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 6/20(金)に愛知・メニコンシアター Aoiで開催される加藤訓子プロデュース「STEVE REICH PROJECT 2025 愛知公演『QUARTET』」は、ミニマル・ミュージックの巨匠 スティーブ・ライヒの名作を加藤と4人の打楽器奏者による演奏で甦らせます。躍動感溢れる圧巻のパフォーマンスは、皆さんを新たな音楽体験へと誘うに違いありません。

今回はこの公演に抽選で最大10名様をご招待いたします。おひとり様でも同伴でのご応募でも可能です。ご希望の方はご希望の方は住所・氏名・年齢・ご連絡先、希望枚数(1枚または2枚)と共に、加藤訓子公演希望と明記の上、当ホームページの「CONTACT」よりメールにてご応募ください。
応募〆切は6/16(月)深夜24:00メール到着分までです。当選者の方には別途ご連絡申しあげます。

<公演情報>
6/20 FRIDAY 【チケット発売中】
加藤訓子プロデュース
STEVE REICH PROJECT 2025 愛知公演『QUARTET』
◼️会場/愛知・メニコンシアター Aoi(愛知県名古屋市中区葵3丁目21−19)
◼️開演/19:00(開場/18:30 終演/20:30)
◼️料金(税込)/一般¥5,000 U25¥3,000 ほか
◼️お問合せ/芸術文化ワークス事務局 tel. 080.5075.5038 | info@npo-artsworks.org
*公演H.Pはこちら


2024年1月、神奈川県の病院で本名を名乗り、4日後に死亡した「東アジア反日武装戦線」メンバーで指名手配犯の桐島 聡(きりしまさとし)。素性を隠し、偽名で49年間も逃げ続けたこの男の日々を描いた映画『「桐島です」』が7月4日(金)、全国で公開となる。監督は高橋伴明。「桐島聡役のオファーを受けた時、うれしい反面、自分に務まるのかという怖さもあった」と言う主演・毎熊克哉に、どんな思いでこの役を演じ、桐島の逃亡生活をどう紡いでいったのか話を聞いてみた。


■当時の空気感を知るところから始めた役作り
桐島は「東アジア反日武装戦線」メンバーで、1970年代に起こった一連の連続企業爆破事件に関与した容疑者として指名手配されていた。1987年生まれの毎熊にとって桐島 聡の存在は記憶の中にあったのか?連続企業爆破事件が起こった1974年当時の時代感をどうやってつかんでいったのだろう。

「そもそも連続企業爆破事件の知識がなかったので、高橋監督をはじめ当時を知る人たちの話を聞いたり、本を読んだり。でも、本のなかに桐島の情報がほとんど出てこないんです。だから、桐島の〝かけら″を集めていきました」と振り返る。

■桐島 聡の印象は、笑顔の指名手配写真
では、桐島聡という人物そのものについて、認識はあった?

「僕は、38歳なんですが、子供のころからずっと指名手配のポスターが貼ってありました。だからもう勝手に刷り込まれていて。知っているけど知らない、でも知っているみたいな感じっていうんですかね。そのなかで、なんでこんなに覚えているのかと考えると、やっぱり笑顔ですよね。こんな風な笑顔を見せる人なんだと。爆破事件の指名手配犯なのに、すごくさわやかで、どう見ても普通の大学生。そこが違和感として残っていたのだと思う」と話す。動画も参考にしたそうで「ミュージック・バーで『イエーイ』とはしゃいでいる動画が残っていて、人の良さというか、それも役作りの参考になりましたね。でも難しかったです。あまりに謎すぎてなぞることができないので、想像力と台本の力で演じていきました。最後どうやって『桐島です』と名乗ったのかな?と想像しながら、約50年分のシーンを生きていくという感じです」と話す。

■彼が聞いていたブルースや、愛した女性の存在も桐島像の肉付けに
桐島という人物を肉付けしていくときに、役に立ったのは、劇中に登場する曲や愛した女性の存在だったそう。どんなところに注目を?

