HOME > 土岐麻子「もちもち道中膝栗毛」 > Vol.09 田むらの梅

土岐麻子「もちもち道中膝栗毛」

もちもち好きならば一度は巡礼すべき聖地がある。岩手県一関市、平泉町。400年ものもち食文化を持ち、もち本膳というおもちづくしの御前が有名な「もちどころ」である。
2012年からはもちを主役にした食フェスも開催している。もちフォンデュ、もち入りソーセージ、もちロールキャベツ、ピーマンのもち詰め、もちプリン、もちカステラ、もちパフェ…もちってなんだっけ?とゲシュタルト崩壊を起こしてしまいそうになるほどにメニューの挑戦がすごい。私の周りにはもちもちは好きでも、おもち自体は一日に何個も食べられないという人が多い。私はおもちも大好きなのでちょっと寂しい。でもこの聖地ではきっと、そんな私でもたじろぐほどの情熱が渦巻いていそうだ。私の居場所はきっと岩手県…仲間に出逢いに行きたい!ということで毎年開催日時を調べているものの、いまだ叶わずにいてもどかしく思っている。

そんな一関には、100年以上前からつづく素晴らしいもち菓子がある。その名は「田むらの梅」。梅を愛した旧一関藩主田村家中興の祖・田村建顕公をしのんで作られたそうだ。
先日たまたま仙台駅で見かけて買ってみた。まずそのビジュアルに惹かれた。塩漬けされた青紫蘇の葉っぱがぴっちり綺麗にくるむ、小さくてぷっくりしたペンタゴン形のおもち。紫蘇は煮詰めたフキのような色で全く華やかさはないが、「映え(ばえ)」などに浮かれぬような、落ち着いた風格を感じた。
一口かじると青紫蘇のプチッとした食感とともに、爽やかな香りが広がる。地元の黄金餅を使用したおもちもやわらかくて、中に入っている梅のこし餡もなめらかで甘さ控えめ。毎年農家さんが工場に運んでくる梅の実を使っているとのこと。桜餅が好きな方はきっと好きな風味だと思う。
ネット通販も出来るようなので、もちどころにリスペクトとエールを送る気持ちで取り寄せるつもりだ。
それにしても今日もピーマンのもち詰めが気になってしかたない。