ブラジル・ポピュラー音楽界を代表する巨星、ジルベルト・ジルが ”アケリ・アブラッソ・ジャパンツアー2024”で16年ぶりの来日を果たします。そして公演初日は京都で開催の「KYOTOPHONIE 2024 AUTUMN」への出演となる。ジルのワールドツアー50周年となる今回の来日、 祝祭感溢れる最高のステージを体感しよう!
ジルベルト・ジルは現在82歳。近しい世代のブラジル音楽家には、バイーア連邦大学の同窓生でもあったカエターノ・ヴェローゾ、先頃エスペランサ・スポルティングとのコラボ作品を出したミルトン・ナシメント、作家でもあるシコ・ブアルキがいる。ちなみに欧米に視点を移せば、ポール・マッカートニー、キャロル・キング、ブライアン・ウィルソン等がいる。
彼のキャリアを簡単に辿ろう。 生まれはブラジルは北東部バイーア州。数々のお祭音楽/土着的音楽を生み出してきたブラジル音楽的にも非常に重要な地域だ。彼はここで幼少期から最初はアコーディオンに興味を示し演奏を始める様になる。彼の音楽やキャリアの中にアコーディオンを使ったブラジル北東部音楽作品や土着的で祝祭感に満ちた曲が多いのは、この様な環境で育まれた故だろう。
その後ジョアン・ジルベルトの登場と、ビートルズを始めとする欧米のロックにも大きな影響を受けながら、進化したブラジル音楽であり運動である「トロピカリア」を提示。その後それは現代美術/映像/舞台等垣根を超えた一大ムーヴメントになるが、あまりの過激さ故に監視対象となり逮捕される。その後2年半ロンドンに亡命するが、そこでも沢山の異国の音楽に積極的に近づいてゆく。そして自分が如何にブラジル的な人間かを考えたのだろう、帰国後はアフリカ系ブラジル人としての自分の肯定を軸としつつ、様々な音楽家との出会いを嬉々としながら自分のアンテナに引っかかった音楽に飛び込んでゆく。
ボサノヴァ、ロック、ソウル、レゲエ、アフリカ音楽、幼少期に慣れ親しんだ故郷バイーアひいてはブラジル北東部の田舎音楽。 彼にとってそれらは全て等価値の生きた音楽なのだ。だからこれらのどこに接近していようとジルベルトはジルベルトなのだ。その理由に、どのアルバムのどこを取っても彼はいつだって嬉しそうではないか。米国の黒人音楽家、タジ・マハールがそうであるように。
幼少期に戯れる様に触れた北東部のお祭り音楽に音楽の楽しさを、ジョアン・ジルベルトの心鎮める様なボサノヴァの中に宿るサンバの精神を。同世代の欧米のロックに抗うカッコ良さを発見した彼は、その後何十年間経った60歳を超えた時、いよいよ政治家としても一歩踏み出す。 母国ブラジルへの深い想いを足跡として残さんばかりに。
2003年から2008年の約5年間、ブラジル政府の文化大臣として就任。音楽家としての活動も平行しながらだ。そう言えば、退任直後の名古屋セントラルパークでの無料ライブは素晴らしかった!活き活きとしていた。 退任後は隠遁するどころか、益々音楽活動は活発になる。ここ10年だと盟友カエターノ・ヴェローゾとのライブ・アルバム『Two Friends,One Century of Music』、整った爽やかなサウンドが心地良い『OK OK OK』、ジョアン・ジルベルトへのトリビュート作『Gilbertos Samba』、現代バレエ団への提供作『GIL』が素晴らしいので、是非一度聴いてみて頂きたい。
今回の来日公演は、ジルの息子、娘、孫娘からなる4人編成のファミリーバンドを引き連れての来日公演。キャリア60年の中に刻まれた、過酷だったが生きてきた喜びに満ち溢れた彼の人生。様々な要素が平等に混ざり合い、共に前に進んでいくことが如何に楽しいことか。家族だけのリラックスしたステージで、ジルはきっとそれを見せてくれることだろう。
◎Text/鬼頭黎樹(songs records)
9/26THURSDAY【チケット発売中】
KYOTOPHONIE 2024 - GILBERTO GIL “アケリ・アブラッソ・ジャパンツアー2024”
◼️会場 /京都市・ ロームシアター京都 メインホール