「彼がよく聞いていたのは、ブルースなんです。もともと僕もファンク、ソウルなどのブラックミュージックが好きなんですが、桐島はブルースが好きだったというところに興味を持ちました。元をたどれば、奴隷としてアフリカから連れてこられた黒人たちが奏でたメロディ。そんな音楽を聞いて、抒情的なものを受け取る力がある人なんだなと思うと、大きなヒントになりましたね。女性との関わりもそう。桐島は女性から愛される魅力もあったんだと。劇中では桐島自身もドキドキしちゃって、つまらない冗談を言う場面もありますが、そういうところも自分にとってはすごく助けになりました」と役作りのポイントを教えてくれた。


■出身地が同じ広島。共通する思いはある。もし、出会った人が違ったら…
桐島聡と毎熊は出身地が同じ広島県の福山市出身。桐島を演じることになった毎熊は「これも何かの縁なのかなと思った。それに、田舎から東京へと出て行った人の気持もわかる」と話す。「田舎者ですよね、簡単に言ったら。カルチャーショックはあったと思うんです。東京では桐島のちょっと上の世代が学生運動をやっていたけれど地元では無縁といってもおかしくない。カルチャーショックが凄かったと思うんです。だから、東京に行って、出会った人が違えば、ぜんぜん違う道へ進んだんじゃないか。違う戦い方もあったのかも」と桐島に思いを馳せる。

「ただ、演じるにあたり、弱者に寄り添う優しさを意識しすぎるのもちょっと違うかなとも思っていました。例えば、おばあちゃんがミカンを落とした時、拾ってあげることぐらいはするでしょう。優しさというよりは普通の思いやり。この人は本当に我々に近い感覚だったのではと。そのくらいの気持ちでいましたね」。

■被害者がいる事件。桐島をいい人に仕立てることはしないよう気を配った
連続企業爆破事件は、犯人側が想定しない犠牲者を出してしまった。本来はけが人さえ出さないよう計画が練られたが、結果的に犠牲者が出てしまう。犯人側の桐島 聡を演じるにあたり、被害者への思いは?

「あります。本を読むと、遺族のお話も出てくるんです。桐島は、死者が出た三菱重工爆破事件には直接関わってはいないとしても、世間は同じだと思うだろう、というのはありますよね。そんな奴らの映画を観てられるかという声も出るだろうとは思いました。映画としては桐島のいろいろな部分が垣間見えるんですけど、事件を起こした犯人と普段の暮らしぶり、そのギャップがあるからいい人に見えるだけであって。なので、極力、善人として仕立てないようにはしようと。そういう感覚で挑もうと思ってましたね」。

■タイトルにもなった「桐島です」という言葉。どんな思いで名乗った?
最初に仲間への挨拶として登場する「桐島です」、そして自分の本名を告白するドラマティックな場面での「桐島です」。このセリフについてどんな思いを持っているのか聞いてみると…。

「最初は、ただの青年・桐島として、ごく普通の挨拶。後半の〝桐島です″は、本当に撮影の最後に撮った場面なのですが、どういうトーンで、あり方でこのセリフを言うかずっと悩んでいましたね。考え抜いた結果、茫然と死を目の前にして何も考えることなく、ただ自分の名を名乗ることにしました。最後は本名で死にたかったんじゃないか、あるいは大好きだった女の子に本名を言えたらよかったんじゃ?そういう思いもありました。ただ、勝利宣言のように自分は逃げ切ったんだ!という方向でいくと、他のシーンが薄まってしまうとも思って。もし、あの場面が序盤や中盤にきていたら、もっといろんなことを考えて演技しちゃってた気がする。たくさんのシーンが蓄積されて、最後の最後にただ自分の名を名乗るという事。それがいちばん自分にはまりました」。


■逃亡を続ける桐島は、もはや〝時代おくれ″だったのか?
逃亡生活の中で、桐島に愛する女性ができてしまう。彼女はシンガー。河島英五の名曲『時代おくれ』を歌う彼女に心を寄せていく。逃亡を続ける桐島は、果たしてもはや時代遅れの指名手配犯だったのだろうか?

