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オペラにリサイタル、歌唱付き管弦楽作品のソリストとして引く手数多、聴衆を魅了し続けているカウンターテナー藤木大地が、住友生命いずみホールで初のソロリサイタルを行う。「いずみホールは憧れのコンサートホール。ここでリサイタルを行うのが夢だったんです!」と熱く語る藤木大地。元々はテノールとして歌手人生のスタートを切ったが、行き詰まりを感じ、歌手を辞めて制作の現場に回る事も考えて、ウィーンで文化経営学も修めたという。たまたま風邪をひいたことがきっかけで、裏声の歌唱に可能性を見出し2011年にカウンターテナーへ転向。翌年には日本音楽コンクールで史上初のカウンターテナーとして1位を獲得。2013年にはボローニャ歌劇場にてヨーロッパデビュー。2017年にはウィーン国立歌劇場デビューを果たし、現在の大活躍に至っている。多忙を極める藤木大地に、あんなコトやこんなコトを聞いてみた。



――藤木さんにとって、いずみホールは特別なコンサートホールだそうですね。

2014年にオーケストラアンサンブル金沢(OEK)のニューイヤーコンサートのソリストとして、初めていずみホールのステージに上がりました。2012年に日本音楽コンクールで優勝したことを受けて、OEKの音楽監督だった井上道義さんから「他のやつらとやる前に、まず俺とやろう!」と声を掛けて頂いたのです。舞台から見ると客席が丸く、包み込んでくれるような形をしていて、ちょうど良い大きさです。音響も素晴らしく、僕はホールの色も気に入っています。実は宮崎県の高校生の時に、毎日新聞主催の全日本学生音楽コンクール声楽部門を受けていて、地区大会を勝ち上がれば決勝はいずみホールで歌えたのですが、残念ながら決勝に勝ち上がることはありませんでした。それだけに初めてステージに立てた時は嬉しかったです。

――いずみホール主催のオペラでは2度ステージに立たれていますね。

はい、2015年にモーツァルト「魔笛」で、2019年にはモンテヴェルディ「ホッペアの戴冠」でキャストとして出演させて頂きました。嬉しかったのですが、やはりリサイタルをやりたい気持ちがより強くなりました。昨年(2023年)の「びわ湖の春 音楽祭」のリサイタルを、ホールの方に聴いていただいたのがきっかけになったのでしょうか、今回のリサイタルが決まりました。

――今回の「午後の特等席」は、どのようなコンサートでしょうか。

平日の午後に音楽を楽しむコンサートとして、住友生命いずみホールさんがとても大切にされているシリーズとお聞きしています。夜出かけるのは難しいというシニアの方が増えたようで、その中には昼間のライトなコンサートではちょっと物足りないという方もいらっしゃるそうです。そういう方に満足していただけるプログラムを作って欲しいと依頼されました。ただ、2、3曲は誰もが知っている曲も入れて欲しいという難易度の高いリクエスト。悩んだ末に、ご覧のプログラムに決まりました。通常、プログラムを考える場合、前半と後半に割って考えることが多いです。今回だと、後半は委嘱作品で固めようと思いました。昨年亡くなられた いずみシンフォニエッタ大阪 音楽監督の西村朗先生に書いていただいた曲を歌えるのが嬉しいです。

――西村さんに委嘱された『木立をめぐる不思議』という曲ですね。

歌手人生の中で初めて委嘱した作品です。東京オペラシティリサイタルホールで「B→C」のコンサートに出演させて頂いた時(2015年9月)に、西村先生にお願いしました。出版されていないので、これまで僕しか歌っていない12分ほどの曲です。大阪では2019年に、ザ・フェニックスホールで歌っています。その時のピアニストも今回と同じ松本和将さんです。初演のリハーサルには西村先生も立ち会って頂きました。
最後に歌う連作歌曲『名もなき祈り』は、2019年の「東京春祭」歌曲シリーズ のために加藤昌則さんに委嘱をした全6曲構成の作品で、詞は全て違う方が書いています。作者不詳の「Indian Prayer」から始まり、ラテン語の祈祷文「Sancta Maria」そして、たかはしけいすけさんの「空に」、サラ・オレインさんの「Pray Not, Amen」、宮本益光さんの「今、歌をうたうのは」という作品を経て、最後にエピローグという形で1曲目が戻って来ます。全体で20分ほどの祈りの曲ですが、1曲ずつでも演奏可能。関西では2020年にびわ湖ホールで全曲を歌いましたが、大阪で歌うのはこれが初めてとなります。



