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「天野天街×小熊ヒデジ」Web 限定インタビュー
取材日:2016.09.29


てんぷくプロの小熊ヒデジ、tsumazuki no ishiの寺十吾(じつなし・さとる)、
そして、少年王者舘の天野天街。
3人を中心に結成されたKUDAN Projectが「くだんの件」を11年ぶりに再演します。
アジア演劇界に衝撃を与えたこの二人芝居は、復活が待ち望まれていた大傑作。
登場するのはタロウとヒトシ、ふたりの男だけ。
少年時代の記憶、さらには半人半牛の怪物「クダン」を巡って、
謎めいた会話が展開され、いたるところにモノや映像が現れる…!?
作・演出の天野、キャスト兼プロデューサーの小熊に話を聞きました。

11年ぶりの上演が決まった経緯をお聞かせください。

小熊:くだんの件」をしばらくやらなかった間、静岡や三重で「真夜中の弥次さん喜多さん」を上演したところ評判がよく、「『くだんの件』はやらないの?」という声をいただくようになったんです。「くだん」は「弥次喜多」発表に先駆ける1998年、KUDAN Project旗揚げ作品として海外公演も行った二人芝居で、僕自身、復活させたい想いはありました。そんなころ、KUDAN Projectのスタッフからも「そろそろやろうか」という話が出てきた。それで、まず三重県文化会館の方々に相談してみたら、実現できることになったんです。

天野:もともとの初演は1995年で、小熊さんとの別ユニット「キコリの会」のために書き下ろしたんですよ。その時は、1回だけのつもりだったんですけどね。

なぜ、これほどまで長く関わる作品になったんでしょう?

天野:1998年の公演で、小熊さんの相手役が寺十くんに変わったんですよ。このことが、その後の流れを決定づけたと思います。また、新たな出発が海外、台湾の台北からだったことも大きな原動力になった。自然と結束力が高まりましたから。

小熊:僕からすると、寺十くんと相性が良かったのも理由にありますね。海外で初演というのは相当インパクトのある出来事で、正直すごく怖かった(苦笑)。ホテルで同室だった寺十くんと直前まで自主稽古を重ね、結果、大成功に終わった経験が後々に影響していったと思います。しかも、すぐに再演の機会を得られたことも大きかった。他の作品に比べ、自分の中でスピード感の差があった気がします。それまで僕は、同じ作品を繰り返し上演する経験がほとんどなかったんですけど、「くだん」によって再演の面白さや大切さ、価値を知ってしまった。味を覚えてしまったんです(笑)。

1ステージ目をいきなり海外で発表するのは、確かにレアケースですね。

小熊:作品の強度はわかっていても、文化や言葉の壁は怖かったですよ。

天野:現地では、俺が字幕の使用を拒否して揉めたりしたし…。でも、二人芝居の片方のキャストが初演経験者とはいえ、海外公演が初めてなのは小熊さんも寺十くんも一緒だった。その共通の不自由さが強い結びつきを生んだのは間違いないでしょうね。

そもそも「くだんの件」は、どういう試みの作品だったのでしょうか。

天野:自分の劇団でやる時はギリギリまで作り続けるので、完結しない感覚があるけど、小熊さんから二人芝居の依頼を受けた時は、初めて“完結するもの”“終わりのあるもの”を作ってみようと考えたんです。自分の劇団ではないため対外的な緊張感もあるなか、いわゆる演劇のようなものを作るというか、「俺でも普通のことができるんだよ」というところを見せたかったんです。

普通の演劇ではないと思いますが…。約10年のブランクには、どう向き合いますか。

天野:キコリの会の初演とKUDAN Projectの初演ではキャストが違い、3年の細胞変化も起きていた。それと同じように、10年前と今とでは、違うものだと考えてやるだけですよね。以前とは別人の小熊さん・寺十くんと、同じ台本をやるだけという…。もともと、ちょっとずつマイナーチェンジはしているんですよ。ただ、今回は老人から少年に戻りますから、見る影もなくなったタロウとヒトシが現れますよ。でも、ふたりの実年齢と少年までの距離が遠くなった分、ダイナミックな芝居にはなりますよね。もはや「コレが少年かい!」という次元で、変な色気もない。代わりに、作品の陰影はもっと出るはずです。

小熊:そういう年齢になるもんですね(笑)。でも、まだ身体は動きますよ!先日、読み合わせをしたんですけど、その時までは心配の方が大きかったんです。それが、読み合わせをしてみたら大丈夫だと感じた。今の寺十くんと僕の、在るがままでやれそうだと実感したんです。自分自身、どんな風に芝居が立ち上がってくるのか楽しみになりました。

天野:役者の出すものが正解のはずだもんね。でも、まだ身体は動かしてませんからね!ただ、今回、役者に無理はさせません。その方が面白くなる気がするので。勘だけど。

小熊:僕も面白くなりそうな気がするので、今の寺十くんと僕の、今の状態でやってみることを楽しめたらいいなと思っています。そうすることが、いちばん面白くなる方法じゃないかと。もちろんキャストの演技だけじゃなく、スタッフワークも見どころの舞台。二人芝居ですが、スタッフ一丸となった13人芝居でもあるんです。舞台美術、映像、道具類…、一分の隙もないほど要素が詰まっているから、「くだん」は濃厚、濃密に映るんだと思います。初めて観る方は、きっとビックリしますよ。


11/5 SATURDAY・11/6 SUNDAY
KUDAN Project
「くだんの件」

チケット発売中
■会場/三重県文化会館小ホール
■開演/11月5日(土)14:00、19:00
11月6日(日)14:00
■料金(税込)/整理番号付自由席
前売 一般¥3,000 U25¥2,000
当日 一般¥3,500 U25¥2,500
高校生以下(前売・当日とも)¥1,500
■お問合せ/三重県文化会館チケットカウンター TEL059-233-1122
※未就学児入場不可