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清水ミチコのシミズム

エレベーターを降りるのが自分一人だけという時、
私はサッと「閉」ボタンを押して出ています。
エレベーター内に残っている人を少しでもお待たせしない、
というその行為を見て以来、私もマネしてるわけなのですが。
ふと自分の背中にドヤ顔が出てないか気をつけています。
しかし、このややせっかちな私の行為とは逆に、
最近はエレベーターから出るとき、隣の人からサッと手を出され、
「どうぞ(お先に)」、と言われる機会が増えてきました。
えらい丁寧な…。何もそこまで…。
と思ったのですが、
この業界なんかではもう当たり前になっているかのようです。
エラい人から優先的に降りていただく、というしくみ。
先日、私が後方にいた時のこと。
ドアの前にプロデューサーとタレントさんがいて、降りしな、
「どうぞ」
「いやいや、どうぞ」を、
お互いにやりあっていました。
この場合どっちが偉いのかしら?
番組制作者であるプロデューサーか。
それとも番組の「顔」であるタレントか。
結局は、まわりの(サッサと降りろよ)という
空気を察したタレントさんが、若干逃げるように降りて行ったのですが。
なかなかタイヘンな時代ですなあ。
そんな事を思ってた矢先、ある番組収録終わ
りに乗ったエレベーターで、
左隣にいた若いタレントさんが、私にやはり(どうぞ)をされました。
サッサと降りなきゃ自分、と思ったまではいいのですが、
一歩エレベーターを出てから「あっ」と気がつきました。
なんと、私の右側に、
私より年配のビッグな方がいらっしゃったのが一瞬見えたのです。
(まずい。)咄嗟に機転を利かせた私は、こんな行動に出ました。
エレベーターをいったん出て、そしてすぐにエレベーターの横にまわって、
まるで旅館のおかみさんのように並んでの

「どうぞ」。

ニッコリ。
まるで、あなたよりあえて先に降りてまで、
お待ちいたしておりました風。
私はいったい何をしているのでしょう。