――前半のプログラムはバラエティに富んでいます。

後半に皆さんがあまりご存知の無い委嘱作品を演奏するので、前半は有名な作曲家の作品を1曲ずつ選びました。1曲目はモーツァルトの合唱曲から「アヴェ・ヴェルム・コルプス」。この曲だけがラテン語なので、最初に歌います。誰もが知っている曲をとのリクエストに応える形で、シューベルトの歌曲「魔王」とメンデルスゾーンの「歌の翼に」を選びました。前半最後のシューマンの「女の愛と生涯」は昨年、浜離宮朝日ホールと名古屋のHITOMIホールで全曲歌い、またやりたいと感じたので、大阪のお客さまにもお聴きいただこうと思い今回取り上げます。

――委嘱作品は、藤木さんの為に作曲家が当て書きされます。生きている作曲家との曲作りが、シューベルトやシューマンの作品を勉強する時に役立つことなどありますか。

僕は、生きている作曲家と一緒に曲作りをするのが好きです。例えば、譜面にフォルテと書いてあるところを「ここはピアノで歌ったらどうでしょうか? 」とご本人に言って歌ってみると、意外にそっちの方が良いね、ということがよくあります。となると、シューベルトやシューマンでも同じことが言え、必ずしも譜面に書いてあることが絶対だと思い過ぎないように心掛けています。そんなことを、生きている作曲家との作業は僕に教えてくれます。

――ピアニストの松本和将さんのことを教えてください。

松本さんはドイツで学ばれドイツ語を理解されます。彼とやるとなれば今回のようにドイツ語の作品が多くなりますが、松本さんはそれだけでなく、僕の節目となる公演では決まってピアノを弾いていただく信頼するピアニストです。西村先生の『木立をめぐる不思議』の初演もそうでした。ですのでいずみホールのコンサートは、やはり松本さんにお願いをしました。



――以前からカウンターテナーは喉の負担が多く、いつまでも歌えるとは思っていないと仰っています。もしもカウンターテナーとしての歌唱が厳しくなった時は、以前のようにテナーとして歌い続けられますか。

僕は今、思い通りに声をコントロールできるので歌うことが楽しいのですが、声が出なくなると、きっと歌いたくなくなると思います。元々テノールで思い通りの表現が出来なかったのでカウンターテナーへ転向した訳で、またテノールへ戻って歌い続けていくとは思えません。

――カウンターテナーとしては今がピークなのか、まだまだ進行形でピークは先なのか、藤木大地の現在地はどこでしょうか。

昔から知っているアメリカのコーチに最近の歌を聴いて貰った所、まだまだ上手くなっていると言われました。自分でも自由に声をコントロール出来ているように思うので、多くの皆様に現在の僕の歌をお届けしたいと思っています。

――ウィーン国立歌劇場での活躍は記憶に新しいところですが、メトロポリタン歌劇場や、ミラノスカラ座といった所へ挑戦する気持はお持ちでしょうか。

一度の人生なので、スカラ座やメトで行われていることを、ソリストとして身を持って体験したいとは思います。どんな時も実力を磨いて、いつか来るかもしれないチャンスを掴めるようにしようと心掛けています。

――最後にメッセージをお願いします。 
  
結構悩んで考えた結果、とても素敵なプログラムを、素晴らしい住友生命いずみホールでお届けできることになりました。ぜひ初夏の午後のひと時を、ご一緒しませんか。劇場でお会いしましょう。

取材・文 磯島浩彰


午後の特等席 vol.8 藤木大地
日時:7月2日(火) 開演:14:00
出演者:藤木大地(カウンターテナー)
    松本和将(ピアノ)
料金:一般 ¥5,000、U-30 ¥2,000

◆演奏曲目
W.A.モーツァルト:アヴェ・ヴェルム・コルプス
F.シューベルト:魔王 D328
F.メンデルスゾーン:歌の翼に op.34-2
R.シューマン:連作歌曲《女の愛と生涯》
西村朗:木立をめぐる不思議 /藤木大地委嘱作品(2015)
加藤昌則:連作歌曲「名もなき祈り」/藤木大地委嘱作品(2019)