「この曲、ぎりぎりに決まったんですよ。でも、ぴったりだなと。時代おくれ、という言葉からくる〝取り残されていく孤独感″というのはめちゃくちゃ感じましたね」と桐島への思いを語る。

「桐島が若いころは、正義感や理想があったと思うし、劇中でいうと〝もっと優しさのある国″になればいいのに、という気持ちがあったんだと思うんです。現代のSNSで人を叩く姿勢を見ていると、それこそ〝優しさを組織せよ!″と言いたくなるくらいです。当時の若者は理想に向かって戦った、でも約50年近く経ったのに、まだこんな状況で、もう自分たちがやったことはあまり意味がなかったんじゃないか、望む優しさは感じられないというさみしさ。僕は勝手にそれを感じましたよね」。

■映画を観たお客さんにも考えてほしい。どういう思いがあったのか
でも「まだまだ疑問や思いは僕の中でも残っている」という毎熊。「例えば、僕のじいちゃんにしても、なんであの形見を自分にくれたのかな、最後になんで笑ったのかなとか、結局、本人じゃないからわからないじゃないですか。だからこそ、映画を観終わったあとに、みんなで『なんだったんだろうね』『僕はこう思う』と話ができるようなものになったらいいなと思っています。

■映画は一つの武器。当時の、熱い時代の若者たちへの想いも
「映画の存在って、ひとつの武器のような気がしている」と毎熊は話を続ける。

「当時の若者は、現状に対して〝もっとより良い世界にならないのか″という怒りがあったんだと思う。現代は正しいかどうかもわからない情報が多く集まるし、それを見て良しあしを語るくらいで〝なぜそうなったのか″までは知らないことも多い。どうしてそれが起こっているのか、戦いをすることになったのかなど、知ろうという気持ちが大事な気がしていて。劇中で、なぜ桐島は怒っているのか、それを気に掛けるだけでもいいと思うんです。例えば、自分のことしか考えられなかった若者が、将来親になって自分の子供のことを考え始める。すると、いずれ社会は無関係じゃない現状になってくる。映画はエンタメのひとつですが、この作品を観たことがきっかけで、当時のことや今の世の中を考えるきっかけになればいいなと思います」。

◎Interview&Text/田村のりこ


■映画『「桐島です」』公式サイト 
https://kirishimadesu.com/
2025年7月4日(金)全国公開
監督:高橋伴明
音楽:内田勘太郎
キャスト:毎熊克哉、奥野瑛太、北香那、原田喧太、山中聡、
影山祐子、白川和子、甲本雅裕、高橋惠子
2025年/日本/105分
配給:渋谷プロダクション


江戸落語の大名跡“円楽”を七代目として襲名。
全国ツアーの中、大阪サンケイホールブリーゼでの襲名披露興行に注目が集まる!


三遊亭円楽、日本人でその名を知らない人はほどんどいない。五代目、六代目は寄席や高座はもちろんのこと、テレビ「笑点」で名前を知られた国民的落語家だ。その大名跡を七代目として継いだ王楽改め七代目円楽に襲名への思い、襲名興行への意気込みをきいた。

---まずは、七代目円楽の襲名、誠にあめでとうございます。襲名披露興行の真っ最中ですが、各地のお客様の反応はどんな感じですか?

ありがとうございます。襲名披露興行は、有楽町よみうりホールが口開けで、もうすでに数カ所での襲名披露興行を終えています。どの土地に行っても本当にお客様が温かくて、やりやすいというのが第一印象です。きっと僕自身というより、円楽という名前が戻ってきたことに、心から喜んでおられるお客様が多いような気がします。僕はその名前に乗っかって楽しく落語をやらせて頂いているって感じです。あと、初めて落語を聴くというお客様がどこも多いです。あの円楽とやらの落語を聴いてみようか?という感じでしょうか。新しいお客様が本当に多いと感じています。

----その大名跡である「円楽」の襲名は、とても重いものだと想像できるのですが、そもそもお話はいつごろあったのですか?

