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「麻生久美子」スペシャルインタビュー
取材日:2015.12.10

岩松了、ケラリーノ・サンドロヴィッチ、三木聡、園子温…。
演劇界、映画界を牽引している気鋭の演出家・映画監督から熱望され、
次々と話題作に出演している女優・麻生久美子。
舞台4作目となる「同じ夢」では、個性派俳優として多方面で存在感を示しながら
劇作家・演出家としても才能を発揮し注目を集める赤堀雅秋のラブコールを受け、
5人の共演者と共に濃密な人間ドラマに挑みます。
時代を象徴するクリエイターたちに愛される女優がめざす演技、
作品づくり、自身のキャリアとは−。
やわらかな笑顔の奥に確かなビジョンと強い意志を秘めながら、語ってくれました。

「同じ夢」の作・演出を手がける赤堀雅秋さんとは、映画「モテキ」やドラマ「怪奇恋愛作戦」で共演なさっていますね。

寡黙で穏やかで優しい方という印象です。笑うと、とっても可愛らしいんですよ。現場では、いつも気になる存在でした。俳優さんとしては、まっすぐなお芝居をなさる方だと思います。「怪奇恋愛作戦」で赤堀さんとご一緒した回はケラさん(ケラリーノ・サンドロヴィッチ)が演出なさっていたのですが、その意図を的確に汲み取った上でストレートに表現なさっていて、本当に俳優らしい俳優さんだなという印象を受けました。劇作家・演出家としては、作品の生々しさに魅力を感じます。ファンの皆さんも、きっとそういうところがお好きなんでしょうか?私も観ていて引き込まれるところですね。そして、「おじさんを描くのがとても巧い」と、いろんな方がおっしゃるんです。今回の作品には赤堀さんも含め素敵な男性が4人も揃っていらっしゃるので、それだけでも面白い作品になるのではないかと思っています。

赤堀さん以外の3人の俳優さんとも共演は多いですね。

皆さん、大好きですよ。光石(研)さんはユーモアと色気のある大人の男性ですね。若いときから何度も共演させていただいています。「ひまわり」という映画で初めてご一緒させていただいていて、そのときはギュッと濃密な時間を過ごしたような気がします。最近は現場でも割とドライに楽しく過ごしていて…(笑)。だから今回、とても楽しみなんです。(田中)哲司さんも「ひまわり」でご一緒しましたし、ほかにも何度も共演させていただいています。2013年に、いのうえひでのりさん演出の舞台「断色」でご一緒して「なんて素敵な役者さんなんだろう」と改めて思いました。哲司さんのお芝居を舞台で見ていると、声の抑揚やリズム、立ち姿、振る舞いとかすべてが心地よくてうっとりしてしまいます。(大森)南朋さんはお友達と言っていいのでしょうか…家族ぐるみでお付き合いさせていただいています。南朋さんは、みんなにすごく好かれる人なんですよ。人としても俳優としても、器の大きい人という印象です。男性4人は皆さん色気のある方たちですから、一緒に舞台に立たせていただけてラッキーだなと思います。目が離せない人がたくさんいて、舞台をご覧になる方も大変ですね(笑)。

木下あかりさんとは初共演ですか?

そうなんです。公演の宣伝用の撮影のときに初めてお会いしました。あまりお話はできなかったのですが、私が何かおかしなことを言ったら笑ってくれて、その笑顔がとてもピュアで可愛かったのが強く印象に残っています。きっと大丈夫だって、確信しました。ツアーも楽しくなりそうです。


出演作を決める際、いつも重視なさるのはどんなことでしょうか。

基本的には、人です。監督、演出家、共演者…その中に一緒にお仕事したい方がいらっしゃるとお引き受けします。もちろん事務所のスタッフにも相談しますし、私ひとりで決めるわけではありませんが。今回も哲司さんに背中を押していただいたようなところがあるんです。ある日、たまたま今回のキャストの4人の男性が揃って飲んでいらっしゃるときに、私の話題になったらしくて、その場から哲司さんが電話をくださったんですよ。「今度、また楽しい舞台を一緒にやりたいね」って。すごく嬉しくて「ぜひ、よろしくお願いします!」と即答しました。その後、この『同じ夢』のお話をいただいて、赤堀さんが手がけられることやほかの共演者の方についても伺ったときに、きっと楽しくなると思って。当時は、赤堀さんとはほとんどお話ししたことがなかったので、怖い人かなとは思っていましたけど(笑)。


