HOME > MEGLOG【編集日記】 > <記者会見レポート>爆笑と困惑、そして感動!劇団壱劇屋、伝説の奇天烈な作品が神戸朝日ホールで再演!
「え!あの作品が見られるの?」と小躍りするファンがたくさん存在しそうな公演がやってくる。その名も『DEATH WONDERLAND(デスワンダーランド)』。これは、劇団壱劇屋が2023年の年末に劇団15周年を記念して公演した3部作のひとつ。爆笑と困惑さえ覚えるカオスな世界観、すべてを見終えた時に沸き起こる感激と感動!そんな作品が、6月13日(金)、14日(土)に神戸朝日ホールで再演されることになった。今回は先日開かれた記者会見の様子をレポート。
劇団壱劇屋とは?
劇団壱劇屋とは、関西を中心に活動をするエンターテイメント集団。2008年に高校演劇の全国大会出場メンバーで結成され、座長である大熊隆太郎氏の作・演出作品は、観客参加型のライブステージが大きな特徴だ。そのなかでも、特に伝説と化しているのが今回再演される『DEATH WONDERLAND(デスワンダーランド)』。リアリストで無神論者のシゲオの人生が早送りされ、老衰で息絶える。その後、黄泉の国=デスワンダーランドで目覚めたシゲオの前に、どストライクな女性が現れ、彼を導いていく。その先に、行き別れた父母やさまざまな人や思い出などが現れて…奇想天外な「あの世」で、愛を取り戻せるのか??と言う物語。
2023年の年末に東京支部との合同公演で開催した短編三部作の1つで、ラップで会話を繰り広げながら、インパクトのある衣装と共に観客を困惑させながらも、最後には愛を感じさせる壮大でアバンギャルドな作品だ。
会見には、座長であり、本作品の作演出そして一部音楽も担当する大熊隆太郎、劇団員の湯浅春枝、河原岳史、吉迫綺音。また、客演として、匿名劇壇に所属する石畑達哉、のほか、中村るみ、寺井竜哉が登壇した。

●神戸朝日ホールでの上演に『DEATH WONDERLAND』を選んだ理由は…
大熊「劇団15周年記念としてこの作品をやった時に、手応えや達成感を感じたんです。ひとつブレイクスルーした新しい作品になったなと。時間制限もあり、肉をそいで骨で上演したみたいな感じになってしまったので、もっとおいしく調理して、完全版をやりたいという悔いもあったんです。衣装のインパクトもあるし、年末の高揚感もあってか、お客さんから笑いが起きたり歌やラップに自然と拍手が起こったり、こんなに盛り上がるんですか!?と思うほど、盛り上がったんです。もちろん、衣装については賛否の「否」の部分もあったんですが(苦笑)、お客さまはもちろん、関係者からも大変お褒めの言葉をいただきました。だからいつかまたもう一度やりたいなと思っていたところに、今回神戸朝日ホールさんから何か一緒にやりましょうと。神戸朝日ホールの劇場は、どちらかというと音楽ホールなんですね。客席もとても近く、反響もきれいで。演目では、歌やラップも非常も多いので、その特徴を生かした作品になるのではないかと思い、恐る恐る『DEATH WONDERLANDはいかがでしょうか』と聞くと、快諾いただいたので、上演することになりました」と話した。
前回よりもさらに濃く!ストレートにダイレクトに愛を叫ぶ!それがお客さんにも突き刺さる
さらに、大熊は、「最初に作ったときに、本当はやりたかったネタや、キャラクターと主人公の関係性などをもっと深掘りすればよかったなと思うことがいろいろあった」と振り返る。「ドライなシゲオが生前の人間関係のなかで理屈だけでなく、もっと人間的な部分や愛を知っていき、再び人として生まれ変われるような物語。その辺りをもっと濃くしていきたいなと思います。バカバカしい感じで物語は進むんですけども、最終的に主人公がラップでストレートに愛を叫ぶ。お客さんはダイレクトにそれをぶつけられるので、ある意味おおざっぱで暴力的なんですが、その分、思い切り強い球で大きな感情をぶつけられることになる。だから、みなさんの心に刺さったようで、あんなにゲラゲラわらってたのに、最後は泣いたという方が多かったですね。今から本番にぶち上げる気満々なので、早く神戸でやりたいです」と、これまでよりもっと深い作品になることを解説した。
●出演者として、役柄や出演が決まった時の気持ちは?