◼️時間/開場 18:00 開演 19:00
◼️料金(税込)/VIP¥20,000 SS¥15,000 S¥12,000 A¥8,000 B¥5,000
◼️お問合せ/KYOTOPHONIE事務局 TEL 075-708-7108/ 受付時間:平日12:00-16:00
※未就学児入場不可 ※車椅子席あり。(KYOTOPHONIE事務局にお問合せください)
※B席は4階、階段のみのアクセスとなります。
◼️プレイガイド/e+
◼️オフィシャルWEB
2024年08月17日 <公演直前レポート>演劇チームずむ with 声優 原えりこ
演劇、映像とフィールドを選ばない活動を続ける十一二十三率いるエンターテイメント セルフキートンが、旗揚げ28周年記念祭りとして、演劇ユニット「演劇チームずむ」が声優として活躍する原えりこを客演に迎えての公演が決定。
全11公演を、ヲタク女子のファンタジーコメディ「憧れの異邦人」、読めない男の奮闘記「夢のチャンス到来」ジャッキー・チェンあるあるのアクションコメディ「ゴールデン8ベストのライバル」そして主宰である原えりこのトークライブと、内容てんこもりの4演目が公演ごとに繰り広げられる。また各公演にスペシャルゲストも登場する豪華な舞台になりそうだ。今回、メインの客演を務める原えりこは、タツノコプロの名作アニメ、タイムボカンシリーズの「逆転イッパツマン」で、ヒロイン放夢ラン役で声優デビュー、その後、司会、ナレーター、ミュージカル出演と活動の場を広げ続けるレジェンド。「演劇チームずむ」とのコラボレーションがどんなものになるのか期待が膨らむ。
最終日9/1にはエンターテイメント セルフキートンプロデュースも上映される。福島県猪苗代町の非公認“ご当地怪獣”「大怪獣イナワシロン」や、そのメイキングドキュメンタリーとして制作された感動的なエピソード満載の特撮奮戦記、「おじさん達の、初めての特撮」の上映も予定されている。
8/30 FRIDAY ~ 9/1 SUNDAY
エンターテインメント セルフキートン旗揚げ28周年記念祭り
演劇チームずむwith声優 原えりこ
■時間/8/30 19:30、8/31 15:00、19:00 9/1 13:30、17:00
■会場/インディペンデントシアター1st.
■料金/前売3000円、当日3500円、前売2ステージ通し 5000円、
当日2ステージ通し 6000円、高校生以下通し 4000円、
最終日のトークライブのみ 前売 2000円、当日2,500円、
高校生以下1500円(学生証提示)
※受付は各開演時間の45分前
■WEBチケット予約 CoRICH舞台芸術
https://ticket.corich.jp/apply/322310/001/
2024年07月11日 入場無料!大人もこどもも楽しめる!京都芸術劇場 春秋座とその周辺で開催の「瓜生山サマーパーク」
京都市・京都芸術大学内にある京都芸術劇場 春秋座は、7/20(土)・21(日)の2日間にわたり大人もこどもも楽しめるイベントとして「瓜生山サマーパーク」を開催します。パフォーマンスの上演、さわって楽しむ体験型の展示、インクルーシブ遊具の遊び場、ワークショップなどを通して、子育て世代はもちろん、これまでに劇場に足を運んだことのない方々が気軽に劇場体験できる企画となっています。
主なイベントを紹介します。
<パフォーマンス>
① 藤村港平×ひびのこづえ× 川瀬浩介『MAMMOTH』
大昔に絶滅したはずのマンモスがよみがえりおどりだす。
ひびのこづえさんの衣装、川瀬浩介さんの音楽、そしてダンサーの藤村港平さんが繰り広げる、未来への希望に満ちたダンスパフォーマンス!
② マームとジプシー『しずくとなみだ』
作・演出:藤田貴大/出演:成田亜佑美
藤田貴大さんが主宰する演劇団体マームとジプシーからのとっておきの「ことば」たちをお届けします。
『MAMMOTH』(撮影:出口敏行)
<体験型展示>
タッチ、コスチューム!
ひびのこづえさんの衣装を体感!さわってOK、着てOK、踊ってもOK!