◆チケット料金+¥3,000で
〈アフタヌーンティープラン〉あり ※数量限定

お問合わせ:住友生命いずみホールチケットセンター 06-6944-1188
公演詳細ホールHP↓
https://www.izumihall.jp/schedule/20240702


2023年、多くの共感と笑いと涙であふれた本舞台。全公演ソールドアウトの中、大阪・兵庫3公演の再演が決定した。主人公の壮介を中井貴一が、妻と娘、愛人未満の女、カッコイイバーのマダムといった、壮介を取り巻く女たちをキムラ緑子が演じる。



内館牧子終活小説の第一弾、「終わった人」は、快調に突っ走った田代壮介の人生が50歳に差し掛かったところでいきなり窓際にとばされ、そのまま定年退職となる。退屈で死にそうな中、「定年って生前葬だな」と壮介、「恋をしたら」と娘、「そうよ、恋よ、リタイアした人こそ、恋が生きる活力」と妻。そこに最高の仕事と最高の恋の相手があらわれるも、それからの人生がジェットコースター、舞い上がったり、舞い降りたり。しかしジェットコースターは急停車。勝負をかけた女には手ひどく振られ、引き受けた会社が突然の倒産、牢獄のような人生が残された。これぞまさに内館牧子のエンターテイメント!この運命を真正面から受けて懸命に生きていく壮介を演じるのは中井貴一。そして内館牧子の手による女はどれもこれも手ごわい。愛人にしようとするがどこまで行ってもメシだけオヤジを卒業させてくれない久里。すべてを見通している娘道子。カッコイイバーのマダム美砂子。牢獄の番人となる妻の千草。その女たちをキムラ緑子が一手に引き受け、自在に壮介をひきまわす。見所いっぱいの小説が、二人の役者によって、見所いっぱいの舞台となった。
5月上旬、本舞台初の関西公演について、主演の中井貴一とキムラ緑子が大阪で意欲を語った。


一幕©山本倫子


はじめて小説を読んだ時の感想は、「普段、一気に読めるタイプでは無いけれど、一気に読みました。めくるめく展開にワクワクドキドキした」(キムラ)、「内容が同世代の話で、自分のまわりも定年をし始めたこともあり、身につまされる感覚でした。ぼくたちは定年がない商売だけど、能力としての定年を迎える時が来る、逆にそれが残酷かもしれないと原作を読んで感じた」(中井)と、小説の世界感にのめり込んだ思いを語った。
初演時に感じた事は、「お客様が頭の中で色んなことを想像してくださって、その世界を受け取って感動してくださることに驚きました」(キムラ)、「二人だけで動けるお芝居は、上演する場所はどこであれ、舞台を初めて観る方に気軽に足を運んでもらえる舞台だと思う。この舞台がそんな良いきっかけになれば嬉しい」(中井)。初演では無かった関西公演が決まって、「なぜ関西公演が無いの?とまわりに言われていたので、皆さん今回はかなり喜んでくれています」(キムラ)と、淡路島出身のキムラ緑子が関西で応援してくれているまわりの方々が待ちに待っていた様子を語った。また「原作を読んで相手役はキムラ緑子さんにして欲しい、彼女しかできない。声だけで瞬時に役を変えられるのはキムラ緑子さんしかいない」(中井)と、本舞台が決まった際に共演を熱望したことを中井貴一が告白。


二幕©山本倫子


アドリブは無かったか?の質問に、「微妙ですが今日はこんな風な変化があったな!とまるでジャズセッションのような感覚が楽しかったです」(キムラ)、「前回の公演で、突如セリフを入れ替えたり、思いついたことを稽古では無く本番でためしたりしました」(中井)と、息の合ったベテラン俳優のふたりならではのセッションを語り、「常に相手役はキムラ緑子さんを指名する、安心感そして色んな役に化ける事ができる女優」(中井)とベタ褒めの中井に対し、「一緒にお芝居をしている自分がこれだけ楽しいから、観ているお客さんも絶対たのしい!と思える人」と、お互いのリスペクトを示した。

