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つかこうへいの名作「初級革命講座飛龍伝」を、その薫陶を受けた者たちがよみがえらせる!

つかこうへいが1973年に発表した「初級革命講座飛龍伝」(以下、飛龍伝)をマキノノゾミが演出する。(今回の上演は1980年版)
80年代から活躍するマキノは受賞歴も華やかなベテランだが、原点にあるのはつか作品。
今回は北区つかこうへい劇団出身の俳優とともに、つか独特の世界をよみがえらせる。
安保闘争で挫折した熊田、機動隊員として彼らと闘った山崎、熊田の娘アイ子。
一筋縄ではいかない登場人物たちは、21世紀に、令和の世に、どう浮かび上がるのか。
間もなく稽古初日を迎えるというマキノに話を聞いた。

北区つかこうへい劇団出身の俳優を起用した理由は?

キャストの一人に木下智恵という俳優がいるんですけど、彼女とは古くからの知り合いで、「飛龍伝」のアイ子役は智恵がいいなと最初に思いつきました。それだったら、つかさんの薫陶を受けたことがある人、つかさんの身体から出た言葉を自分の身体に取り込んだ経験のある人のほうが、形になるのが早いだろうと。複雑なニュアンス含めもっと深いところまで突き詰めようとした時、経験者のほうが時間を有効に使えると考えました。男性二人はオーディションで決めたんですけど、吉田(智則)くんはこのバージョンの「飛龍伝」をやったことがあるんですよ。ただ、その時は熊田の役だった。だけど彼は山崎のほうがいいかなと思って。一方、武田(義晴)くんはユーモラスな空気のある人。熊田は慶応大学のセクト出身で、いわゆる坊ちゃん育ちって設定なんですね。だから武田くんのほうがインテリ役が似合うかなと。その中でアイ子はとても地味な役です。慎ましやかで、でも芯がきちんとある。だから派手さは求めないけど、所作や佇まいの美しさは求められるので、智恵が合うんじゃないかと。芝居は俳優が魅力的に見えてナンボですよね。

有名な作品だけに観客の目も厳しいかと……。

それより楽しみのほうが大きいかな。もう一回見られる、もう一回あの作品と向き合えるのは楽しみだなと。今回あまり派手なことはしないつもりなんですよ。僕が初めて「飛龍伝」を見た時、すごくシンプルだった。舞台は何もない素舞台で、役者も衣装らしい衣装を着ているわけでもなくて。3人の役者の身体、役者の演技だけ、セリフだけで、ある劇的な状況を作られていくことに感動したんです。そういう、つかさんの原点みたいなところをやりたいなと。とりあえず派手ではない(笑)。でもグッとくるものにしたいですね。

マキノさん自身、音楽から演劇に情熱が移るほどの体験だったんですよね。

演劇とも思ってなかったかなあ。「かっこいい、あのセリフを言いたい!」という感じ。できるならば、顔も寄せたかった(笑)。どうやったら平田(満)さんみたいな顔になれるのか、どうやったら風間(杜夫)さんみたいにしゃべれるのかと。学生がビートルズの完コピやるみたいな感覚ですよ。似てりゃあ、みんなで喜ぶ。それを演劇と呼ぶかといえばまた違うけど、若い頃に理由もなくそういうことをやったのは、僕の大きな財産になっていると思います。

つかさんから教わったことで印象深いのは?

よく「お客さんっていうのは飽きるぞ」と言われましたね。1時間10分くらいを過ぎると、いくらいい芝居でも観客は飽きる。ここが勝負で「もう一花二花ありますから」というような気持ちで芝居をやれと。それって身体的な話じゃないですか。また送り出しに時間がかからないよう、終演後の音楽はお客様が芝居の余韻に浸りながら気持ちよく帰っていける、その一点のみ考えて選曲せよとか。ドラマツルギーがどうのこうのじゃない。要は、観客は生身だということを徹底して意識させられたんです。「演出家は客席の固さを考えないといかんぞ」とか、そういう教えはずっと自分の中に残っていますね。俳優の身体とともに観客の身体も考える。それが、いちばん大きな教えだと思います。頭でっかちにならないようにと。

初演から50年経ち、人の身体感覚も変化したと思いますが……。

その点、今の人に合わせようという気はないです。僕がすごいと思ったものを、今でもすごいと思えるように作るだけ。そうすれば時代が変わっても何か伝わるものがあるだろうと。つかさんを知らない世代は、昔のドキュメンタリーを見ている気分になるかもしれない。でも過剰に説明を加えると、受け取り方が楽になってしまう。だから違和感だけ持って帰ってもらえばいいぐらいの気持ちです。若い人が「何これ!? でも、なんか残る」ってなればいいなと。意味としてわかってほしいわけじゃなく、チラシにもあるセリフの一節「モアパッション、モアエモーション」というのか……。芝居がゴロッとそこにあるだけで、そんなに丁寧にする必要はないと思っています。演劇はもっと不親切なほうが「そういうことか」と到達した時の快楽が大きいはずだし、わからないことを延々考え続けることにも意味がある。だから敢えて親切にはしないつもりです。その上で若い人にこそ見てほしいですね。

◎Interview&Text/小島祐未子



5/5 SUNDAY~5/6 HOLIDAY【チケット発売中】
「初級革命講座飛龍伝」
作/つかこうへい
演出/マキノノゾミ
出演/武田義晴、吉田智則、木下智恵
■会場/三重県文化会館小ホール
■開演/両日共14:00
■料金(税込)/整理番号付自由席 一般¥3,000 22歳以下¥1,500
■お問合せ/三重県文化会館チケットカウンター TEL 059-233-1122
※未就学児入場不可



