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「氣志團」團長として圧倒的な存在感を誇る綾小路 翔が、サンテレビの深夜放送ショートドラマの主演として初登場。数々のロックミュージシャンをキャスティングした唯一無二の作風を展開しつづける島田角栄監督が監督・脚本をつとめる。取材場所に指定されたのは大阪市西成区の某所、ピンストライプのスーツに身を包んだ綾小路 翔が、笑顔で出迎え心境を語ってくれた。

今回このドラマのオファーが来た時のお気持ちはいかがでしたか?
何のことだろう?と思いました。届いた情報としては、「サンテレビさんという関西のテレビ局の方から、深夜のショートドラマの主演のお話が来ています。ご興味ありますか?」みたいなことから始まったんですが、全てがクエスチョンでした。関東に生まれ育ったものですから大変恐縮ですが、サンテレビさんを存じ上げておらず、そこで深夜にショートドラマがあると、さらにそれの主演という事で、頭の中で3回繰り返しても理解できませんでしたね。
連続ドラマのオファー自体がなんで?なんですね。
そうですね、何話かある中のゲスト出演なのかな?それならわかるんですけど、え?主演って?コンサートで流す映像で、自分が内容も考えて自ら演技するようなものは今までもありましたし、宮藤官九郎さんのドラマ『木更津キャッツアイ』の中で、ほんの少し出演させて頂いた事はありました。とはいえ、今までお芝居の経験もほとんど無いですし、なのに何をもってぼくを主演に!ってなりました。
主演に抜擢って事にも疑問が沸いたと。
ぼくのまわりでもお芝居するミュージシャンはたくさんいて、銀杏BOYZの峯田君とか、RADWIMPSの野田洋次郎君とか、森山直太郎君とか、でもあの人たちならば理解できる。どちらもこなせる才能のある方達。だけどぼくみたいな大変使いづらいキャラクターをなぜ起用しようとするのか?オファーが来た時はほんとうに、なぜなのか解らないことだらけでした。
翔さんサイドの方々の反応はいかがでしたか?
撮影のスケジュールも2、3週間は拘束されるわけですし、このオファーはちょっと難しいんじゃないですかね?という反応だったんですが、ぼくが「ちょっと待ってください!」と、理解を深めたいんで、もう少し内容が解るものは無いですか?と聞いてプロット的なものを見せてもらったんですよ。そしたら、失礼を承知で言いますが、それを見ても本当に全く内容が解らなかったんです(笑)謎が謎を呼ぶとはこの事です。周囲からは断るだろうなと思われていたんですが、ぼくは、「やりたいです!」と言って、まわりが「えーっ!!!」と驚きましたね。
この謎だらけのオファーをなぜ受けようと思ったのでしょうか?
もうとにかく謎すぎて(笑)この謎を解くのは、もう現場に行くしか無い!そう思いましたね。それと自分を変えていこうと思っていた時期だったこともあって、これが何か変わることができる人生のラストチャンスかも知れないと感じたんです。
我が道をゆくイメージですが、自分を変えたいと思われていたんですね。
俺は何でもできるんだ!と己に言い聞かせてやってきたけど、長年やっている内に、実際はできることの方が少ないんだな…と痛感することばかりで。最近よく使われている自己肯定感という言葉がありますが、そもそも綾小路 翔は自己否定からスタートしているんです。もちろん、少年時代は自分の事を信じて突き進んでいました。それは若さの愚かさでもありますが、強さや美しさを生むものでもありました。その勢いに乗り、自信満々で千葉から上京してきたものの東京の壁は厚く、あっという間に転がり落ちて、、これはやべ~ぞ!となって。そんな中でひたすら考えて、自分が一番になれるものを創る為に、憧れや希望を徹底的に捨てると言う作業を行いました。その果てに生まれたのが氣志團なんです。誰もしていなかったこと、誰もしたいと思わないことに辿り着いたんです。でも当然そんなものは誰からも一番とは認めてもらえないわけですが(笑)。
けど、唯一無二の存在じゃないですか。
まあ、単純に誰でも一番にはなれるっていうこと。やろうと思えば、誰でも一番にはなれるんだってことは解った感じですね。優越感を持てるようなことを探しながら生きてきたんですけど、もう今は本当にそういうものを求めていなくて。ただそれが今の武器でもあるんです。全く自分を肯定しない、無謀な夢も見ない、希望的観測も持たない、だから小さなことで傷つかない。さらに良いことが起こるとは思えないって思っている分、良いことを起こす為に何をしたらいいか?と考えるようになったんです。
見た目と違った謙虚さがすごいです。
ポテンシャル的には全然叶わないけど、それでも大きな舞台で、超人達と渡り合うにはどうしたらいいか?みたいなことを、とにかく考えて生きてきたっていう。時には本当にギリギリでしたけど、どうにかこうにかこの世界にしがみついて生きてきました。
まさに島田角栄監督が描くキャラクターにピタッとハマるイメージです。
ドラマは夜ごと荒唐無稽な人たちが現れるストーリーなんですが、それでもなんかロマンティックなんですよね。ぼくもかつてはそういうのに憧れていたはずなのに、気が付いたら全く無くなっちゃってて、けどこのドラマで思い出させてもらった気がします。

島田角栄監督作品といえば、想像を超えるロックミュージシャン達が出演しています伝説的なパンクロッカーまでも。
完全に猛獣使いですよ!島田監督は。ぼくは珍獣ですけどね、向こうはロックスターですが、こっちはハムスター。繁殖能力が高いだけですから(笑)
どのくらい予備知識を入れて撮影に臨まれたのですか?