<おとなもこどもも楽しめるワークショップ>
ひびのこづえ「ちいさな生きもののブローチをつくる」
ひびのさんが舞台やテレビの仕事で衣装を作ったときに残ったきれいな生地や衣装の断片を使って、ちいさな生きものを作ります。絵を描くことや縫い物が苦手でも大丈夫!
定 員:各回30名
対 象:4歳から大人まで(小学生以下は保護者も参加、付き添いのみの参加はNG)
材料費:1,000円
持ち物:はさみ(一人一本)、色鉛筆
藤田貴大「地図のワークショップ」
「朝、最初に話した人は?」「会場までの道のりは?」それぞれの風景をみんなで再現して街の地図を作ります。どんな物語が立ち上がるでしょう。
定員:10名
対象:小学生(小学3年生以下は保護者同伴)
<インクルーシブ遊具の遊び場>
アネビーインクルひろば
子ども達の新しい「できた!」を育む楽しい遊具。アネビーは子どもたちの一人ひとりの特性に寄り添いながら、共生できる遊び環境をつくります。特別な誰かのためでなく、どんな子どもも自由に伸び伸び遊んで...ごちゃまぜになる環境づくりを目指しています。多人数で一緒に遊ぶことで、自然と子どもたちの間で新しい「ルール」や「ことば」が生まれます。身体的な体幹やバランス能力だけでなく、協調性やコミュニケーションの力も育みます。共生できる遊び環境が広がる出発点となるよう、子ども達が遊ぶ姿を見て、遊具の魅力をご体験ください。
※仮設のため、遊具の使用は小学生以下とします
協賛:株式会社アネビー https://www.aneby.co.jp/
<映画上映・講演会>
講演会+対談『「遊び」って何だろう?』
身体を成長させるためのタンパク質やビタミンと同じように、脳にも発達に必要なものがあります。それが「感覚」です。「遊び」とは、子どもたちが自分の発達に有利になる感覚刺激を脳で受け取るための、真剣で自由な行動なのです。
講師:
横山 諭 (遊び環境アドバイザー/株式会社アネビー 教育研修部 部長)
松野敬子(小規模保育園Cherry’s Hug東向日園の園長。いんふぁんとroomさくらんぼ代表理事。社会安全分野 / 学術博士。神戸常盤大学子ども教育学科非常勤講師)
◎協賛:株式会社アネビー https://www.aneby.co.jp/
映画『こどもかいぎ』上映会
子どもたちが「かいぎ」をする保育園を1年間に渡って撮影したドキュメンタリー。子どもたちから繰り広げられる奇想天外な発想と、まっすぐな言葉に、思わず笑い、時にハッとさせられます。保育園は多くの子どもたちが初めて社会と出会う場所。 そこで未来の子どもたちは何を考え、無限の可能性をどのように伸ばしていくのでしょうか?いつも全力で、まっすぐな子どもたちの姿には、「答えの無い世界で、私たちはどう生きていくのか」を考えるためのヒントがあふれています。さあ、いよいよ小さな賢者たちの、世界一おかしくて、世界一だいじな会議、はじまります!
◎協賛:株式会社アネビー https://www.aneby.co.jp/
あらゆる方々が気軽に劇場に足を運び、様々な芸術を観て、触って、感じる体験を味わうことにより、劇場にもっと親しんで欲しいという取り組みです。しかもどの作品・企画も現在第一線で活躍するアーティストによるものです。皆さんによって特別な体験となる2日間、ぜひ足をお運びください!
■クラウドファンディング挑戦中!
