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清水ミチコのシミズム

片桐はいりさんと、片桐仁さんという、
両片桐にはさまれながら、雑誌での鼎談がありました。
片桐はいりさんは、大森にある映画館がとても好き。
そこまではわかりますが、
時々その映画館に行ってはバイトをするそうです。
女優なのに。
しかもバイトといっても、お金は支払われず、
ただただ、好きでチケットのもぎりや掃除なんかを
させてもらっているというのです。
じゃあ、バイトじゃないじゃん、
と言われればそうなのですが、
ほかに言い方がないらしく、バイトと呼んでるようです。
誰にどう理由を聞かれても、

「もぎりが好きなんです、としか言いようがない」、
と言うはいりさん。
そんな人がかつていたでしょうか。
さらに興味深い話もしてくれました。
映画が終わって掃除をしていると、
その残った空気の匂いだけで、
(ああ、この映画はきっと面白かったんだろうな)とか、
(この匂いはよっぽどつまらなかったんだろうな)などと
わかるようになってきたのだそうです。
一緒に掃除をしていた男の子にその話をしたら、
「あ。それ、ボクもわかります。作品がつまらないって時は、
空気が重くてちょっとくさみが残ってるんですよね。」
と返事をされたとのことなので、現場の皮膚感覚というか、
嗅覚というものは、想像以上にすごいもんですね。
ストレス成分なのかしら。面白いですねえ。
昔、誰かから聞いたのですが、
卵子が受精して、細胞分裂が始まる時の
ヒトの脳と皮膚というものは、
同じ細胞から分化するのだそうです。
つまりは、脳に記憶があるように、
皮膚にも記憶が残ってたりするのかもしれません。
そう考えると、皮膚というものも、
ものすごい精密なセンサーなのかもわかりませんね。
肌が合わない、なんて言葉もありますが、
どこかで皮膚が(コイツ、最低なヤツ!)
という過去の記憶を持ってる可能性もありそうです。
ま、私の当てずっぽうですが。
最近は誰もがマスクばかりつけているので、
皮膚感覚や嗅覚も鈍ってきそうな気がしてしまいます。
早く取れる時代が来るといいですね。