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土岐麻子「もちもち道中膝栗毛」

ミックス粉、卵、牛乳、そして空気。

ふんわりしたパンケーキをつくるときは、空気が重要だろう。
生地を混ぜるときは、さっくりざっくり。ダマが残っても粉感が残っても、心を鬼にしてさっくりざっくり。
時間とやる気があるときは、卵白を泡立て加えてもよい。
フライパンに落とし、一度ひっくり返したあとは焼けるまでひたすら見つめる。お好み焼きの要領でついギュッと押しつぶしたくなる右手首を左手でしかと押さえ、グッと我慢。
そうして出来上がった分厚くて繊細なパンケーキに粉砂糖を振り、ハニーコームバターを添えれば最高のふわふわタイムを過ごすことができる。
しかしこの連載は「もちもち道中膝栗毛」。私は当然もちもちパンケーキをつくることの方が多い。その際は、ふわふわパターンと真逆のことをしていく。

ミックス粉、卵、水。

牛乳ではなく水というのがこだわりだ。
原理はよく分からないが、たまたま牛乳がない時に水で代用したら餅感が増したので、いつもそうしている。
生地を混ぜるときは鬼混ぜ。執念深く混ぜる。空気を追い出すのだ。
フライパンに広げるとあまり膨らまないだろう。ちょっとさみしいが、それでいいのだ。
ひっくり返したあとはギュッとつぶすこともある。ここでもまた空気を追い出すのだ。
そうして出来るパンケーキは、平たいがみっちりとめがつまり、もっちもちである。ちょっと小さめに焼いて、目玉焼きやベーコンなどと合わせると素敵な朝ごはんになる。

このパンケーキのイメージはおそらく子供のときに読んだ本のイラストだと思う。なんか薄くてペターッとしていたのだ。絵が下手なだけだったのかもしれないが、なんだかそれがとても美味しそうに見えた。

好きなミックス粉は、北海道の木田製粉。香料もなく、ベーキングパウダーはアルミフリー。余計な飾りのない、素朴で良い風味である。
普通に焼いてもふわふわともっちりが同居する仕上がり。おすすめだ。