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「森崎ウィン」スペシャルインタビュー取材日:2025.02.01
舞台、音楽、映像、テレビ…、多彩な分野で活躍する森崎ウィンが
2021年に日本でも初演されたミュージカル「ウェイトレス」に初参加。
ヒロインと恋に落ちる産婦人科の医師ポマター役を演じる。
高畑充希ふんするジェナはダイナーの花形ウェイトレスだが
家庭では夫のモラルハラスメントに悩まされている。
やがてジェナは、自分が望んでいなかった妊娠に気づき…。
女性を取り巻く問題を、時に笑い飛ばし、時に切実に問いかけ、
大反響を呼んだ舞台について、一人の人間として森崎が語る。

初演をご覧になったそうですが、感想はいかがでしたか。
非常にポップで楽曲もキャッチー。舞台の彩りが鮮やかで美しく、まさにミュージカルでやるべき作品だと思いました。そんなハッピーな感覚でいたら、どんどん展開が重くなっていって…。結構ドーンときたんですけど、ちゃんと音楽ですくい上げてくれるんですよね。あらためて音楽の力を実感し、それに救われる自分もいたので、最後は「イェイ!」という気持ちになれました。充希ちゃんとは10年ほど前に映画でご一緒しているんですが、ミュージカルデビューをしているのを知っていても実際に見たことがなくて。ジェナというキャラクターと充希ちゃんが本当にマッチしていて、歌声も素晴らし過ぎると思ったのをすごく覚えています。それで高揚してしまって…。一人で行ったので共有する人もいなくて、とりあえず外の空気を吸うため幕間に劇場を一回出て頭を冷やしました(笑)。
ポマター医師はどんな人物ですか。
彼の妻はできた人で、彼は家では立場がないというか、否定されているわけじゃないけど勝手に被害妄想が大きくなっているというか。妻も同業だからこそ生まれてくる感情…、うまく言葉にできないんですけど、その気持ちはすごくわかるなと。彼は今回の不倫で何回目なのか考えると、いろんな役作りができると思ったりもします。何百回も出産に立ち会い、たくさんの女性を見てきただろうに、憧れていたウェイトレスの衣装などいろんな要因が合わさって、きっと一目惚れでジェナに心が動いてしまった。彼は「必要とされている」ことに敏感で、根底に「守ってあげたい」という意識がある。女性のほうが下とか男性が優位という意味ではなく、自分が必要とされる面があるとうれしいんですよ。パートナーとの関係性が薄くなっていって、自分がいてもいなくても相手は生きていくんだろうと感じた時、とてつもなく寂しくなると思うんです。彼がジェナに走ってしまった理由の一つでしょうね。

女性を巡る社会課題を描いた作品でもありますね。
「ウェイトレス」の主要な3人の女性は本当に輝いています。彼女たちは問題に立ち向かうというより、どう生きていくかを体現しているので、そこに社会的なメッセージが詰まっていて感銘を受けました。夫アールのジェナへの発言などは本当に酷い。そういうことで悩んでいる人には勇気をもらえる作品だと思います。ただ、僕は女性の立場を経験したことがないので、薄っぺらいことは言えないという本音もあります。この劇中でジェナはある生き方を選びますが、その先にはたぶん壮絶なドラマが待ち受けている。でも、そこに彼女の強さを見る。自分の人生の大切さを伝えることは男女関係なくて、辛くても自分で選択する意志が生き抜く強さにつながるんじゃないかと。時代も変わっていく中、選択する強さが本当の幸せをつかむには必要なのかもしれない。この作品から得た教訓です。
再演から参加されますが、LiLiCoさんはじめ親しい方がいると心強い?
それはたぶん最初のうちだけなんですよ。役や作品と向き合ううち、どこかで苦しい瞬間が絶対くる。でも、それを越えた先が気持ちいいんです。だから早く苦しみたいし、早く解き放たれて面白い境地にいきたい。映像、舞台、音楽のレコーディングどれも、しんどくなかった経験は一度もありません。何かを作るにはエネルギーがいるし、人様の人生を演じるのも結構つらいことだと思うけど、それが楽しみでもあり恐怖でもある。からいけどもう一口食べちゃう、みたいな感じですね(笑)。
映画音楽を集めたアルバム「Win’sFilmSongs」をリリースされたばかりですが、オリジナル楽曲と背景のある楽曲で歌い方に変化はありますか。
その答えを探してる途中で、わかりません(苦笑)。例えば「ウエイトレス」で言えば前後にセリフがある。歌はセリフの延長線というのがベースとして、もちろん音楽にはピッチもあるので歌として成立させなきゃいけないけど、セリフでもある。そのリンクをもう少し密にしなければという意識はあります。ただ、音楽としてのみ歌う時でも、その音楽の物語を伝えるために演技、お芝居は乗っかっているはずなんですよ。最近出た歌番組での話ですが、中森明菜さんの映像を見て「あんなに涙ためながら歌います?」と思って。あれは完全に芝居じゃないですか。前後にセリフがなくても一つの世界観を見せられて、すごいと感じました。僕がオリジナル曲、例えば誰かとの別れの曲を歌うとします。でもハッピーな場でそのバラードを歌ってくださいと言われることもある。となると、一つ芝居が乗っかります。俳優でもある僕は、あまり違いがないのかもしれませんね。
映像の監督まで経験していらっしゃいますが、今後、挑戦してみたい分野はありますか。
人生一回じゃ足りないと思うほどやりたいことが多過ぎて(笑)。でもそういう時って危ないと身近な人に言われたことがあります。いっぱいやり過ぎて、どれも身につかず中途半端に終わっていくという…。何かの記事で読んだんですけど「やらないことを決める」というのは良くないですか。やりたいことって死ぬほど出てくるんですけど、「これをやらない」と決めることが今後は必要かなと。時間は有限だと理解して行動することが、もっと大人になる、ワンステップ上がるために大事なのかもしれないと思っています。
◎Interview&Text/小島祐未子
◎Photo/安田慎一
5/5 MONDAY・HOLIDAY 〜8 THURSDAY
ミュージカル「ウェイトレス」
■会場/Niterra日本特殊陶業市民会館フォレストホール
■開演/5月5日(月・祝)17:00
5月6日(火・振)12:00、17:00
5月7日(水)・8日(木)12:00
■料金(税込)/全席指定 S¥16,000 A¥11,000 B¥6,000
■お問合せ/サンデーフォークプロモーション TEL.052-320-9100(12:00~18:00)