おととし暮れの12月20日に六代目から直接お話を頂いたので、まだ時間がそんなに経っていないんです。それから大急ぎで、しかも水面下で襲名の準備をやってきましたから、とにかくバタバタで、大名跡を継ぐというプレッシャーを感じる暇がなかったです。
初日の幕が開いて、めくりに円楽という名前が書かれていて、あぁ、今日から円楽で落語をやるんだなぁと、やっと実感が沸きてきたところです。

---お父様も落語家(三遊亭好楽)ですし、いつかは継ぐというお考えだったのですか?

全然考えてなかったです。大学までは落語とは無縁の生活でした。父親の高座も聴いたことがなかったですしね。大学時代は映画や小説に耽っていました。ひょんな事から三遊亭円喜吉師匠の落語を聴く機会があって、落語ってこんなに面白いんだと目から鱗状態になりました。そこからハマってしまって映像やら音声やら、もちろん東京中の寄席を巡って、落語三昧の大学生活になりました。それで大学を卒業してから五代目の円楽に入門しました。

---大名跡を譲られた六代目からは、よく怒られたというエピソードがありますが、どんな関係だったのですか?

ほんとうに多くのことを学んだ、というか怒られました(笑)。弟弟子だとしても人を怒るってすごいエネルギーが必要じゃないですか。とにかくそこは親身になって怒り育てて頂いたと思います。褒められた記憶が一度もありませんから。でも血縁でもない僕に、この大名跡を託そうと決断されるような度量の深い方だったと思います。

----六代目は何を評価して円楽という大名跡を譲られたとご自身では思われていますか?

もちろん噺家としての技術はもちろんだと思いますが、僕のコミュニケーション力みたいな部分を見てくれていたんだと思います。誰とでも何処ででも、周囲の人と仲良くなっちゃう。非凡なオープンマインドな性格は父親譲りかもしれないですね。落語が上手なだけでは限界があります。僕にはなんだかそういう人懐っこさみたいな部分を評価して頂いたんじゃないかと勝手に思っています。

----七代目円楽としての、今後の抱負をお聞かせください。

芝居(役者)をやってみたいですね。あとバラエティ番組なんかにも物怖じせず挑戦したいと思っています。昔から、売れている師匠方は多方面で活躍されている。(春風亭)昇太師匠なんて、「ドラマやってから落語が上手くなったんだよ」なんて仰ってますしね(笑)。

---落語界も新たな時代に入っていると思いますが、令和の円楽として、落語という演芸はこうあるべきだというビジョンをお聞かせください。

落語界という狭い世界から飛び出ていかないといけないと思っています。かつて五代目が、とある取材で、あなたのライバルは誰ですか? と問うたときの答えが秀逸です。「僕のライバルは高倉健、美空ひばり、力道山」って言ったそうです。今、落語界を超越した活躍をされている笑福亭鶴瓶師匠も「ライバルはSMAPだ」って仰ってたし、きっと五代目と同じ思いだったんじゃないでしょうか。

---大阪での襲名興行が迫ってきています。大阪のお客さんは江戸の落語家さんにとってどんな印象をお持ちですか?

昔の江戸の落語家は上方で演じるのを怖がったという都市伝説みたいなのはありますけど、僕らの世代は、活発に東西交流が盛んになっていましたし、大阪での高座も本当に多くなりました。だから関西だから、上方だからといって嫌な思いがひとつもないし、むしろ人情噺なんて東京より反応がいいんです。やりやすいですね。

---大阪での襲名披露興行はどんな風になりそうですか?

