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「藤原竜也」スペシャルインタビュー
取材日:2023.11.08


江戸時代に実在した、伝説の歌舞伎役者「中村仲蔵」の
波乱万丈な生きざまを描いた痛快エンターテインメント。
最下層の大部屋役者から成り上がる出世物語は、
2021年に6代目中村勘九郎の主演でドラマ化され注目を集めた。
新たにオリジナルの舞台戯曲として書き下ろされ、
40代を迎えた藤原竜也が役者としての新境地に挑む。


中村仲蔵は不屈の精神で芸の道を突き進んでいきますが、俳優としてご自分と重なるところはありますか?

15歳で俳優デビューしてからずっと厳しい演劇生活を送ってきましたから、地べたを這いつくばるようにもがいて、それでも上に行かなくちゃいけない、でもなかなか行けない——。そんな“どんよりした空気”を感じていたこともあります。自分は誰のため、何のために演劇をやるのか自問する瞬間があったからこそ、仲蔵が言う「この先に何があるか見てみたい」というセリフに共感しましたね。他者とのコミュニケーション方法は表現しかないと思っていて、僕ら役者は演技でお客様と会話するようなところがある。本番中に客席が食いついてこなかったら「芝居を変えてみようかな?」って、微妙に軌道修正したり、手法を変えてみたり、そういう駆け引きも面白いです。


脚本の源孝志さんが、「ドラマ版より先に“藤原竜也の中村仲蔵”で戯曲を書いていた」と仰っていましたが、舞台版ならではの魅力をおしえてください。

ホン(脚本)がほんとに面白いです。江戸時代や歌舞伎の世界、役者同士がけん制し合う楽屋内のヒエラルキー構造など、瞬時に観客を引き込んでいく源さんの手腕がすごい。あえて言えば、井上ひさしさん的な人間模様というか、喜劇から一瞬にして悲劇に撃ち落とされてしまったりする。壮大なストーリーは、いままでにない演劇世界を構築しています。僕はあまり大きいこと言うのは好きじゃないので、楽しんで見てもらえればありがたいなってタイプなんですけど…、これは“演劇の持つ力”っていうのを存分に発揮できる作品になっていると思います。

華やかな歌舞伎世界だけではない、複雑な人間心理も興味深いです。

仲蔵は一度死ぬような経験をして、そこから視界が開けて、もう一歩を踏み出していくのですが、それって学校や社会でもリンクするところがあるのではと思います。シェイクスピアもそうですが、ひとりの人生を最初から最後まで演じるというのは大変な労力がいる作業なんですね。だからこそ、人生の経験値としてお客様の心に残るんだと思います。


ドラマ版の主演を務めた6代目中村勘九郎さんと親交が深いそうですね。

歌舞伎は中村屋さん(勘九郎の屋号)のファンなので、昨年も「平成中村座 小倉城公演」を見に行ってきました。勘九郎さんとは年齢も近いですし、大河ドラマ「新選組!」で共演してから家族ぐるみでお付き合いさせていただいています。僕は6代目中村勘九郎を大尊敬していますが、長い付き合いでも入り込めないオーラを感じます。歌舞伎というものは面白いけれど、簡単に手を出してはいけない世界だと思う。当たり前ですが、彼らが2、3歳から稽古を積み重ねている歌舞伎を簡単に真似ることはできないので、我々はどうするかといえば、歌舞伎を“演劇”としてやるしかない。演劇としての「中村仲蔵」作品を成立させたいと思っています。

歌舞伎役者を演じるために、1年前から踊りのお稽古をされていると聞きました。

日本舞踊中村流八代目家元の中村梅彌先生に教えていただいています。いざ自分がやってみると、踊り方や所作のひとつひとつに歴史があって、深く偉大な世界に驚くことばかりです。僕はいつも、ジャージとTシャツにリュックサックというラフな格好でお稽古に行くのですが、暑くても寒くても稽古場に通っていた10代の頃を思い出しますね。40代になっても、知らなかったことを学べるのが非常に心地いいんです。正直、お稽古に「行きたくねえな」と思う日もあるけど(笑)、終わってみると「近所でラーメンでも食べて帰ろうかな」なんて、清々しい気持ちになってるんですよ。まるでデビュー当時の演劇少年に戻ったように、刺激的な毎日を過ごしています。

大阪SkyシアターMBSの杮落し公演になります。意気込みをお聞かせください。

杮落し公演をさせていただくのは非常に名誉あることで、ありがたいですね。完成度の高い戯曲になっているので、しっかりと稽古をして良い結果を残したい。SkyシアターMBSの杮落とし公演として、お客様に長く記憶されるように頑張ります。

公演中、大阪で楽しみなことは?

1年に1回はUSJに行ってるので、公演の合間に家族で遊びに行きたいなと。あとは、歌舞伎役者の方たちに連れて行ってもらった美味しいご飯屋さんがたくさんあるので、共演者と一息つける時間をつくりたいですね。

40代を迎えて、これからの活躍に期待が高まります。

役者としてのターニングポイントにふさわしい舞台を用意してもらって、「場所は整えた、さあどうぞ!」と背中を押されている感じです。やるからには好きなように、羽を伸ばして自分らしい表現をしていきたい。お客様の温かい拍手をいただけるように精一杯、真面目に稽古に向き合って、いい芝居をつくっていくだけだと思っております。ぜひ会場に足を運んでいただけると嬉しいです。

◎Interview&Text/北島あや
◎Photo/安田慎一



3/27WEDNESDAY〜31SUNDAY
Sky presents
舞台「中村仲蔵 ~歌舞伎王国 下剋上異聞~」

■会場/SkyシアターMBS(JR大阪駅西口すぐ)
■開演/3月27日(水)18:00
3月28日(木)・29日(金)13:00
3月30日(土)12:30、18:00
3月31日(日)12:30 
■料金(税込)/ 全席指定 S¥12,000 A¥9,000
U-25チケット¥3,000 ※25歳以下、当日引換券、要証明書、枚数限定
■お問合せ/SkyシアターMBS TEL.06-6676-8466(平日10:00~18:00)