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清水ミチコのシミズム

夏がやってくると、
野沢直子と一緒に遊ぶ日が風物詩のように訪れます。
本当に性格がいい直子ちゃん。
テレビとぜんぜん違う。
などといったらどういう意味だよ、ってなるんだけど。
でも少なくとも普通は、テレビで善人っぽい人ほど、
カメラがまわらないと、なーんだありがちな人なんだ、
ってな事が見えてくるもの。
もしもケンカしてた夫婦の部屋にカメラが入ったら、
どんな夫婦ゲンカですら一瞬止まり、
折り目を正す、と言います。
人は無意識に、カメラの前では
キチンとしていたいものなのかもしれません。
さて、ついに先日はいよいよ
その直子ちゃんがサンフランシスコに帰る日が近づき、
今年の夏、最後のごはん会がありました。
集まったメンバーは、KABA.ちゃん、
椿鬼奴さん、光浦靖子さん、私の5人。
そこで、ふと変な遊びになりました。
それはなんとなくKABA.ちゃんが私に

「ミッちゃんって、本当はカッパなんだって?」

と言ったのが発端。
カッパて。
私は面白半分に、おもむろにものすごい本気モードで
「私はカッパなんかじゃない!」と、真剣な表情で言いました。
これが面白くなってきて、
「あんたたちがそういう目で見てたこと、私知ってたよ。
でもね、本当にそうじゃないの。人間なんだよ。」
と、濃い芝居をしてみたのです。
ハマりました。
しかし不思議なもので、繰り返し疑われ、
何度も否定すればするほど、あれ?
私って、もしかしたら昔ちょっとくらいカッパじゃなかったのか?
なんて思えてくるのがすごく妙なものでした。
今度は直子ちゃんにやってみる。
彼女も全面否定する。
そのうち、からかってるこっちの方も
(今の、『だって、河の香りするもん』、なんて言い方、
いくらなんでもちょっと言い過ぎかな?)など、
まるでカッパなのが本当みたいになってくるのでした。
言葉って不思議ですよね。
あんまり語気を強めると、真実と嘘とが表裏一体になるという。
いいトシしてそんな遊びばかりの夏だなんて、
本当はみんなカッパなのかもしれません。