横山幸雄と愛知室内オーケストラが挑む、ベートーヴェン・ピアノ協奏曲ツィクルス

自らがライフワークだと語るベートーヴェンやショパンにおいて、前人未到のプロジェクトを数多く達成しているピアニスト横山幸雄。ベートーヴェン協奏曲ツィクルスを行う愛知室内オーケストラのステージで、指揮者として人気のシンフォニーを指揮する。今回は先日行われた取材会の模様をお届けする。

2023年10月から愛知室内オーケストラの特別演奏会として、横山さんの「ベートーヴェン・ピアノ協奏曲ツィクルス」が始まりました。

私のピアニストとしてのライフワークがベートーヴェン(1770~1827)とショパン(1810~1849)です。二人の作品を通して、人となりはもちろん、二人が生きた時代や使用した楽器などを皆様に知って頂こうと、これまで色々な企画を立案し、開催して来ました。ショパンのピアノ曲を全曲演奏する「入魂のショパン」や、ベートーヴェンのピアノ曲を中心に、色々な作曲家の作品と組み合わせて演奏する「ベートーヴェン・プラス」、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全32曲を2日間で連続演奏する企画なども評判となりましたが、今回、私と愛知室内オーケストラが皆様にお届けするのは、ベートーヴェンのピアノ協奏曲ツィクルスです。ベートーヴェンのピアノ協奏曲全5曲は、比較的若い時代の作品。1番と2番は、耳の病に冒される前の作品で、3番以降は病が発症しているものの、まだかろうじて聴覚があった時代の作品だと言われています。3番以降、耳の病が発症し、彼の作風は悲劇的かつドラマチックなモノへと変貌を遂げて行きます。

シリーズ2回目の聴きどころは。

後期のピアノ・ソナタや弦楽四重奏曲とは違う、比較的元気なベートーヴェンの魅力が味わえます。シリーズ2回目(2024年5月)には、ウェーバーの歌劇「オベロン」序曲や、メンデルスゾーンの交響曲第4番「イタリア」などの、若々しさが感じられる作品と組み合わせてお聴き頂きます。

このツィクルスは二刀流シリーズと銘打っています。協奏曲の弾き振りだけではなく、指揮者として指揮台に立たれるのですね。

ピアノを弾きながら指揮をする機会はこれまでもありましたが、完全にオーケストラと相対し、指揮をする機会はそう有るものではありません。シリーズVol.1でシューベルトの「ロザムンデ」序曲とハイドンの交響曲第104番「ロンドン」を指揮したことはかけがえのない経験でした。シンフォニーを指揮するとオーケストラの事が細部に至るまでわかります。これは今後の音楽活動に生かせる経験です。オーケストラやお客様の評判も上々だと伺っています。ならば、このシリーズでは指揮者 横山幸雄として、思い切った挑戦をさせて頂きます。ご期待ください。


ピアニストから指揮者に転向するケースは、バレンボイム、アシュケナージ、エッシェンバッハなど多く見受けられます。そのようなことを考えておられますか。

指揮台にはオーケストラ側の要望が無ければ立てません。そういう意味で今回のシリーズは貴重な機会で、とても勉強になります。ピアノを弾く機会を削って、指揮者としてやって行く発想は今のところはありません。もちろん先の事はわかりませんが(笑)。

愛知室内オーケストラの印象を教えてください。

若くて元気で、感じの良いオーケストラです。人数的に、これ以上少ないと音が薄く感じるでしょうし、これ以上多いと一体感は損なわれていくと思います。絶妙なアンサンブルの妙をお楽しみいただけると思います。

最後にメッセージをお願いします。

このシリーズを通して、ベートーヴェンのピアノ協奏曲の魅力をお伝えできればと思っています。ピアノから離れて指揮者として頑張っている横山幸雄にも会いに来てください。愛知県芸術劇場コンサートホールでお待ちしています。

◎Interview&Text/磯島浩彰



5/11 SATURDAY 【チケット発売中】
愛知室内オーケストラ 特別演奏会
横山幸雄×ACOベートーヴェン協奏曲ツィクルスVol.2

■会場/愛知県芸術劇場コンサートホール
■開演/14:00
■料金(税込)/SS¥8,000 S¥6,000 A¥4,500 B¥3,000
U25各席種半額 小中学生券¥500
■お問合せ/愛知室内オーケストラ TEL.052-211-9895(平日10:00〜17:00 土日祝休)



小曽根真に見出された新たな才能!トランペット奏者・松井秀太郎が名古屋・しらかわホールに登場!

新たな若き才能が登場した。松井秀太郎は国立音大在学中に小曽根真、エリック・ミヤシロ、奥田晶らを師事し、ライブ活動をスタート。卒業後間もなくデビューアルバム「STEPS OF THE BLUE」をリリースした。そして年明け1月からはホールコンサート・ツアーが始まる。目まぐるしく音楽活動が続く彼に、自身の音楽の始まりから音楽観、師である小曽根真らとの関わりまで話を伺った。

音楽を始めたのはご自身から自発的に?