まったくです(笑)まずそこまで辿り着いてなかったです。それ以前に自分の目の前に置かれているこの台本と向き合って、いったいこれは何の話なんだろうって、何なんだこれは?この物語はどこへ行くんだよって。ちなみにぼく、日常から一切予備知識を入れずに体験したいタイプなんですよ。
じゃあ本当に何も知らずに湯村温泉に行っちゃたんですか!
そうです(笑)何も知らずに温泉へ。
いつもぶっ飛んだストーリーの島田監督の作品ですから、撮影が進むにつれてもっとクエスチョンが出たんじゃないですか?
最初の撮影は実は12話から撮ったんですが、ぼくの演技、今見るときっとふわっとしているんでしょうね(笑)?探りながら、探りながら、それでも撮影は進んでいくわけです。とはいえ自分なりに間(ま)というものを意識して演技していたつもりだったんですよ。そしたら監督に「ん~その間はちょっと、、」って言われまして。「でもこの台詞だと間が必要では…?」なんて、一端の役者気取りで聞いたところ、「いや、12分のドラマなんで」って(笑)。「え~!ここ、一切間はなくて良いんですか?」って、そしたら監督が「はい、ここはツルっといきましょう」って(爆笑)確かに、そうですよね。目から鱗でした。でも、これこそがこのドラマの醍醐味になっていくんです。
すごい現場ですねパンクすぎる(笑)
もうね、なんか圧倒されてしまったんですよ島田組の熱量に。真っ赤に燃える島田角栄監督がいて、その周りに支えるスタッフの皆さんが青い炎というか。監督は烈火の如く燃えているけど、周りは穏やかに揺らめいている、でも温度は滅法高いみたいな。とにかくこの現場に入れたことは、自分の人生にとって凄い重要な事なんじゃないかと思ったんです。
謎を抱えたまま現場に入ったにもかかわらず熱が伝わったってきたのですか?
初回の撮影を終えて朝方になって、言葉にはし難いんですが、なにか与えられたというか、普段の生活の中では感じることができない、熱みたいなものがストンと落ちてきたんです。集団で力を合わせて団結して乗り越えていく世界観がずっと好きだったんです、子供のころから。でも氣志團の中では、ぼくがいつもひとりだけ勝手に熱くなって、空回りしているんですよ。メンバー達はみんな落ち着いているので。おかげでバランスが取れているんですけどね。でも心の中では"みんな一丸となって火の玉みたいに情熱的に思いをぶつけたい"なんて感じる時もあります。だから今回、島田組に入って撮影して心地よかったし、気持ち良かったですね。一緒に、灰になるほどに熱くなることの感動を分かち合えた。毎日、日の出まで撮影するんですが、あの朝焼けを見る度に、この何年も感じていなかった想いが蘇りました。自分の心の奥に火が灯ったような気がしましたね。
初日でバチっと島田組にハマった感じですね、また監督からオファーが来るかも?
何かお役に立てることがあれば!映画に出れなくとも、チケットのもぎりとか、何かお手伝いさせて頂ければ嬉しいですね。このドラマは心に刺さるセリフもたくさんあって、これ歌詞にしたいなと思う事もあったんですが、…あれ?すみません!今は全部忘れちゃいました(笑)。みなさんがドラマを観て心に刺さるセリフを探して欲しいですね。素晴らしい言葉がたくさんでてきます、今ここで紹介できませんが(笑)
最後にこのドラマを楽しみにしているみなさんへメッセージをお願いします。
よくドラマを勧めるときに、1話がピンと来なくても3話までは我慢して観て!とか言うでしょ?もうちょっと我慢して、面白くなるからみたいな。この法則で行きますと、皆様とにかく騙されたと思って、12話まで観てください!難解な部分やシュールな部分も確かにあります。でも少しずつ、その謎が紐解かれていきます。そしてセミファイナルの12話、前述したとおり、これがぼくにとっての撮影第1話なんです。どうかここまで辿り着いて頂きたいのです(笑)ここまで来たらこっちのもの!その勢いで最終話の13話をみてください。謎の感動に包まれること、間違いないです。さぁ、あなたたちは試されています。そう、島田角栄と綾小路 翔に!我々の挑戦状をどうぞ受け取ってください!
◎Interview&Text/紅粉チコ Photo/佐藤純子 Hair make/川上勇喜(Yuki Kawakami)RINA YAMAHATA
10月3日(金)放送スタート
サンテレビ連続ショートドラマ「湯村天使の吐息」
■放送開始:10月3日(金)~12月26日(金)
■毎週金曜:25:00~25:15
■サンテレビジョン 全13話/12分
■主演:綾小路 翔 (氣志團)
■出演:上地由真、中田彩葉、波岡一喜、鳥居みゆき、カラフルスクリームみゆ 他
■監督・脚本:島田角栄
■TVer FOD もりもり!サンテレビなどで配信
~ストーリー~
兵庫県の北の端に位置し、今からおよそ1200年前に慈覚大師によって発見されたと伝えられる古湯が沸きあがる「湯村温泉」。その元湯は「荒湯」と呼ばれ、温泉卵を茹でる観光客の姿は、湯村温泉の風物詩。「荒湯」で温泉卵を茹でながら来る日も来る日も誰かを待ち続けている男が一人。孤独な男と、様々な事情をかかえ湯村温泉にたどり着く人々との邂逅を、温泉卵が茹で上がるまでの12分間のミニドラマとして描く。湯村温泉全面協力のもと、「荒湯」を舞台にした個性あふれるキャラクター達の人生のワンシーンを12分間のぞき込む、ハイスピード・ロックンロール・ドラマ。