この企画では、継続的に地域にひらかれたイベント開催を行い次世代へ芸術のバトンを渡す取り組みを広く展開したいと考えております。以下の通り、クラウドファンディングに挑戦中です。あたたかいご支援をお願いします。
*【京都芸術劇場春秋座】瓜生山サマーパークを成功させ芸術の力を次世代につなぎたい*
実施期間:2024年6月28日(金)10:00~7月31日(水)23:59
目標金額:100万円
ご支援はこちらからお願いいたします
7/20 SATURDAY・21 SUNDAY
瓜生山サマーパーク
◼️時間/両日11:00-17:00
◼️会場/京都芸術劇場 春秋座ホワイエとその周辺(京都芸術大学内)
◼️料金/入場無料(要事前申込・一部ワークショップは有料)
◼️申込受付開始/7月1日(月)12:00~
◼️お申込み方法/Peatixからお申し込みください。 https://uryuyama-summerpark.peatix.com
主催:京都芸術大学 舞台芸術研究センター
協賛:株式会社アネビー
2024年07月10日 <会見レポート>いよいよ今週末に愛知公演が迫る!NDT プレミアム・ジャパン・ツアー2024
左:髙浦幸乃(NDT1所属ダンサー)中:エミリー・モルナー(NDT芸術監督)右:唐津絵理(愛知県芸術劇場芸術監督)
©Tatsuo Nambu
才能豊かな気鋭振付家と世界中から集まった選りすぐりのダンサーたちによる共同制作で、オランダのハーグを拠点に新作上演を続けている、世界的なコンテンポラリー・ダンスカンパニーであるネザーランド・ダンス・シアター(NDT)。5年ぶりとなる来日ツアーは愛知県芸術劇場・高崎芸術劇場・神奈川県民ホールの3劇場で開催。これに先立ち5/22にオランダ王国大使館で記者会見が行われ、NDT芸術監督のエミリー・モルナーとNDT1に所属する日本人ダンサーであり本公演に出演する髙浦幸乃、今回の統括プロデューサーを務める愛知県芸術劇場芸術監督で、Dance BaseYokohamaアーティスティックディレクターの唐津絵理の3 名が登壇した。
今年は人気振付家による全5作品を、会場/公演日ごとに異なる組み合わせで3作品ずつ上演する特別プログラム。2020年より同職にあるエミリー・モルナーは「NDTの芸術的ヴィジョンを堪能できるプログラムで、5作品すべてがNDT1(※今回来日する23〜37歳までのダンサーが所属するカンパニー)のために作られた多様で革新的な精神が感じられるラインナップ。私たちのダンサーによる卓越した技巧と幅広い表現力によって、世界中で絶え間ない進歩を遂げるコンテンポラリー・ダンスの最前線を目の当たりにできるはず」と語った。
愛知県芸術劇場の公演日は2日間。7/12(金)は、日本での本格的なデビューとなるシャロン・エイアール&ガイ・ベハールが手がける、16名のダンサーがヌーディーなボディスーツに身を包んで繊細かつ強靱な肉体のアンサンブルを披露する《ジャキー》(2023年初演)、舞台上に置かれた机20台をダンサーがランダムに出入りしながら休みなく踊り続ける、巨匠ウィリアム・フォーサイスの代表的な「テーブルダンス」が展開する《ワンフラットシング,リプロデュースト》(2000年初演)、そして日本人ダンサー2人が登場しジャパニーズ・ホラー的な要素も垣間見えるガブリエラ・カリーソ(※ピーピング・トム芸術監督)による映画的な世界観の《ラ・ルータ》(2022年初演)の3作品を。7/13(土)は《ワンフラットシング,リプロデュースト》と《ラ・ルータ》に加えて、降りしきる雪を背景にブラームスの2つのチェロ・ソナタにのせて紡がれる幻想的な世界を描くクリスタル・パイトの《ソロ・エコー》(2012年初演)の3作品を上演する。
©Tatsuo Nambu
現在総勢27名のNDT1団員のうち日本人ダンサーは3名。今回はメンバーとして初めての日本凱旋となる福士宙夢と、前回の2019年に続き2度目となる刈谷円香、髙浦幸乃の2名が来日。5作品すべてに出演する高浦幸乃(2015年からNDT1所属)は「これまでも常に進化し革新を追求してきたNDTだが、エミリーが監督になって更にそのクリエイティヴィティが高まったと感じる。彼女が紹介する振付家にはダンサー出身者だけでなく、サーカス団員や演劇人など多彩で今後のコラボにも期待している。今回のステージはどれもユニークで全くタイプの違う5作品。それぞれが客席に届くスピードも同じではなく、ダイレクトなものもあれば、観れば観るほど面白くなる作品もあるので、日本のお客さんがどのように受け止めてくださるか、その反応がとても楽しみ」と意気込みを語った。