そうですね。小学校のクラブ活動でトランペットを始めたんですけど、そこからもう自分がやりたくて続けました。高校は国立音大附属高校に進学してクラシックを専攻したんですが、それも両親は音楽について全然詳しくないので、自分が説得しました。

音楽をすること自体楽しいなというか、続けていきたいなと思ったような、そういうきっかけは何かありますか。

幼い頃からキーボードを遊んで弾いていて、その流れでピアノを習いに行かせてもらったこともあったんですけど、正しいものを教えられるということが自分に合わなくて、1、2回で辞めてしまいました。そこから自分の好きなように弾くのがやっぱり好きで、ずっと遊んでいるというか、音楽を学ぶというよりは本当に楽しいからやっているという感覚でいました。ジャズのことはあまり知らないのに国立音楽大学に入ってジャズを専修したんですが、それが一番自分の中でしっくりきました。自分にとっては、大学で教授をされている小曽根真さんに出会ったことがジャズをやり始めたスタートです。

松井さんが感じるジャズの魅力はどんなところにありますか?

一番は楽譜がないというところです。ある決まった曲の中で、演奏中にアドリブでメロディーを作るということは今まで経験してこなかったことで、こうしなきゃいけないといのがない難しさというのに初めて出会いました。そこで、自分がやりたいことが見えてきた気がしました。

小曽根さんから習ったことで印象に残っているのはどんなことですか?

大学に入学して間もない頃に「ジャズとは」みたいな授業があったんですが、あるコードに対してこの音が正しいということじゃなくて、今自分が何をしたいかで判断をする。その自分が正しいと思えることしか吹かない。それが正しい音だ。というような話を最初にされて。当時はジャズを始めたばかりで、コードを正しく吹こうという気持ちで精一杯だったんですけど。その言葉のおかげで、ジャズをすることやアドリブを取ることを楽しいなって思うようになりました。

同じく大学で講師をされている奥村晶さんやエリック・ミヤシロさんからはどんなことを学びましたか?

元々奥村さんに憧れて国立音大に進学したんです。レッスンでは、ひとつの音しか吹かないという時もあったり、それこそオーケストラ奏者を目指す人がやるような練習から、ビッグバンドやホーンセクションのことまでいろんなことを学びました。エリックさんからは楽器の構造から吹き方、音楽のアレンジの仕方だったり、お二人とも幅広くいろいろ教えて頂きました


©︎N.IKEGAMI


錚々たる方々から薫陶を受けていらっしゃいますが、今松井さんが目指す音とはどんな音でしょうか?

自分はトランペットで歌うということを大事にしたいと思っています。トランペットは息を使い、唇が振動して楽器に直接伝わっていくこともあり、体を使って音をコントロールしている部分がすごく多いんです。超絶技巧的な音を正確に並べるのもかっこいいし、それもすごいやりたいんですけど、一番大事にしたいのは楽器で歌を歌えるプレイヤーであることです。

デビューアルバム「STEPS OF THE BLUE」は恩師でもある小曽根真さんのプロデュースで、ご本人も参加されている曲もありますね。

これを作った時に小曽根さんからは、「これからいろんなことが起こっていくだろうけど、今このタイミングで、このメンバーでこれを録ることに意味や価値を感じた」と言ってくださってプロデュースしていただきました。

どれか1曲ご紹介していただけますか?

ではタイトル曲『STEPS OF THE BLUE』を。これは最初から3管、トランペットとトロンボーン、サックスがいるイメージで書いた曲です。タイトルにある「BLUE」というのは単にブルースやジャズというジャンルだけではなく、それを築き上げてきた歴史全体に対してのリスペクトを形にした曲です。中川英二郎(トロンボーン)さんと小曽根さんのルーツもデキシーランドジャズにありますし、この素晴らしいメンバーで演るならこんな曲だなと思って作りました。自分もこの先、そういう道を作る存在になっていけたらいいなと思って、アルバムのタイトルにしました。

1月には名古屋・しらかわホールでのコンサートが控えています。

こういった響きを大事に作られているコンサートホール吹けるのは、すごく幸せですね。ジャズのライブハウスで演るのも、お客様との距離が親密であったりと良さはたくさんあるんですが、生の音やその響きを大事にするような音楽はコンサートホールの醍醐味だと思います。どんな音が響くのかとても楽しみです。



1/14 SUNDAY 【チケット発売中】
SHUTARO MATSUI Concert Hall Live
◼️会場/三井住友海上しらかわホール
◼️開演/14:00
◼️料金(税込)/全席指定 ¥5,500
◼️お問合せ/東海テレビ放送 事業部TEL.052-954-1107(平日10:00~18:00)
*未就学児入場不可



高齢社会をユーモラスに活写した近松賞受賞作が東海地方初登場!

「馬留徳三郎の一日(以下「馬留」)」で2018年に第7回近松門左衛門賞を受賞した髙山さなえは平田オリザ率いる青年団の演出部を経て、現在は高校で演劇の教諭も務める劇作家・演出家だ。
受賞作「馬留」は2020年に青年団のプロデュース、平田の演出で初演されて好評。
今回の再演では初めての三重公演も決まり、当地でツアーの大千秋楽を迎える。
彼女にとって大きな転機ともなった戯曲の創作プロセスなどを髙山自身に尋ねた。

執筆の経緯を教えてください。

「馬留」は私が演劇から離れていた時期に数年ぶりで書いた戯曲なんですよ。2年近く完全に、やることも観に行くこともありませんでした。ただ、演出はできなくても、劇作だけは好きで始めたことなので嫌いになって辞めるのはイヤだと思い、短い作品を書き始めたんです。そうしてやっと長い作品を書いてみようと思った頃、テレビ局の方から長野県の木曽地域では全員90歳以上で若い人が一人もいない所もあると聞き、私が住んでいる地域も10年後ぐらいにはそうなるんじゃないかと思いました。そこから、親の介護までは至っていない今の自分の視点で何がが書けるか意識したのが執筆の発端。ベースには認知症の祖母と母の関係がありました。


