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2026年03月02日 映画『道行き』舞台挨拶レポート
第28回PFFプロデュース作品『道行き』
劇場公開大阪初日舞台挨拶に中尾広道監督と人間国宝・桐竹勘十郎が登壇
2026年2月27日(金)人形浄瑠璃の人形遣いで人間国宝の三世桐竹勘十郎初がはじめて映画出演をすることで話題の映画『道行き』。大阪の劇場公開初日の終演後に舞台監督の中尾広道と桐竹勘十郎を迎えて舞台挨拶が行われた。
会場内は映画ファンはもちろん、多くの文楽ファンを加えて超満員で作品上映の興奮冷めやらぬ間に舞台挨拶が始まった。
まず、監督、脚本、編集の中尾広道監督が登壇。「いつも怒られているので、今日は僕は喋らないようにがんばります」と会場の笑いを誘った後に、人形浄瑠璃の至宝、三世桐竹勘十郎が登壇。
司会による今作がPFF(ぴあフィルムフェスティバル)のスカラシップ作品として制作された経緯と共に中尾監督の私小説映画であるということ、また主演の渡辺大知氏以外はプロの役者を使わず、桐竹さんほか、現地の住民の方、そして物語のモチーフとなった人物だけで撮影された経緯が話された。
話題は今作で最も重要な役どころをこなした桐竹勘十郎氏に向けられる。
長年のキャリアを持つ人形浄瑠璃の人形遣いが映画に出演となった感想を司会者が聞くと、「もう、最初はほんとに緊張していました。人形浄瑠璃は太夫さんという台詞を、節を付けて語る方によって物語が進行します。われわれ人形遣いはそれに合わせて人形の所作を作っていく芸能で、自分自ら演技や台詞を話すのですから、どうしたものかと臨みました」と桐竹。
常に人形を通して演じているという経験が、今作の素晴らしい演技につながったと評する司会者にかぶせて、「この映画は時間という空間を、主人公や桐竹さんが行ったり来たりする映像世界を目指した制作で、撮影地の奈良県御所市に現存する古民家の現代にはなくなってしまった隙間を利用した撮影手法の中で、その間をしっかり意識して芝居をこなしてしまう桐竹さんは流石だと思った」と中尾監督。
加えて桐竹が、「家で台詞を何度も練習して撮影に臨むんですが、監督はすべてオッケーで、映画ってもっと演技指導とかされるのかなと思っていたので意外でした。そういう意味では自然体で撮影できたと思う」と述べた。
「奈良県御所市に僕が移り住んで、今の日本から消えつつある、日常の“間”を大切に映像化しようとしていて、そういう意味では人形浄瑠璃で人形に情感を付けていく桐竹さんの演技のセンスには大きな信頼感があった」と中尾監督が回想する。
2015年、『船』で、ぴあフィルムフェスティバル/PFFアワード入選を皮切りに、同グランプリ、フィルマドリッド最優秀賞受賞(スペイン)など各賞に選ばれ、現在、再注目の中尾監督が、人間国宝・桐竹勘十郎の新たな才を引き出したといえる。
映画を逸れて、話題は桐竹による人形浄瑠璃のこぼれ話など、文楽ファンにも貴重な時間となった舞台挨拶となった。
ふとすると、日常の忙しさで忘れてしまいそうな日本のソウル(魂)を、中尾監督の優しい視点と、多くの人形浄瑠璃作品で、人形に命を吹きかけ続けた桐竹勘十郎の好演によって覚醒させてくれる映画。この目まぐるしい時代にこそ観ておくべき作品だ。
取材・文 石原卓
第28回PFFプロデュース作品
『道行き』
監督・脚本・編集/中尾広道
<出演者>
渡辺大知、桐竹勘十郎、細馬宏通、田村塁希、大塚まさじ、
上田隆平、梅本 修、清水弘樹、中井将一郎、中山和美、ちょび
テアトル梅田、シネ・リーブル神戸にて上映中
奈良や京都でも順次上映予定
上映日程は下記公式サイトにてご確認ください
映画『道行き』公式サイト











