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「内野聖陽」スペシャルインタビュー
取材日:2022.04.22

1988年にトニー賞最優秀演劇賞を受賞した『M.バタフライ』。
世界30ヵ国以上で上演されるなか、日本では1990年に劇団四季で上演。
それから32年の時を経て、再び日本の劇場に登場します。
劇作家のデイヴィット ・ヘンリー・ファンが実話を基に書き上げた本公演。
主人公のフランス人外交官、ルネ・ガリマールを演じるのは、
緻密な人物描写で作品に彩りと深みを与える内野聖陽です。
1960年代の中国・北京、異国の地で出会った神秘的な女性は、実は男性だった―
国家や時代に翻弄されるガリマールを演じるにあたって、その心境などを聞きました。

まず、『M.バタフライ』にご出演が決まった時の心境を教えてください

プロデューサーの方が「この作品はどうしても内野さんでやりたい」と強い気持ちを示してくださって、そこに動かされたことが一番大きいのですが、脚本を読んで、すごく衝撃的なラストがありまして、「これは役者として賭けることができる作品だな」と感じ、「では、やらせてください」と。



どんな点に惹かれたのでしょうか?

僕が演じるフランス人外交官のルネ・ガリマールは、京劇のスター、ソン・リリンを女性だと思って付き合っていました。でも、ある日突然、自分が見てきたことが全く真実ではなかったということがわかった瞬間、人間はどうなるのか。自分だったらどうするか、どう決着をつけるのかという問題にすごく関心がありますし、そこが面白いところだと思います。

ソン・リリン役の岡本圭人さんの印象は?

彼はこの作品で2度目の舞台出演なので非常に初々しい、新人さんに近い状態ですが、お父さんの岡本健一さんの影響でしょうか、すごく勉強家で、海外留学で演技の様々なテクニックも勉強されているので、お稽古も楽しみです。

内野さんは同じ人が演じているのかなと不思議に思うほど、役によって全く印象が異なります。普段、どういう役作りをされているのか気になっているのですが…。

「役作りは?」とよく聞かれますが、僕は役を作っているつもりはあんまりないんですね。「作る」ってすごく人工的な語感じゃないですか。「作り上げる」みたいな。それよりかは「熟成させる」みたいな感じです。いろんな情報を自分の中にインプットして、そこから勝手に立ち上がるというか。その情報というのは、もちろん戯曲の中に一番あるし、さまざまなものから喚起されるイメージだったりですね。


となると『M.バタフライ』の場合は…。

1960年代の社会情勢や当時の中国での男女の関係性や立場とか、あるいはフランスの独房の状況もあるかもしれないし、文化大革命の世相とか…。そういった情報を漬け込んで、漬け込んで、自然に発酵させていくという感じです。

演出家の日澤雄介さんがお持ちのイメージともすり合わせて?

それも勿論です。演出家さんや監督さんはどう捉えているのかというのは一番興味のあるところです。60年代という時代や、当時の中国の政治的状況、あるいはベトナム戦争の状況などを日澤さんがどのように捉えて、物語の背景に織り込んで僕たちを動かしていくのかということにも興味がありますね。

日澤さんとは何かお話をされましたか?

ガリマールは、いわゆる男性と女性の性差の曖昧なところにいるというか不安定な性別と言いますか…。そんな彼がソン・リリンという美貌の女優に出会うことで、徐々に「男にさせられてしまう」という面白さがあるよね、と…日澤さんとまず話したのはそんなことですね。「ソン・リリンを演じたのは、私の演技者としての最大のチャレンジだった」という青年ソン・リリンのセリフがあります。彼は貧しい田舎で生まれた少年で、命を賭して女になりきりました。それはもう壮絶です。そして寝室でどんなマジックをかけて、ガリマールというフランス人を操ったのか。そこは誰しも興味深いところなので日澤さんと入念に作っていきたいところですね。

戯曲を拝読しましたが、ガリマールはセリフがめちゃくちゃ多いですね。

めちゃくちゃありますよ!この物語はガリマールが独房でいきなりお客様に語り出すところから始まります。要は、ガリマールの脳内を観客の皆様と共有していくという作り方になっています。なので、僕がお客様をガリマールの脳内に案内する。僕が上手いことお客様を60年代の北京にお連れして、どうやってソン・リリンと恋に落ちて、国家機密を話してしまうことになったのか。で、ラストシーンまで導きます。すべてはガリマールの脳内劇場、いわば回想劇なので、水先案内人という役としてはすごくプレッシャーがあります(笑)。

確かに重大な任務ですね。では、この作品の醍醐味はどういったところにあると思われますか?

『M.バタフライ』は実際にあった事件に着想を得て創作されているところがミソで。ガリマールとソン・リリンはプラトニックな関係ではなかったはずなので、「どうして気づかなかったの?」という大きな疑問があったりします。でもそれは、ガリマールが特別だったのではなく、皆様の心にもきっと起こりうることではないのかと思います。そういった錯覚も、ぜひ劇場で楽しんでください。

昨秋、紫綬褒章を受章されました。おめでとうございます。受章のお気持ちを聞かせてください。

「頑固者」とか、「役に対してうるさすぎ」とか(笑)、いろんな方の声があったりする中で、自分で貫いてきた信念が、ある意味、結果として評価されたのかなというのは一つあって、そこは単純に嬉しかったです。不器用ながらも地道に誠実に進んできたつもりなので、少しぐらい自分のことを評価してやってもいいのかなと、ちょっと思いました。ただ、今は「国に褒められてダメになりたくないな」という思いの方が強いです(笑)。

なるほど、改めて気が引き締まりますね!舞台も楽しみにしています。

◎Interview&Text/岩本和子
◎Photo/安田慎一



7/30SATURDAY・31SUNDAY
「M.バタフライ」
■会場/ウインクあいち 大ホール
■開演/7月30日(土)12:00、17:00 7月31日(日)12:00
■料金(税込)/全席指定 ¥10,500 車いす席¥10,500
■お問合せ/メ~テレ事業 TEL.052-331-9966(祝日を除く月-金10:00~18:00)
※未就学児入場不可