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「中村壱太郎」スペシャルインタビュー
取材日:2025.01.23


京都の春の風物詩となった南座の「三月花形歌舞伎」が
今年も壱太郎とともにやって来る。
今や女方の歌舞伎俳優として確固たる存在感を放つ中村壱太郎。
2021年、コロナ禍を吹き飛ばす勢いで
平成生まれの俳優が中心となり始まった「三月花形歌舞伎」も今回で5年目を迎える。
自身が、1年で1番大切にしていると言っても過言ではない
本公演への意気込みを聞いた。


そもそも歌舞伎における花形〜という言葉には、どういった意味があるのですか?

歌舞伎の世界では花形という言葉は昔から使われて来ました。元は若手役者を指す言葉で、父(四代目中村鴈治郎)や叔父(三代目中村扇雀)はもちろん多くの先輩方も長く花形公演と銘打ってやっておられました。その魂を受け継いで、コロナ禍に負けないぞ!という意気込みで、平成生まれの役者を中心とした興行が5年前に新たに始まりました。


今回は中村米吉さん、中村福之助さん、中村虎之介さん、との共演となりますが、どんな雰囲気の公演になりそうですか?

2025年は松竹創業130周年という特別な年でもあります。そのような特別な年に刺激を受けて、京都でも「三月花形歌舞伎」があることでメンバーみんな気合いが入っています。米吉くんとは、お互いに女方ということもあり、それぞれの違った魅力をお見せできると思っています。福之助くんは、昨年の『スーパー歌舞伎ヤマトタケル」で共演させていただきました。舞台では独特のニヒルな面が際立つ希有な役者さんだと思います。虎之介は従兄弟ですが、実はこれまでガッツリ共演する機会があまりなかったのです。それもあって、虎之介との『伊勢音頭恋寝刃』(桜プログラム)での共演をとても楽しみにしています。


さて、今公演での見所のひとつはなんといっても『於染久松色讀販(おそめひさまつうきなのよみうり)』での壱太郎さんによる「お染の五役」ですが、これを演じようと思われたきっかけは?

昨年の『ヤマトタケル』、立川立飛歌舞伎での『玉藻前立飛錦栄(たまものまえたちひのにしきえ)』での九変化、そして南座の顔見世興行では『大津絵道成寺』での五役と、早替り(同じ俳優が衣裳、鬘、役柄を瞬時に変えて演じ分ける)の続いた一年で、だったらこの早替りを極めてみたいという思いになりました。この演目は舞踊となっていまして、今年の新春に大阪松竹座で片岡仁左衛門のおじさま、坂東玉三郎のおじさまが演じられたお芝居の続編の部分を舞踊というスタイルで新たに藤間勘十郎ご宗家と創り上げる演目です。

三月花形歌舞伎の定番である「松」と「桜」という2プログラム制となっています。この『於染久松色讀販』はどちらにもありますね。

「松プログラム」では、松竹座の新春公演で、仁左衛門のおじさま、玉三郎のおじさま達が演じておられた鬼門の喜兵衛と土手のお六の二役を、私がひとりで演じ分けるという早替りに挑戦をします。かつて二代目市川猿翁のおじさまがこのスタイルの五役で演じられていたというお話を聞いて、やってみたいと思いました。「桜プログラム」では、祖父(四代目坂田藤十郎)の演出に沿った形となります。雷のお役が追加されたり、猿廻しや船頭の役も変わりますから、どちらも雰囲気の異なる演出になると思います。お染、お光、久松の微妙な三角関係の気持ちの演じ分け、そして雷はコミカルに、土手のお六に関しては、こういったお役をすることが少ないですし、勝気でかっこいい女性の部分をしっかりと出せればと思っています。鬼門の喜兵衛は新境地です!

三月花形歌舞伎の楽しみは、演目もさることながら、芝居以外の企画が毎年評判ですが、今回はどんな事を計画されていますか?

定番となった手引き口上では4人それぞれの飾らない姿をお見せしようと思います。また今年もガチャガチャ感覚で楽しいグッズプランを考えています。ハズレなしで、全て揃えたくなる!期待していてください(笑)。

少し壱太郎さんのプライベートも教えてください。オフの時はどう過ごされていますか?

いわゆるオフはつくらない主義です。休みの日でも何かしら活動しています。強いて趣味といえば、美術館に行くことですね。海外公演に行っても美術館には必ず行くようにしています。今は、ラトビア出身のマーク・ロスコが一番お気に入りの作家です。歌舞伎も美術作品と同じで、私たちの演技から、お客様が何を受け(感じ)取ってもらえるか?が一番大事な部分ですから。

◎Interview&Text/石原卓
◎Photo/中野建太



3/2SUNDAY~23SUNDAY
「三月花形歌舞伎」
■会場/南座
■開演/11:00、15:30
■料金(税込)/全席指定 一等席¥12,000 二等席¥7,000
三等席¥4,000 特別席¥13,000
■お問合せ/南座 TEL.075-561-1155