HOME > 平賀マリカ 歌う生活 > 02「愛しのナット・キング・コール」

平賀マリカ 歌う生活

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皆さんお元気ですか?さて、今回は、1950年代を中心に、素晴らしい声と歌唱でアメリカの心とも言うべきスタンダードジャズの名曲の数々をこの世に残した伝説的黒人男性シンガー、ナット・キング・コールについてお話していきましょう。皆さんご存知だと思いますが、ナット・キング・コールは、グラミー賞を受賞した女性シンガー、ナタリー・コールのお父様です。その懐かしい大きな写真が彼女のバックに掲げられ、そこに写るナットの面影を見つめながら、彼の懐かしい録音の歌と共にナタリーがデュエットする映像を見たときに、そのアイデアの斬新さにショックを受けたのを覚えています。そしてその映像に、私と同じように多くのアメリカ国民が涙し、その存在の重さを誇りに思ったことでしょう。ナット・キング・コールは1919年アラバマ州モンゴメリーの生まれ。’30年代からピアニストとして活躍し、その腕前はかの有名なジャズピアニスト、オスカー・ピーターソンがお手本にしたほどといわれています。当時はビッグバンド全盛期。にもかかわらず、ピアノを弾き、スモールコンボで演奏するスタイルはそれだけでも個性的でしたが、ある時、ドラマーが仕事に穴をあけたことから、思い切ってドラムレスというスタイルを取って、ピアノ、ギター、ベースというさらに個性的なトリオになり、これが思いがけず大変な好評を博したそうです。これが後にナット・キング・コールスタイルと語り継がれるドラムレスギタートリオになったわけです。その後、’40年代半ばにふとしたきっかけから歌を歌うと、これがまた大評判となりました。’50年代にはついにチャート1位に輝き、300万枚の大ヒットとなった「モナ・リザ」で歌手としても不動の地位を築くことになったのです。艶のある声と、美しい名曲の数々、そして、スウィンギーな演奏の楽しさは、海を渡って私たち日本人の耳にも届き、洋楽好きなファンの間だけではなく、日本の流行歌と共に大変な人気だったそうです。「モナリザ」「スターダスト」「フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン」「ルート66」などなど、皆さんもどこかで聴いたことがある名曲ばかり。そして、現代のアーティストたちがカバーしている曲もあります。最近、某航空会社のテレビのCMでかかっていた、美空ひばりさんが歌う「ペイパームーン」、そして、マイケル・ジャクソンが歌っていたチャールズ・チャップリン作曲の「スマイル」など、現代でも親しみやすいポピュラーな曲ばかりです。あのマイケルでさえ、きっとナット・キング・コールを尊敬して止まなかったのでは、と思います。しかし、成功を手にしたナットにも、アメリカのダークサイドとも言うべき、人種差別の壁で大いに悩むことになります。多忙に加えて彼への誹謗中傷、差別、嫉妬などから心を病み、喫煙の機会が増え、’64年に45歳の若さで肺がんで亡くなりました。スターの栄華の裏に見え隠れする苦悩や悲しみは、推し量ることはできませんが、歌に触れることで少しでも、感じられるのではないかと思います。そしてこの度、私は、ナット・キング・コールをトリビュートしたアルバム「モナ・リサ」をリリースいたしました。ぜひ、彼の人生なども振り返りながら、私の歌でその世界をお楽しみいただけたら、と思います。ぜひ聴いてくださいね。