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「高杉真宙」スペシャルインタビュー
取材日:2023.07.25


映画、テレビドラマ、時にはバラエティ番組でも活躍する高杉真宙は
舞台にもコンスタントに取り組み、幅広くキャリアを重ねてきた。
そんな若手実力者がシェイクスピアの世界に初挑戦。
「ロミオとジュリエット」の主人公ロミオを演じる!
ジュリエットには藤野涼子、演出は蜷川幸雄の演出助手・演出補を務めた井上尊晶。
シェイクスピア劇の中でも屈指の上演回数を誇る悲恋の物語は
誰もが逃れられない愛と死を描いているゆえに、永遠の輝きを放つ――


ロミオを演じる心境をお聞かせください。

プレッシャーでしかないです(苦笑)。これまでも舞台をいくつかやらせていただき、もちろんシェイクスピア作品もいつかやりたいと憧れていました。中でも「ロミオとジュリエット」は登場人物がほぼ10代で、年齢的にギリギリですから、27歳の今、演じることができるのは、うれしいです。僕の主観でしかないですけど、ロミオはすごくアホな子。あまり賢くないなと思うんです。でもロミオと同年代の頃の僕だったら、そんなに変わらないと思うんじゃないかと。ロミオに関しては恋愛でしたが、何か一つのことに対して熱中する真っすぐなアホさが出せたらいいのかなと考えています。それは純粋さ、ピュアさに近いものですよね。

ジュリエット役の藤野涼子さんの印象は?

すごく和やかな方ですね。まだ稽古の前なので、3回しかお会いしてませんが、話しやすくて落ち着いていて、安心させてくださる方。あと、読み合わせをしてみて感じたんですけど、今回のお芝居は詞的な表現が多いのでリズムが重要だと思うんですよ。藤野さんは、藤野さん自身のリズムで話しながら作品の台詞のリズムも壊さず調和している。両方が手を取り合って進んでいく姿がとても気持ち良くて「いいなあ、うらやましいなあ」と思いながら彼女を見ています。


稽古開始に当たって、井上尊晶さんから演出プランのお話はありましたか。

まず最初に「まだ何も決めてない」と言っていらして。でも、それを聞いて逆に安心しました。尊晶さんは、演出家の考えはあるけれど俳優の考えも尊重してくれる方なんだと思います。だから、わからないところから一回やってみようと。一回やってみようのほうが若干怖いところもありますが、稽古では、あまりにも感覚がズレていたら話し合いはします。僕はこう思って、こう考えてきたという主張はしますね。そうじゃないと、すり合わせができない。どんなに台本を読みこんでも、人生の歩み方によって受け取るものは違ってくるので、ズレるのは当然。その上で感覚のズレをどれくらいすり合わせるのかが大事だと思うんです。俳優はそこを合わせないといけない。現場とのチューニング、監督や演出家とのチューニングは絶対に必要。僕はそういうやり方が好きなタイプですね。

井上さんは、執筆の背景にペストのまん延があったため、コロナ禍を経験した現代と少し重ねて見ていらっしゃるようですが…。

尊晶さんからは、ペストが流行った時代と現代には通じる部分が多いと思うとは聞いています。「ロミオとジュリエット」の劇中では、疫病の影響で手紙が届かないという事態が起こって不幸を招きます。ただ、こんな便利な社会でも伝わらないことって多いですよね。広い世界の中の閉鎖的な空間は、現代にも存在する。台本を読んでいると、世界がどんなに大きくてもロミオとジュリエットには息苦しかったんだろうなと感じます。それはインターネットの向こうにどれほど広がりがあっても、みんな息苦しそうに見えるのと同じような気がするんです。


舞台の仕事はどんな位置づけにありますか。

僕にとってはリセットの場所ですね。自分の今いる場所を客観視できるというのか。映像のようにアップや引き画はなく、また、しゃべっていてもいなくても舞台上にいることがありますよね。そういう状態も含め、登場から退場まですべて演技でいっぱいにするという作業をあらためて感じます。自分の技術的な立ち位置を感じる場所だなと。怖い場所ではあります。一つ千穐楽を迎える度に「舞台はもういい」と思うんですけど、数カ月経つとまた舞台に立ちたいと思う。大変ではあるけど、僕にとっては今のところ楽しい場所でもあるので、機会があれば継続的にやりたいです。

記憶に残る舞台作品はありますか。

最初に舞台を観たのは小学生の頃、家族で出掛けた劇団四季の公演。地元の福岡で「人間になりたがった猫」という作品を観ました。パンフレットも実家に残ってます。ただ、その頃は俳優に対して職業という意識はなかったです。それからも舞台は観ていて、気づいたら好きだと自覚していた感じですね。この世界に入って観る機会も増え、やる機会も増えてどんどんハマっていきました。舞台を観る時いちばん好きなのは、場内が暗くなる瞬間。現実からバンッと切り離され、一気に引き込まれます。あれがいいんですよね。僕は、照明が落ち始めたら目を閉じるんですよ。現実と完全に乖離されに行ってます。

東海地方の観客にメッセージをお願いします。

観たり読んだりしたことはなくても、「ロミオとジュリエット」というタイトルはきっと誰もが知っていますよね。今回この作品をやったことのない僕がロミオを、やったことのない藤野さんがジュリエットを演じ、スタッフを含め新たな顔ぶれの「ロミオとジュリエット」が生まれます。だから台本は同じでも、過去の上演とは異なる舞台になると思うんです。読み手が違えば演技も違ってきて、作品も違うものとなっていく。これだけ長く愛されているのは、キャストやスタッフが変わる度さらに面白く魅力的に映るからだと思うので、僕たちの「ロミオとジュリエット」を観に来ていただけたらうれしいです。

◎Interview&Text/小島祐未子
◎Photo/安田慎一
◎Makeup&Hairstyling/堤紗也香
◎Stylist/菊池陽之介



10/14SATURDAY・15SUNDAY
「ロミオとジュリエット」
■会場/東海市芸術劇場大ホール
■開演/10月14日(土)12:00、17:00 10月15日(日)12:00
■料金(税込)/全席指定 ¥11,000 学生席(当日引換券)¥5,500
■お問合せ/中京テレビクリエイション TEL.052-588-4477
※未就学児入場不可