会場のサンケイホールブリーゼは、横にワイドで、ちょうど落語をやりやすいベストな会場なんです。共演いただく師匠方も素晴らしいラインナップですし、もう十分にお客様を笑わせてくださるでしょうから、僕はその大船に乗った心持ちで、皆さんの心に刺さる落語を演じきりますので、どうぞご期待ください。

◎Interview&Text/石原卓


6/15 SUNDAY
七代目三遊亭円楽 襲名披露興行
【チケット発売中】
■会場/サンケイホールブリーゼ
■開演/13:00
■料金(税込)/全席指定¥5.000
■お問い合わせ/ページ・ワン 06-6362-8122 (火・木 11:00~16:00)
※未就学児の入場はご遠慮ください。

公演情報 ページ・ワンWEBサイト


「え!あの作品が見られるの?」と小躍りするファンがたくさん存在しそうな公演がやってくる。その名も『DEATH WONDERLAND(デスワンダーランド)』。これは、劇団壱劇屋が2023年の年末に劇団15周年を記念して公演した3部作のひとつ。爆笑と困惑さえ覚えるカオスな世界観、すべてを見終えた時に沸き起こる感激と感動!そんな作品が、6月13日(金)、14日(土)に神戸朝日ホールで再演されることになった。今回は先日開かれた記者会見の様子をレポート。



劇団壱劇屋とは?
劇団壱劇屋とは、関西を中心に活動をするエンターテイメント集団。2008年に高校演劇の全国大会出場メンバーで結成され、座長である大熊隆太郎氏の作・演出作品は、観客参加型のライブステージが大きな特徴だ。そのなかでも、特に伝説と化しているのが今回再演される『DEATH WONDERLAND(デスワンダーランド)』。リアリストで無神論者のシゲオの人生が早送りされ、老衰で息絶える。その後、黄泉の国=デスワンダーランドで目覚めたシゲオの前に、どストライクな女性が現れ、彼を導いていく。その先に、行き別れた父母やさまざまな人や思い出などが現れて…奇想天外な「あの世」で、愛を取り戻せるのか??と言う物語。
2023年の年末に東京支部との合同公演で開催した短編三部作の1つで、ラップで会話を繰り広げながら、インパクトのある衣装と共に観客を困惑させながらも、最後には愛を感じさせる壮大でアバンギャルドな作品だ。

会見には、座長であり、本作品の作演出そして一部音楽も担当する大熊隆太郎、劇団員の湯浅春枝、河原岳史、吉迫綺音。また、客演として、匿名劇壇に所属する石畑達哉、のほか、中村るみ、寺井竜哉が登壇した。


●神戸朝日ホールでの上演に『DEATH WONDERLAND』を選んだ理由は…
大熊「劇団15周年記念としてこの作品をやった時に、手応えや達成感を感じたんです。ひとつブレイクスルーした新しい作品になったなと。時間制限もあり、肉をそいで骨で上演したみたいな感じになってしまったので、もっとおいしく調理して、完全版をやりたいという悔いもあったんです。衣装のインパクトもあるし、年末の高揚感もあってか、お客さんから笑いが起きたり歌やラップに自然と拍手が起こったり、こんなに盛り上がるんですか!?と思うほど、盛り上がったんです。もちろん、衣装については賛否の「否」の部分もあったんですが(苦笑)、お客さまはもちろん、関係者からも大変お褒めの言葉をいただきました。だからいつかまたもう一度やりたいなと思っていたところに、今回神戸朝日ホールさんから何か一緒にやりましょうと。神戸朝日ホールの劇場は、どちらかというと音楽ホールなんですね。客席もとても近く、反響もきれいで。演目では、歌やラップも非常も多いので、その特徴を生かした作品になるのではないかと思い、恐る恐る『DEATH WONDERLANDはいかがでしょうか』と聞くと、快諾いただいたので、上演することになりました」と話した。