©️三浦雨林


記憶や詐欺といった題材は演劇と相性が良く、より面白いですね。

そもそも演劇ってウソなので、ウソの世界の中でウソなのかホントなのかわからないことをやっているんですよね(笑)。初演の時、比較的年長の演劇人には「芝居の軸がない」と言われました。でもオリザさんは「記憶」という視点で演出してくださっていて、軸はないわけではなく分かりにくいだけなのかも……。認知症の方々の話なので、実際やっぱり軸というのは見つけにくい。そんな中でオリザさんは記憶という一本の糸を手繰り寄せるように芝居を作り上げてくださいました。

「馬留」を客観的にどう見ていますか。

演出が素晴らしいのは当然ですけど、出演者が個性的で、めちゃくちゃ面白いんですよ。特にご高齢の3人は演劇に対してとても謙虚。例えば羽場さんは70代ですが、今回の再演で9月に豊岡演劇祭に参加した際、兵庫県でのゲネプロの後「良かったです!」と言ったら「いや、もっとできると思うんだよね」とおっしゃって、いくつになっても謙虚に演劇に挑んでいらっしゃるなと。「馬留」の現場にいると、そういう体験がいくつもありますね。人の話を聞いていない人も多いですけど(笑)、稽古場が相当面白い。どこまで本当で、どこまで演技なのかわからないんです。約3年ぶりの再演はもっと進化していて、特に冒頭の年配3人のシーンはちょっと言葉にならなかったですね。凄いというか恐怖というか、「こんな風に演劇ってできるんだ」という驚き。他のシーンも含め、役者さんの力、オリザさんの演出の力をあらためて実感しました。スタッフの皆さんにも初演からの方が多く、一人でも欠けたらできない作品ですね。

近松賞の受賞は、ご自身に何をもたらしましたか。

私が演劇を始めたきっかけは平田オリザさんと青年団なので、オリザさんに自作を演出していただけたことは大きいです。再演もしてくださって、レパートリー化するとも言ってくださったのは、とんでもなくうれしいこと。また、戯曲の依頼が来るようになったのは賞をとったからかなと。あとは、演劇の世界に戻ってきたという感覚は得られたことですね。近松賞を受賞して、演出がオリザさんになって、離れていた演劇の世界に戻ってくるきっかけができた。私には、それがいちばんです。

教諭に着任した現在も踏まえ、あらためて演劇への想いをお聞かせください。

演劇は、一人でできることではないですよね。絵を描くとか楽器を弾くとかにも人はたくさん関わりますが、演劇だけは最初から最後まで誰かと関わらないといけない表現方法です。私はコミュニケーションの取り方が下手で、演劇をやりながら人との距離感を確認していた時期もあります。今は、演劇を作る、戯曲を書く、演出するということをやりながら演劇教育というものにも携わっています。自分の愛する演劇をどうやって伝えるのか。それが今いちばん頑張らなきゃいけないことだと思っています。また一人でできるものではないので、できあがった時の感動も一人じゃないですよね。スタッフ、出演者、観客が感動を共有できることは、私が演劇を辞められない理由、これからも続けていくであろう理由。それを演劇教育に活かせないかと日々考え、自分自身も勉強しているところです。


©️三浦雨林


三重公演に向けて、ひと言お願いします。

実は、私の母が学生時代を三重県で過ごしたんですよ。長野県松本市出身ですが、当時の松阪女子短大(現・三重中京大学短期大学部)に進学したそうなんです。だから母は最初、津公演に行きたいと言っていたんですよ。久しぶりに三重に帰ってみたいと。今回母の観劇は叶わなかったんですけど、おかげで私も勝手にご縁を感じていて。数日しか滞在できませんけど、三重に行けるのをすごく楽しみにしています。

◎Interview&Text/小島祐未子



12/23 SATURDAY~12/24 SUNDAY
青年団プロデュース公演
「馬留徳三郎の一日」(第7回近松賞受賞)

チケット発売中

■会場/三重県文化会館小ホール
■開演/両日共14:00
■料金(税込)/整理番号付自由席 一般¥3,000 22歳以下¥1,500
■お問合せ/三重県文化会館チケットカウンター TEL 059-233-1122
※未就学児入場不可
※12/23は髙山さなえ、平田オリザによるポストパフォーマンストーク有



ワン・アース・ツアー今年の締めくくりは「翔走」。
個性的な演目で構築された濃密なステージ。

太鼓芸能集団・鼓童のワン・アース・ツアーがスタート。昨年、初演し好評だった「翔走」の再演で全国を巡ります。歴史あるものから鼓童の今を象徴するものまで、個性的な演目を組み合わせた濃密なステージ。12月の名古屋公演に向けて、ふたりのキーパーソンに意気込みを聞きました。

「翔走」は、阿部さんが演出を手がけられたのですね。

阿部:これまでプレイヤーとして活動する中で小さな公演の演出を手がけたことはありましたが、「翔走」のように大きな劇場で上演する作品は初めてです。鼓童の公演はプレイヤーが演出することが多くて、最近は若手の中にも演出に挑戦する人が増えています。基本的には演出担当がストーリーや演目を決めますが、音楽リーダーと一緒におこなうこともありますね。「翔走」の演出をやってみないかと言われたのが一昨年。コロナ禍が続きフラストレーションが溜まる中でも若いメンバーたちがすごく能動的にいろんなチャレンジをしていたのが印象的で、彼らのエネルギーを存分に発揮できる舞台を作りたいと思って臨みました。

