HOME > 清水ミチコのシミズム > 清水ミチコの「シミズム」#49

清水ミチコのシミズム

数か月前のある飲食店でのこと。
着席してしばらくしたら、
向かいの席のカップルが目を輝かせながら、
ヒソヒソ声でこう話してました。
「あっ!あのヒト、ショーンKだよ!」。
私も見たい。ぜひにでも振り向いて確認したい。
でも、店内で3人もジロジロ見たら失礼だし、
と思い、ちょっと迷いました。
しかし、「トイレに行った帰りにチラッと見ればいいではないか!」
と思いつきました。
なんて頭いいんだ。
そして確認すると。なんと!
その方はジョン・カビラさんではないか。
いや、もしかしたらジョン・カビラさんに似た感じの方で、
ショーンKさんとはぜんぜん違う感じ。
出たな、天然、と私は心で笑っちゃいました。
しかし、ときどき私も「ミッちゃん、天然だからなー」と、
親しい人から言われたりします。
天然とは味のある、優しい表現ですが、
言葉のオブラートをはずすと、
多少(アホ)のことを意味するのではではないか、
と思われます。
アホに罪はありません。
しかし、天然なのでオブラートをはがしてしまうと、
「アホとはなんだ、アホとは!」と怒り出しかねません。
そういうところは敏感にできているのです。
5~6年前のことでしたか、ある人気番組のロケの最中、
街角でいろんな人から話しかけられました。
その中で一人の若い男性が、
私に近づいてきてこう言ったのです。
「清水さん、乃木坂に僕の妹がいるんで、よろしく頼みます。」
今ならさすがに私も意味はわかります。
「妹さんが、あの乃木坂46のメンバーなんだな」、と。
しかし、その時の私はてっきり
「妹さんと乃木坂で待ちあわせをしてるこのお兄さんは、
理由があって行けない、
ということを私に伝えてほしい、ということか?」と思い、
立ち去ろうとしていた彼に、
「え?ちょっと」
と言って引き留めました。

「私は乃木坂には行かないですよ。」
ああ恥ずかしい。
いま考えたら、まるで乃木坂46に落
選したみたいな言い方にも聞こえるという皮肉。
その時は二人しばらく見つめあっていました。
あの時の若者はどう思ったでしょうか。
今ではすっかり下り坂の気持ちです。