HOME > Web 限定インタビュー > 「伊東たけし」インタビュー


「伊東たけし」web限定インタビュー
取材日:2014.05.22


結成35周年を迎えますます進化し続けるポップ・インストゥルメンタル・バンド、
T-SQUARE。最新アルバム「NEXT」を携えたツアーが、
名古屋を皮切りにいよいよスタートします。
フロントマンにして、ソロ・サックス・プレイヤーとして
国際的にも高い評価を得る伊東たけしの単独インタビューが実現しました。

昨年、T-SQUARE結成35周年を迎えられました。

歴代メンバーとスペシャルゲスト含め総勢20ほどでアニバーサリーライヴが出来て、とても嬉しかったですね。当日はカメラを20数台入れて収録して、DVDもとても面白いのが出来上がったし。久しぶりにマリーンが歌いに来てくれて、凄く楽しかったですよ。皆さんに盛大にお祝いしていただいて。

まさにスーパーバンドですが、打ち合わせなどはどのように?

その時代のオリジナルメンバーで演奏するコーナーがあったり、この曲は全員でやろうとか、そういうのを全部決めて構成をまず作りましたね。誰に何をやってもらおうというのはほぼこちらで決めて、それからリハーサルに入りました。やっぱりメンバーだった連中のは割とすんなり行くんですけど、T-SQUARE以外のゲストミュージシャンは、同じ譜面でも解釈を全然違う風に持って行ったりビートのノリも人それぞれですね。それが面白い部分でもあるし、やっぱり彼らはT-SQUAREというものに対してイメージを持っていて、それと自分の個性をすり合わせようということにもの凄くエネルギーを使っているんですよ。一度自分のフィルターを通す訳だから、かなりもがく部分もあったと思います。でも、どういう形であれみんなが持っているのは、その場面を素敵にしたいという思いだけ。ただエゴイスティックに「俺が、俺が」と飛び出すんじゃなくて、何かそこで心地良さを作ろうとするから、そういうことが起こる訳で。T-SQUAREの曲は、わかりやすく聴こえるけど実のところもの凄く大変なんです。プレイヤーの個性が強ければ強いほどバッティングする部分というのが出てきちゃう。いくら「好きにやってください」と言っても、「この中でどう好きにやればいいんだろう」というところを見出すのに、みんな苦労すると思うんですよ。そこがやっぱりT-SQUAREというグループの核になる個性や特徴だったりしますから。

35年の間に何度もメンバーチェンジをしながら…伊東さんご自身も一度抜けられて再加入なさっていますし…一貫して「T-SQUARE」の音作りを追究するのは容易ではなかったのではないでしょうか?

いつからイメージが定着してくるのかというのは、実は今でもそのときどきで全然違うんですよ。そのときの楽曲をそのときのメンバーでやって出る音…というのは、時代背景も当然関係してくると思うんですよね。やっぱり僕らも常に新しい何かというのはどんどん取り入れてやるグループなので、実はもの凄く変化がある。ただひとつ、安藤正容がメインコンポーザーで、彼の曲を中心に僕らが集まったのが(T-SQUAREEの前身の)THE SQUAREだったりしたので、彼が作るインストだけど口ずさめちゃうようなキャッチーなメロディラインはやっぱり不変ですよね。例えばジャズのセッションなんかだと、あるひとつのリフがあったら、それで後は延々ソロでひとつ形が出来る。何かイントロを付けていったらそれで入ったりとか、かなり自由度が高いんです。その代わり、ともすれば「これ、何の曲やってたんだっけ?」ということにもなりかねない。T-SQUAREの場合には、ジャズ的な要素としてインタープレイだったりそれぞれのアドリブだったりいろいろなものがもちろんあります。でもやっぱり、そのメロディのためにそのパートがどのように存在していて、どんなソロを取ったらいいだろうとか、そういうことを考えながら演奏を組み立てていく作業は、T-SQUAREの特徴だと思うんですよ。だから、自由度もあるんだけど、その曲の印象が全く違うものに変化するような展開はしていかない。ソロパートも、その曲を生かすために盛り上げたり、グッと静かにしたりするんです。


最初から最後までメロディがきちんとあり、その曲の骨格が必ずある。それにいろいろな肉が付いているという日本のフュージョンのカタチを作られたんですよね。T-SQUAREの登場が、日本のフュージョンの始まりだと言っても過言ではありませんし。

