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「平田オリザ」Web 限定インタビュー
取材日:2016.01.21


ももいろクローバーZが主演した映画「幕が上がる」の原作者であり
現代演劇のけん引役として優れた会話劇を創り続ける劇作家・演出家、
平田オリザが自身の代表作と続編とも言える新作を2本立てで上演。
自伝的戯曲「冒険王」、ソン・ギウン率いる第12言語演劇スタジオと
日韓協働で制作した「新・冒険王」。
アジアとヨーロッパの交差点=イスタンブールを舞台にした2作の
企画の経緯や創作の様子を平田に尋ねた。

代表作のひとつ「冒険王」からお聞かせください。1996年の初演からは20年が経ちました。

「冒険王」は3度目の再演となりますが、劇中の舞台である1980年からは36年の時を経ています。日本人の何が変わり、何が変わっていないのか、ご覧いただければと思います。


※『冒険王』(2015) 撮影:青木司

「冒険王」は初めての著書にも記された実体験をもととする、ご自身唯一の自伝的戯曲です。やはり特別な想いはありますか。平田さんにとっての位置づけは?

思い入れの強い戯曲です。また、同時多発会話を最も多用した作品のひとつでもあります。

俳優が観客に背を向けて台詞を言ったり、いくつかの会話が舞台上でいっぺんに展開されるのは平田作品の大きな特徴ですね。次に「新・冒険王」についてもお尋ねします。前作同様、イスタンブールの安宿を舞台に貧乏旅行者たちの会話が繰り広げられる劇ですが、時は2002年に移り、日韓ワールドカップのベスト16の試合日という設定です。

「新・冒険王」は、私と同い年の韓国の演出家パク・クァンジョンさんと一緒に創る予定だった作品です。劇団PARK主宰のパク・クァンジョンさんには「東京ノート」を翻案した「ソウルノート」をロングランで上演していただき、2004年には青年団と合同での「ソウルノート」も創りました。次回作もという話をしていたのですが、2008年末に癌で急逝され実現できなかったんです。今回の公演は、私にとって追悼の意味もありますし、弔い合戦という思いもあります。パク・クァンジョンさんとは、2001年のアメリカ軍によるアフガニスタン侵攻で足止めを食らった日韓のバックパッカーの話にしようと話していたのですが、その構想を元にソン・ギウンさんと共同制作を進める中で、2002年の日韓ワールドカップの一日をリアルタイムで描くことになりました。いま日韓両国の演劇人が、がっぷりと四つに組んで、両国の過去と現在と未来を正面から見つめる作品を創る。それが、パクさんの遺志にもっとも適うことだと思っています。

ソン・ギウンさんとは具体的にどうやって共同執筆・演出をなさいましたか。ひとつの芝居にまとめるまでの流れを教えてください。

まず、私が全編を書き上げ、それに対してソンさんが加筆修正し、さらに、特にお互いの言語の部分の台詞を直して完成台本としました。長く一緒に仕事をしてきたので、大きな隔たりはありませんでしたね。

「新・冒険王」は日本語・韓国語・英語が飛び合う劇なのでコミュニケーションの難しさを想像しますが、韓国人の方々との共同作業ではご苦労なさったことなどありますか。

韓国との共同作業は初めてではないので、特に支障はありませんでした。非常にいいチームが出来ていたと思います。


※『新・冒険王』(2015) 撮影:青木司

平田さんから見て、ソンさんと第12言語演劇スタジオは演劇人としてどのような方々か、その魅力などをお聞かせいただけますか。

第12言語演劇スタジオに限らず、韓国の俳優さんたちは基礎がしっかりしており、こちらの要望にすぐに応えられます。特に今回は、若い俳優さんたちが、積極的に作品づくりに協力してくださったので、スムーズに進みました。いつもユーモアを忘れないところが、彼らのいいところかと思います。

最後に、フライヤーの「冒険王」の漢字表記が裏向きになっていますが、どのような意図がこめられているのでしょう?

「冒険王」という題名には、ある種のアイロニーがあります。どんな冒険も長く続けていると日常になっていきます。この表記も、そういった皮肉が込められています。




2/13 SATURDAY
2/14 SUNDAY

青年団
「冒険王」
「新・冒険王」

チケット発売中
■会場/三重県文化会館 小ホール
■開演/「冒険王」2月13日(土)15:00、2月14日(日)14:00
「新・冒険王」2月13日(土)18:00、2月14日(日)17:00
■料金/整理番号付自由席 一般¥3,000 25歳以下¥1,500
セット券(前売・予約のみ) 一般¥5,000 25歳以下¥2,000
■お問合せ/三重県文化会館チケットカウンターTEL.059-233-1122