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VOL.03
大根餅はつかみどころがない。
わたしが初めて大根餅を食べたのは小学生の頃だった。
渋谷にあった聘珍楼に連れて行ってもらったとき、「餅」の響きに惹かれて、親に頼みたいと言ったのを覚えている。
母は「麻子の思ってるようなモチモチとは違うお餅だよ。それでもいいの?」と釘を刺してきたが、どうしても食べてみたかった。
餅という名の付くものをオーダーせずにはいられない性分は、あの頃からすでに始まっていた。
小さなお皿に運ばれてきたそれは、端正な四角形で、表面がカリカリと焼き付けられていた。箸を入れるとホロリとくずれ、柔らかくて重たい食感。確かにイメージのモチモチとはだいぶかけ離れていた。
しかし大人になってから出逢った数々の大根餅は、日本の餅のように少し伸びるものや、ガレットのように薄くてパリパリしたものなど、本当に様々で、不思議である。
ということで、今回はあちこちのお店を食べ歩き、一番美味しかった大根餅を紹介しようと準備をしていたのだが…コロナ禍の影響でわたしも毎日家にいることとなったので、諦め、家でつくることにした。
伝統的というレシピをネットで見つけた。茹でた大根をつぶし、炒めた干し海老やひき肉などの具材、米粉と片栗粉と合わせ、型に入れて蒸して、冷ましてから切り分けてフライパンで焼く、というものらしい。
写真を見る限り、聘珍楼のスタイルこそが「THE大根餅」だったようだ。
しかしわたしの自宅には型もないし蒸し器もないので、簡略レシピを探すと、同じことを考える人は多いようでたくさんヒットした。店によって表現が違うのもこういうことなのかなと思った。
わたしは、大根おろしの水気を絞り、そこに片栗粉と、天ぷら粉(それしかなかった)、それに炒めた葱とベーコン、顆粒スープの素を入れて、時々大根の汁を入れ戻しながら練り、小さく丸めたものを胡麻油でこんがり焼いてみた。
天ぷら粉だったのでちょっとチヂミ感が出てしまったが、大根の薄甘さが滋味深くて美味しかった。
次はもっとモチモチ感を出すためにれんこんもすりおろして焼いてみようかと思う。
いつか「わたしだけの大根餅」に巡り逢うべく…
この号が発行される頃には世のなかが落ち着いているといいなと思いつつ、皆さんが自宅でも楽しいモチモチ生活を送れますようにと願っている。