それは、やっぱり疾走感とか爽やかさでしょうか。実は凄くおどろおどろしい曲もあったりするんですよ。でもT-SQUAREの中で消化していくと、暗い世界とかアンダーグラウンドな世界には行き切れない。また、凄くメカニカルなテクニックを要するようなことをやっても、あまりマニアックな方向に行かないという。何だか知らないけど、ポップにカラフルに作り上げるんですよ。僕らメンバーに共通するところは、ウォルト・ディズニーが作ったような世界観じゃないかな。ディズニーの作品はどれも、象徴しているものを確実に持っているじゃないですか。アドベンチャー的なものとか、とてもメルヘンチックなものとか。そういうものと共通するものがあるかもしれないね、という話をしたことがあります。T-SQUAREの場合には、それぞれの楽曲のメロディがわかりやすいけれど実はその中に紙一重で裏の側面もあって、その全てを含みつつ僕としてはスーッとした中間にいつも向かおうとするんですよ。ドロドロした世界はうんざり。そうじゃなくてもっと爽やかな世界となると、そこには上も下も、男も女も、いいも悪いもないと。どんな曲でも、そういうところに音を持って行こうとする。だからT-SQUAREというフィルターを通過すると、例えばブルースなフィーリングを出してもいわゆる男臭い世界には行かない。やっぱり、今思うT-SQUAREらしさというのは、若い頃、安藤と話したドリーミーなウォルト・ディズニーの世界ですね。

究極のポップですよね。

そこまで磨きをかけてやると、僕的には限りなくミドルな世界に向かうんですよ。全てがスーッとそこに吸収されてキラキラするような。ジャズでもマイルス・デイビスは凄いと思います。いくつになっても無邪気な感じがしたでしょ?普通だったら、年輪を重ねて渋くなったという印象になると思うんだけど、ならなかったじゃないですか。怖いぐらいに子どもの心を持ち続けて、それをアートにしたみたいな。やっぱり僕はそういうところが好きなんですよね。だから枯れたプレイヤーになるつもりはないんです。結果的にどうなるかはまだわかりませんけど。いつまでも透明感を持った姿勢を持ち続ける。技術的には、今でも毎日のように吹いて悩んでやっていますけど、でも新しい発見もあって、そういうときは嬉しかったりするし。年齢を重ねていくと、技術的にさらに上がるということはあまりないけど、磨いていないと曇ってくる部分があるんですよ。だからその部分を自分なりに常に磨いて生きようとしているところがあります。これが大切なんです。そうじゃないと段々汚れて手練れたようなことになるのかなと思いながら。

テクニックはもちろん、感性の部分だったり…。

音楽に対する姿勢みたいなものかもしれませんね。最近、「嘘発見器」という言葉が好きなんです。楽器って本当に自分と一体化したときはとても幸せなんだけど、やっぱり言うことを聞いてくれないこともあるんですよね。だけど、プレイヤーがどういう心持ちで音楽をやっているかというのは、楽器はよくわかるんですよ。だからときどき「こいつ、嘘発見器みたいなヤツだな」と思うんですけど。僕にとって音楽というのは、みんなとひとつになることなんですよ。さっき言ったミドルとか中性ということもそうだけど、全てがひとつになる、ステージをやっているその空間がひとつになる。そういうものをステージで常に求めているんですね。レコーディングでも、そのピュアさが出るまでやっぱり頑張ったり。いいステージというのは、そこで何かを出そうとして生まれる波動というか、その空気がどうなるかという部分だと思う。

T-SQUAREの音楽性は、例えばチックコリアなどの海外のフュージョンとは異なる、日本独特のものなのかなと感じます。

僕は、数十年来ニューヨークにアパートをずっと持っていて、休みになると行くんです。やっぱり自分の憧れた土地だから。それでわかったのは、やはりアイデンティティだということ。あれだけいろんな人がいて共通言語もなく、だけど文化が生まれるという。僕は、アメリカが若い国だから好きだったんですよね。ヨーロッパはやっぱり日本と同じで歴史を背負っているから。ニューヨークに行ってみて、やっぱり自分は日本人だということがよくわかりました。黒人の持つフィーリングと白人の持つフィーリングとか、西と東とか、ミシシッピ川の流れの部分とか、理屈はわからないけれども何かが違う。でもどこかで融合していて、それこそブルー・アイド・ソウルとかが出てくるように、エリック・クラプトンみたいな人も出てくる。それは、指先だけのブルースじゃないからですよね。日本人がいくらそれを追い求めても基に持っている部分から自然に出てこないと、そういうものは表現出来ない。

血が持つ説得力というようなものでしょうか?

