HOME > ドラマチック!OH!能 > vol.38「船弁慶」

ドラマチック!OH!能

弁慶を中心に、義経や静御前が登場する分かりやすい能です。見どころは2つ。前場での優美な、後場での荒々しい対照的な舞。そして船宿から大海原に展開する舞台を、舟と所作だけで臨場感たっぷりに演じます。


【物語】平家追討で功績をあげた源義経でしたが、頼朝に疑惑を持たれ、追われる身となります。義経は弁慶らとともに逃れようと、摂津の国大物の浦へ到着します。義経の愛妾、静(しずか)も一行に同行していましたが、女の身でこれ以上困難な道を進むことは難しく、都に戻ることになりました。別れの宴の席で、静は舞を舞い、義経の未来と再会を願いながら、涙ながらに義経を見送ります。出発をためらう義経でしたが、弁慶は強引に船出を命じます。すると船が海上に出た途端、暴風に見舞われ、波の上に壇ノ浦で滅亡した平家の亡霊達が姿を現しました。なかでも総大将であった平知盛(とももり)の怨霊は、なんとしても義経を海底に沈めようと襲いかかります。弁慶は、数珠をもみ、必死に五大尊明王に祈祷します。その祈りの力によって、明け方に怨霊は調伏されて彼方の沖に消え、白波ばかりが残りました。