HOME > ドラマチック!OH!能 > vol.80「鉄輪 早鼓之伝(かなわ はなつづみのでん)」

ドラマチック!OH!能

夫に捨てられた女が彼と後妻を呪い続け、貴船神社の神託によって鬼となる物語。市井の女性の嫉妬と恨みをリアルに描く演目です。今回は小書「早鼓之伝」付きの上演。中入に早鼓の囃子に乗ってシテが走り込むのが見どころです。


京都の北の山中、鬱蒼とした木立の中に鎮まる貴船神社。深夜になると、この地で丑の刻詣でをする女がいました。自分を捨てて後妻を娶った夫に報いを受けさせるため、毎晩祈願を重ねていたのです。ある晩、彼女は神社に仕える神職を通じて、神託を得ます。「赤い衣を着て顔を赤く塗り、三つの脚に火を灯した鉄輪を頭に載せ、怒りの心を持ち続ければ鬼になれる」と告げられたのです。それを聞き、次第に変貌していく女。その形相に驚いた神職は、逃げるように立ち去るのでした。一方、彼女の元夫は最近、夢見が悪く、陰陽師・安倍晴明のもとを訪れます。晴明は「今夜にも前妻の呪いで絶命する」と告げ、形代を作って祈祷を始めました。するとそこに鬼女となった前妻が現れ、捨てられた恨みを述べながら夫と後妻の形代に襲いかかります。しかし神力に退けられ、再びの襲来を予告しながら姿を消すのでした。