前回よりもさらに濃く!ストレートにダイレクトに愛を叫ぶ!それがお客さんにも突き刺さる

さらに、大熊は、「最初に作ったときに、本当はやりたかったネタや、キャラクターと主人公の関係性などをもっと深掘りすればよかったなと思うことがいろいろあった」と振り返る。「ドライなシゲオが生前の人間関係のなかで理屈だけでなく、もっと人間的な部分や愛を知っていき、再び人として生まれ変われるような物語。その辺りをもっと濃くしていきたいなと思います。バカバカしい感じで物語は進むんですけども、最終的に主人公がラップでストレートに愛を叫ぶ。お客さんはダイレクトにそれをぶつけられるので、ある意味おおざっぱで暴力的なんですが、その分、思い切り強い球で大きな感情をぶつけられることになる。だから、みなさんの心に刺さったようで、あんなにゲラゲラわらってたのに、最後は泣いたという方が多かったですね。今から本番にぶち上げる気満々なので、早く神戸でやりたいです」と、これまでよりもっと深い作品になることを解説した。

●出演者として、役柄や出演が決まった時の気持ちは?
湯浅春枝「劇団壱劇屋に所属してもはや古株になり、作中で貫録のある配役をもらうようになりまして、私は『神様』というすごく仰々しい役を演じます。一人だけ主人公のシゲオと関わりのない役柄なのですが、前回演じた時から今まで培ってきたことに加え、新たな学ぶもプラスして総まとめとしてよい『神様』を演じられたらいいなと楽しみにしています」

河原岳史「劇団員の河原です。初演では僕は出ていなかったのですが、チラシを見ていただいてもわかる通り、この作品、基本的に男性はパンツ一丁なんですね。で、体を絞るぞと決めまして、72kgから現在63kg、マイナス9kgほど減っております。なんとか、60kg、体脂肪率10%を切るアスリート体形にして、よいパフォーマンスができるようしっかり作品に挑もうと思っています」

吉迫綺音「劇団員の吉迫です。初演の時、創作段階がすごく楽しくて、稽古も上演時間もあっと言う間にすぎてしまったので、もっとやりたかったなと言う思いが残りました。が、今回再演のお話がきてすごくうれしかったです。私はウサギの人形と常に一緒に登場しているモントという役。ラップのパートも初演よりももっと攻めて向き合いたいですし、新しくなったメンバーでさらに内容が濃くなりパフォーマンスが増えるのも楽しみ。がんばりたいです」

石畑達哉「匿名劇壇に所属しております石畑です。客演として、参加させていただきます。今回の役はなんとシゲオの母「おふくろ」。配役をラインでおくってくださったんですが「え?おふくろ?」とまずは驚きが(笑)。初演を拝見しているんですが、あの盛り上がっていた作品に参加するということがとても喜ばしいことです。そして、みなさん体がとても絞れている点で、そこに一抹の不安が...(笑)はい、僕もできるだけ仕上げるぞ、ということで、ここから頑張らなければと。とても楽しい作品になると思うので、お客さんにとにかく楽しんで帰っていただけたらなと思います」

中村るみ「私はこの作品を実際に客席から拝見していまして、初めて見たときに、めちゃくちゃ笑って泣いていた人の1人でした。初回は主人公を演じた半田慈登君の退団公演だったというのもあり、劇団員からの半田君への愛や東京班と大阪班の愛、劇団員から大熊さんの作品への熱量という愛といった、物語のなかにある愛以外の部分にも愛も感じて、涙が止まらなくなりました。なので、今回大熊さんからオファーをいただいたとき、企画書を見る前に『出ます!』と返事をしたくらい。今回客演として、作品の力に少しでもなれるようがんばりたいです」

寺井竜哉「オファーをいただいて周りの俳優たちに『今度、DEATH WONDERLANDにでんねん』と言ったら、『え?あの?あれに出るの!?』みたいな。俳優陣がざわつくくらいの作品なんだなと、めっちゃ楽しみです。パンツになる覚悟も…」