◎Interview&Text/東端哲也
7/12 FRDAY・13 SATURDAY 【チケット発売中】
NDT(ネザーランド・ダンス・シアター)
プレミアム・ジャパン・ツアー 2024
◼️会場/愛知県芸術劇場 大ホール
◼️開演/7月12日(金)19:00 7月13日(土)14:00
◼️料金(税込)/SS¥14,000*完売(パンプレット付¥15,000 *完売)
S¥13,000 A¥10,000(U25¥5,000)
B¥7,000(U25¥3,500) C¥5,000(U25¥2,500)
◼️お問合せ/愛知県芸術劇場 TEL.052-211-7552
※4歳以下入場不可
2024年06月21日 <公演直前レポート>音楽の翼で未来を紡ぐ WANDERLUSTコンサートツアー
心を揺さぶる音楽体験、未来を変える力に。
「音楽は分かち合うことにより、更に価値あるものとなる」 ―――― ドイツの至宝と呼び声高いバリトン歌手ベンヤミン・アップル、ROLEXのアンバサダーでもあるメキシコ人ピアニストのジョルジュ・ヴィラドムスが、メキシコからスタートさせた音楽の旅。彼らと確かなる思いで繋がったアジアの若いアーティストも加わり、ブラームスをはじめ宝石のような美しい音楽を届けます。
このツアーは単なる音楽イベントではありません。困難な環境にある子供たちの未来を拓くという特別なプロジェクト。こども家庭庁を通じ、学習体験の機会に恵まれない子供たちの無料招待枠を設け、チケットを購入しコンサートに足を運ぶことで社会貢献ができる仕組みになっています。
プロジェクトに加わったアジアのアーティスト、ヴァイオリニストの石上真由子、クラリネッティストの兒嶋賀奈子、そして作曲家キム・ジェドクの三人に、「WANDERLUST」コンサートツアーについて話を聞くことができました。
―まず、ドイツ歌曲界のスター、ベンヤミン・アップルが歌うドイツリートを聴くことができるというだけでも注目ですが、さらに多方面で活躍するジョルジュ・ヴィラドムス、そして皆さんが加わり、一層華やかさを増していますね。
子どもたち参加型のコンサートプロジェクトというのは今までになかった試みではないでしょうか。
兒嶋賀奈子:もちろん先ずはベンヤミンの歌声を軸にピアノ、ヴァイオリン、クラリネットが紡ぎだす美しいプログラムを楽しんでいただきたいです。通常のコンサートとの違いは、お客様はチケットを購入することで体験が乏しい環境にある子どもたちへの支援を、合唱で参加する子ども、生徒たちはただ舞台で歌うだけでなく貧困について考える機会を、招待した子どもたちにとってはクラシックのコンサートとに行ってみた、という経験を。音楽を聴いた、というだけでなく目には見えないお土産付きのコンサートです。企画したきっかけは私がローザンヌ高等音楽院で出会ったピアノ教授のジョルジュが「音楽は人々と分かち合うことでより価値あるものとなる」という信念からスイスとメキシコに設立した財団「Crescendo Con La Musica」の活動です。それぞれ支援内容は違いますが、メキシコでは既に2校を設立、困難な環境にある子どもたち、4000人以上が今までに学んでいます。その活動をお手伝いしたことから私も日本で音楽を分かち合うという価値観を広めたいと思いました。
―皆さんがこのプロジェクトに参加した動機を教えてください。
兒嶋賀奈子:祖母が国際的に奉仕活動をしているゾンタクラブに所属をしているためチャリティーが身近にあったこともありますが、両親から「食事に困らず、お勉強ができる、それは当たり前ではなく、たまたま生まれたところがラッキーだっただけ」と言われて育ちました。でも、私はその幸運を自分の努力の結果だと勘違いしていた時期があり、ローザンヌ高等音楽院で才能溢れる仲間に刺激を受けつつも圧倒され、前向きな気持ちになれない時期がありました。その頃にジョルジュの財団の活動をお手伝いし、体験格差や貧困問題に対して取り組む責任を感じるようになりました。
