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清水ミチコのシミズム

長くつきあっている友人の一人に、松村邦洋さんがいます。
通称松ちゃん。
彼は時々、天使のように見えます。
ライブにさりげなく観に来てくれ、誉めてくれたり、
また、ふと暖かい助言をくれたりする。
そういうとき、私は思うのです。
そういえば目がきれいだな。
松ちゃんは、欲望や執着が極端に薄く、清らかな一面があります。
お金にも結婚にも、芸人としてのステイタスにもさほど興味がなく、
今日がよければいいじゃないですか、というような、
生まれ持った人の良さ、品があるのです。
しかし、ごくたまに悪魔のように見える時もあります。
ふとした時のモノマネの長さ。
そして短くとも鋭い、
でも確かに的を得ているがゆえにグサッと胸にささる言葉。
そんな彼が、こないだ私にこんな事を教えてくれました。

「ミチコさん、人間は結局ハムですよ。」

私も松ちゃんもモノマネを得意としており、
二人ともしばしば著名人に、ある種迷惑をかけています。
しかし、ある時彼がそのモノマネしている本人にハムを送ってみたところ、
「おい、オレはあんな風じゃないだろ!」ギロ。
と、いう態度だった方が、ハムによって
「おい、オレはこんな風でいいか?」ニコ。
と、翌日から変わっていた!と言うのです。
「ハムなんです。ハムを送ってみてください。」
「そうなのか!」さっそく私はためしてみました。
その翌週。なんと、贈ったハムの価格の5倍はするであろうごちそう便が、
その方から私に届いていました。
かえって散財させ、気を使わせてしまったわけです。
ここには男女の違いもあるかもしれませんけど。
ダメだったよお、とツッコもうと思ったころ、
私に松ちゃんからハムが届きました。
なぜ送ってくれたのか、その理由はいまだにわかりません。
ただ、文句だけは言いにくくなってしまいました。
ハムの威力を、ここで知ったのです。
そしてまた、彼が天使か悪魔かの境界線は、いっそう深い謎となりました。