齊藤:まさに溜まりに溜まったエネルギーを噴出させるように次から次へと演目が繰り出されつつ、全体を通して緩急がしっかりついたプログラムですね。

阿部:演目ひとつひとつに個性があって、太鼓のいろいろな奏法や音色を味わえる内容になっていると思います。生半可な気持ちでは叩ききれないようなハードな演目もありますよ。太鼓って、音だけじゃなく振動で体感できるものだと思います。演奏者の息遣いとともに、そのエネルギーをぜひ感じていただきたいです。今回は再演ということでキャストも若干入れ替わります。人が変われば雰囲気も変わりますから、そこを生かした演出ができればと思っています。



齊藤さんは初演に続き二度目のご出演です。前回この作品に取り組まれて、どんなところに魅力を感じましたか?

齊藤:「翔走」には新曲が入っています。この作品のために鼓童メンバーの住吉佑太が新しく書いたもので、少し難しい曲なんです。初演のときは緊張感を持ちながらも楽しく取り組みましたが、やはり時間が経っていますので、リズムのニュアンスの出し方やソロのシーンなど、ビデオを見て個人的に練習しているところです。僕は舞台が大好きなので毎回、新たな気持ちで取り組んでいます。「翔走」も、叩くたびにアイデアや意欲が引き出されて楽しく演奏できる作品ですね。

作品づくりにおいて、キャストの皆さんからはどのようなアイデアが出ましたか?

齊藤:阿部からもらったストーリーをもとに「ここは、こうしよう」「こんなリズムにしてみようか」と、みんなでワイワイ言いながら作っていきました。どんどんアイデアが出て全てやりたくなっちゃって、交通整理が大変だったんじゃないかな。

阿部:私自身がやってみたいこと、メンバーの顔ぶれに合わせて「この人に、こういうものをやってほしい」という演目を組み合わせて構成しました。ストーリーは重視せず、個性ある演目で組み立てたシンプルな作りです。結果的に揃えてみたらすごかったという(笑)。すごく体力を使いますよね?

齊藤:とても楽しかったけど、1公演終えてみると「これ、ツアーでやるのは無理だね」って言うぐらい…。

阿部:初演では、若手からも結構そういう声を聞きましたね。今回はツアーなんですけど(笑)。



とても密度の濃いプログラムなのですね。再演では、どんなパフォーマンスを目指しますか?

齊藤:舞台は、曲を演奏すればいいというものではありません。演者とお客さまがちゃんとキャッチボールできる関係を築かなきゃいけない。いつも、自分の演奏がお客さまに届いているかを確認しながら、客席から返ってきたものに上乗せしてまた届ける、ということを心がけています。今回も自分の見せ場を作ろうという意識はなくて、お客さまとその場を共有できる空間づくりを目指します。うまく演奏するだけでは「上手だったね」で終わっちゃいますから。「お客さまとのキャッチボールを大切に」というのは、永六輔さんの教えです。永さんは鼓童の前身・佐渡の國 鬼太鼓座の創設時から深く関わってくださって、僕も若い頃から散々絞られたメンバーのひとりです。本当の意味で理解できているかわかりませんが、この教えを胸に舞台に立っています。

◎Interview & Text /稲葉敦子



12/6 WEDNESDAY 【チケット完売】
鼓童「ワン・アース・ツアー2023 〜翔走」
■会場/Niterra日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール
■開演/18:30
■料金(税込)/全席指定 前売 一般¥6,800 U-25¥3,000 
■お問合せ/中京テレビクリエイション TEL.052-588-4477
※未就学児入場不可
※当日券あり。前売料金と同料金。




「天使の歌声」がしらかわホールに、美しく軽やかに響きわたる!

ソプラノの中でも最高音域を、楽器のような俊敏な動きと、透明感のある柔らかな音色で超絶技巧を操る日本が世界に誇るコロラトゥーラ・ソプラノ歌手 田中彩子。「Play Coloratura」と題し、“遊び心” と “祈り” をテーマにリリースした4年ぶりのニューアルバムを引っ提げ、リサイタルツアーで全国を廻る田中彩子に、あんなコトやこんなコトを聞いた。

ニューアルバム聴かせて頂きました。驚いたのはジャズへの取り組みです。チック・コリアの「リターン・トゥ・フォーエヴァー」時代の名曲『クリスタル・サイレンス』と『ホワット・ゲーム・シャル・ウィ・プレイ』が入っていました。田中さんジャズお聴きになるのですか。

音楽的な感覚が凝り固まらないように、ジャンルを問わず聴くようにしています。ジャズは詳しくはありませんが、好きです。チック・コリアの『クリスタル・サイレンス』は、チック・コリアと仲が良かったクラリネット奏者のストルツマン夫妻から、あなたの声に合うんじゃないと言われて、ヴォーカルの楽譜を貰ったのがきっかけです。それはハイトーンのラの音から始まる、オリジナルキーの楽譜。ハイトーンから始まっていて、こんな高い音から始まるジャズの歌があるんだと、驚きました。

アルバムでは、そのメロディーをジョー・ファレルがソプラノサックスで吹いています。田中さんが同じキーで歌われていたので、正直驚いたのですが、そんな楽譜があるのですね。

ジャズヴォーカルの方は比較的低音の印象があったので、私にはジャズは合わないかなと思っていたのですが、あの楽譜を見て俄然やる気が出てきました(笑)。『ホワット・ゲーム・シャル・ウィ・プレイ』は、フローラ・プリムという女性歌手が歌われていますが、低音が心地いいボサノバっぽい雰囲気で、今回私はそのラフなイメージをなるべく保ちつつキーを上げてアレンジして歌ってみました。