石上真由子:そもそも国も両親も選べずに生まれるわけですから、人生のほとんどは運ですよね。色々な体験をしてこそ、自分は何が好きで、何が苦手なのかを把握できるはずが、その機会が乏しいと学びたいという意欲や好奇心を育むことも難しくなります。賀奈子ちゃんから、ジョルジュの単なる音楽人の育成ではなく、音楽を通した包括的教育の活動を聞き、そこから日本の体験格差、教育格差に目を向けて芸術体験をフックに支援活動をスタートさせようとしている彼女の気持ちに賛同し一緒にやろう、となりました。もちろんベンヤミン、ジョルジュというスター二人との共演、編曲を担当する若き俊英、キム・ジェドクさんの参加も楽しみです。
キム・ジェドク:現在はドイツに暮らしているのですが、ジュネーブ高等音楽院に在籍していた時に友人になった賀奈子から今回のプロジェクトに編曲で参加しないかと誘われました。コンサートの全体的なアイデアを彼女から聞き、企画書を読み、ビジョンと目的が自分の価値観と共鳴すること、実は私自身も貧困にある人々へのボランティア活動をしていたこともあり、今回も自分のスキルが貢献できることから参加を決めました。
バリトン ベンヤミン・アップル
―来日されるベンヤミン・アップルさんについても教えてください。
石上真由子:ベンヤミンはあのドイツ歌曲の大スター、ディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウの愛弟子です。彼自身もレーゲンスブルグ大聖堂少年合唱団からキャリアをスタートしています。
キム・ジェドク:ベンヤミン自身がクワイアの経験があるので、小学生、高校生たちが合唱で参加するモーツァルトの『アヴェ・ヴェルム・コルプス』は、編曲しながら本番を楽しく想像しています。
―ジョルジュさんについても詳しく教えてください。
兒嶋賀奈子:彼はローザンヌ高等音楽院の教授であり、Crescendo Con La Musica財団の創設者でもあります。ロレックスのアンバサダーとしても活躍し、なんとVOGUEの表紙を飾ったことも。スイスではこれまでに60以上の奨学金を音楽学生に授与しています。
―それは本当に素晴らしい活動ですね。ところで、今回は子どもたちを招待されていますが、プログラムそのものは王道という印象です。
キム・ジェドク:子どもたちを招待し、また合唱に参加もしてもらうのですが、内容を子ども向けにする必要はないと考えました。
石上真由子:ドイツリートの世界観がメインのプログラムになります。シューベルト、シューマンにブラームス、まさに王道が並びます。「あ、どこかで聴いたことあるな」という曲も多く、歌詞もあるので、普段クラシックのコンサートにあまり行かない方や子どもたちにも親しみやすいと思いますし、ハイネの詩が好き、という方にも足を運んでいただきたいですね。
兒嶋賀奈子:個人的には高校生のころから憧れていた真由子さんとの共演も楽しみです。合唱で参加してくれる小学生、高校生たちにはベンヤミンと共に歌ったという経験は一生の宝物になるでしょう。もしかしたら将来そこから日本を代表する声楽家が生まれることがあるなら、アーティスト冥利に尽きます。
キム・ジェドク:ユニークな編成ですが、バリトンとクラリネットは響きの相性が良く、弦楽器とクラリネットの相性の良さは言うまでもないので楽しみにしていただきたいです。
―キム・ジェドクさん、韓国でも子どもの教育格差や体験格差は社会問題として認識されているのでしょうか?
キム・ジェドク:はい、韓国でも子どもの教育格差、体験格差は大きな社会問題です。大学時代にホームレスや社会的弱者の人々のために音楽を提供する活動に参加していたときに痛感しました。数年間その支援活動を継続することでコミュニティとしての連帯感のようなものが生まれたことは、自分でも意外なほど大きな喜びとなりました。今回招待したアートにアクセスすることが難しい環境の子どもたちには、まず何よりも楽しんでもらいたい。そして、コンサートに参加してくれる学習環境に恵まれている側の子どもや学生さんたちには、ぜひ、自分たちがこれから担う社会における責任のようなものを感じ取ってもらえればと思います。
―参加される子どもたちについても教えていただけますか?
