HOME > MEGLOG【編集日記】 > <観劇レポート! 松雪泰子主演 舞台「この熱き私の激情」〜それは誰も触れることができないほど激しく燃える。あるいは、失われた七つの歌〜>

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斬新な演出が観る者の意識を集中させる
まさに“激情”あふれる舞台


劇場空間に立ち会い、そこで起こることを経験できるのが演劇の醍醐味だが、この作品はまさしく、体感することがさまざまにある舞台である。舞台写真でわかるように、まずその斬新な舞台美術から、ほかにはない衝撃を受けるはずだ。このガラスで閉ざされた10の部屋の中で6人の女優が演じ、唯一どの部屋にも出入り自由な1人のダンサーが女優たちと絡みながら、舞台は進んでいくのである。では、そこで何が演じられるのか。『この熱き私の激情 それは誰も触れることができないほど激しく燃える あるいは、失われた七つの歌』と題されたこの作品は、高級娼婦という過去を持ち、36歳の若さで自らこの世を去ったカナダ生まれの女性作家ネリー・アルカンを描いたものである。カナダの演出家マリー・ブラッサールによって、彼女残した4編の小説をコラージュした戯曲が生まれ、舞台化された。


ネリーが小説に書き、6人の女優たちがそれぞれテーマごとに発する言葉は、実に生々しく痛々しい。「幻想の部屋」の芦那すみれが語るのは、自分の肉体や老いることへの恐怖。「天空の部屋」の小島聖は自然や宇宙への憧れを話し、「血の部屋」の霧矢大夢は幼くして死んだ姉をはじめとする家族のことを思う。両親が男の子を望んだという事実から自身の存在に疑問を投げかけるのは、「神秘の部屋」の初音映莉子だ。そして、「影の部屋」の松雪泰子が死の魅力について語り、最後の「ヘビの部屋」の宮本裕子が地獄から叫ぶかのように、子どもの頃のことなど、心の澱を吐き出していく。いずれもどこかに、ことに女性であれば共感できる言葉が潜んでいる。もちろん痛みを抱えながら生きているあらゆる人にとって、突き刺さるものがあるだろう。
 しかも、閉ざされた部屋で演じる演出が、女優たちの言葉に意識を集中させる効果を高めるのである。語るときにはその部屋だけに灯りがともり、それぞれに個性的な身体表現を伴いながら心の叫びを見せる。また、一切目を合わせることもできないなかで、何人かで声を重ねる場面もある。イヤーモニターから聞こえる互いの呼吸を感じ取って演じていく様が、女優たちのつながりを感じさせる。そして実際に、ダンサーの奥野美和が、女優たちを、彼女たちの言葉を、つなげていく。この痛みを分かち合って強く生きていこうとでもいうように。耳と目と心を研ぎ澄まし、自分の人生を顧みずにはいられない舞台である。彼女たちが表現する“激情”を浴びることで、観る側も一歩踏み出せるかもしれない。
(取材・文:大内弓子)


<公演概要>
12/9 SATURDAY・12/10 SUNDAY【チケット発売中】
メ〜テレ開局55周年記念
「この熱き私の激情」〜それは誰も触れることができないほど激しく燃える。
あるいは、失われた七つの歌〜
◎原作/ネリー・アルカン ◎本案・演出/マリー・ブラッサール ◎翻訳/岩切正一郎
◎出演/松雪泰子、小島聖、初音映莉子、宮本裕子、芦那すみれ、奥野美和、霧矢大夢
■会場/穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール
■開演/12月9日(土)19:00 12月10日(日)13:00
■料金(税込)/全席指定 ¥9,000
        U-25チケット¥5,000
※観劇時25歳以下対象・当日指定席券引換・座席数限定・要本人確認書類
■お問合せ/メ~テレ イベント事業部 052-331-9966(平日10:00~18:00)
■チケット/メ~チケ【オペレーター電話受付】052-308-5222(平日10:00~18:00)
※未就学児入場不可