HOME > Web 限定インタビュー > 「福間洸太朗」インタビュー

「福間洸太朗」Web 限定インタビュー
取材日:2017.09.30

二十歳でクリーブランド国際コンクールにて日本人初優勝を成し遂げ、現在はベルリン在住。欧米のみならず、アフリカなどでもオファーがあれば躊躇なくコンサートを行う。そんなバイタリティも持ち合わせるピアニスト福間洸太朗が、10/8(日)に名古屋で初めてのリサイタルに挑みます。リサイタルでは、毎回テーマを掲げる福間。今回のテーマ「鳳凰がみたもの」の意味するものとは?

ベルリンでの生活はいかがですか?

ベルリンに住んで12年になりますけど、フランスでの仕事が多いこともあってベルリンにいるのは1年のうち2ヶ月位です。でも、ベルリンには刺激とゆとりが共存し、国際色豊かで、私は大変気に入っています。ベルリンにいる時間を大切にしています。


南アフリカなど、欧米以外でもコンサートを行うと伺ったんですが。

今年はカザフスタンやキルギスでもコンサートを予定しています。今までに30ヶ国位に出向いています。多分演奏家の中でも珍しいことだと思いますね。私は旅するのが好きなので、普通だと行けないような国に行けることにとても魅力を感じるんです。それでいそいそと出掛けて行って(笑)。私の場合は各国にエージェントがいるので、大きなエージェントと契約するよりエキゾチックな経験ができるんでしょうね。

どんな経緯でカザフスタンでのコンサートのコンサートは決定したんでしょうか?

カザフスタンの場合は、私のホームページを見て色んな国で演奏しているのを知って、オファーを頂いたようです。初めて南アフリカで演奏したのが06年、私も20代の前半でした。パリの留学時代にお世話になった方が南アフリカ出身で、その方の計らいもあって、南アフリカでリサイタルをすることになったんです。ハプニングも含めて貴重な経験ができました。大変だったことの方が記憶に残りますし、それがかけがえのない思い出であったりもします。それがきっかけで色んな国の色んな人と関わりたいと考えるようになったんです。今の時代は特に、国と国、人と人の相互理解が必要だと感じます。音楽をはじめとした芸術には人と人を隔てる垣根のないものですよね。それを媒介として、シンプルに人と繋がりが持てることは幸せだと思います。

福間さんが毎回リサイタルにテーマを掲げるのは、どのような考えからなんでしょうか?

音楽の聴き方や解釈は自由です。しかし同じ曲であっても、一つのコンセプトに基づいてその流れの中で聴いた場合、曲の聴こえ方やイメージが変わることがあります。その曲が新しく生まれ変わると言うとオーバーかもしれませんが、音楽には色々な可能性があるのは確かです。今回演奏するショパンのピアノ・ソナタ第3番でも、オール・ショパン・プログラムで聴くのと今回の私のリサイタルでは、全然印象が違うはずです。


今回のリサイタル、全体のプログラム構成からお聞かせください。

今回のリサイタルは東京・大阪とともに名古屋でも、しらかわホールという響きの素晴らしい会場で演奏させて頂けます。そのホールのクオリティや品格を生かしたプログラムにしたいと思いました。前半はロマン派の大曲、ショパンのピアノ・ソナタ第3番。ショパンがこの曲を作曲したのが34歳。今年の5月に、私がドイツでこの曲を録音したのが34歳でした。初めてこの曲を弾いたのが17歳の頃で、当時の先生が「福間くんが30歳半ばになった時に弾くこのソナタを聴いてみたい」とおっしゃったんですが、その言葉の意味がやっと分かった気がしています。17歳の頃に見えなかったものが、今だと見えてくる。だから、今この曲を弾くことがとても楽しいです。そして後半はロシアで揃え、ストラヴィンスキーの「火の鳥」を中心に考えました。「火の鳥」は2014年にCD録音もしています。ただ昨年、パリ・オペラ座のマチュー・ガニオさんや日本の首藤康之さん、中村恩恵さんというバレエ・ダンサーとコラボレーションする機会があったり、フィギュア・スケートでの共演もありました。そういった交流を重ねて改めて演奏する「火の鳥」は、弾き方も変わってきていると思います。ラフマニノフの前奏曲は3つ。「鐘」と13の前奏曲から12番と13番ですが、調性として嬰ハ短調、嬰ト短調、変ニ長調というのは繋がりがあって、意図的に連続させました。ソナタを聴いているような気分になるかと思います。スクリャービンは私の大好きな作曲家で、初期・中期・後期とどんどん作風が変わっていきます。最初はショパンのような作風だったのが、今回のソナタ5番の頃から調性のない曲を作るようになります。どんどん神秘的な和性や響きを追求するようになるんです。ロマンティックであり、色彩豊かでもあり、ロシア音楽特有の重厚さもあり、そして技術的にも難しさがある。自分が好きな要素が全て詰まっている曲です。曲中には、今回のテーマである鳳凰の飛翔を感じさせる場面もあります。

「鳳凰がみたもの」というテーマにはどんな意味を込められましたか?

鳳凰は世界に平和や幸運をもたらすという伝説があります。「鳳凰」だけですと、曲の選択肢というか可能性が限定されますが、「鳳凰がみたもの」として、鳳凰が目にしたであろうドラマティックな世界も表現できればと思いました。今回のプログラムの曲には色々なドラマがあり、短調を使う暗い世界の表現から始まりますが、やがてまばゆい光に包まれて長調で締めくくる。そんな希望のある世界をテーマにしたかったんです。冒頭に演奏するリストの「オーベルマンの谷」はセナンクールの小説を題材にしていて、小説では主人公が自殺を決意して終わるんです。でもリストはこの曲を悲劇で終わらせず、長調で華やかに希望を感じさせながら締めくくります。そんなリストの姿勢に私は感動します。私自身もそのような寛大で人々に幸福を与えるピアニストになりたいと思いますし、今回のリサイタルでは、聴いて下さる皆様の心の中で、鳳凰が力強く優美に飛翔するような奇跡的な瞬間を作り出したいですね。


10/8 SUNDAY
福間洸太朗リサイタル
チケット発売中
■会場/三井住友海上しらかわホール
■開演/13:30
■料金(税込)/S¥5,000 A¥4,000
■お問合せ/中京テレビ事業 TEL052-588-4477