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「柳家喬太郎」Web 限定インタビュー
取材日:2015.11.01


今、最もチケットが取れない人気落語家のひとり、柳家喬太郎。
「キョンキョン」の愛称で親しまれ(?)、映画やテレビドラマ、
舞台への出演、週刊誌の連載など、マルチな活躍でも知られています。
新春早々には「かに寄席 初席」に登場。
2016年の初笑いを特別なものにしてくれそうです。

来年公開予定の映画「スプリング、ハズ、カム」で主演を務めていらっしゃいます。役者、落語家、それぞれの演じ方の違いをどう感じられましたか?

圧倒的に違うのが、落語家はひとつの役になりきらない、なりきってはいけない芸能だということ。映画や舞台に出ると、役になりきらなければならないということがとても難しいです。それから落語家は、人から演出を受けることがない。役者さんとかからすると、主演、脇、演出も全部ひとりだからすごいとおっしゃる。だから落語をやってみたいという方も多いんです。逆に言うと僕らはそこから始まっているので、ひとつの役になりきることのすごさとか、演出を受けることの大切さというのは普段経験していないから新鮮だし、驚くことがいっぱいありますよね。今年は、非常に新鮮な勉強を改めてさせてもらいました。もちろん落語も頑張って普段通りやって、この噺もやったし、こんな会もやったしというのがあるんだけど。振り返ってみると、今年は舞台と映画への出演というのが一番印象深い年でしたね。


喬太郎さんの高座では、噺に入る前の枕がいつも楽しみです。何か心がけていらっしゃることはありますか?

心がける余裕すらないですね。最近はフリートークのような枕が多くなっているけれども、それが本来の枕だとお客様に思われちゃっている。そうではなくて、例えば今日は「禁酒番屋」をやるというと、お酒の噺だからお酒の話を枕に振ってから噺に入るというのが定石なんですよね。でも例えば、今日は時間がある。じゃあ、酒の枕を振って「禁酒番屋」をやって計算してあと25分、プラス10分喋らなきゃならないというときに、本来の枕の前にフリートーク的なことを喋ったりするんです。その10分が終わって、「お酒っていうものはいいもんで」って酒の小噺に入ったりなんかすると、枕がそこで終わったと思っちゃうことがある。お酒の小噺も枕なんですよね。どうかするとフリートークをしないでいわゆる定石通りの枕から入ると、「今日は枕なしで入った」と勘違いされちゃう。それはちょっと違うなと。あとフリートーク的な枕って、実は新作を一本作るのと似たようなものなんですよ。でも実際はノリノリで喋っているうちに、あれも喋りたい、これも喋りたいと、うわーっと広がっていったときにお客様が面白がってくださる。一方、そういうお客様じゃないときもありますし、そういうせめぎ合いはいつもあります。独演会だと、8割方のお客様が喬太郎をご存じという会も多い。でも寄席では、基本的にお客様は僕のことを知らないと思って喋らないと。

だって、フラッと立ち寄ったとか、名前ぐらいは知っているよとか、そういう方だっているわけで。少なくとも僕のファンであるなんて思っちゃいけない。そうすると出張っちゃいけないし、マニアックな話ばかりして知らない人を置いてきぼりにしてもいけない。客席の中でかい離が起こっちゃうので。それはやっぱり芸人としてはやりたくない。今度の「かに寄席」に関しては、「このメンツだから見よう」という方もいらっしゃれば、「お正月だし近くで落語がやるから笑いに行こうよ」という、そういうお客さんも多いと思います。そういう会場で、どんな風に楽しんでいただけるかということなんですよね。


お正月の寄席は独特の雰囲気があって楽しいですね。

ちょっとお祭り気分のところもありますしね。可児の初席も、納涼寄席のときよりも噺を1本多いみたいだから、前座さんを含めて6本。そうするとたっぷり楽しんでいただけるし、ちょっと寄席に近いものができてくるんじゃないかな。華やかな(古今亭)菊之丞さんと、骨太なのに笑いをたくさん入れてくる(桃月庵)白酒さんと、それから持ち前のふわっとした明るさと、ある意味突き抜けたとぼけた感じの(林家)木久蔵さんと、そこにまた(一龍齋)貞鏡ちゃんが講釈で入ってくれて。安心できるメンツなので、楽しくお喋りできればいいなと思いますね。

柳家さん喬さんに弟子入りなさって26年。落語家としてキャリアを積まれた今、師匠について思うことはありますか?

当たり前なんですけど、全然追いつけないんですよね。足もとにも及ばない。一生追いつけないんだろうなと思いますね。そもそも追いつけるなんていうことも思っていないんですけど、少しでも近づければ…ですよね、弟子っていうのは。僕が入門したとき、さん喬は41歳。当時としては若い師匠で、僕との年齢差が15歳なんですよ。僕が70になっても師匠は85歳。お互い現役でいられる年齢です。それはありがたいことだよなと。「年取っても師匠が生きていて面倒さくない?」と人は思うかもしれないですけど、おかげさまで僕は相当好き勝手やらせていただいて、師匠も苦笑いしながら見ていてくれている。どんなにやんちゃをやっても、噺家の喬太郎は、さん喬のもとで生まれていますから、そのDNAってやっぱり受け継がれるんですよね、精神の部分ですけどね。ひいていえば五代目小さんのDNAを僕も受け継いでいるわけで。当然、そのまま一生を送るわけです。その中でいかに自分を作っていくか。ミニさん喬になってしまってもいけないですし。

ところで愛称の“キョンキョン”がなかなか定着しませんね。

いやいやこれはフリであってね。「柳家喬太郎と申します。喬太郎でございますから、ひとつお気軽に“キョンキョン”と呼んで頂ければ」ってね。これが定着しちゃうと逆にやりにくくなっちゃうから、そっとしといてください(笑)。




’16 1/16 SUNDAY
かに寄席 初席
チケット発売中
◎出演/柳家喬太郎、古今亭菊之丞、桃月庵白酒、林家木久蔵、一龍斎貞鏡(講談)
■会場/可児市文化創造センターala 主劇場
■開演/14:00
■料金(税込)/全席指定 一般¥4,000 18歳以下¥2,000
■お問合せ/可児市文化創造センターala TEL.0574-60-3311
※未就学児入場不可