舞台はこれまで3作品に出演なさっていて、初舞台は岩松了さんの「マレーヒルの幻影」ですね。

舞台に挑戦したのは、岩松さんに呼んでいただいたことが大きかったですね。私、岩松さんが大好きなんです。お書きになる台詞が本当にため息が出るほど美しくて。「あの世界観に入れるならば」と思っちゃいますよね、役者をやっていたら。1作目は思った以上に大変でしたけど。初舞台ですし、自分のことしか考えられなくて。映像と違うことも多いから頭の中がいっぱいいっぱいになってしまって。稽古から千秋楽までそれが毎日ですから、とにかく苦しくて。でも終わってから岩松さんが「きっと半年ぐらい経ったらまた舞台がやりたくなると思うから、そのとき声かけてね」って言ってくださったんです。半信半疑でしたけど、ちょうど半年後ぐらいに「またやってみたい」と思うようになって。あんなに苦しかったのにどうしてだろうって、自分でも不思議なんですけど。だから岩松さんに「やりたくなりました」って、素直に言いました。舞台には中毒性があるんですよね。意外と自分はMだということに気づけたという(笑)。

「中毒」のもとは、どこにあったのでしょうか?

安堵感はありますね。終わって解き放たれるという。私にとって、舞台に立つのは恐怖です。本当に怖いんですよ。1作目は特にそうでした。自分を客観視できなくて、自分の中だけでいろんなものを完結しようとしていたというか。そうなると、ちょっと何かあっただけでおかしくなりそうになっちゃうんです。2作目以降、少しずつは冷静になれるようになってきたとは思いますが…。


2作目の「断色」を経て、昨年再び岩松さんの作品「結びの庭」に出演なさいました。初舞台と比べて、岩松さんは何かおっしゃっていましたか?

「成長著しい」と言ってくださいましたよ(笑)。すごく嬉しかったです。岩松さんは、そういうことを直接おっしゃらない方なので。その言葉も取材の場で記者の方におっしゃっていました。先日は岩松さんと対談させていただいて、私のことを「何もしないことができる人」だと言ってくださいました。


俳優さんにとって、最大級の褒め言葉ではないでしょうか。

岩松さんは、役者に余計な芝居をさせたくないとおっしゃいますね。お芝居をしていると、私たちは感情をどうにかして表現しようとしますよね? でも人間って、本当はその瞬間の自分の感情や考えを他人にさとられたくないんじゃないかと岩松さんはおっしゃるんです。お芝居ではみんなに見せよう、わからせようとするけど、本当はそんなことない。人間は、いろいろ考えた上で相手に気持ちをさとられないようにすることもある。すると動かないことの方が想像も掻き立てられるし効果的だと。私も個人的に、あまり動かないのにいろいろな感情が伝わってきたり、見ている側の想像力を掻き立ててくれる役者さんの演技に、心が大きく動くんです。私自身もめざしたいところです。次の舞台は4作目ですから進化したいですね。ベテランの方々との稽古の中で何かを掴んで、きちんと反映できるように作っていきたいと思っています。


長いスパンでご自身のキャリアを捉えると、今後の女優としての理想像はどんなものでしょうか?

息の長い女優になれたらと思います。派手なことは望んでいません。「いるよね、こういう人」という普通の人を、その年齢に応じて演じていきたい。いくつになってもできる仕事ですから。だからこそ年齢をそのまま出していかないと、この仕事をしている意味がないと思っているんです。若さを保ちたいとは思いますが、不自然になるよりは流れに身を任せた方がいいんじゃないかと(笑)。



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「同じ夢」
チケット発売中
◎作・演出/赤堀雅秋
◎出演/光石 研、麻生久美子、大森南朋、木下あかり、赤堀雅秋、田中哲司
■会場/ウインクあいち
■開演/各日19:00
■料金(税込)/全席指定¥7,000
■お問合せ/中京テレビ事業 TEL.052-957-3333(平日10:00〜17:00)
※未就学児入場不可