HOME > SPECIAL INTERVIEW > 「藤原竜也」インタビュー

「藤原竜也」スペシャルインタビュー
取材日:2020.10.05

藤原竜也にとって久々の舞台となる『てにあまる』。
ある家族を描きながら、濃密な会話劇で人間というものに迫っていきます。
脚本を手がけるのは、岸田戯曲賞を受賞し国内外で注目されている劇作家・松井周。
演出は、共演者でもある柄本明が担います。
コロナ禍が舞台という場所にも多大な影響を与えた2020年。
蜷川幸雄に見出され、演劇の申し子と言っていい藤原は、何を感じていたのでしょう。
演劇に対する思いを率直に語り、新作への期待を膨らませていく姿に、
偽りのない役者の今が見えてきました。

舞台は、昨年末の『渦が森団地の眠れない子たち』以来になりますね。

久しぶりですね。ただ、今年は全体的に、舞台というもの自体がしばらく上演できない状況がありましたから。自分が舞台に立ったときにどんな気持ちになるのか、自分自身で確認したいという気持ちもあるんです。自分にとって本当に演劇は必要なのか。舞台に立つというのはどういうことなのか。

舞台に立っていない期間は、立ちたいと思っておられましたか。

ちょうど違う映像の撮影もしていましたから、深くは考えなかったですね(笑)。ただ、今回演出をしてくださる柄本(明)さんともお話したんですけど、こういう状況になって、演劇を配信で伝えることが増えてきて、これからそれが当たり前の時代になるのかもしれないけれども、演劇というのはやはりお客さんがその場にいて成立してきたものであり、配信では伝えきれない部分がある。そういう演劇が持つ力みたいなものは大事だなと改めて思いますし、そこを僕自身も今度の舞台で一歩踏み込んで確認したいなと思っているんです。正直なところ、演劇こそ他者とのコミュニケーションの場だ、正しいことをやっているんだなんて思いながらやってきましたけど、劇場に行くのを躊躇されるお客さんもいらっしゃるでしょうし、演劇のあり方ということについては直視しなければいけない問題もあるなとは思うんです。でも、このまま何も行動を起こさないのも違う気がするので。セーフティ・ファーストでどういうふうに演劇ができるのか、僕も考えながらやりたいなと。



今のお話に出てきた柄本明さんとは、舞台では2015年の『とりあえず、お父さん』で共演されました。どんな方でしたか。

そのときは柄本さんは演出ではなかったんですけど、稽古中もボソボソっと、「竜也、今の言い方いいな」とか、「もっと走りながらしゃべったら面白いんじゃないか」とか、いろいろ言ってくださっていたんです。それが、面白いことを言ってくれるなと印象に残っていたので、今回演出を受けるのが楽しみですね。演出家の言葉によって、違う自分を発見したり、戯曲をより深く理解できるのは、やはり非常に楽しいことなんです。とはいえ俳優は、演出家にアドバイスをもらう前に、稽古初日から各々が提示をして世界観を広げて、そこから演出家にチョイスさせるくらいのことをするのが大事だと思うので。その意味では、柄本さんは俳優としても、何歳になっても表現することで自分を持ち上げながら走り続けている人だから、見習わなきゃいけないと思いますね。

一方、脚本の松井周さんは、藤原さんが主演された『世にも奇妙な物語’17秋の特別編「夜の声」』の脚本を担当されていました。作品にはどんな印象をお持ちですか。

人間の日常を描きながらも、演者が感情にノッキングを起こすような異物を入れるというか、なかなかストレートに表現させてくれない脚本でしたね。だから、観る側にとってもそこが面白いところになると思います。といっても、現段階ではまだ台本が上がってないのでどういうことになるのか全然わからないんですけど(笑)。でも、新作ができるというのは貴重だし、ありがたいことなので、本当に楽しみですね。柄本さんの演出と松井さんの脚本というドロドロの世界に(笑)、高杉真宙さん、佐久間由衣さんという若いふたりとともに入り込んでいくのは、非常に面白いんじゃないかと思います。


新作をやる喜びはどこにありますか。

今まで観たことがないようなもの、こんな脚本があったのかと思えるものをやるっていうことですからね。やっぱり新しく作れる喜びがあるんです。そもそも、新作を書いてもらうというのは、いわば当て書きをしてもらえるようなものですから、そんな機会、人生においてめったにないわけで。そんな、この先何回もないようなことをやってもらえるのは、やっぱりありがたいことだなと思うんです。ただ、未知数だから失敗もある。そのあたり、作家さんはプレッシャーだと思いますよ(笑)。だから、新作には喜びと不安の両方があるんですけど、だからこそ面白いですし。唐十郎さんや清水邦夫さん、寺山修司さんといった方々の作品のように、後の世も再演され続けるようないい作品を目指したいと思っています。

◎Interview&Text/大内弓子
◎Photo/安田慎一



1/26TUESDAY・27WEDNESDAY
Sky presents「てにあまる」
■会場/刈谷市総合文化センター 大ホール
■開演/1月26日(火)19:00 1月27日(水)13:00
■料金(税込)/全席指定 S¥10,000 A¥8,000
U-25チケット¥5,000
(観覧時25歳以下対象・当日指定券引換・座席数限定・要本人確認書類)
■お問合せ/メ〜テレ事業 TEL.052-331-9966(祝日を除く月〜金10:00〜18:00)
※未就学児入場不可 ※詳しい情報はP08に掲載しています