田中さんは先日、ジャズトランペットの松井秀太郎さんとコラボをされたとお聞きしました。松井さんは、小曽根真さんが今いちばん力を入れておられる、若手育成プロジェクト「FROM OZONE TILL DAWN」のメンバーで、ジャズファンも注目の方。いかがでしたか。

当日は、リハーサルに充てる時間が殆ど無くて、ほぼぶっつけ本番だったのですが、それがとても楽しかったです。松井さんのトランペットは創造力に溢れ、最高でした!私はその日の気分によってアレンジや雰囲気を変えたいタイプ。クラシックでは時に難しいですよね。楽譜通り歌う事ももちろんそれも大事ですが、ジャズの世界では即興的に気分のまま好きにやれるのが良いですね。

ジャズ以外のアルバム曲を紹介してください。

1曲目のモーツァルトの『コンサートアリアK.383』は、彼が初恋の女性のために書いた曲です。その女性はコロラトゥーラ・ソプラノだったそうで、彼女がリサイタルの最後に、お客さんやパトロンに感謝の思いを伝えるために歌っていた曲だと言われています。私も来年が10周年で、30代最後の年です。今までのご声援に対する感謝の気持ちとして、この曲をアルバムの1曲目に入れようと決めていました。そして、最後の曲はチック・コリアの『ホワット・ゲーム・シャル・ウィ・プレイ』。アルバムリリースの話が決まる前から、その2曲の配置を決めて、全体のアルバムイメージを組み立てました。

5曲目までは、バロック、古典の王道作曲家の作品です。

ウィーンに所縁の有るバッハ、ヘンデル、モーツァルトの曲ですが、そこまで有名では無い曲も含まれています。どれも私の声の特徴、コロラトゥーラ・ソプラノが生きる曲ばかりです。モーツァルトの『コンサートアリア』はこれまで7曲くらい歌いましたが、今回採り上げる2曲はそれらと比べても難しい曲。大好きな曲だけに、歌うタイミングを計っていました。

6曲目からは、ガラッと現代に雰囲気が変わります。

今回のレコーディングに、信頼しているチェロの植木昭雄さんが入ると聞いたので、ずっと温めて来た曲、プレヴィンの『ソプラノとチェロのためのヴォカリーズ』を録音する事にしました。まず演奏されることが無いレア曲だと思いますが、名曲です。掴みどころの無い、複雑で難解な曲ですが、フワーッとした感じが、コロラトゥーラの個性に合うと思います。実は今回、収録が順調に進みました。1日3曲ペースでやれればいいねと話していたのですが、サクサク進んで、2日目のスケジュールに余裕が出来ました。世間話をしている時に植木さんが、「この曲すごく良い曲だよ。いつかやってみたら」と言って、楽譜をくださったのです。休憩時間に譜読みをしていたら、すごく良い曲で、「今回のアルバムに入れましょう!」と私が言い出して、急遽決まりました。それが6曲目に収録しているプライズマンの『アヴェ・マリア』。その場でピアノの佐藤卓史さんもチェロの植木さんもアレンジし直して、ジャズのような即興のセッションでした。

他にも、珍しい曲が並びますが、全曲美しい曲ばかりですね。

ありがとうございます。ニールセンの『幸せなのに』は、今年6月にデンマークに行った際、歌って欲しいと依頼されました。日本ではあまり知られてはいませんが、現地ではとても有名な曲でデンマークで愛されている曲です。ミヒャエル・プブリックの『アー・ユー・シリアス?』は私のコロラトゥーラの為に書き下ろしてもらった曲。また、渋谷慶一郎さんの『BLUE』はコンサートでは歌ったことはありましたが、皆さんに聴いて欲しいと思って今回のアルバムに収録しました。

すべて田中さんのハイソプラノにピッタリの曲ですね。そこまでコロラトゥーラの技術に拘られるのは何故でしょうか。

ヨーロッパに住んでいて実感するのですが、素晴らしい歌手は沢山おられます。そんな環境では、人と違った所や、人より優れている部分で勝負するしかないと思ったのです。それが、私の場合はハイソプラノで歌う、コロラトゥーラの技術です。数少ないチャンスをモノにしていくために人とは違うレパートリーを持ち、人には出来ない技術を磨くしかない。そう思って、この10年やって来ました。個人的にはリリカルに歌う曲も大好きですし、コンサートでは歌うことはありますが、そういった歌は私より上手く歌える人がいると思います。この曲は難しいけれど、田中さんなら歌えるんじゃないかな?と思って貰えるような、唯一無二のコロラトゥーラ・ソプラノのスペシャリストになりたいと思っています。

ヨーロッパデビューは『フィガロの結婚』のバルバリーナだったそうですね。4幕冒頭に素敵なカヴァティーナがありますが、声的に低くは無いですか?