湯浅春枝「劇団壱劇屋に所属してもはや古株になり、作中で貫録のある配役をもらうようになりまして、私は『神様』というすごく仰々しい役を演じます。一人だけ主人公のシゲオと関わりのない役柄なのですが、前回演じた時から今まで培ってきたことに加え、新たな学ぶもプラスして総まとめとしてよい『神様』を演じられたらいいなと楽しみにしています」
河原岳史「劇団員の河原です。初演では僕は出ていなかったのですが、チラシを見ていただいてもわかる通り、この作品、基本的に男性はパンツ一丁なんですね。で、体を絞るぞと決めまして、72kgから現在63kg、マイナス9kgほど減っております。なんとか、60kg、体脂肪率10%を切るアスリート体形にして、よいパフォーマンスができるようしっかり作品に挑もうと思っています」
吉迫綺音「劇団員の吉迫です。初演の時、創作段階がすごく楽しくて、稽古も上演時間もあっと言う間にすぎてしまったので、もっとやりたかったなと言う思いが残りました。が、今回再演のお話がきてすごくうれしかったです。私はウサギの人形と常に一緒に登場しているモントという役。ラップのパートも初演よりももっと攻めて向き合いたいですし、新しくなったメンバーでさらに内容が濃くなりパフォーマンスが増えるのも楽しみ。がんばりたいです」
石畑達哉「匿名劇壇に所属しております石畑です。客演として、参加させていただきます。今回の役はなんとシゲオの母「おふくろ」。配役をラインでおくってくださったんですが「え?おふくろ?」とまずは驚きが(笑)。初演を拝見しているんですが、あの盛り上がっていた作品に参加するということがとても喜ばしいことです。そして、みなさん体がとても絞れている点で、そこに一抹の不安が...(笑)はい、僕もできるだけ仕上げるぞ、ということで、ここから頑張らなければと。とても楽しい作品になると思うので、お客さんにとにかく楽しんで帰っていただけたらなと思います」
中村るみ「私はこの作品を実際に客席から拝見していまして、初めて見たときに、めちゃくちゃ笑って泣いていた人の1人でした。初回は主人公を演じた半田慈登君の退団公演だったというのもあり、劇団員からの半田君への愛や東京班と大阪班の愛、劇団員から大熊さんの作品への熱量という愛といった、物語のなかにある愛以外の部分にも愛も感じて、涙が止まらなくなりました。なので、今回大熊さんからオファーをいただいたとき、企画書を見る前に『出ます!』と返事をしたくらい。今回客演として、作品の力に少しでもなれるようがんばりたいです」
寺井竜哉「オファーをいただいて周りの俳優たちに『今度、DEATH WONDERLANDにでんねん』と言ったら、『え?あの?あれに出るの!?』みたいな。俳優陣がざわつくくらいの作品なんだなと、めっちゃ楽しみです。パンツになる覚悟も…」
●客演のキャスティング、決め手は?
大熊「初演メンバーが5人いますが、新しく参加するのが4人ですね。半田はすでに別の道に進んでいたのですが、この役は彼のために作ったものでもあったので、何度も口説いて、話をして、出てくれることになりました。ほかのみなさんは、若手ではなく、肉体のパッションと演技のスキルを兼ね備えた同世代をキャスティングしています」
●劇団員の中で、今回の再演はどんな気持ち?
