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バックボーンの異なる4人の表現者が立ち上げた演劇ユニットさんぴんが、6年ぶりに三重にやって来ました。10日間の三重での滞在制作を経て、本番は目前。その土地で、そこに暮らす人たちから聞いた大切なエピソードをもとに、さまざまな表現スタイルで立ち上げる唯一無二の舞台は必見です。

ユニット結成の経緯を教えてください。

さんぴん2022_福原冠

福原:2015年、僕と北尾君が共演する作品を三重県文化会館で滞在制作していたんです。その時、劇場のプロデューサーに「地方の劇場で生まれた作品が全国を回る企画があったら面白いと思うんです」と話したら、「いいじゃないか、考えてみたら?」と言ってくださって。自分で考えることになっちゃったと思いながら東京に戻って、板橋君に相談したのが始まりです。そこで一緒に考えたのは、俳優に特化したものとは何かということ。世の中には俳優発信の企画はたくさんありますが、古典や既存の戯曲を上演したり、作家や演出家を招いて新作に取り組むのが一般的なスタイルです。作家など、ある人のメッセージを観客に届ける媒介者であることが俳優の役割なんですよね。そう考えると、家族や友人など自分の身近にいる人たちの中にも題材は無数にあるんじゃないかと思ったんです。アウトプットする手段を持たない彼らの代わりに、いろいろな考えや悩み、感情が揺れた瞬間などを僕らがカタチにしてみたいなと。もうひとつこだわったのは、各地に滞在して、その土地の人たちと作品をつくるということです。三重での滞在制作を通して、純粋にお芝居に向き合う時間の大切さを実感したので。

板橋:それで、いろんな土地でいろんな人にインタビューして物語をお借りして、その土地でしか生まれない作品を立ち上げていくというスタイルにしました。俺たちはみんな役者やダンサーですからストーリーを作ることは難しいけれど、人からお話を聞いて、その思い出をお借りすることならできるんじゃないかと思って。結成した当時は、ちょうどみんなが疲弊している時期だったんですね。頑張らなきゃいけないけどなかなか使ってもらえなかったり、やりたいことはあるんだけどうまくカタチにできないとか。そんな時に、この企画にたどり着いて「これなら俺らにできる!」という思いを強く持つことができました。

永島:僕はずっと役者をやってきましたが、脚本を書いてみたいと思っていた時期もありました。自分の中にふつふつと沸いていた“やりたかったこと”を、さんぴんで叶えているような気がしています。

北尾:メンバーはみんな所属する劇団も違うし、僕はカンパニーを持っています。表現方法も違えば興味があることもそれぞれです。いろんな方向にを向いているベクトルを、さんぴんに集わせている感じですね。

地域の“普通の人”のエピソードを、一人芝居や講談、落語、ダンス、ラップなどで表現する独自のスタイルはどのように生まれたのですか?

福原:せっかく4人が集うんだから、得意技を惜しみなく出していこう思って。

板橋:「俺ら、いっぱいやれることあんだ!」っていうギラギラ感が集約されちゃったのかも(笑)。

北尾:でも、「俺が、俺が」という主張はないですよね。4人がお互いを信頼し合って、晒し合って語り合って作っていくので。例えば、駿谷さんが得意なラップを僕と敬三に受け渡すとか、「ダンスをやってみたいから」と冠さんが言えば、僕は踊らずに振り付けを担当するとか…。得意なことをシェアし合って作品づくりができるというのは、発見でした。


2016年仙台公演より

インタビューはどのようになさっているのですか?例えば、もし私が皆さんの取材を受けても、演劇の題材になるようなドラマチックなエピソードを披露できません。

さんぴん2022_永島敬三

永島:皆さん、同じことをおっしゃいますよ。

板橋:作為的にドラマを求めるようなインタビューの仕方はしないようにしています。自分では気づかないかもしれないけど、誰でも絶対に面白い話を持ってるんです。例えば、以前80歳の男性にインタビューした時、人生で楽しかったのは「すべての乗り物を見られたこと」と答えてくださいました。大八車から始まって、自転車、バイク、自動車、新幹線、そしてスペースシャトルまで見られた、って。「僕は乗り物が好きだから本当に幸せだ」とおっしゃって、すごく素敵だなと思いました。それで、「乗り物歴史」といって、乗り物の名前を朗読するだけの作品を作ったんです。

自分の話したエピソードが作品になったものを見て、皆さんはどんな反応をなさいますか?

さんぴん2022_板橋駿谷

福原:「過去の自分に励まされた」と言ってくださった方がいらして、やってよかったなと思いました。人を癒す効果があるんだなと思って。

板橋:演劇療法なんだよね。過去の失敗談などを誰かに話して、それを客観的に捉えることでトラウマ解消につなげるような。

北尾:それを狙っていたわけじゃなく、その方の人生の断片をお届けしたいという思いで夢中になってやっていたら、そういうことが自然に起きていた感じですね。

三重公演は6年ぶり。2016年に三重大学の教室で上演して以来ですね。

さんぴん2022_北尾亘

福原:“オールタイム・ベスト盤”として、これまでに上演したものを中心に、新たに三重でインタビューもおこなってエピソードを追加します。6年前に三重大学で一緒に作品づくりをした当時の学生さんなどにもお話をうかがいます。

北尾:今回は、上演前に劇場ロビーで「さんぴん presents★夏祭り」も開催します。物産展のようなコーナーがあったり、一般の方が特技を披露するショータイムがあったり、お祭り気分で楽しんでいただけるイベントです。参加無料で出入り自由ですから、ぜひ遊びに来てください。僕らも、ずっといますから。そのあと劇場に飛び込んでいただくと、演劇のお祭りが待っています!



8/27 SATURDAY 8/28 SUNDAY
ドリーム夢街道★夏祭り巡業2022
「ALL TIME HERO’S 〜東西南北プチョヘンザッ!!」

<チケット完売>
■ 会場/三重県文化会館 小ホール
■ 開演/各日 15:00
ロビー開場12:00 <さんぴんpresents★夏祭り>開催(参加無料)

■料金(税込)/全席自由・整理番号付 一般 ¥2,500 22歳以下¥1,500 小学生以下 無料
■お問合せ/三重県文化会館 TEL.059-233-1122
※未就学児入場可
※22歳以下要身分証提示