HOME > ドラマチック!OH!能 > vol.35「花筐」

ドラマチック!OH!能

古代のおおらかな時代に、日本と中国、都と田舎、貴人と庶民とが交錯しあうラブストーリー。狂女物の能は普通四番目物ですが、恋物語の多い三番目物としても扱われます。手紙を読む照日の前の姿、都を目指して旅をする照日の前と侍女による掛け合いの謡、恋慕に浮かされた舞、帝の行列に行き逢い花籠を打ち落とされて嘆く照日の前の狂いの舞、漢の武帝と李夫人の悲恋を表す照日の前の舞、そして帝との再会を喜ぶ照日の前の立ち居振る舞。特色のある謡や所作、舞が随所に配置されています。


【物語】越前国味真野に住む大迹部(おおあとべ)皇子は、武烈天皇より皇位を譲られ継体天皇となり、都へ旅立ちました。帝は、味真野での恋人である照日の前に、手紙と愛用した花筐(はながたみ:花籠)を届けます。照日の前は突然の別れに、悲しい気持ちを抑られません。継体天皇がある秋の日に紅葉見物に出かけた折、照日の前が現れます。帝への恋情が募り故郷を飛び出し、狂女となって旅をしてきたのでした。狂女・照日の前が、帝の行列の前の方に飛びだすと、官人が狂女を止め侍女の持つ花籠をはたき落します。照日の前はこれをとがめ、帝の愛用された花籠を打ち落とす者こそ狂っていると言い、帝に逢えない我が身の辛さに泣き伏してしまいます。官人は帝の命令を受けて、照日の前に帝の行列の前で狂い舞うように促します。照日の前は喜びの舞を舞った後、漢の武帝と李夫人との悲しい恋の顛末を物語りつつ、我が身に引き寄せて帝への恋心を訴えます。帝は照日の前から花籠を受け取り、自分が愛用した品だと分かります。そして帝は照日の前に再び一緒になろうと伝え、二人は都へ一緒に帰っていくのでした。