HOME > MEGLOG【編集日記】 > <インタビュー!>怒髪天・増子直純「ずっと聴き続けてくれる人の存在が、自信の裏付けになる」

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2021年、北海道から上京して30年目を迎えた怒髪天が、”東京30年生イヤー“を記念して12月にアルバム3枚を同時リリースした。2004年にリリースされたミニアルバム「リズム&ビートニク」とコンピレーション企画盤やシングルでリリースされたもの、いまだ音源化されていない曲を再録音し、1枚のアルバムにまとめた「リズム&ビ-トニク'21 & ヤングデイズソング」、1995年にリリースされるも廃盤となったため再録した「痛快!ビッグハート維新'21」、そして2021年に唯一リリースした新曲でタイトルにもなっている、アーティストたちに楽曲提供をした中から選りすぐりの6曲をセルフカバーして収録した「ジャカジャーン!ブンブン!ドンドコ!イェー!」だ。

2022年3月からは全国ツアー「古今東西、時をかける野郎ども」を開催。「タイムリープ'22 ~悩み無用~」と題した前半を経て、5月からは「痛快!ビッグハート維新'21 ~遅すぎたレコ発ツアー~」及び全国ツアー後半の「タイムリープ'22 ~あなたのド髪きっと生えてくる~」がスタートする。

1984年札幌で結成し、1991年に東京進出、メジャーデビュー。1996年から3年間の活動休止を経て、1999年に活動再開。2004年には再び、メジャーに移籍し…と紆余曲折あるも、それだけに人生と楽曲の豊かさを改めて感じ、怒髪天というバンドの幅の広さと奥深さと天井なしの可能性を思い知る。ツアー出発前に行った怒髪天・増子直純へのインタビューは、バンドに歴史ありとつくづく感じられるものとなった。

――1995年ごろの怒髪天は衣装も個性的で、楽曲の良さとのギャップもあって、ライブで観たらちょっとバグを起こしそうですね。

本当そう。全てがちぐはぐというか、何をどうしたらいいかわからない状況。まあ、本人たちもそこまでも考えてないっていう。やりたいことを好きにやってただけ。

――統一性を持たせていこうという話はなかったんですか?

活動再開してから、そんなめちゃくちゃな格好しなくてもいいんじゃないかと思って。シミ(清水泰次/ベース)がね、昔から言ってたんだ。普段着の方がいいんじゃないかって。俺に関しては、普段着の方がロックっぽい格好だったから、嫌だったんだけど、普段着に近い感じでいいんじゃないのって。

――「リズム&ビ-トニク」や「痛快!ビッグハート維新'95」を改めてレコーディングするにあたっては、どういうご苦労がありましたか?

まず、「星になったア・イ・ツ」の最後どうするかっていう問題があって。最後ちょっと、コントっていうか、しょうもないギャグみたいなのが入ってるから、そこを再現する?って話になって。それはやっぱり経験を生かして、「やらない方がいいんじゃないか」って。やってよかったことないからね。ライブでやるもんだから音源で残すものじゃない。あとは、当時の歌唱法というか、発声とかに近づけるのか、それとも自分が楽曲に対して正解を出すのかというとこは結構きつかったかな。

――歌い方も今と昔では全然違いますよね。

そうだね。ただ、あんまりそこから離れると楽曲の雰囲気変わっちゃうから。あと、キーの問題もあって。昔の歌はわりと張らないで歌ってるから。今、ちょうど気持ちよく歌えるところって高いとこにあるから、キーを変えたものに関してどうやって雰囲気が変わらないようにするかっていう問題もあって。

――技術的な問題がたくさんありますね。

あるんだよね。特に「ビッグハート」はすごい大変だったからね。アンサンブルが間違ってるっていうか、結局、詰め切れてなかった。今回ちゃんと友康(上原子友康/ギター)が楽譜に起こして。楽譜にすると目に見えるからシミも坂さん(坂詰克彦/ドラム)もアンサンブルの具合がわかりやすいっていうか。だから、全部1回、譜面を起こすことからのスタートで。

――1回ばらして。

そうそうそう、検証し直してみたいな。全体的にそうだったね。あとは、なるべくニュアンスを変えないで、そのまんまでやりたいなって思って。セルフカバーになると雰囲気が全然変わっちゃったりすることもあって、それはあんまり嬉しくないというか、聴く方としては。