●客演のキャスティング、決め手は?
大熊「初演メンバーが5人いますが、新しく参加するのが4人ですね。半田はすでに別の道に進んでいたのですが、この役は彼のために作ったものでもあったので、何度も口説いて、話をして、出てくれることになりました。ほかのみなさんは、若手ではなく、肉体のパッションと演技のスキルを兼ね備えた同世代をキャスティングしています」

●劇団員の中で、今回の再演はどんな気持ち?
湯浅「捨てるのがもったいない部分、私たちは『トロ』と呼んでいるんですが、そこをザクザクと切り落としていった初演だったので、いつか完全版をやりたいよねと話していました。だから、今回は時間制限もないし、やりたいことが出来るぞと聞いたときにテンションがありましたね。大熊さんの作る歌やラップが好みなので、音響の良いホールでやらせていただけるとなれば、私もお客さんとなって聞きたいし、見たいし拍手もしたい!と思ってしまいました。もはやこの作品の出演者でありながらファンみたいな気持ちです」

河原「初演でかなり削られたのが、僕の演じる『ふるさと』だったそう。劇団壱劇屋の作品は、俳優からキャラを当て書きするので、俳優のパーソナルな部分が組み込まれる場面が多いのですが、元々演じていた桑田君と言う劇団員が、愛嬌モンスターみたいな人で。だから僕は僕なりの『ふるさと』を演じたいなと思っていますし、初演で削られてしまった桑田君の無念の思いが成就するよう、しっかり演じなければと思います」

吉迫「初演でやった時は、やりたい放題やったという感覚が強かったんですが、再演となると、あの公共のホールでこんなにもパンチの強い作品を!いいんですか?と言う気持ちが大きかったですね(笑)私は兵庫県出身なので、地元で公演できるのはやっぱりうれしいですし、神戸のみなさんにこれを受け容れてもらえるか?とワクワクどきどきしています」

●客演の皆さんに聞く「劇団一撃屋とは?」
石畑「所属する『匿名劇団』からすると先輩でありライバルですね。ノンバーバルや体を動かすことなどを強みとしてやってらっしゃったので、毛色の違う劇団ですが、意欲的な作品を打ち出していきたいライバル同士と言う印象でしたね。初演は僕もめちゃくちゃ楽しみました。2023年の年末に質の良いエンタメを浴びたなと」

中村「劇団員全員が一つの劇をつくるためにそれぞれの役割を日夜こなし続けているという印象です。大熊さんの持つ世界観を全員で全力で表現していく。大熊さんも普段なら欠点だと思われちゃいそうなところを「おもろいなぁ」と言ってみんなに見せて行こうとする愛がすごい。それを体現したのが『DEATH WONDERLAND』なんだなと思っています」

寺井「僕の勝手な印象ですけど、みなさん普段は物静かなんですが、いざとなると、とんでもないフィジカルモンスター!肉体のキレに驚いて、それがすごいキャップでカッコイイです。大熊さんの頭の中がまだ僕はちょっとわからないんですよ。でも、みなさんは、大熊さんが『あんな感じで』というとすぐに動き出す。それに追いつけるようがんばります!」


劇場に来たからこそ楽しめる、そんな体験を作っていきたい!

最後に大熊は、公演に対するメッセージを語った。
「今回、ホールを劇団にも使ってほしいという観点から劇団壱劇屋を選んでいただいたことがとてもうれしいですし、期待に応えられるようめっちゃ頑張ろうと思っています。今は劇場に行かなくても動画などいろいろな手段で楽しめる時代になっていますが、それでもわざわざ劇場に来てくださったからこそ『すごかったな、面白かったな』と言ってもらえる体験を作って、みなさんに持って帰っていただきたいです。そして、『そういえばあの公演、変やったけどめちゃおぼえてるわ』と言っていただけるように、ホールに行った甲斐のある公演を神戸朝日ホールから発信していきたいと思っています。ぜひお越しください!」