当時の私からするとかなり低かったと思うので、良く歌っていたなと思います(笑)。その時以来、歌ったことはありませんが、今歌ったらどんな感じになるのか興味ありますね。私は、オペラファンの方が求めておられる、ソプラノ歌手が歌う王道のアリアなどはあまり積極的には歌いませんので、皆様からはニッチな歌手だと思われているのではないでしょうか(笑)。

近年、田中さんは社会貢献や青少年の教育、育成など、音楽以外にも色々と活動されています。将来的な方向性や夢は何ですか。

今、色々な仕事を頂いていますが、自分が成長する事で他の方にも良い影響が有るといいですね。もちろん歌は続けて行きます。私の存在理由でもありますし、子供や若い人たちが、音楽や芸術に触れる機会を増やしたいと願っています。そのためには、芸術文化と直接関係の無いと思われる経営者やビジネスマンの方々に対して、音楽や芸術がどれほど人格形成や、情操教育に影響があって大切なのかを話せる機会を頂けることは、ありがたいです。それによって、音楽界にもサポートを頂き、コンサートが増え、日常的に音楽に触れる環境が整備されて行く。そういう循環が出来て、その為の働きかけが出来るのなら、これほど嬉しい事はありません。

そういったフレーム作りをやれる人はなかなかいません。貴重な存在ですね。

自分の演奏だけに集中出来るなら、その方が楽だとは思います。ただ、何かそれだけじゃダメな気が20年ほど前からしています。私は本来、人の前に出てリーダーシップを発揮するタイプではありません。それが気付けば、人前で歌っていることが不思議です。色々な方のおかげで、今この場所に立てている。それなら、私も何か役に立ちたい。何かお返しがしたいという気持ちはいつも持っています。私に出来ることは何なのか。私が歌うことによって、何か良い変化が生まれるなら、それは素敵な事です。歌以外にも、今やっているような社会活動に興味を持って頂き、私の知名度が上がれば、もっと大きな影響力を持つ人が動いてくれるはず。そうなる為に頑張ろうと思います。私にとっても周囲にとっても、良い循環が生まれることを望んでいます。

コンサートに向けたメッセ―ジをお願いします。

ニューアルバム「Play Coloratura」を携えて、リサイタルを行います。遊び心を忘れずにという思いを込めた「Play」と、平和の祈りを込めた「Pray」の、2つの意味合いをテーマに考えて作った最新アルバムの曲を中心に、バラエティに富んだプログラムになっています。珍しい声といわれるコロラトゥーラ・ソプラノをこれだけたっぷりお聴き頂けるコンサートは、なかなかないと思いますので、ぜひ皆様にお聴き頂きたいです。クラシックがお好きな方も、初心者の方にも、楽しんで頂ける内容となっているかと思いますので、肩肘を張らず、気軽に来ていただけたら嬉しいです。しらかわホールは日本で最初に歌った大切なデビューの地。今回で最後になるのはとても寂しいですが、また今年も名古屋で歌えるのが嬉しいです。ぜひ皆さまのお越しをお待ちしております!

◎Interview&Text/磯島浩彰



11/12 SUNDAY 【チケット完売】
しらかわホールプレミアタイム 2023

田中彩子 ソプラノリサイタル 2023
〜Play Coloratura〜

ピアノ:川田健太郎
◼️会場/三井住友海上しらかわホール
◼️開演/15:00
◼️料金(税込)/全席指定 S¥6,600 A¥5,500 U 25¥2,000全席完売
◼️お問合せ/東海テレビ放送 事業部 052-954-1107(平日10:00~18:00)
*未就学児入場不可

<大阪公演>
11/19 SUNDAY 【チケット発売中】

◼️会場/住友生命いずみホール
◼️開演/14:00
◼️料金(税込)/全席指定 S¥6,500 A¥5,000(A席完売)
◼️お問合せ/ABCチケットインフォメーション:06-6453-6000
*未就学児入場不可

<浜松公演>
12/2 SATURDAY 【チケット発売中】

◼️会場/アクトシティ浜松(中ホール)
◼️開演/14:00
◼️料金(税込)/全席指定 S¥6,500 A¥5,000
◼️お問合せ/テレビ静岡事業部054-261-7011 (平日9:30~17:30)
*未就学児入場不可



旅する姉妹を通して描く故郷、家族、法…。見えないルールに翻弄される私たちが今、見るべきものとは。

京都を拠点に活動する劇団、下鴨車窓の代表作「旅行者」が7年ぶりに上演されます。三重公演を前に、劇作家・演出家の田辺剛にインタビュー。「現代の日本からは時代も場所も遠く離れた世界。」の一文から始まる戯曲は今、私たちにどう響くのでしょうか。

町を追われた三姉妹が故郷を目指して旅する物語「旅行者」。この作品をお書きになった背景を教えてください。

この作品の前に、男性しか出てこない話を書いて上演していました。それで、次は女性メインの話にしたかったのと、当時ちょうどチェーホフを読み直していて。それこそ「三人姉妹」もありますし、「桜の園」は没落貴族が自分の家を去らねばならない話ですし。それと、この戯曲を書く数年前に、韓国慶州のナザレ園を何度か訪ねたことも着想のきっかけになりました。第二次世界大戦中、朝鮮半島出身の男性と結婚し現地に渡った女性たちは反日感情が強かった当時の社会で苦労したり、朝鮮戦争で夫を亡くして身寄りがなくなったり、大変な思いをしたそうです。日本の家族とは縁が切れていたりして、故郷に帰ることもできなかった。ナザレ園は、そんな人たちを保護するため設立された福祉施設です。僕が訪ねたのは20年ほど前ですが、すでに皆さんお年を召していたので、施設の規模もだんだん小さくなっていくのだろうと…。それで、こういう人たちがいたことを記憶に留めておきたいと思ったんです。

物語は、亡くなった父の書き置きを頼りに、三姉妹が叔父を訪ねてくるところから始まります。さらに「自分も姉妹だ」と名乗る別のふたりも現れ、5人の女性が自身の存在証明のために躍起になりますが…。

一緒に過ごした記憶か、あるいは物的証拠か。何によって自分が何者なのかが決められるのか、というところに想像がいくといいなと。当時、法やルールは必ずしも僕たちの味方じゃない、むしろ時には暴力的に押さえつけてくることもあると考えていました。物証を持たない者の主張をルールがどう守るのか、あるいは守れないのか。この戯曲を書いた頃は、そんなことへの興味が強かったと思います。


下鴨車窓「旅行者」(2016)舞台写真 撮影:松本成弘


昨今は、例えばコロナ禍の社会でいつの間にか生まれたルールに人々が翻弄されるようなことも多々あります。2023年の今、この作品を田辺さんご自身はどのように捉えますか?

