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1995年の世界デビューは名門レーベルGRP、2015年にはデビュー20周年を迎えた木住野佳子。彼女が今想いを馳せるのはヨーロッパです。それは彼の地の音楽的土壌に深く関わっているようです。人々はどのように音楽を楽しみ、どんなこだわりを持ちながら音楽を作り出しているのか。旅をしてそれを肌で感じ、それを形にしたのが最新アルバム「nuage〜ニュアージュ〜」。彼女が改めてこれから進むべき道を、確信したとも感じられる快作です。1月にはこのアルバムのリリース・ライブが名古屋ブルーノートで予定されております。

最新アルバム『nuage ~ニュアージュ~』は、ヨーロッパへの想いを馳せて。

2015年にCDデビュー20周年を迎えたんですが、これから自分がどうしたいかということを自分でも考えてみたんです。まず思ったのが、海外の演奏を増やしたいということ。特にヨーロッパで演奏したいなと。よく皆さんに私の音楽は「ヨーロッパっぽいね」なんて言われることが多くて。自分でもヨーロッパを魅力的に感じていて、去年は様々な場所にひとりで行ってきました。そこでコンサートをやったり、曲を作ったりしてきたんですが、また今回改めてヨーロッパに行って、そうやって書き溜めた曲がアルバムになったんです。

特に印象に残った場所などはありますか?

どこも思い出深いですが、イタリアのミラノで5月に「ピアノ シティ ミラノ」というイベントがあったんです。ミラノの街中に3日間、ピアノが様々な場所に置かれているんですね。バスの中とかトラムの中とか、水上バスの中にも。どこかのプールサイドにはスタインウェイのフルコンを置いてありました。世界中から300人ぐらいアーティストが来ていろんな場所で演奏するんです。私はお城の中で演奏しました。ジャンルはクラシックが7割ぐらいかな?でも、ヨーロッパの人たちは自分の曲を演りたがることが多くて、3割くらいはオリジナル曲。しかも入場無料なんですよね。ミラノ市が主催しているんですが、ヨーロッパは文化に対する国の考え方が全然違うなと感じました。

音楽をする環境がとても成熟しているんですね。

そう思います。リスナーの方たちも、ものすごく成熟していると感じました。スウェーデンではフリージャズだけの店やライブハウスがあったんですが、結構お客さんが入っているんですよ。ミラノでは、お客さんが演奏が面白くないなと思ったら途中で立って帰っちゃうんですって。でも良かったら最後まで聴いて、すごく盛り上がるという。お客さんが自分の好みや趣味をちゃんと認識していて、その上でジャッジをしているんでしょうね。


歴史もありますが、自由に楽しむというところも好感が持てますね。

人間が作る音楽というのを、そのまま受け止めてくれるというスタンスをすごく感じました。スタンダードや知っている曲は確かに安心して聴けると思うんですが、かたやオリジナル曲というのは、より心を開いて感じてもらう必要がありますから。私はデビューからずっとオリジナル曲にこだわってきましたが、欧米の方が受け入れる姿勢に寛容さを感じることはあります。

今回のアルバムもオリジナルが中心。カバーのアレンジもご自身で全部手掛けていらっしゃいますね。

ある時から、ストリングスのアレンジとかも全部自分でやるようにしています。音楽って自分の言葉なんです。私は元々器用じゃないので、真似をしても自分の中で違和感を感じてしまって、だから誰かの曲をコピーをしても、そのまま演奏するということはあまりしてこなかったんです。でも、自分の言葉で語ることの苦悩はもちろんありますし、今もそれはすごく感じいています。繰り返し同じことを練習しながら自分の言葉を探していくような、そういう音楽の作り方をずっとしています。

自作にこだわり続けること、あとカバーに対する考え方をお聞かせください。

私にとってピアノは言葉の代わりだと思っているので、誰かが作った曲を弾く時も、メロディは絶対に崩したくないというポリシーがあるんです。それはその人が作った言葉だし、それをやっぱりすごく大事にしたいと思う。でも自分のしゃべりたい言葉は自分で作りたいと思っているので、やっぱり私の音楽は自分が作ったものかなって思っています。でも演奏を重ねるうちにカバー曲の中でもアレンジの仕方で、すごく楽しく演奏できるようになってきた曲もたくさんあります。例えば、ビル・エヴァンスの『ワルツ・フォー・デビー』はライブの定番で演奏していますが、自分の中で曲を消化している感覚はあります。もちろん非常に美しい名曲なので、ビル・エヴァンスへの経緯を払いつつ。カバーでも長年かかって自分の中で再構築してきたものが何曲もあります。今回のアルバムでも「New Cinema Paradise」は大好きで、カバー曲を弾いているというような感覚を超える美しい曲です。そう考えると、スタンダード、オリジナルはもちろん、ジャズの概念もどう考えればいいのか。素敵な音楽であればいんじゃないかという思いもあります。

メジャーデビューが名門GRPレーベル。このスタートが今の木住野さんの音楽観を作り上げたんでしょうか?

GRPは大好きなレーベルでしたし、その中心のデイヴ・グルーシンの音楽が自分の原点だと思います。GRPの音楽にはいろんなエッセンスが入っています。ジャズと一言で言ってしまうと難しそうみたいなイメージを持つ方もいらっしゃるかもしれない。だけど音楽をやっている私たちにとってはジャンルはあまり関係ない。クラシックの演奏者の皆さんも、最近はそう思っていらっしゃる方も多いと思います。多分私自身は、自分が一番聴きたい音楽を自分で作っているんだと思うんですよ。口ずさめるような分かりやすいメロディや美しいメロディが好きなんです。だから聴いている方の心にも、そんな私の気持ちが響いてくれたらうれしいなと思います。


1/18 FRIDAY
木住野佳子New Year & New Release Live
ご予約受付中
■会場/名古屋ブルーノート
■開演/[1st]18:30 [2nd]21:15
■ミュージックチャージ(税込)/¥6,500
■お問い合せ/名古屋ブルーノートTEL.052-961-6311(平日11:00~20:00)


◎最新アルバム Now on sale
「nuage 〜ニュアージュ〜」
¥3,000(tax in)
POCS-1752