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平賀マリカ 歌う生活

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Jポップが好きな友人からお声をかけて頂き、先日、小田和正さんのコンサートを聴きに、代々木体育館に行ってきました。
実は学生時代にはフォークソングが好きで、オフコースのコンサートによく行ったものでした。あの時代も彼の声に魅了されましたが、ソロになられてから初めて聴くステージだったので、楽しみにしていました。広い会場は、殆どが女性客に埋め尽くされているという状態でした。
友人のおかげでアリーナ席の前から9番目という、アーティストの息遣いまで感じられるラッキーな席に座れて、気持は高鳴るばかり。会場は今か今かとアーティストを待ちわびる女性ファンの熱気で溢れていました。そして、会場のライトが落ちたと同時に、客席からの黄色い歓声が響き、ステージに現れて歌いだした小田和正さんは、何とも言えないチョ~普通の存在感。衣装もTシャツの上にワイシャツを羽織り、グレーのジーンズ、スニーカーという、ゆる~く力の抜けたいでたち。
こんなに人気があり、1万人は入るであろう会場を満席にするアーティストは違う言葉で言えば、「スター」である。なのに、何なんだろう、この軽く肩すかしを食らったような、隣のお兄さん的な存在感、いや、安心感。
テレビで見る彼もそうでしたが、本物を見て、スターアーティストというより、彼の人間としての臭いを感じました。
歌詞は歌うたびにテロップで出てきますから、しっかりと歌の世界感がイメージできます。でも…至って普通の歌詞。それでも彼が歌うと、誠実な心温かいメッセージが心に直撃します。気が付いたら私はいつの間にか、胸の前で閉じた両手を合わせて頷きながら、そして時折、不覚にも涙を流したりして聴いていました。あらら、ちょっと誰かに見られたら恥ずかしいかも、なんて思い、周りを見たら、み~んな同じようにして聴いていました。なんか、皆、こんな普通な誠実な愛に飢えているのかも、と思い、まさしく私もしかり、だと思いました。昔と全く変わらないハイトーンの美しさと、楽曲、作曲能力は非凡なもの『やはり、スターなんだなぁ』と思ったのは、このように普通の中にも埋もれない、誰にも真似のできない個性をずっと変わらず持っている、ということなのですね。
普通なのに、普通ではない。このバランス感こそが、彼そのものなのでしょう。
普通っていっぱいありそうなのに、普通で安心できる誠実なものを探すのは意外に難しい世の中なのかもしれません。