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「柿澤勇人」スペシャルインタビュー
取材日:2023.10.21


2023年にデビュー15周年を迎えた俳優・柿澤勇人。
劇団四季で経験を積み、舞台、ドラマ、映画と、活躍の場を広げてきました。
そんな彼の演劇人生におけるキーパーソンのひとりが三谷幸喜さんです。
「愛と哀しみのシャーロック・ホームズ」の主人公シャーロック・ホームズ、
大河ドラマ「鎌倉殿の13人」源実朝役と、近年の話題作に出演し存在感を示しています。
そして、書き下ろしの最新作「オデッサ」では主演が決定。
三谷作品に参加する醍醐味、演じることへの思いを聞きました。


今回の『オデッサ』は「言語」がテーマです。英語を話せない1人の日本人旅行客がある殺人事件の容疑で勾留され、語学留学中の日本青年が通訳としてやってくる。取り調べをするのは日系人警察官ですが日本語は話せない。登場人物は3人で言語は二つ。なんともスリリングな密室の会話バトルが繰り広げられそうですね。

そうなんです。まだ台本は出来ていない状態ですが、3人だけの会話劇ですね。言語として、日本語と英語は間違いなく使われるのだけど、日本語だって方言があるし、単純に標準語を使うかどうかも今の時点では解らないんです。きっと、本番になれば、2つの言語のほか、おそらく英語の部分には字幕も出るのかなと思うので、お客さんもグッと集中して、どんどん引き込まれていくんじゃないでしょうか。

以前「役を楽しんでいいんだ、と思わせてくれたのは三谷さんが初めてだった」とコメントされていましたが、三谷幸喜さんは柿澤さんにとって、どんな存在ですか?

当て書きをしてもらえることはとてもうれしいことです。俳優の個性や特徴を上手く取り入れて、より俳優が豊かになるように脚本を書いてくださると思うんですよ。シャーロック・ホームズの役を演じた時に、それを強く感じました。三谷さんは、僕が演じた『メリー・ポピンズ』のバート役に闇がある、悲哀がある、と感じたそうで。あんなに楽しい作品を観てですよ?(笑)僕が、演じれば演じるほど涙が出てきたらしくて。それこは、三谷さんにしかわからない感覚かもしれません。

なにか悲哀を生み出すような経験や挫折があったのでしょうか?どうやって克服を?

一番辛かったのは舞台上でアキレス腱を断絶した時ですね。ミュージカル『ラディアント・ベイビー』で主人公・キース・へリングを演じた時は、体力的にも精神的にも倒れる寸前で。僕っていつも2番手だったんです。でもこの作品は単独での主役。なのに客席は埋まっていない。とても評判は良かったんですが、こんなに命を懸けているのに結果が出ていないことが悔しくて、自分を追い込んでしまって。そのタイミングでアキレス腱が切れちゃった。もう、どん底まで落ちて、絶望ですよ。リハビリもどうでもよかったし、どんどんひねくれちゃって。そんな中でミュージカル『メリー・ポピンズ』のオーディションに受かったんです。天真爛漫に歌い踊る役。夢のような世界なんて、信じられない時期。周りに叱咤激励されて「やるしかない!」と日々演じていましたね。そんな複雑な感情を抱えた僕の演技に、三谷さんがシャーロック・ホームズを見出した。人見知りでエキセントリックな部分が、僕にもあるからかな?三谷作品に出た役者は、よく言っています。なんでこんなことまで見抜かれているんだろうって。


だからその役や作品をもっと知ってほしいと思うようになるのですね。

そうなんです。自分の役をすごく愛するようになっちゃう。三谷さんも、どんな役でも役者がその役を愛するように書かないと役者がかわいそうだ、と。その役を演じている間は、みんないきいきと生きてほしいって強く思っていると。だから、客席から三谷さんの作品を見ていると、なんで自分が舞台の上にいないんだよ、って思ってしまうくらい魅力的なんです。でも、やっぱり見る側と演じる側では全く違う。僕はもともとポジティブな人間じゃないから、芝居をやればやるほど怖くなっていくし、自信だってないんです。でも、三谷さんの作品に出ている自分は、みんなに見てほしいって強く思います。

辛いことがあっても、やはり役者を続けていく。その理由はどこにあるんでしょう?

演じること、特に舞台の仕事って、全身筋肉痛で早く帰りたいし、しんどい(笑)。でも、やめられないんです。役者はみんなそうじゃないかな。演じている時に、その役と自分の感情がリンクする瞬間がある。すごく気持ちいい瞬間が。たとえ一瞬だったとしても、それを味わいたいためにやってるのかな。例えば、子供たちと共演したら、すごくピュアな感情が引き起こされる。泣きの演技って実は、苦手なんですよ。でも、彼らといると自然に涙が出てくる。そういう時こそ、本当に心が動いているんですよね。自分にしか解らない感情を捕まえてリンクする、その瞬間があるからこそ続けていられるのだと思います。

最後に皆さんへ一言!

三谷さんの作品は、伏線が多く仕込まれています。それを回収していくのも楽しみのひとつなので、2日間連続で見ていただけるとより深く理解できるかも(笑)。それから、突然、役者も知らないところでサプライズが仕掛けられる時もあるんです(笑)。果たしてどんな会話劇になるのか!!舞台終わりのサウナとお酒も楽しみに、僕もがんばります。

◎Interview&Text/田村のりこ
◎Photo/安田慎一
◎Stylist/五十嵐堂寿
◎Makeup&Hairstyling/松田容子



3/2 SATURDAY・3 SUNDAY
「オデッサ」
■会場/Niterra日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール
■開演/3月2日(土)13:00、17:30 3月3日(日)13:00
■料金(税込)/全席指定 ¥11,000 車いす席¥11,000 U-25¥5,500(観劇時25歳以下)
■お問合せ/メ~テレ事業TEL.052-331-9966(平日10:00~18:00)
※未就学児童入場不可