兒嶋賀奈子:アートにアクセスしてもらいたいと子ども達を招待するだけでなく、もう一歩進んだ取り組みにも挑んでみました。従来の演奏家と聴衆という構図から、子供たちや学生たちと一緒にコンサートを作り上げるという試みです。恵まれていると見過ごしてしまう格差に対し、自分たちは何ができるのかを考えてもらう機会にもなります。その私たちの取り組みに国立音楽大学附属高校が参加を快諾してくださったことにも感謝していますし、立命館小学校からはただ参加するだけでなく、子どもたちに深く見えない貧困について考える機会にしたいと色々ご提案いただいたことも嬉しかったです。慶応大学の有志の学生さんが裏方に入ってくださっているのも胸が熱くなります。
石上真由子:クラシック音楽の課題として客層の高齢化があります。自分たちの未来のお客様を自分たちで開拓していくという意味でも、子どもたちや学生たちに聴いてもらう、参加してもらうことに積極的でありたいです。このままクラシック音楽がオワコンになってしまったら、子どもたちに支援をするどころか、音楽家は自分たちが職を失っていくことになりかねないので。
キム・ジェドク:スイスの筆記具ブランド カラン・ダッシュが音楽家の我々とはまた異なる視点からの協力をしてくださっているのもこのコンサートのユニークなところです。最近は自宅で楽しめるコンテンツが沢山あり、わざわざお金を払ってコンサートに出向くというハードルはますます高くなってきています。おそらくクラシックのコンサートは今回が初めてという子どもたちが多いでしょうから、今後も行きたい、聴きたいと思ってもらうためにも責任はなかなか重大です。
兒嶋賀奈子:クラシックコンサートの高齢化と言えば、母はコンサートから帰ってくる度に「いつもクラシックのコンサートに行くと自分が若いような錯覚をしてしまうのよね。もっと若いお客様が増えないと困るわね」と必ずのように口にします。音楽的な感想よりそっち?って(苦笑)。
キム・ジェドク:若い世代は出かけなくても十分に娯楽がある社会で育ってきているので音楽を提供する側の意識変革も求められていると感じています。一人では叶えられない何かを提供できるように私たちも知恵を絞っていくことが必要と考えています。
―皆さん、ありがとうございました。コンサートの成功をお祈りしています。
取材:松井陽子
WANDERLUST 公演情報
【出演者】
•バリトン: ベンヤミン・アップル
ドイツ歌曲史上に燦然と輝くディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウの愛弟子。低音から高音までを印象的な柔らかい響きで歌い上げ、今最も聴くべきアーティストとして高く評価されている。昨年11月にも来日し、そのリサイタルはNHKに収録され放送された。
•ピアノ: ジョルジュ・ヴィラドムス
ローザンヌ高等音楽院教授。クレッシェンド・コン・ラ・ムジカの創設者。ロレックスのアンバサダーとしても活躍。
•ヴァイオリン: 石上真由子
日本音楽コンクール等、内外で多数受賞。国内外でオーケストラとの共演を重ね、メディア出演も多数。ソリストとしてだけでなく、室内楽にも力を入れている。ENSEMBLE AMOIBE主宰
•クラリネット: 兒嶋賀奈子
14歳からクラリネットを吉田誠に手ほどきを受け、東京音楽大学付属高校で松本健司に師事。ローザンヌ高等音楽院でフローラン・エオーとパスカル・モラゲスのもとで研鑽を積む。数々のコンクールで入賞。
•編曲: キム・ジェドク
ヨーロッパで活躍する現代音楽作曲家。今年(2024年)、パリのイルカム・マニフェストやビエンナーレ・ヴェネツィアにて世界初演を予定。彼の作品はヨーロッパの名門アンサンブルやオーケストラによって演奏されている。
賛助出演: 国立音楽大学附属高等学校 立命館小学校合唱部 立命館小学校コールリッツ
後援: 在日スイス大使館 在日メキシコ大使館 しがぎん経済文化センター
<主催者からのコメント>
コンサートツアー「WANDERLUST」は音楽を通じて社会貢献に興味のある方には、ぜひご参加いただきたいイベントです。チケットは公式ウェブサイトから購入可能で、皆様のチケット代には、こども家庭庁を通じて無料招待した子ども達の分のチケット代が含まれています。
一流のアーティストと一緒に音楽の力を体験し、多くの子供たちに希望を届ける手助けをしませんか?このコンサートは、音楽の美しさとその社会的な力を感じる絶好の機会です。皆様のご来場を心よりお待ちしております。
【東京公演】
■7月30日(火)開演/19:00
■会場/浜離宮朝日ホール
【京都公演】
■8月3日(土)開演/16:00
■会場/ロームシアター京都サウスホール
■料金(税込)/全席指定 各 8,800円
チケットおよび公演の詳細はコチラ→https://kotetto.com/











