HOME > ドラマチック!OH!能 > vol.13「千手」

ドラマチック!OH!能

江戸時代の上演形式は「五番立(ごばんだて)」といい、能の演目を内容別に5種類に分けてありました。今回の千手は三番目物(鬘物かずらもの)に属します。三番目物は幽玄な美女や天人、男性貴族が主人公で、雅やかな舞を伴う能が多く、今回の千手も美しい舞が見どころになります。舞台は鎌倉。


平重衡像(安福寺所蔵)

【物語】平重衡は、清盛の五男。一の谷の合戦で源氏に敗れ、捕われて鎌倉に護送されます。鎌倉では狩野介宗茂に預けられ、幽囚の身で世の無常を嘆いています。源頼朝は、この若く凛々しい平家の御曹司の器量に感心します。そして自分の侍女である千手の前をつかわし、近く処刑となるであろう重衡の気持ちを慰めます。ある春の雨の降る夜、宗茂は重衡に酒を勧めようと訪れ、千手も琵琶を持って現れます。重衡は、頼朝に願い出ていた出家の望みが叶わぬことを告げられ、父清盛の命令とはいえ、南都(奈良)の大仏や興福寺を焼いた報いかと嘆きます。千手は重衡の心中を思いやり、酒の酌をし、朗詠を謡い、舞を舞って慰めます。重衡も興にのって琵琶を弾くと、千手も琴を合わせ、夜の更けるまでつかの間の小宴を楽しみました。翌朝、重衡は勅命により南都へ送られることとなり、鎌倉を出立します。千手はその後姿を、涙ながらに見送るのでした。