HOME > MEGLOG【編集日記】 > <会見レポート!>ダンス・コンサート イスラエル・ガルバン『春の祭典』

MEGLOG

革新的な作品で話題を呼んできたフラメンコ・ダンサー&振付家のイスラエル・ガルバン。このコロナ禍においてスペインから来日し、『春の祭典』を愛知と横浜で上演することになり、その記者会見が行なわれた。



海外からの招聘公演が次々と中止される中、今回の来日公演実施にあたってはバブル方式を採用、ガルバンも隔離期間中は一人でリハーサルに励んだ。迎え入れる側のDance Base Yokohamaも、最寄りのスーパーにある商品すべてを撮影し、その中から必要なものをオーダーできるようにしたり、ホテルの客室にエアロバイクを運び入れたりとさまざまな工夫を。アメリカからピアニスト2名が来日することができなかったため、日本人ピアニストの増田達斗と片山柊が起用され、それぞれから提案のあった曲(増田からは自作曲の「バラード」、片山からは武満徹の「ピアノディスタンス」)のパフォーマンスを「春の祭典」と組み合わせて上演することとなった。


(C)羽鳥直志

「実際に舞台に立って踊るために、14日間の隔離やPCR検査、スペインから日本に来るまでの長い行程等、本当に踊れるのか信じられないような思いをしなくてはいけない」と心境を吐露したガルバン。ヨーロッパの他の国からのオファーもある中、日本を選んだ理由については「想像もしなかったようなパンデミックにおかれ、一足飛びに飛ぶ大きな一歩が必要だと考えた。芸術が生き続けているということを伝えるためにもやって来た」とのこと。子供のころから何度も来日しており、舞踏の文化があり、フラメンコに造詣の深い観客の多い日本人の前で踊ることを「心地いい」と語った。2019年にスイスのローザンヌで初演した「春の祭典」については、若いころ、独自の踊りのスタイルを目指していたとき、たまたまニジンスキーの写真を目にし、それ以来、自身の踊りのスタイルも変わったと感じられるようになったこと、その後この曲を知ってフラメンコとも共通するリズムを感じ、「(ダンサーが)作品を構成する打楽器の一つとなってリズムを刻む」というこれまでの振付と異なる方法で表現できると思い上演を思い立ったとのこと。踊るにつれ、ニジンスキーの自由も発見できるようになったという。「このたびは『春の祭典』を通じて二人の日本人ピアニストと出会い、彼らとも家族となれる」と、今回ならではのコラボレーションについて語った。


(C)羽鳥直志

4月の終わりから急に実現に向けて動き出したコラボレーションについて、増田は、「KAAT神奈川芸術劇場ホールと愛知県芸術劇場コンサートホールという、なかなか立てない舞台に素敵な公演で立てることがうれしい。共演できる幸せをすべてのステージでかみしめつつ全力でお届けしたい」と抱負を。「オファーに驚いた」という片山は、「『春の祭典』はいつか取り組んでみたいと思っていた曲。今回、世界的なダンサーの方々と共演するという奇跡のようなチャンスをいただき、大きなステップとして取り組んでいきたい」と意気込みを語った。「『春の祭典』がもつ野性的、人間の本性がむき出しになったようなエネルギーは、自分が『バラード』を書いたときにもこめたもの」(増田)、「コンサートのプログラムを組む際、音楽史的な文脈を考えることが多いが、『ピアノディスタンス』は若い時代のエネルギーや実験的な要素が『春の祭典』との共通項として見出せる」(片山)とは、それぞれの選曲の理由。リハーサルについては、「ガルバンさんのダンスが打楽器的に床からダンダンと身体に伝わってきた」(増田)、「違う分野のものが高い次元で合わさる感じ」(片山)と感想を述べた。「リズムを通してストラヴィンスキーと対話し、音楽と一体化する。クラシック音楽とフラメンコが出会い、フラメンコと二人のピアニストのもつ日本の文化が出会う」とは、今回のコラボレーションについてのガルバンの解説。「『春の祭典』は儀式的、魔術的な作品であり、演奏され、踊っていく中で、自分自身が変容する。フラメンコも、舞台に上がって踊ることで自分が変容していくという共通点がある」と語るガルバン。「劇場が閉まっている中、開いているバル(飲食店)で踊ったこともあるが、なぜバルが開いていて劇場は閉まっているのか、おかしいと思った」と率直な思いを吐露する場面も。「観客の前で踊るということは一つの儀式であって、観客との一体感を感じることがアーティストにとって必要。踊れないことで家族を失ったかのような喪失感を失った。今回、再び家族に会える思い」と、公演への期待を語っていた。

取材・文=藤本真由(舞台評論家)

6/23WEDNESDAY・24THURSDAY
イスラエル・ガルバン「春の祭典」
■会場/愛知県芸術劇場 コンサートホール
■開演/(23日)18:30 (24日)14:00
■料金(税込)/【一般】S¥7,000 A¥5,000 B¥3,000
【U25】一般の半額(公演日に25歳以下対象 *要証明書)
■お問合せ/愛知県芸術劇場 TEL.052-971-5609