最後に関西公演を待っていたオーディエンスに、「私自身がとても楽しみにしています。たくさんでいらっしゃってください」(キムラ)、「お客様に来て頂ける限り、僕たちもこのお芝居を続けていきたい!劇場でお待ちしています」(中井)時折、関西弁になる中井貴一と笑顔を絶やさなかったキムラ緑子、見ごたえたっぷりのベテラン二人のリーディングドラマは、2026年には再再演も決定した。

◎Text 紅粉チコ

リーディングドラマ『終わった人』
■出演/中井貴一 キムラ緑子
■台本・演出/笹部博司
■原作/内館牧子「終わった人」(講談社文庫)
■会場/森ノ宮ピロティホール
■日程/7/13(土)16:00、14(日)13:00 
■会場/兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
■日程/7/15(月・祝)15:00 
※前売りチケット完売 当日券、立ち見券販売あり
■お問い合わせ:キョードーインフォメーション 0570-200-888 (11:00~18:00 ※日祝休) 

「終わった人」公式サイト https://ml-geki.com/owattahito2023/



岡本圭人&岡本健一が親子で再演!若村麻由美は〝母〟の孤独を熱演

現代フランス演劇界を牽引する劇作家フロリアン・ゼレールの家族三部作から『La Mère(ラ・メール) 母』『Le Fils(ル・フィス) 息子』の同時上演が決定。3月15日に行われた記者会見で、息子役の岡本圭人と母役の若村麻由美が登壇。自身が演じる役柄や作品への思いを語った。


三部作で母と息子を演じる若村麻由美(左)、岡本圭人(右)

日本では2019年に『Le Père(ル・ペール) 父』、2021年に『Le Fils 息子』が上演され、岡本圭人と岡本健一親子が息子と父役を演じて話題に。その作品で母親役を務めたのが若村麻由美だった。

同じ役者が異なる作品を同じ役名で共演する家族三部作。ゼレールが最初に手掛けた『La Mère 母』は、2010年にパリで初演されたのち様々な国で上演、女優イザベル・ユペールの主演でブロードウエイでも発表された。『Le Fils 息子』は、モリエール賞を獲得するなど演劇界から高く評価され、ゼレール自らが監督としてハリウッドで映画化。ヒュー・ジャックマン、ローラ・ダーンが出演し、日本でも公開された。また、『Le Père 父』も映画化され、父を演じたアンソニー・ホプキンスが主演男優賞、ほか、脚色賞も受賞するほど、それぞれが注目を集める作品となっている。

■母の役割をすることで「自分」という存在を見失った主人公
今回、演出家のラディスラス・ショラーから熱烈なオファーを受けて『La Mère 母』の主演を務める若村は「いよいよ三部作の完結です。ゼレール作品は本当に多面的で、家族の有り様みたいなものを問題定義してくれる。私の役名は3作品ともアンヌで、父を持つ娘の苦悩、息子を持つ母の孤独を経て、今回は息子が旅立っていく『母』を演じます。娘だった人が母になり、年頃の息子を持つ難しさを体験し、息子が旅立っていく混乱や喪失感を演じることは、年齢を重ねてきた今の自分にふさわしいなと感じています。夫婦や家族間でおこる出来事はフランスも日本も同じ。シリアスな物語のようでもクスッと笑える場面もあって、観終わったあとご自身のお母さんや息子、家族について語り合いたくなると思いますよ」。



「『La Mère 母』は、家族三部作の最初に出来上がった作品で、これはゼレールの母への思いなんです。愛する人と結ばれて2人の子供を育てた母親は、自分の人生をすべて家族のため捧げてきた。子供が年ごろになり家から離れていく時が来て、気が付くと、子供はもちろん夫に対してさえ母の役割をしてきてしまった。アンヌという個人は自分のなかにはもういないのだと初めて理解するわけです。その喪失感の中で混乱していくんですね。この世界観は、子供を持つ同世代の女性が共感してくださる作品だと思っていましたが、実は、男性からの支持も多い。でも、ゼレール自身が母を思って書いたと思えば、それも納得できる。母から生まれたすべての人が、母の思いを想像させる作品になっています」。

