HOME > MEGLOG【編集日記】 > <会見レポート>御園座にいよいよ新・團十郎と新之助がお目見え。親子そろって口上も!

MEGLOG

市川海老蔵改め十三代目市川團十郎白猿の襲名披露興行が名古屋にも上陸。御園座で2月に幕を開ける。この機に歌舞伎の初舞台を踏んだ長男、八代目市川新之助も当地初お目見え。夜の部では、親子そろって口上を行う。1月10日(水)のチケット発売に先駆ける12月25日に行われた、製作会見の模様をレポートします。


『吉野山』 佐藤忠信実は源九郎狐©️松竹

團十郎は「みなさま、メリークリスマス! 紋付でクリスマスっぽいところは全くないんですけど、わざわざお集まりいただきありがとうございます」と第一声。新之助も「お寒い中ありがとうございます。今日はよろしくお願いいたします」と挨拶し、大人びてきた様子を見せる。続けて團十郎は、市川宗家のお家芸であり歌舞伎十八番の中でも代表格と言える「勧進帳」をはじめ昼夜の構成について語った。

「昼の部は初めての方にも観やすく、夜は歌舞伎好きの方々にも納得いただける構成にしたので、名古屋の皆様にも楽しんでいただけたらうれしく思います。昼の部の『吉野山』は菊之助さんや雀右衛門のお兄さん、玉三郎のお兄さんなど様々な方とやってきて思い入れのある演目。『勧進帳』は家の芸でございますから、京屋のお兄さん(中村雀右衛門)、菊之助さんと一緒に、きちんと古典を観ていただきます」と團十郎。なお、同級生の菊之助には「幼い頃から共に時を過ごしてきましたので、他の歌舞伎俳優にはない“あ・うん”の呼吸ような、察することができる関係性がある」と語り、幼なじみならではの世界が生まれることに團十郎自身も期待を寄せていた。


『勧進帳』 武蔵坊弁慶=市川團十郎(撮影:操上和美)

一方の新之助は出演する『外郎売』について「襲名した時からやらせていただいて、すごく好きな演目。名古屋で歌舞伎をやるのは初めてなので緊張しますが、楽しんでほしい」と素直に話す。そんな息子に團十郎は「『外郎売』を極めてもらいたいので、名古屋で一区切りとなるよう徹底的にやらす」と言い、父であり師である顔をのぞかせた。同時に團十郎は新之助のこの一年を「目覚ましく進歩した」と振り返り、「積み重ねてきた日々がちゃんと実となり、お客様にも通ずる芸風に少しずつなってきている。本人もやる気があるので、御園座でまた一つ階段を上ってもらえたら」と冷静に評した。

2022年11~12月の歌舞伎座に始まり、博多座、旅巡業、京都・南座での顔見世と続いてきた襲名披露興行。しかし團十郎も新之助もいまだに実感がないようで、両人ともサインを書く時やっと「團十郎なんだ」「新之助なんだ」と思うと笑わせた。半面「まだ海老の殻の付いている團十郎ですが、実感する機会は増えた。だから荷が重い」と本音を漏らす場面もあった。


『外郎売』 外郎売実は曽我五郎=市川新之助©️松竹

途中、名古屋の思い出に話が及び、貴重なエピソードも……。「いちばん思い出深いのは19歳の頃、中日劇場で玉三郎のお兄さんと『天守物語』をやりまして」と切り出し、当時91歳だった大俳優・島田正吾の冗談話や、新人ゆえ宿舎と劇場の間を歩いて通勤したことなど回顧。おかげで向上心に火が着いた團十郎は「僕にとっていい経験だった」と懐かしむ。また新之助時代は御園座にも頻繁に出演。「音羽屋のおじさん(尾上菊五郎)や播磨屋のおじさん(中村吉右衛門)、うちの父、もっと上の天王寺屋のおじさん(中村富十郎)や宗十郎さん、京屋のおじさん(四代目中村雀右衛門)、ああいう方々がギシギシ、ガツガツ、バリバリ芝居しているのを後輩として横で見ていた」という証言には生々しさがある。

対して新之助は「御園座に出演したことがなく、新しくなった劇場を見たこともない」ので、あまり話ができないと苦笑い。それでも「京都には京都の伝統があるように、名古屋には名古屋の伝統があると思うので、その伝統を楽しみたいです」と笑顔。古典芸能の次代を担う存在から頼もしい言葉が聞けて、明るい希望を感じる会見となった。

◎Text/小島祐未子

2/1 THURSDAY~2/17 SATURDAY【1月10日(水)〜チケット発売】
二月御園座大歌舞伎
■会場/御園座
■開演/11:00/16:00
※2/5(月)・2/13(火)は休演。
■料金(税込)/S席¥24,000 A席¥20,000 B席¥15,000 C席¥9,000 D席¥4,000
※学生割引あり。詳細は劇場ホームページ参照。