HOME > 平賀マリカ 歌う生活 > 16 ジャズボーカルの上達の仕方

平賀マリカ 歌う生活

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最近、ジャズボーカルを勉強されていらっしゃる方が多く、私も時々講師としてワークショップに呼ばれることがあります。皆さんの歌への情熱、健闘ぶりを見るたびに、私がジャズを歌い始めた時のがむしゃらにがんばっていた頃を思い出し、懐かしさに目を細めながら皆さんの歌唱にアドバイスしています。 皆さん、本当に楽しんで、がんばって英語の持つディクションや、サウンドを意識しながらスタンダードジャズに挑戦されていますが、英語に気をとられるあまり、音程をはずしたり、リズムに乗れなかったり、なかなか難しそうです。私も皆さんと同じように苦労しました。そのうち、英語が日常語として少し理解できたり、話せるようになると、「あ、ここの意味ってこうだったんだ!」とか、「ここは冠詞だから、あまり大きく発音するとおかしいんだ。」とか、わかってきます。 完璧なレベルでジャズボーカルを表現するには、ネイティヴでない限り、ものすごく遠い道のりだ、ということを感じます。 それでも私達はなぜ英語でジャズを歌うのだろう?と、原点に戻り考える時がたまにあります。一言で言えば、“ジャズボーカルの持つ魅力に魅了されたから”だと思います。中には、歌うことが大好きだけれど、実は歌に自信がないから、英語だとかっこよく聴こえてごまかせるから、とか言う人もいて、それも一理あり、人それぞれでしょう。 皆さんが苦労して練習している時に「今、この人が日本語で何か歌ったらどの程度の歌唱なのだろう」とふと思うことがあります。 それは私がジャズを英語で歌っている時に、客席で聴いている皆さんも同じように思うのではないだろうか?と思う時があるからです。 なので、私は時々、日本語の歌に挑戦してみたりします。ジャズが日本に入って来た時代の懐かしいメロディや、歌詞の美しい当時の流行歌をジャズアレンジで歌ってみるとジャズを歌っている時には感じたことのない、新しい発見や戸惑いを感じることがあります。心と直結している歌、という純粋な世界を肌で感じることができるのです。 ちょっと前の時代には日本の流行歌も洋楽もお手の物、という先輩シンガー達が沢山いました。そんな歌唱力を持ったシンガー達をちょっと参考にしてみるのもいいかもしれません。でも、せっかくジャズを勉強しているのに、わざわざ日本語で歌うなんて、と抵抗を感じる方もいらっしゃるとが、まず、メロディだけをハミングで歌って、自分の声が感情を持った楽器になったつもりで歌ってみる事をお勧めします。自分の声の持つ響きを感じながら、シンプルに声と心の対話をすれば、歌うことの基礎、真髄が理解できると思います。 人生の喜怒哀楽を歌詞無しでハミングだけで表現できた後に歌詞を乗せたら、もっと表現力豊かになって、歌っている本人もオーディエンスも心に響くいい音楽として、“人間の歌”を楽しめるのではないでしょうか。