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「中孝介」web限定インタビュー
取材日:2013.12.05


奄美大島出身で、今も地元を基盤に活動を続けるシンガー、中孝介。
昨年、自ら立ち上げた「もっと日本。」プロジェクトの一環として、
古今の日本の名曲をカバーしたアルバムをリリース。
全国ツアーは、いよいよ名古屋で最終公演を迎えます。
「地上で最も優しい歌声」と称される、
オンリーワンの歌声が綴る日本の名曲に触れるコンサート。
1年の締めくくりにふさわしいステージになりそうです。

生まれ育った奄美大島を離れずに音楽活動を続けていらっしゃいます。そのことについて、今のお考えをお聞かせください。

コンサート活動などをしていると、奄美にいる時間はどうしても短くなってきます。でも、やっぱり自分が今やっている音楽の根底にあるのは奄美の島唄。それを歌い継いできた多くの先輩たちのグルーヴを常にそばで感じていたいんですね。島唄もやはり時代とともに歌のスタイルが変わってきていて、若い世代の人たちはどうしてもきれいに歌い過ぎちゃうから。僕が「あ、いいな」と思うのは、やっぱり上の世代の人たちが歌う泥臭い感じの響きがある歌なんです。今はみんなで集まって歌い合うという習慣は廃れてしまっていますが、例えば民謡を聴ける居酒屋に行けば、誰ともなく自然に歌が始まったりします。そういうところに行って歌を聴くと「あ、いいな」と。その感覚を忘れないためには、それを常に感じていくべきだなと思っています。奄美は僕にとって、切っても切れない場所です。また東京に行ったら行ったで、そこで得た感性を自分の新しい音楽に反映していけたらなと思いますしね。

奄美の方々は皆さん、郷土愛が強いのでしょうか?

強いです。名古屋にも中部奄美会という組織がありますよ。その中にも各集落の会がある。例えば僕は名瀬育ちなので、奄美会の中の名瀬会に所属するという…それぐらい愛郷心が強いんです。島唄の「シマ」という言葉には二つ意味があって、島の他に「縄張り」や「集落」という意味もあります。それは唄にも反映していて、同じ歌でも集落ごとに変化していることも多いんです。そして人々の生活に直結したものであり、また、大変な時代を生き抜いてきた人の苦労を歌ったものも沢山あります。言わばブルースのようなもので、奄美島唄はどこか哀愁の漂ったものが多いです。僕は今まで自分のコンサートで、島唄を歌いませんでした。それは自分が今歌っているポップスと島唄を一緒にされたくないと思ったからです。ただ今年は奄美大島の本土復帰60周年ということもあり、より沢山の人に島のことを知って欲しいという意味で、今回のコンサートでは1曲歌います。「糸繰り節」という歌で、糸繰りのつらい労働と人との繋がりを「糸」になぞらえて歌にしたものです。


7月にベストアルバム「ベストカバーズ〜もっと日本。〜」をリリースされました。このタイトルに込めた意味は?

地元に住んでいると「いつでも行けるや」と思って行かない場所があったり、「いつでも食べられるや」とあまり自分から手を出さない郷土料理があったりするんですよね。それは、広く「日本」という括りになっても同じじゃないかと。皆さん、知っているようで知らないことがあると思います。日本の身近にある景色だとか、日本人ならではのおもてなしの心だとか、侘び寂びの精神とか奥ゆかしさだとか…そういうものは日本人なら誰に教わるでもなく自然に身に付いているはずなんです。やっぱり海外に行くと改めて気づかされますしね。奄美大島は今年、本土復帰60周年の節目の年でした。今回のアルバムツアー中、各地で、奄美大島が戦後アメリカ領だったことを知っているか質問していますが、皆さん知らないんですね。復帰運動の大変だった時代を生き抜いてきた地元の先輩たちがいたから、今の奄美大島があります。僕自身も奄美の島唄を継承するひとりの歌い手として、自分の活動を通して奄美のことも伝えていきたいと思って、「『もっと日本。』プロジェクト」を昨年の12月に立ち上げました。その一環として、日本の名曲の新たな魅力を再発見できる曲を集めたのが、このカバーアルバムです。改めて日本の名曲を歌うことで日本語の素晴らしさを再認識したり、「あの時代はこうだったな」と思い返したり…そういう経験の大切さを伝えていけたらなと。

このプロジェクトは、今後も継続的に続けていかれますか?

そうですね。自分がやっている音楽は、やっぱり日本人にしかできない音楽です。直接的ではなく言いたいことを伝える独特な詩の世界観は、日本人特有の表現だと思うんですよね。大切なことがいつの間にか少しずつ近づいてきて、「そういえばこのことって本当に大切なことなんだよな」とわかるような…。そういう包み込むような伝え方が、日本の名曲には多いと思います。そんなところを改めて「いいな」と皆さんに思ってもらえたら。

収録曲は、昭和の名曲からボカロ曲まで、多彩なラインナップですね。

ファンの皆さんからリクエストを募って、その中から選曲しました。僕自身、母の影響もあって小さい頃から昭和の名曲を聴いて育ってきました。その時代の歌は本当に何年経っても古さを感じさせない力を持っているなと思います。そういう曲を集めて、そこからまた日本の歌の素晴らしさを知ってもらいたいと思いながら選びました。また新しい試みとしては、ボカロ曲のカバーです。今の新しい日本のポップ文化ですから。これまでちゃんとは聴いてこなかったんですが、カバーするに当たって改めて聴いてみると、凄くきれいな言葉で情景が浮かんでくる曲が多かった。しかもそれを作っているのが自分より若い作家さんたちで、そういう人がたくさんいるんだということも初めて知りました。僕がそういう曲をカバーすることで、ボカロという新しいジャンルもより多くの世代の人たちにも知ってもらえたらと思います。

8月にスタートし全国を回られているツアーも、いよいよ12月の名古屋公演がファイナルです。これまでの中で、何か手応えは感じていますか?

本当に各地でいろいろな世代の方に来ていただいています。今回のツアーでも、初めて僕のコンサートに来て、僕の声を聴いて、カバー曲を聴いて、改めて日本の曲の素晴らしさを感じたと言ってくださる方が多くて、嬉しいですね。今回、名古屋公演に関しては編成がこれまでと違って、弦楽器を入れる予定です。これまでとは違うアレンジで、曲も増やそうと考えているので、楽しみにしていただければ…。素敵な会場でライヴが出来るので、僕自身も本当に楽しみにしています。いろいろな世代の方々が、それぞれに辿って来た時代を思い出して懐かしく思ってもらえるような空間に出来たらと思っています。ぜひ、会いにきてください。



12/21 SATURDAY
中孝介 全国コンサートツアー2013「もっと日本。」

チケット発売中
■会場/三井住友海上しらかわホール
■開演/17:00
■料金/全席指定¥5,500 
■お問合せ/中京テレビ事業 TEL.052-957-3333(平日10:00〜17:00)
※未就学児入場不可