だから、同じ鳴らすものにしても、そこに合わせるベースであったり、アンサンブルをちゃんと生かせるように考えて、ベースラインであったり、ドラムのフレーズだったりをもう1回、整理して当時の雰囲気を変えることなくブラッシュアップする。本当、新曲を作るのに近かった。あと、歌メロも全部“なり”で歌ってたから、正解を探さなきゃいけないっていうのがあって。

新曲を作るとさ、詞先も曲先もそうだけどさ、レコーディング前にまず友康に歌ってもらって、正しいメロディーを。そこに自分の歌をのっけて覚えてく。一応、お手本がちゃんとあるんだけど、今回は自分で1個ずつ検証して、合わせていかなきゃいけなかったから、レコーディングの歌はかなり時間がかったね。

――新曲作るより…。

難しかったね。変に原曲と離れちゃうのもよくないなと思って。本当に新譜1枚作るよりも大変だったけど、やってみてよかった。やっと曲が浮かばれたし、ライブでやってるのに音源が手に入らないっていう状況を打開出来るし。

――楽曲提供のセルフカバーもいいですね。

だいたい、自分が歌うのを想定しないで歌詞書いてるから、ある意味で好き放題に書いてるから、それが自分のところに返ってくるとはね(笑)。面白かったけどね。求められてる部分は男っぽさであったり、祭っぽさであるんだなって、改めて思ったね。

あとこれ、曲作って歌詞つけて渡すじゃない。アレンジはそちらでお願いしますっていうことでやってるから。それも今回、アレンジし直したから、自分たちで。バンドで演奏するんだったらっていうところから作り直さなきゃいけなかったから、なかなか大変だった。結局、セルフカバーにいたっては、バンドとしては関わってないから。

――もう新曲ですね。

そうなんだよ、だから大変だったと思うよ。見本というか原曲がありながらも、自分たちなりに演奏するっていうのはね、なかなか…。

――こういうことができるようになったというのも、タイミングですかね。

去年、コロナ禍でライブがどの程度できるのかはっきりしなかったけど、結局、新春ツアーと春のツアーの大阪が延期になっただけで、おかげさまでライブはやれて。ただ、一昨年の振替もあったからめちゃくちゃ忙しくなって、ライブの隙間でリハして録音してね(笑)

――そうなんですね。20代の頃とか、50代になってこんなに働くと思ってましたか。

思ってなかったね。こんなにバンドやってると思ってもなかったし。いくつになったらやめるとかも思ったこともないけど。ただ、なんとなくこんなにバンドやってるとは思わなかった。

――どう転がるかわからないですね。

わからないね。だいたい俺らの育った時代の感覚で50にもなってバンドやってるなんて、考えられなかったから。

――バンドを続けやすい社会になったんでしょうかね。

そうだね、やっぱりなってると思う。多少なりとも需要もあるし、ロックを聴く層が広がったというか。バンドも年を重ねるように、聴く側も年を重ねてるから。あと、やってみてわかったのは、その年にならないとできないことっていっぱいあって。若いっていうことだけが価値じゃないっていうか、正解ではないんだよっていう。それを証拠に、やっぱり若い頃に戻りたいかっつったら、別に戻りたくない。

――しんどいですよね。

しんどい。しんどい。なかなか大変だったからね。柔軟さがなかったよね。考え方一つとってもそうだし、正解はもうこれしかないって思い込み。違うんだよね。

――最近、ライブで怒髪天の曲に郷愁も感じるようになっているんですが、増子さんご自身はどうですか?

そうね~、25歳で東京に出てきてね、今はそれ以上に東京にいるじゃない。かと言って東京が俺の街だって言えるようになったかというと、それはやっぱりなくて。せいぜい荻窪ぐらい、「俺が住んでる街だよ」って言えるぐらいになったけど、かといって故郷、札幌であったりっていうのは、街並みもなにもかも変わって。昔はやっぱり俺の街だと思ってた。友達も街にいっぱいいたし、どこ歩いたって。だけど今はあの街で暮らす人達の街であって。だから俺の帰る場所はいったいどこなのかなって考えたときに、本当、2駅ぐらいね、杉並のさ、西荻、荻窪ぐらいが、俺の帰る場所っていうか、帰ってきたんだなって思う。ホームなんだなって。何て言うんだろうね、ホームって、そうやって自分が暮らして生活していく中で、自分で作っていくもんなんじゃないかって。しかも作ろうと思って作るんじゃなくて、年月とともにできてくものなのかなって。思い出とかは故郷にはいっぱいある。ただもう、それはただの思い出なんだよね。

