HOME > ドラマチック!OH!能 > vol.17「天鼓(てんこ)」

ドラマチック!OH!能

中国、後漢の時代が舞台。前半では、わが子である天鼓を失った父の情愛と嘆きを中心に描き、後半では鼓の神秘的な存在を中心に描く。そして前後半で、老人から子どもへとシテが入れ替わるのと相成って、不思議な鼓と天鼓の幻想的な精霊の存在が非常に印象的な作品。


【物語】中国・後漢の時代、王伯・王母という夫婦に授かった子ども「天鼓」。この子は、王母が、天から鼓が降って胎内に宿るという夢を見て授かりました。するとその後、本当に美しい音色を奏でる鼓が天から降ってきました。天鼓は、この鼓とともに育ちます。その鼓の発する音は、人々に喜びを導くものでした。その噂が皇帝の耳に入り、鼓を召しだすようにと勅令がくだされます。天鼓は応じずに鼓を持って隠れてしまいます。しかし捕らえられ、呂水に沈められてしまいます。鼓は宮殿に運ばれて様々な楽師が打ちますが、全く音を発しません。皇帝は、天鼓の父、王伯に鼓を打たせよと命じます。王伯は、決死の覚悟で宮殿に上がり、わが子への思いを胸に鼓を打ちます。すると、えもいわれぬ美しい音色が鳴り響きました。感動した皇帝は、王伯に褒美を与えて帰し、天鼓の冥福を祈るため、呂水のほとりで管弦講を行なうことにしました。講の当日、皇帝が呂水に御幸すると、天鼓の霊が現れ、懐かしい鼓を打ち、管弦に合わせて喜びの舞を舞います。次第に夜が明けると共に、天鼓の精霊は空に消えていくのでした。