■本当の父子が親子役をすることで、生まれる奇跡がある
岡本圭人は「今回は2作品同時上演です。『Le Fils 息子』では18歳の少年ニコラを演じますが、父ピエール役は実の父が演じます。『La Mère 母』では25歳の青年ニコラ役。若村さん演じる母の頭の中をのぞいているような作品で、演出家ラディスラス・ショラーさんが生み出す若村さんのアンヌが本当に魅力的なんです。自然でありながら急に怒ったり泣いたり。次は何をするのだろうと予測できない。本当に魅了されますね。」と話した。

「ゼレールさんが書く物語は、すごくシンプルな言葉でありながら、リアリティのあるセリフが出てくるんです。しかも、父に強い言葉を放ったら、それと同じセリフを『La Mère 母』で母に対して使ったりと、まるで同時上演をするために書いたんじゃないかと思うくらいセリフがリンクしているんですね。さらに言うと、最終的な答えを出さないのも特徴的。答えはお客様自身が作るもの、という書き方なんです。謎があるんです。だから『La Mère 母』『Le Fils 息子』の両方を観ると、それぞれの理解が深まったり、どちらを先に観るかによっても解釈が変わったり。本当におもしろいです」。



親子共演について聞かれると「初演では僕自身が初舞台で尊敬する俳優としての父・岡本健一と仕事をすることが不安でした。稽古が進む段階で演出家のショラーさんに相談したら『僕は親子ではなく1人の役者として互いを見ているから、プロの役者としてニコラを演じることに集中してほしい』と言われたんです。そこから父が演じるピエールに向き合い一緒にお芝居が出来ました。なぜそのセリフを言うのか、どうしていうのか、それらをしっかり考えて舞台に立った時に、ニコラとして父ピエールに向き合ってお芝居が出来たという感覚です。闇を抱えてさまよう息子を愛をもって救おうとする父ピエールは、父にとっても演じるのが辛い作品だと思いますし、自分自身もニコラの気持ちに入り込むと彼の闇を感じ取れますから、お互い稽古は辛いんです。でも、それが俳優としてのおもしろさじゃないかなと思う。僕は、本当の親子が親子役をすることで生まれる奇跡があると思っていて、お互いがしっかり演じることで、よりリアルに物語を届けられるのではないかと。父の存在は大きいし、父の舞台を見て育ってきたので、大先輩と一緒に舞台に立てたのは特別なことです」と答えた。

それを聞いた若村は、ある取材現場で、父の岡本健一が息子を役者として認めているというコメントを聞き、感動して泣いてしまったと裏話を披露。「岡本圭人という役者さんが初演から2年半の間、懸命に経験を積んできた証だなと思うんです。今回も、作品への理解が深まっているのを感じます。初舞台で役者が誕生した瞬間に立ち会ったので、私の中に岡本圭人という役者を観る楽しみがある。溺愛しないように気を付けながら、舞台では一役者として戦えるようがんばりたいですね」と言うと岡本は「若村さんは演劇界の母。たくさんのことを教えてもらいました」と語り、2作品への期待がさらに高まる会見となった。

取材・文・写真:田村のりこ

『La Mère 母』5/10(金)18:00・11(土)12:00 
◎出演/若村麻由美、岡本圭人、伊勢佳世、岡本健一
『Le Fils 息子』5/11(土)17:00・12(日)13:00 
◎出演/岡本圭人、若村麻由美、伊勢佳世、浜田信也、木山廉彬、岡本健一
◎作/フロリアン・ゼレール ◎翻訳/齋藤敦子 
◎演出/ラディスラス・ショラー
■会場/兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール 
■料金(税込)/全席指定 8500円 

詳細・お問い合わせ:兵庫県立芸術文化センターチケットオフィス
TEL:0798‐68-0255(10:00~17:00、月曜休※祝日の場合は翌日)
公演の詳細はコチラ→ https://www1.gcenter-hyogo.jp/news/2024/01/lefils-lamere.html


日本センチュリー交響楽団「第281回定期演奏会」(2024年4月12日 ザ・シンフォニーホール)に、ピアニストの小林愛実がソリストとして出演する。

2023年の元旦、小林はピアニスト反田恭平との結婚&妊娠をSNSで報告し、その後、産休・育休のためコンサート活動の休止期間に入った。昨年4月に予定されていた日本センチュリー交響楽団の定期演奏会の出演は取り止めとなったが、出産を終え、コンサート活動の再開を受けて、同定期演奏会への出演が改めて決まった。リサイタルツアーで多忙を極める小林愛実に話を聞いた。


