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この作品という「レンズ」で、心の“視力”を調節しながら考える。
社会や人々はどう変わったのか、変わらなかったのか?



2004年に演劇カンパニーチェルフィッチュによって初演された岡田利規作『三月の5日間』。役者が役を演じるのではなく、語るという形で舞台が進行する手法も話題を呼び、翌年岡田は同作で岸田國士戯曲賞を受賞することとなった。現在、活動20周年を記念して、20代の新たなキャストによる『三月の5日間』リクリエーションと銘打つ公演が全国7都市をめぐるツアー中で、2月16日・17日には愛知県芸術劇場小ホールでの上演がある。昨年12月、横浜のKAAT神奈川芸術劇場での公演を観た。
物語は2003年3月、イラク戦争が開戦した日前後5日間の東京を舞台にしている。ライブで知り合い、5日間渋谷のラブホテルに居続けになる男女や、渋谷での反戦デモに参加することとなった男性二人などの行動が、若者特有のだらだらしゃべりで、役者たちによって語り継がれていく。戯曲が発表された当時は、戦争という大きな出来事とごく普通の人々の日常との対比とが際立っていたように思うが、それから14年の月日が流れ、我々日本人にとっても戦争が決して対岸の火事ではないような、あるいは、そもそも対岸の火事のように思っていたこと自体が幻想だったのではないかと思えるような、そんな時代になりつつある。この作品という“レンズ”を通して、心の“視力”を調節し、遠くに、近くに、時代や感覚の移り変わりをも見ているような、そんな思いにさせられる。また、ただ新奇なだけの手法は月日の経過と共に飽きられていくものだが、役者が役を演じるのではなく、語る形で舞台を進めるというここでの手法は、この年月で定着した感がある。そうして見えてくるのは、劇作家の巧みな作劇術であり、作品の古びぬ力である。新たにトラフ建築設計事務所が手がけた舞台美術も清新な印象を残す。作品誕生からの年月のうちに、社会は、人々は、そして我々の生はどう変わり、そしてまた変わらなかったのか。そんなことを深く考えさせられる舞台である。

取材・文=藤本真由(舞台評論家)

<公演概要>
2/16 SATURDAY・2/17 SUNDAY【チケット発売中/当日券あり】
チェルフィッチュ『三月の5日間』リクリエーション
◎作・演出:岡田利規
◎出演:朝倉千恵子、石倉来輝、板橋優里、渋谷采郁、中間アヤカ、米川幸リオン、渡邊まな実
◎舞台美術:トラフ建築設計事務所
■会場/愛知県芸術劇場小ホール
■開演/2/16(金)19:30 2/17(土)13:00
■料金(税込)/一般 ¥3,000 U25 ¥1,000(日時指定・全席自由・整理番号付)
※U25は、公演日に25歳以下の方が対象です(要証明書・数量限定)。※車椅子でのご来場の方はお問合せ先まで事前にご連絡ください。
※当日券は開演の1時間前より販売
■チケット/
チケットプリコグ(peatix)http://precog-jp.net/tickets/
愛知芸術文化センター内プレイガイド TEL 052-972-0430
※10:00~19:00(土日祝休は18:00まで)/月曜定休・祝休日の場合、翌平日
■お問合せ/株式会社precog TEL:03-6825-1223(平日11:00~19:00)