる妻の千草。その女たちをキムラ緑子が一手に引き受け、自在に壮介をひきまわす。見所いっぱいの小説が、二人の役者によって、見所いっぱいの舞台となった。
5月上旬、本舞台初の関西公演について、主演の中井貴一とキムラ緑子が大阪で意欲を語った。


一幕©山本倫子


はじめて小説を読んだ時の感想は、「普段、一気に読めるタイプでは無いけれど、一気に読みました。めくるめく展開にワクワクドキドキした」(キムラ)、「内容が同世代の話で、自分のまわりも定年をし始めたこともあり、身につまされる感覚でした。ぼくたちは定年がない商売だけど、能力としての定年を迎える時が来る、逆にそれが残酷かもしれないと原作を読んで感じた」(中井)と、小説の世界感にのめり込んだ思いを語った。
初演時に感じた事は、「お客様が頭の中で色んなことを想像してくださって、その世界を受け取って感動してくださることに驚きました」(キムラ)、「二人だけで動けるお芝居は、上演する場所はどこであれ、舞台を初めて観る方に気軽に足を運んでもらえる舞台だと思う。この舞台がそんな良いきっかけになれば嬉しい」(中井)。初演では無かった関西公演が決まって、「なぜ関西公演が無いの?とまわりに言われていたので、皆さん今回はかなり喜んでくれています」(キムラ)と、淡路島出身のキムラ緑子が関西で応援してくれているまわりの方々が待ちに待っていた様子を語った。また「原作を読んで相手役はキムラ緑子さんにして欲しい、彼女しかできない。声だけで瞬時に役を変えられるのはキムラ緑子さんしかいない」(中井)と、本舞台が決まった際に共演を熱望したことを中井貴一が告白。


二幕©山本倫子


アドリブは無かったか?の質問に、「微妙ですが今日はこんな風な変化があったな!とまるでジャズセッションのような感覚が楽しかったです」(キムラ)、「前回の公演で、突如セリフを入れ替えたり、思いついたことを稽古では無く本番でためしたりしました」(中井)と、息の合ったベテラン俳優のふたりならではのセッションを語り、「常に相手役はキムラ緑子さんを指名する、安心感そして色んな役に化ける事ができる女優」(中井)とベタ褒めの中井に対し、「一緒にお芝居をしている自分がこれだけ楽しいから、観ているお客さんも絶対たのしい!と思える人」と、お互いのリスペクトを示した。

最後に関西公演を待っていたオーディエンスに、「私自身がとても楽しみにしています。たくさんでいらっしゃってください」(キムラ)、「お客様に来て頂ける限り、僕たちもこのお芝居を続けていきたい!劇場でお待ちしています」(中井)時折、関西弁になる中井貴一と笑顔を絶やさなかったキムラ緑子、見ごたえたっぷりのベテラン二人のリーディングドラマは、2026年には再再演も決定した。

◎Text 紅粉チコ

リーディングドラマ『終わった人』
■出演/中井貴一 キムラ緑子
■台本・演出/笹部博司
■原作/内館牧子「終わった人」(講談社文庫)
■会場/森ノ宮ピロティホール
■日程/7/13(土)16:00、14(日)13:00 
■会場/兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
■日程/7/15(月・祝)15:00 
※前売りチケット完売 当日券、立ち見券販売あり
■お問い合わせ:キョードーインフォメーション 0570-200-888 (11:00~18:00 ※日祝休) 

「終わった人」公式サイト https://ml-geki.com/owattahito2023/