©HOSOO CO., LTD

――日本センチュリー交響楽団の「第281回定期演奏会」が目前に迫って来ました。

改めて声を掛けて頂いた日本センチュリー交響楽団の皆さまには感謝の気持ちでいっぱいです。今回、私からラフマニノフの「パガニーニの主題による狂詩曲」をリクエストさせて頂きました。出産を経験したこともあって、何か新しい曲に取り組みたいと思い、かねてより弾いてみたいと願っていたこの曲を選びました。指揮の秋山和慶先生は、これまでに何度もご一緒しているので、安心してセンチュリーの皆さまとの共演を楽しみたいと思っています。

――子供の頃からご活躍ですが、人知れず大変な事も多かったのではないでしょうか。

7歳の時にはオーケストラと共演し、CDデビューが14歳。20歳の時には初めてショパンコンクールに挑戦しました。早くからピアノひと筋でやって来たこともあり、私は本当にピアノが好きなのか。このままピアノを弾いていて良いのかと考え、悩んだこともありました。17歳から20歳くらいの時です。

――その状況を、どうやって乗り越えられたのですか。

ある時、母親から「ピアノが全てではないし、貴方がやりたいことをやればいいのよ」と言われました。よほど辛そうに見えたのかもしれません。その一言で気持ちが楽になりました。そして20歳の時に出場した1度目のショパンコンクールで、気持ちが吹っ切れました。当初、やめる為のケジメを付けるくらいの気持ちでコンクールに臨んだのですが、ファイナルまで進み、念願のコンチェルトを弾く事が出来ました。嬉しかったですね。「やっぱりピアノが好きなんだ。これからもピアノを続けていこう!」と決意できたことが最大の収穫でした。入賞出来なかったことは、意外にもそれほど悔しさは無かったですね。それよりもピアノを続けて行く決意が固まったことに満足していました。

――2度目のチャレンジとなる2021年のショパン国際コンクールは、見事4位入賞されました。そして反田恭平さんが2位という結果で、大変話題となりました。結果には満足されているのでしょうか。

あまり満足はしていませんでしたが、すぐに結婚して子供も生まれ、もうコンクールに出ることはないし、まあいいかなという感じでしたね。「ピアノが好きかどうか」なんて言っていられる状況ではありません。少し前に起こった事も覚えていないほど忙しい毎日に追われています。


Photographer Makoto Nakagawa


――出産によって自分の中でのピアノの位置づけは変わりましたか。

変わりましたね。ずっと私にはピアノしかないと思っていましたし、ピアノを弾かない私って生きている意味があるのかなぁっていう感じだったのが、出産でピアノを弾かない時間を経験したことで、ピアノが全てでは無いことを実感しました。今は、ピアノも大事ですが、子供や夫、家族がいる事で、心に余裕が出来た気がします。昔の私は孤独だったのだと思いました。これまでは自分の為に頑張って来たけれど、自分を犠牲にしても子供の為に頑張れるという、こんな気持ちは初めてです。

――ピアノの音も変わったんじゃないですか。

昔は音が張り詰めていたのに、出産後は随分優しくなったねって言われます。気持ちがこれだけ変わったのだから、当然音楽も変わりますよね。子育ては大変ですが楽しいですよ。確かにピアノを弾く時間は減りましたが、ずっとこの状況が続く訳ではありません。いずれは子供が大きくなり、手を離れると思うので、今は目の前のことを楽しもうと思っています。

――現在、コンサートツアー中ですが、お子様はどうされているのでしょうか。

有難いことに私の両親が見てくれています。現在、夫もツアー中なので、全員で私の実家を拠点にしています。それが彼も子供との時間を取れて、移動も少なくピアノの練習も出来て、効率が良いと言ってくれます。私は泊りで地方に行っていても、家にベビーカメラを付けているので、どこからでも子供の様子を見ることが出来ます。子供に話しかけることも出来、集中してピアノの練習も出来ます。この形が理想的で、恵まれていると思います。