日本人がブルーノートのフレーズを吹いても、それが上っ面なのか、こいつにはソウルがあるのかという違いはわかるんです。それはアメリカでも認めてくれるんですよ。僕も一度「たけしの音にはちゃんとソウルがある」と言われて、俺の考え方は間違いじゃなかったと思いましたけどね。ブルースフィーリングってみんな同じように思うじゃないですか。でもみんなフレージングが違うし、ノリも違うんです。だからそこの部分まで行かないと、ただ譜面上できれいにやるだけになっちゃう。クラシックだとヨーヨー・マぐらいかな、どこの国に行っても、その土地の血を自分のものにしちゃう音楽家は。それから、この人はやっぱり違うと思ったのは、ジプシーのミュージシャン。どこの音楽もそういうジプシーのノリ、その土地土地のものって何か持っている。それを彼は持っていたんです。


現在のT-SQUAREは伊東さんを含め4人のメンバーで構成されています。この顔ぶれだからこそ出せるT-SQUAREサウンドというのを共通認識として持たれている感じでしょうか?

サポートの田中晋吾(ベース)も、今のT-SQUAREの活動の中ではメンバーと言ってもいいですね。やっぱり毎回メンバーが変わったりするのは、T-SQUAREとしてのサウンドを維持出来ないと思う。例えば外国のアーティストを呼んだとしても、みんな優秀ですから作品としてはそれなりのものは出来るかもしれない。でも、それこそ「これって洋楽みたいですね」と言われるかもしれない。それだとやっぱりT-SQUAREじゃないんです。だから今のメンバーは本当にいい理解者だし、才能のある優秀なミュージシャン。若い河野や坂東も、僕や安藤以上にいろいろなことを知っていますから。そういう連中と一緒にやれているというのは本当に奇跡のようなものです。うまい連中は世の中にいくらでも出てきますけど、やっぱり一緒にやるとなると理解者じゃないと。だから今のメンバーに出会えたのも凄いことだと思うし、いつもこの5人でどうしようと考える時間を持てるようなものがないと、ましてや僕らのことを理解している連中がいないと、いちいち「シンセの音はこうやって。オリジナルがあるからこれをコピーしてきて」とか、そんなことでミュージシャン同士は付き合えないですからね。やっぱり自分の持っているもの、それぞれ聴いてきた音楽も違えば、好きな音楽も違う。そんなバックボーンを持ちながら、T-SQUAREでやるときは何か同じビジョンをそこに見出したところで音を作っていくということが大切になってくるので。

最新アルバム「NEXT」を携えてのツアーもいよいよ始まります。

今回、新しいアルバムももちろんやりますけど、やっぱり音楽ってライヴだと思うので、今のT-SQUAREを体感してもらってみんなで盛り上がりたいですね。例えば、ローリング・ストーンズもヒットした曲をやらない訳にはいかないと思うんですよ。僕らもアルバムが40枚あるから曲がもの凄くたくさんあって、その中から吟味して流れも含めて選曲します。いろんな時代のファンがいるから全部網羅するのは難しいんだけど、聴く人それぞれが楽曲を通して当時のことを思い出しながら楽しんでもらえる部分というのは絶対に必要なんですよね。そこは裏切っちゃいけないというのと、今の俺たちはこれなんだというものをガンと出して。「新しい曲もどう?」とプレゼンテーションして、みんなの反応にドキドキしながら…。そういうことも含めて「あ、この曲は喜んでもらえた。またやろうか」とかね。そして、またその曲が定着していけばいい訳で。以前イベントで坂東に「お前、今日は全部フィル変えてみろ」と言ったんですよ。これは全く新しい曲だと思って、オリジナルを忘れてやってみようと。そしたら終わってからニコニコしていて、あれは上出来だったね。そうやって変えるところはどんどん変えていって。それがだんだん定着して来ています。坂東だって、やっぱりもがきましたもん。彼が入った最初の頃は、「私は(前メンバーの)則竹さんのファンなんです」と言われて落ち込んだりしてましたよ。今ではファンも「最近、坂東さんが茶々入れるのが凄く楽しい」と言ってくれます。彼が叩きたいと思ったことを自然にもの凄いテクニックでやってくるから、聴く人はそれが面白いらしくて。

変えていくものと変えないものがあり、いろいろなプロセスを経て曲自体も変わってくるというのは、やはりバンドが生き物だということですね。

俺も本田の時代の曲をそのままやらされるのは、冗談じゃない。彼は彼で、「僕だって伊東さんのときのやつ、譜面しか見てなくてオリジナルは聴かなかったんだよ」って。「ごめんね」って、お互いに(笑)。



7/5 SATURDAY
T-SQUARE「CONCERT TOUR 2014 NEXT」
チケット発売中
■会場/Zepp Nagoya
■開演/17:00
■料金/全席指定¥6,500(ドリンク代別途¥500) 
■お問合せ/サンデーフォークプロモーション TEL.0584-320-9100 
※未就学児入場不可