HOME > MEGLOG【編集日記】 > <記者発表レポート>『曽根崎心中』を題材に文楽×講談×現代アートのコラボレーションで魅せる「中之島文楽2025」
8月30日(土)・31日(日)の2日間、大阪市中央公会堂で行われる「中之島文楽2025」。今年は公演回数を1回増やし、3回に。現在開催中の大阪・関西万博を契機に、国内外の方々に広く文楽の魅力を広げたいと、近松門左衛門の名作『曽根崎心中』を題材に、講談、現代美術とのコラボレーションで上演する。
上演構成は「観音めぐり」と「生玉社前の段」を講談で、「天満屋の段」と「天神森の段」を文楽で披露する。普段ほとんど上演されない「観音めぐり」を取り入ることで、作品全体の物語性を丁寧に紹介。また、現代美術家の谷原菜摘子の絵画をプロジェクションマッピングで舞台に投影、ライブカメラによる人形や太夫、三味線のクローズアップ映像をスクリーンに投影するなど、視覚的に楽しめる演出も用意している。加えて、講談による解説的な語りや、出演者による幕前トークも実施予定。終演後には出演者とのフォトセッションも行い、司会をラジオ大阪アナウンサーの藤川貴央がつとめる。

「中之島文楽2025」に向けて文楽、講談、現代美術の観点から意気込みを語った。
太夫の竹本織太夫は「天満屋の段」を勤めるのは4回目という。「最初にお役をつけていただいたのがこの「中之島文楽」でしたが、コロナ禍で上演できませんでした。今年はその時と同じメンバーで「天満屋の段」をつとめることができ、大変幸せでございます」。
三味線の鶴澤燕三は「「天神森の段」は道行と言いながら道行じゃないねんと師匠に言われました。これは心中場、そのつもりでやれと。「義経千本桜」道行初音旅とか「忠臣蔵」の道行のように派手にギャンギャンやってはいけないという指導をいただきました。今回も玉男さんの徳兵衛と一輔くんのお初で、とてもいい「天神森」になるのではないか、僕も頑張ろうという気になっております。どうぞよろしくお願いいたします」と挨拶した。
人形遣いの吉田玉男は先代に思いを馳せながら、こう話した。「皆さんご存知の通り『曽根崎心中』は本当に名作でございます。先代玉男が1136回という上演記録を持っていまして、これはもう絶対に抜かれないなと思うぐらいのギネス級の記録です。僕は昭和28年生まれなのですが、師匠が徳兵衛を遣ったのは昭和30年、僕が2歳の時でした。入門して57年、今、71歳になるんですけども、それぐらい公演をずっとやっておりますので、足、左を師匠のもとで修行させていただいて、いろいろ覚えました。その思いがあって、今回もこうして『曽根崎心中』の徳兵衛をやらせていただくというのは本当に嬉しいです。プロジェクションマッピングもいろいろ効果があると思います。どうぞよろしくお願いします」。
人形遣い吉田一輔は、「以前も「中之島文楽」で玉男兄さんと道行をやらせていただきました。僕が初めてお初を遣ったのが2015年、10年前になるのですが、鑑賞教室でつとめさせていただきました。それから、いろんなところで玉男兄さんとやらせていただき、経験を積ませていただきまして、「中之島文楽2025」の後の9月の本公演でもお初を勤めさせてもらいます。何度もやって、より良いものに仕上げていくというこが私たちのつとめだと思っております。「中之島文楽2025」でも、文楽と講談と現代美術がひとつになって、さらに良いものを作れたらいいなと思っております」と意気込んだ。