――ショパン国際コンクールの2位と4位のお二人の結婚は、皆が驚きました。

そうでしょうね。幼馴染で時にはライバルということもありましたが、二人にとっては自然な形でした。同業者だからこそ理解できる事が多く、私は良かったと思っています。本番前の精神状態や、音楽的な事でも分かり合えます。たまに演奏会を聴きに来られると、緊張します。良かったよ!と言って貰ったとしても、全部見抜かれています。どうだったと聞かない限り、細かな話はお互いにすることはありません。専門的な話や、プログラムの曲順なども相談できるのは同業者ならでは。私は楽しいですよ。彼は色々と新しい発想を持っていて、人を引き付ける魅力もある人なので、良い音楽家になって、自分の夢を実現して欲しいと願っています。

――小林さんが描く、ご自身のピアニストとしての将来像は。

やはり世界で演奏できるようなピアニストになりたいです。その為に、今出来ることを順番にやって行こうと思っています。50年後といえば80歳前ですが、その時に夢が叶っていたらいいなぁと思います。

――好きなピアニストや、目標にしているピアニストはいますか?

ラドゥ・ルプーがいちばん好きで、彼の音源ばかり聴いています。他にはラローチャやホロヴィッツは、一度実演を聴いてみたかったです。シフやアルゲリッチも好きですが、事務所が私と同じカジモトということもあって、お会いしたことがあります。

――ピアニストは自分の楽器を持たず、行った先のピアノを使用して演奏します。

最近はどこのホールにも素晴らしい楽器が置いてあるので、特に問題はありません。ずっとお世話になっている調律師の倉田尚彦さんに、スケジュールが合えば来ていただいていたのですが、先ごろお亡くなりになりました。あまりにショックで、これからどうしようかと私同様不安に感じているピアニストが多いと思います。



――ザ・シンフォニーホールについては、どんな印象をお持ちですか。

何度も弾いていますが豊かな残響で、とても弾きやすいホールです。コンチェルトを弾くには、ちょうどいい大きさだと思います。楽屋にはピアノもあって快適です。

――最後に、日本センチュリー交響楽団の4月定期演奏会についてメッセージをお願いします。

秋山先生と日本センチュリー交響楽団の皆さまと、ラフマニノフの「パガニーニの主題による狂詩曲」を演奏致します。ラフマニノフの協奏曲とは違ったこの曲の素晴らしさを、お客様と共有出来たら嬉しいです。ザ・シンフォニーホールでお待ちしています。

華やかな公演でスタートを切る日本センチュリー交響楽団の2024年度シーズン。人気の若手ソリストから、レジェンド級の巨匠マエストロまで、新シーズンも日本センチュリーの定期演奏会には豪華アーチストがずらりと並ぶ。そして2025年度シーズンからは、いよいよ首席客演指揮者の久石譲が音楽監督に就任する。話題の多い日本センチュリーの定期会員は、現在好評募集中。ザ・シンフォニーホールの決まった自分の席で、1年を通して日本センチュリーの活動を応援してみてはいかが⁈

取材・文 = 磯島浩彰

公演情報
第281回定期演奏会【チケット発売中】
2024年04月12日(金) 19:00開演(18:00)
ザ・シンフォニーホール

指揮:秋山 和慶/ピアノ:小林 愛実 

レズニチェク:歌劇「ドンナ・ディアナ」序曲
ラフマニノフ:パガニーニの主題による狂詩曲
デュティユー:交響曲 第1番

※未就学児のご入場はご遠慮ください。
※やむを得ない事情により、出演者、曲目等に変更が生じる場合がございます。
予めご了承くださいませ。

チケット
S席/8,000円 サイン入りプログラム付き ※電話のみで取扱い
A席/6,500円 B席/5,000円 C席/3,500円 D席/2,000円
※税込・全席指定・未就学児童⼊場不可

主催 公益財団法人日本センチュリー交響楽団

公演情報ホームページ コチラ


市川海老蔵改め十三代目市川團十郎白猿の襲名披露興行が名古屋にも上陸。御園座で2月に幕を開ける。この機に歌舞伎の初舞台を踏んだ長男、八代目市川新之助も当地初お目見え。夜の部では、親子そろって口上を行う。1月10日(水)のチケット発売に先駆ける12月25日に行われた、製作会見の模様をレポートします。


