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「中村獅童」スペシャルインタビュー
取材日:2021.08.05

常に歌舞伎の伝統の、その先を切り拓いていく先駆者が、
あの超歌舞伎を引っさげ2年ぶりに関西にやってくる。
京都南座での「九月南座超歌舞伎」では、
世界で注目されるボーカロイド・初音ミクとの競演を、
NTTをはじめとした最新テクノロジーで実現。
先進的なICTによる新たな歌舞伎の在り方を提示してくれる。
本公演で初お目見えとなる『都染戯場彩(みやこぞめかぶきのいろどり)』や
“ニコニコネット超会議2021”でファンの熱い支持を得た
『御伽草紙戀姿絵(おとぎぞうしこいのすがたえ)』を上演。
今作に込めた思いを中村獅童さんに語っていただきました。

2年ぶりの京都南座での超歌舞伎公演ですが、今回の見どころをおしえてください。

これは是非劇場で体感していただきたいので内容はご覧になってのお楽しみですが、「超越の術」という新しい仕掛けを取り入れています。そしてあの初音ミクさんが初めて悪役に挑戦するというのもファンの方にとっては見どころではないでしょうか。そもそもこの超歌舞伎は、お客様参加型で成立するという性格があります。今回は、大向う(歌舞伎特有の掛け声)が入った特製のペンライトで、声援を送っていただける趣向となっています。コロナ禍でも盛り上がっていただけるような企画となっています。


京都南座で超歌舞伎の公演をされるということは獅童さんにとって、どんな意味があるのですか?

伝統と歴史のある歌舞伎専門の劇場で、こういった新しい試みをさせていただく喜びがひとつ。若い頃、お役がなかなか付かなかった時代に、いつか南座でメインに立てる役者になりたいと思っていましたから南座での公演には特に感慨深いものがあります。つぎに京都には古典好きのお客様が多いと思うのですが、一昨年の公演では、そんな歌舞伎通のお客様からお子様まで幅広く超歌舞伎を楽しんでいただき、育てていただけたことにとても感謝しています。今作でも歌舞伎の古典をベースに最新のテクノロジーを用いて新しい表現をしていますが、改めて歌舞伎界の先人の方々の工夫やご苦労に敬意を感じることが多いです。僕自身も古典を大事しながらも革新に向かう役者でありたいと思っていますから。

共演される初音ミクさんは、どんな俳優さんなのですか?

初音ミクさんは当然ながら絶対にミスをされないですし、稽古の初日から完璧にセリフも入っています。きっと常日頃、並々ならないご努力をされているんだと本当に感心しています(笑)。悪役に関してはもう完璧です。もはや歌舞伎俳優の域に達せられていると思います。僕も見習わないといけないと思っています。共演者がボーカロイドであっても、こちらが気づかされることが多々あります。やはり相手役によって創られていく自分を感じますね。

普段の歌舞伎公演に比べて、この超歌舞伎に臨まれる獅童さん自身に、何か変化はあるのでしょうか?

歌舞伎を観たことのない若い人に向けてメッセージを伝えるという点では、古典歌舞伎を演じる時とはテンションが違ってきます。そういった新しいファンを獲得していくのが僕の使命だと思って気合が入りますね。故(十八世)中村勘三郎兄さんから「君の良いところは演技に心が入ってること、決められた型はもちろん大事だけれど、君は破れかぶれになれる役者だから、その個性は大事にしなさい」というお言葉を頂いていて、魂で演じるという姿勢は古典、新作、そして今回の超歌舞伎に共通して、いつも心に留めていることです。



NTTの最先端のICTを駆使した超歌舞伎ですが、創り上げていく過程ではご苦労も多いと思うのですが。

映像や音響に関わるデジタルチームや演出・振付をされている藤間勘十郎先生との間では、演出の練り込みの時間は想像を絶するものがあると思います。初演の時なんかはリハーサルを演者も含めて朝方までやっていました。良い意味で意見のぶつかり合いもありましたが、ここまで進化して来れたのは、超歌舞伎を支えてくれたお客様のお陰だと思っています。配信コンテンツの良いところはリアルに感想やメッセージが流れて来てみんなが共有できる。古くからの歌舞伎ファンと新しいサブカルのファンがネット上で交流していく。終わったときはリアルタイムでスタッフや演者に感動が届くわけで、今ではデジタルチームともとても良い関係で舞台づくりに専念できています。

多くの初音ミクさんのファンに対してどんな感想をお持ちですか?

初音ミクさんファンはもちろんのこと、サブカルチャー好きの人々のパワーはもの凄いなと感心しています。伝統の歌舞伎界を彼ら彼女らが動かしてくれたと思っています。そもそも歌舞伎は、古来その時代の最先端を取り入れて発展してきた芸能ですから、今のサブカルチャーやデジタル技術、SNSの世界との融合を積極的にしていかないといけない。これからの若い人に向けてサブカルやデジタルとの共存は避けて通れないと思うんです。100年後、200年後にも歌舞伎という芸能は残っていて欲しいですからね。

様々なメディアで八面六臂の活躍をされている中村獅童さんのこれからをお聞かせください。

この超歌舞伎は自分の中では一生のライフワークだと位置づけています。歌舞伎俳優としては多くの古典も新作も今回のようなコラボレーションも伝統の基礎の上にどんどん挑戦していきたいですし、映画やテレビでは、歌舞伎俳優が出演しましたではなく、作品に真摯に向き合うだけの一表現者でいたいと思っています。

MEG関西版を読んでいただいている関西のファンにひとことお願いします。

上方のお客様は楽しむことがすごく上手だという印象です。上方は歌舞伎発祥の地でもあり、多くの古典ファンの皆さまもおられますが、この超歌舞伎という新しい試みを温かく迎え入れていただけることに、嬉しい手応えを感じています。「九月南座超歌舞伎」で大いに盛り上がっていただければと思っています。

◎Interview&Text/石原 卓
◎Photo/来間孝司
◎Makeup&Hairstyling/masato at B.I.G.S.(marr)
◎Stylist/長瀬哲朗(UM)



9/3FRIDAY〜26SUNDAY
「九月南座超歌舞伎」
■会場/南座
■開演/各日[午前の部]11:00 [午後の部]15:30
■料金(税込)/全席指定
[本公演] 一等席¥13,000 二等席¥7,500 三等席¥4,000 特別席¥14,000
[リミテッドバージョン]S席(1・2階)¥6,500 A席(3階)¥4,000
■お問合せ/南座 TEL.075-561-1155