HOME > 平賀マリカ 歌う生活 > 17 ミーハーとフリーク

平賀マリカ 歌う生活

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多感な青春時代、お気に入りのバンドやシンガーをテレビなどで見て、目を輝かせながらアーティストの事を語ったり、曲を歌ったり、ファッションを真似したりしてました。そんな私をみて、よく母が、「あなたは本当にミーハーなんだから。」と言っていました。

「ミーハー」という言葉に、リスペクトの要素は感じられず、子供心ながらに揶揄されているのかと思い、少し傷ついた思いがあります。私自身はミーハー、ではなく、立派なファンのつもりでしたが。年月も過ぎ、そのアーティストも活動しなくなり、曲も聴かなくなったりすると、いつしか心も冷め、あんなに夢中になった存在を忘れてしまいます。やはり、私はミーハーだったのだろうか。
先日、地元の行きつけのジャズバーに行った時、久々に会った男性の常連客に、「ねぇねぇ、これ見て!妹がリバプールに行ってきてね、お土産に買ってきてくれたジョン・レノンがレコーディング時にいつも舐めていた飴と同じ飴、食べてみる?まだ当時と同じまま売ってるんだよね~」と喜喜として大切そうにバックからキャンディを取り出して私に差し出しました。なんか、大人なのにミーハーじゃないの?と一瞬思ったのですが、突然、その方は店に置いてあったギターをかき鳴らし、「シ~ラブス~イエ~イエ~♪」と歌い出し…。店に流れているBGMのジャズはかき消される、という状態に。でも、その人の笑顔はたまらない幸福感に溢れて、可笑しくてついつい私まで笑顔になってしまいました。それにしても凄い、と思ったのは、普通のサラリーマンなのに、コードはほとんど弾けるし、歌詞もほとんど覚えている。話を聞いたら、とにかく青春時代からビートルズが大好き、だと言う。この人も当時、親から、「ミーハー」とか言われたのだろうか。その後、延々とビートルズの歴史をエピソードを交えて教えて下さり、感心しました。アルバムのタイトルや曲はもちろんリリースした年もはっきりと覚えているのです。これはもう、ミーハーという領域ではなく、もちろんファンも通り越して、フリークだと思います。いや、オタク、でしょうか。その境界線が微妙ではありますが、流行が終わると熱が冷めてしまうのがミーハーだとしたら、フリークはそのアーティストの研究までしてしまう尊敬すべき存在であり、大いなる違いを感じたのです。
また、地元のあるスナックの店主は、自分のお店の名前を「かぶとむし」にしてしまうほどのフリーク。この秋に行われる駅ビルオープンに合わせて開催されるビートルズ祭りでは、店をあげて、盛り上げると言っていました。
青春時代、ネットがなかった団塊世代の洋楽フリークさん達。仕事に追われて時間を過ごした人生もひと段落した今、時間もできて、青春を取りもどすかの如く、彼らが生き生きと音楽を語り、人生を振り返る。フリークさんはそのアーティストと共にず~っと人生に寄り添い、ほんの少しのことでも好きなアーティストの情報をとり、それに関心を寄せて、自分の人生を投影させる。フリークさん達の奥深い心理を垣間見たような瞬間でした。私もマリカフリークを増やしたいなあ、と思う今日この頃でした。