講談師・旭堂南海は、2年前にも「中之島文楽」に出演。今回また参加できることを「非常に嬉しい限り」と、こう続ける。「『曽根崎心中』という近松門左衛門先生のお話を講釈で読むことができるというのは、光栄至極でございます。近松は、若い時には講釈師だったという、これは史実とされてございます。そこから座付き作者へと移っていくのですが、『曽根崎心中』は非常にシンプルなお話の筋ですから、本当に素人の考えではありますが、多分に講釈的なところが匂いとしてあるんじゃないだろうかと思うんです。ただ、「観音めぐり」は、最近はなかなか文楽の上演にはかなわないそうで、それを今回、講釈でやりなさいと言われました。なので、「大坂三十三ヶ所めぐり」のお寺や神社を一生懸命、覚えようと思っております。また、今回は講談で「生玉社前の段」を読ませてもらいます。「生玉社前の段」には、お初と徳兵衛が心中する全ての原因、要素、理由が含まれてございますので、私の講談がなければ成り立たないという、そういうことでございます(笑)。嫌でも聞いてもらわなければならないという重要な立ち位置にありますので、一生懸命頑張ります。どうぞよろしくお願いいたします」。
プロジェクションマッピングのみならず、ポスターやチラシなどの宣伝ツールも手掛ける谷原菜摘子は、『曽根崎心中』は画家として一度は挑戦したいテーマの一つといい、今回の取り組みは「望外の喜び」と心情を明かす。「ポスターの中に『曽根崎心中』の恐ろしさと美しさをできるだけ凝縮しました。若い男女を取り巻いている渦のようなものが、後に心中する二人を結びつける帯を表しています。この帯は手前に行くにつれて鳥に変化しているのですが、手前は比翼の鳥。あの世でも一緒にいられるようにという男女の深い契りを表しています。奥にありますのは人魂なのですが、この人魂は目にもなっていまして、男性と女性の目をそれぞれ描いています。プロジェクションマッピング用の作品でもいろいろなものを描かせていただけるのですが、人形浄瑠璃の世界、講談、これらのものを新しい形で魅力的にお届けできるようを粉骨砕身、描かせていただきます」。
今年は、9月の国立文楽劇場での本公演に加えて地方公演でも上演と、さまざまな形の『曽根崎心中』が見られる1年とあって、文楽ファンはもちろん、文楽を見たことがないという人にとっても文楽や『曽根崎心中』の魅力に触れらる絶好のチャンスだ。
また、「中之島文楽」では昨年より、語りの現代語訳の字幕も取り入れ、字幕やアプリ、音声ガイドなど多言語、多視点での鑑賞サポートを完備している。文楽の間口をぐっと広げつつ、文楽×講談×現代美術という「中之島文楽」ならではのコラボレーションで、唯一無二の『曽根崎心中』を楽しませてくれる。
◎Text:岩本和子

8/30 SATURDAY、31 SUNDAY
人形浄瑠璃 文楽 × 講談 × 現代美術プロジェクションマッピング
中之島文楽2025「曽根崎心中」 近松門左衛門=作
【主な出演者】
■太 夫/豊竹藤太夫、竹本織太夫
■三味線/鶴澤燕三、鶴澤藤蔵、
■人 形/吉田玉男(人間国宝)、吉田一輔
■囃 子/望月太明藏社中
■講 談/旭堂南海
■美 術/谷原菜摘子
【配役】
~天満屋の段~
竹本 織太夫
鶴澤 藤蔵
天満屋お初 吉田 一輔
遊女 吉田 玉誉
遊女 吉田 簑太郎
手代徳兵衛 吉田 玉男
油屋九平次 吉田 玉佳
天満屋亭主 吉田 玉勢
女中 お玉 桐竹 紋秀
~天神森の段~
野澤松之助 脚色・作曲/澤村龍之介 振付
お初 豊竹 藤太夫
徳兵衛 豊竹 芳穂太夫
竹本 咲寿太夫
鶴澤 燕三
野澤 勝平
鶴澤 清馗
天満屋お初 吉田 一輔
手代徳兵衛 吉田 玉男
囃子 望月太明藏社中
【7月26日(土)チケット発売】
■会場/大阪市中央公会堂1階大集会室
■開演/8月30日(土)13:00、17:00 31日(日)13:00
■料金(税込)/全席指定 一般\2,500 当日¥3,000
高校生以下 前売¥500、当日¥700(当日要学生証)
■お問い合わせ/一般社団法人アーツインテグレート06-6372-6707(平日10:00~17:30)
※未就学児入場不可