――リアルタイムで更新されているわけではないんですね。

ないね。だから、当時、曲を録ったときは、故郷への想いみたいなものも、帰りたいって意識もなかった。でも、やっぱり心のどこかで影を落としてたというか、故郷を後にしてきたという、そういうものはやっぱりあったんだよな。そして今やもう帰りもしないようになったんだって思うけどね。それは悪い意味じゃなくて。やっぱり今、自分が暮らしている場所がホームなんだなって。

――なるほど…。ライブをされていて、増子さんの気持ちの開き具合は変わりましたか。

それはだいぶ変わったと思う。何ていうか、いろいろ受け入れられるというか、そういう部分は大きくなったかな。

――受け入れられないんだろうと思いながらやっていた時期もありましたか。

昔はね、「どうせわかんねえだろう」と思ってやっていた部分もあったと思う。自分の中で。意識的にも、無意識にも、両方あったと思う。そこは「受け入れてほしいな」とかじゃなくて、「あわよくば受け入れてもらえれば嬉しいな」っていう程度でいいんだろうなって。受け入れられるために何かを変えるっていうのはおかしな話だし。ただ、受け入れてくれる可能性はあるだろうなと思って、その可能性に賭けられるようにはなったかな。

きっと、経験なんだよね。ずっと聴き続けてくれてる人がいるっていうのが、自信の裏付けになる。全国に待ってくれてる人がいる。あの鹿児島の酔っ払いは元気かなとかさ、生存確認するためにも行かなきゃいけないからね。あいつら大丈夫かなって(笑)。

Interview&Text/K.Iwamoto

『古今東西、時をかける野郎ども』
2022年5月14日(土)大阪umeda TRAD
"痛快!ビッグハート維新'21 ~遅すぎたレコ発ツアー~"
開場17:30 / 開演18:00 / 終演予定20:00
前売 スタンディング ¥6,900(整理番号有/税込/Drink別)
※未就学児童入場不可(小学生以上のご入場される方全てにチケット必要)

2022年5月15日(日)大阪umeda TRAD
"タイムリープ'22 ~あなたのド髪きっと生えてくる~"
開場16:30 / 開演17:00 / 終演予定19:00
前売 スタンディング ¥6,900(整理番号有/税込/Drink別)
※未就学児童入場不可(小学生以上のご入場される方全てにチケット必要)

info. 夢番地大阪 06-6341-3525 (平日12:00~18:00)



「リズム&ビ-トニク'21 & ヤングデイズソング」
ALBUM ¥3,300(税込) TECI-1752
01. 俺様バカ一代・改(2021 Mix)
02. オオカミに捧ぐ
03. 夕焼け町3丁目
04. 明日への扉(問答無用セレクション"金賞"より)
05. また来いよ
06. 青嵐 -アオアラシ-
07. ショートホープ(短かった希望)
08. 世間知らずにささやかな拍手を
09. 溜息も白くなる季節に…
10. あかね色のトランク
11. COME BACK HOME



「痛快!ビッグハート維新'21」
ALBUM ¥3,300(税込) TECI-1753
01. 江戸をKILL II(問答無用セレクション"金賞"より)
02. マテリアのリズム
03. ソウル東京
04. 左の人
05. お前を抱きしめたら
06. うたごえはいまも…
07. 風の中のメモリー
08. 夕立ちと二人
09. 救いの丘
10. 新宿公園から宇宙
11. 星になったア・イ・ツ
12. 明日の唄(歌乃誉"白"より)



ジャカジャーン!ブンブン!ドンドコ!イェー!
ALBUM ¥3,300(税込)TECI-1754
01. ジャカジャーン!ブンブン!ドンドコ!イェー!
02. あおっぱな(関ジャニ∞提供曲)
03. ももいろ太鼓どどんが節(ももいろクローバーZ提供曲)
04. 夏番長(TUBE提供曲)
05. はやぶさロッキンGOGO!(はやぶさ提供曲)
06. 魁!祭OTOKO(祭nine.提供曲)
07. 夏'n ON-DO(寺嶋由芙提供曲)


怒髪天公式サイトhttp://dohatsuten.jp/