湯浅「捨てるのがもったいない部分、私たちは『トロ』と呼んでいるんですが、そこをザクザクと切り落としていった初演だったので、いつか完全版をやりたいよねと話していました。だから、今回は時間制限もないし、やりたいことが出来るぞと聞いたときにテンションがありましたね。大熊さんの作る歌やラップが好みなので、音響の良いホールでやらせていただけるとなれば、私もお客さんとなって聞きたいし、見たいし拍手もしたい!と思ってしまいました。もはやこの作品の出演者でありながらファンみたいな気持ちです」
河原「初演でかなり削られたのが、僕の演じる『ふるさと』だったそう。劇団壱劇屋の作品は、俳優からキャラを当て書きするので、俳優のパーソナルな部分が組み込まれる場面が多いのですが、元々演じていた桑田君と言う劇団員が、愛嬌モンスターみたいな人で。だから僕は僕なりの『ふるさと』を演じたいなと思っていますし、初演で削られてしまった桑田君の無念の思いが成就するよう、しっかり演じなければと思います」
吉迫「初演でやった時は、やりたい放題やったという感覚が強かったんですが、再演となると、あの公共のホールでこんなにもパンチの強い作品を!いいんですか?と言う気持ちが大きかったですね(笑)私は兵庫県出身なので、地元で公演できるのはやっぱりうれしいですし、神戸のみなさんにこれを受け容れてもらえるか?とワクワクどきどきしています」
●客演の皆さんに聞く「劇団一撃屋とは?」
石畑「所属する『匿名劇団』からすると先輩でありライバルですね。ノンバーバルや体を動かすことなどを強みとしてやってらっしゃったので、毛色の違う劇団ですが、意欲的な作品を打ち出していきたいライバル同士と言う印象でしたね。初演は僕もめちゃくちゃ楽しみました。2023年の年末に質の良いエンタメを浴びたなと」
中村「劇団員全員が一つの劇をつくるためにそれぞれの役割を日夜こなし続けているという印象です。大熊さんの持つ世界観を全員で全力で表現していく。大熊さんも普段なら欠点だと思われちゃいそうなところを「おもろいなぁ」と言ってみんなに見せて行こうとする愛がすごい。それを体現したのが『DEATH WONDERLAND』なんだなと思っています」
寺井「僕の勝手な印象ですけど、みなさん普段は物静かなんですが、いざとなると、とんでもないフィジカルモンスター!肉体のキレに驚いて、それがすごいキャップでカッコイイです。大熊さんの頭の中がまだ僕はちょっとわからないんですよ。でも、みなさんは、大熊さんが『あんな感じで』というとすぐに動き出す。それに追いつけるようがんばります!」

劇場に来たからこそ楽しめる、そんな体験を作っていきたい!
最後に大熊は、公演に対するメッセージを語った。
「今回、ホールを劇団にも使ってほしいという観点から劇団壱劇屋を選んでいただいたことがとてもうれしいですし、期待に応えられるようめっちゃ頑張ろうと思っています。今は劇場に行かなくても動画などいろいろな手段で楽しめる時代になっていますが、それでもわざわざ劇場に来てくださったからこそ『すごかったな、面白かったな』と言ってもらえる体験を作って、みなさんに持って帰っていただきたいです。そして、『そういえばあの公演、変やったけどめちゃおぼえてるわ』と言っていただけるように、ホールに行った甲斐のある公演を神戸朝日ホールから発信していきたいと思っています。ぜひお越しください!」
生で観るからこそ記憶に残る、インパクト大のカオスな舞台をぜひ体験しに行こう。
取材・文:田村のりこ

「DEATH WONDERLAND」
■会場:神戸朝日ホール
■日時:6月13日(金)開演 19:00、14日(土)開演 12:00/17:00
■全席指定:一般 4,000円、25歳以下 2,500円(公演当日は身分証明書をお持ちください)
※未就学児童入場不可
■お問い合わせ:神戸朝日ホールTEL. 078-333-6540(10:00~17:00)
■チケット発売中
神戸朝日ホールオンラインチケット
https://www.kobe-asahihall.jp/ticket/
フェスティバルホールチケットセンター
TEL. 06-6231-2221(10:00~18:00)
