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2026年05月12日 『走る本屋と星降る島』 制作発表&公開稽古レポート
上質の演劇作品を創作し続ける兵庫県立ピッコロ劇団の85回目の公演となる今作では、地元劇作家、伊地知克介と、劇団員である岡田力が演出にと、タッグを組んだ新作書き下ろし作品となる。
制作発表会見には、作家・演出家のご両人に加え、主演の菅原ゆうき、木下鮎美が加わり、今作への思いを語った。
── ピッコロ劇団の本公演への作品を書かれるのは初めてとのことですが、今作への意気込みなどお聞かせください
伊地知克介:2年前まで新聞記者として演劇には関わっていました。劇作家としてのデビューは15年ほどになり、ピッコロ劇団さんとも短い作品(オフシアター作品)などでご一緒していましたが、今作は大きな会場での本公演作品に選んで頂いて、素直に嬉しいですね。
今作では滅び行くもの、無くなりつつあるモノと、異界の存在というモチーフの中で、人と人のコミュニケーション、あるいはコミュニティを考えるというテーマで創作しました。もちろん子どもさんから演劇ファンまで鑑賞される本公演作品ですから、リアルなドラマツルギーにファンタジー要素も盛り込んで、エンターテイメントとして楽しんで頂ける内容になっています。
地元にいる作家として密に劇団に関わっていけますし、演出家、役者の方々とのコミュニケーションをとって、よりよい作品に丁寧に向き合えるというのは刺激的で楽しいです。
── 役者としてピッコロ劇団で活躍される岡田力さんによる演出というのも今作の見どころですが、どんな作品を目指されていますか?
岡田力:演出を担当させて頂くのは今作で3作目となります。過去の2作はいずれもオフシアター公演での短い作品でしたので、初の本公演での演出にワクワクしています。
今作の伊地知さんの提示されたテーマは、まさに今、我々の社会が抱える問題そのものなんだと思っています。世界情勢がめまぐるしく変化していく中で、消えゆくモノ、失われるモノ、われわれの生活の中でも大きなところから小さなところまで多岐にわたっています。その象徴としての「本屋」というモチーフを中心に、さまざまなコミュニティ、人間界ではない存在が絡んでいくファンタジーです。
また演出としては、舞台美術も大きな役割を持つ演者のひとつなので、今回相当こだわった美術に挑戦していて、きっとみなさんに驚いてもらえると思います。
気心の知れた伊地知さんが常に稽古に来て下さるので、密度の濃い演出でよりよい作品に仕上げていきたいですね。
── 主演をつとめられる菅原さんにとって今作の役どころへの手ごたえなどありますか?
菅原ゆうき:僕はいつもクセのある人物を演じることが多いのですが、今作の主人公である海坂という男は実直で超マジメな男の役で、そこはやりがいを感じています。また、コミュニケーションやコミュニティという問いかけが、この作品の大きなテーマだと思っています。
作家の伊地知さんも頻繁に稽古に立ち会ってくださいますし、いつもご一緒している岡田さんの演出ですから安心して臨んでいます。なんといっても座組の雰囲気が今回は最高に良い環境です。いつもの菅原ではない新しい挑戦が出来ていると思っています。
── 少し風変わりの役どころとなる今作への思いを木下さんからもお願いします。
木下鮎美:私の役は、舞台となる島からみれば完全な部外者であるアメリカの文化人類学者という面白い役です。文化も育った環境も違いすぎるスーザンという存在は演じ甲斐のある挑戦です。この脚本のテーマであるコミュニケーションって、人それぞれが持っている“恐れ”みたいなモノが本質なんじゃないかと感じています。自分の立ち位置と相手との距離を恐れながら受け渡していくというような。今はそういう微妙な感情を試行錯誤しながら創っていく作業ですね。脚本の伊地知さん、そして演出の岡田さんが常に側にいてくださる環境の中での稽古なので心強いです。
観客の皆さんには、そういった部分に注目して欲しいのはありますが、何より劇場に居ながら離島に旅していただいているような感覚を味わっていいただけると思います。ご期待ください。
会見後、稽古場に場所を移しての公開稽古が設けられた。主演の菅原、そしてそれに絡む木下の台詞ひとつひとつに岡田の細かな演出が施されて、みるみる新たな関係性が構築されていく様子は、ピッコロ劇団特有の阿吽の呼吸の成せる技だと感じた。
今作は中学生のための“わくわくステージ”や遠く赤穂市での出張公演も予定されている。伊地知克介とピッコロ劇団員の息の合った新作に大いに期待したい。
取材・文 石原卓
ピッコロ劇団 第85回公演
『走る本屋と星降る島』
作/伊地知克介 演出/岡田力(ピッコロ劇団)
■日時/2026年5月29日(金) 18:30/30日(土)13:00/31日(日)13:00
6月6日(土) 13:00 ★/7日(日) 13:00 ★
※開場は各回 開演の30分前
★…音声ガイドサービスあり
視覚に障害のある方の鑑賞をサポートする音声ガイドサービスをご用意します。(無料・要申込)
申込締切5月30日(土) TEL:06-6426-1940 ピッコロシアター
■上演時間/約90分(休憩なし)予定
■会場/ピッコロシアター大ホール
■料金/一般¥3,500 大学・専門学校生 \2,500 高校生以下 ¥2,000
※未就学児の入場はご遠慮ください。
お問合せ/兵庫県立ピッコロ劇団 06-6426-8088(9:00-21:00 月曜休)
公式サイト/https://piccolo-theater.jp/