『吉野山』 佐藤忠信実は源九郎狐©️松竹

團十郎は「みなさま、メリークリスマス! 紋付でクリスマスっぽいところは全くないんですけど、わざわざお集まりいただきありがとうございます」と第一声。新之助も「お寒い中ありがとうございます。今日はよろしくお願いいたします」と挨拶し、大人びてきた様子を見せる。続けて團十郎は、市川宗家のお家芸であり歌舞伎十八番の中でも代表格と言える「勧進帳」をはじめ昼夜の構成について語った。

「昼の部は初めての方にも観やすく、夜は歌舞伎好きの方々にも納得いただける構成にしたので、名古屋の皆様にも楽しんでいただけたらうれしく思います。昼の部の『吉野山』は菊之助さんや雀右衛門のお兄さん、玉三郎のお兄さんなど様々な方とやってきて思い入れのある演目。『勧進帳』は家の芸でございますから、京屋のお兄さん(中村雀右衛門)、菊之助さんと一緒に、きちんと古典を観ていただきます」と團十郎。なお、同級生の菊之助には「幼い頃から共に時を過ごしてきましたので、他の歌舞伎俳優にはない“あ・うん”の呼吸ような、察することができる関係性がある」と語り、幼なじみならではの世界が生まれることに團十郎自身も期待を寄せていた。


『勧進帳』 武蔵坊弁慶=市川團十郎(撮影:操上和美)

一方の新之助は出演する『外郎売』について「襲名した時からやらせていただいて、すごく好きな演目。名古屋で歌舞伎をやるのは初めてなので緊張しますが、楽しんでほしい」と素直に話す。そんな息子に團十郎は「『外郎売』を極めてもらいたいので、名古屋で一区切りとなるよう徹底的にやらす」と言い、父であり師である顔をのぞかせた。同時に團十郎は新之助のこの一年を「目覚ましく進歩した」と振り返り、「積み重ねてきた日々がちゃんと実となり、お客様にも通ずる芸風に少しずつなってきている。本人もやる気があるので、御園座でまた一つ階段を上ってもらえたら」と冷静に評した。

2022年11~12月の歌舞伎座に始まり、博多座、旅巡業、京都・南座での顔見世と続いてきた襲名披露興行。しかし團十郎も新之助もいまだに実感がないようで、両人ともサインを書く時やっと「團十郎なんだ」「新之助なんだ」と思うと笑わせた。半面「まだ海老の殻の付いている團十郎ですが、実感する機会は増えた。だから荷が重い」と本音を漏らす場面もあった。


『外郎売』 外郎売実は曽我五郎=市川新之助©️松竹

途中、名古屋の思い出に話が及び、貴重なエピソードも……。「いちばん思い出深いのは19歳の頃、中日劇場で玉三郎のお兄さんと『天守物語』をやりまして」と切り出し、当時91歳だった大俳優・島田正吾の冗談話や、新人ゆえ宿舎と劇場の間を歩いて通勤したことなど回顧。おかげで向上心に火が着いた團十郎は「僕にとっていい経験だった」と懐かしむ。また新之助時代は御園座にも頻繁に出演。「音羽屋のおじさん(尾上菊五郎)や播磨屋のおじさん(中村吉右衛門)、うちの父、もっと上の天王寺屋のおじさん(中村富十郎)や宗十郎さん、京屋のおじさん(四代目中村雀右衛門)、ああいう方々がギシギシ、ガツガツ、バリバリ芝居しているのを後輩として横で見ていた」という証言には生々しさがある。

対して新之助は「御園座に出演したことがなく、新しくなった劇場を見たこともない」ので、あまり話ができないと苦笑い。それでも「京都には京都の伝統があるように、名古屋には名古屋の伝統があると思うので、その伝統を楽しみたいです」と笑顔。古典芸能の次代を担う存在から頼もしい言葉が聞けて、明るい希望を感じる会見となった。

◎Text/小島祐未子

2/1 THURSDAY~2/17 SATURDAY【1月10日(水)〜チケット発売】
二月御園座大歌舞伎
■会場/御園座
■開演/11:00/16:00
※2/5(月)・2/13(火)は休演。
■料金(税込)/S席¥24,000 A席¥20,000 B席¥15,000 C席¥9,000 D席¥4,000
※学生割引あり。詳細は劇場ホームページ参照。