生で観るからこそ記憶に残る、インパクト大のカオスな舞台をぜひ体験しに行こう。

取材・文:田村のりこ


「DEATH WONDERLAND」
■会場:神戸朝日ホール
■日時:6月13日(金)開演 19:00、14日(土)開演 12:00/17:00
■全席指定:一般 4,000円、25歳以下 2,500円(公演当日は身分証明書をお持ちください)
 ※未就学児童入場不可 
■お問い合わせ:神戸朝日ホールTEL. 078-333-6540(10:00~17:00)
■チケット発売中
神戸朝日ホールオンラインチケット
https://www.kobe-asahihall.jp/ticket/
フェスティバルホールチケットセンター
TEL. 06-6231-2221(10:00~18:00)


2004年急逝した小説家中島らも。
その破天荒な人生と、彼独自の世界観が反映された作品群は、今読んでも色褪せることなく、彼の死後も世代を超えて愛読され続けている。
そんな彼が亡くなる直前に書き上げた最期の短編小説が『DECO-CHIN』だ。
ミュージシャンの道に挫折し、カウンターカルチャー誌の副編集長となった主人公が、あるバンドとの出会いによって自らの肉体改造をもって覚醒する愛の物語。
4月26日(土)より K’sシネマほか全国順次公開


監督・脚本は、ロック魂をテーマに数々の映画作品を世に送り出してきた島田角栄。
自ら聖書(バイブル)と語る原作の映像化に際して、監督曰く“街のごちゃごちゃしたところをフォーカスして切り取りたかった” 高円寺、中野、早稲田を舞台に選んだ。
主人公の松本には初の野外ワンマンとなる17周年記念公演『アーバンギャルドの昭和百年・野音戦争』を成功させたアーバンギャルドのリードヴォーカル松永天馬、他、
永岡佑、古市コータロー(THE COLLECTORS)、小林雅之(JUN SKY WALKER(S))、仲野茂(アナーキー)、お笑い芸人のゆってぃNYチーズケーキTOKYO FRIDAY NIGHT、鳥居みゆき、マツモトクラブ等ジャンルを超えた出演陣が顔を揃えた。


【ストーリー】
ミュージシャンの道をあきらめインプラント、スピリットタン等カウンターカルチャーを扱う音楽誌「OPSY」の編集者として毎日を送る松本は、ある日、社長命令で
プロダクションからの売り込みバンド「The PEACH BOYS」のワンマンライブに足を運ぶ。しかし、そのあまりの酷さに編集者としての人生を「なんという徒労だ」
と愚痴り絶望する。そんなライブ終演後、店長の五百鬼頭が一つのバンドを紹介する。告知もせず突然登場した世界でも稀有なバンド「THE COLLECTED FREAKS」
との衝撃の出会いだった。
そして松本は”自分を愛するために“ある決断をする・・・・・・


『デコチン DECO-CHIN』
松永天馬(アーバンギャルド) 
永岡 佑  中田彩葉
古市コータロー(THE COLLECTORS) 小林雅之(JUN SKY WALKER(S)) 仲野茂(アナーキー) マツモトクラブ
プリティ太田 ゆってぃNYチーズケーキTOKYO FRIDAY NIGHT 鳥居みゆき
原作:中島らも「DECO-CHIN」(集英社文庫刊「君はフィクション」所収)
主題歌 「ナルシスト」 松永天馬
監督・脚本/島田角栄
プロデューサー/林哲次 撮影/笠真吾 美術/山本宗 VFX/奇志戒聖 録音/内田達也 照明/松田章吾
特殊造形/ゾンビストック 音楽監督/RYU智秀 宣材写真&デザイン/松蔭浩之 
配給/フリック 製作/TOブックス R15+
2025年/日本映画/91分/ヴィスタサイズ/ステレオ
(C)2025中島らも/集英社・TOブックス 映倫 124661

『デコチン DECO-CHIN』公式HP