おっしゃるように、僕たちはこの3年ほどの間ずっと、目に見えないルールのようなものに振り回される経験をしてきました。世界では戦争も起こり、弱い人がさらに追い込まれていく状況は、前回「旅行者」を上演した7年前より顕著になっている気がします。そんな今、この作品がどのように輝くのか、観てくださる方にどう映るのか、とても期待しています。皆さんの反応を知りたいですし、以前観てくださった方にも、ぜひまた観てもらいたいと思っています。僕は若い頃からずっと、時代や社会情勢が変わっても通じるような作品づくりを目指してきたので。

下鴨車窓としては4度目の上演となりますが、演出などで変わるところはありますか?

舞台装置が大きく変わります。これまでは、三姉妹が訪ねてきた叔父の家を抽象度の高い美術で表現していました。今回は“サーカスの楽屋”をコンセプトに、室内空間を具体的に作り込む予定です。それに伴って音響効果も入れるので、これまでの上演とはかなり印象が変わると思います。そして、9人のキャストのうち6人が変わります。やっぱり俳優の力は大きいんです。違う人が演じると、同じ役、同じせりふなのに、異なる人物像が見えてくる。それは演劇ならではだと思います。もちろん映画やテレビドラマでも同じ作品を新しいキャストでリメイクすることは多々ありますが、そこで大きく作用するのは映像的な演出だと思うんです。演劇の場合は、もっと俳優がさらけ出されているというか…。そんな中で同じ人物が違って見えてくることが、とても面白い。同じ作品を違うキャストで上演するのは、演出家としても演劇の楽しみのひとつになっていますね。青年団の俳優もいれば落語家もいるし、庭劇団ペニノに出てたり、いろんなフィールドの人たちが集まっています。この座組で、見たことのない化学反応がうまく起こることを期待しています。


下鴨車窓「旅行者」(2016)舞台写真 撮影:松本成弘


三重県文化会館は2020年の「散乱マリン」以来、3年ぶり。「旅行者」は初めての上演です。

やっとこの作品を持って三重に行けます。下鴨車窓をご存知の方には満を持しての公演になりますし、今回は間口の広い誂えになっていますから、初めてご覧になる方も楽しんでいただけると思います。知らない時代の遠い世界の物語は翻訳ものの演劇を観るような感じかもしれませんが、そこも含めて不思議な世界を体験してもらいたいです。



10/28 SATURDAY
10/29 SUNDAY

下鴨車窓「旅行者」
◎脚本・演出/田辺剛
◎出演/今井美佐穂(第0楽章)、田崎小春(青年団/melomys)、坂井初音、山石未来、富名腰拓哉、森川稔、岡田菜見(下鴨車窓)、大熊ねこ(遊劇体)、三遊亭はらしょう
■会場/三重県文化会館 小ホール
■開演/14:00 
<終演後トークイベント開催>
28日ゲスト…安住恭子(演劇評論家) 
29日ゲスト…はしぐちしん(俳優・劇作家・演出家/コンブリ団)
■料金(税込)/整理番号付自由席 <一般>前売¥2,700 当日¥3,000 
<22歳以下>前売¥1,800 当日¥2,000 
■お問合せ/三重県文化会館 TEL.059-233-1122
※未就学児入場不可
※22歳以下券でご入場の際は年齢を確認できる証明書をご提示ください



「じいさんの話を聴きながら時間が過ぎていく」。物語の世界をみんなで共有する、怪談ナイト。

怪談家として30年以上、活動を続ける稲川淳二。全国を訪ねて丁寧に拾い集めた怪談の“断片”を紡ぎ、オリジナルストーリーに仕立てて話す「怪談ナイト」は、長年のファンから熱烈な支持を得ています。今年のライブは「事件」!ツアーファイナルとなる稲沢公演を前に、怖いだけじゃない怪談の魅力、楽しみ方を教えてもらいました。

怪談家としての原点は、お母様にあるそうですね。

私が子どもの頃は、身近に怪談があったんですよね。今のように娯楽がありませんから、夏といえば怪談でした。うちの母親が、またうまいんですよ、話が。下町なもんだから。本所七不思議の話だとか、回向院まで連れてってくれて四十七士の話をしたりね。で、その話が面白かったんです。昔は、話し上手な人が多かったですよね。当時のおっかさんは、みんな買い物カゴ持って立ち話して、これがなかなか終わらない。子ども時代のそんな雰囲気が、私の背景にはあります。今、怪談をするときに口でもって「ギーッ」とか「カッコカッコッカ」ってやりますけど、そういうのは母親から習ったようなもんですね。

稲川さんの怪談には、名人の落語を聞いているような心地よさがあります。

何気なく喋ってるように見えて、怪談をまとめるのに、すごく時間をかけるんですよ。たったひと言、「が」にするか「は」にするかだけでもって、3週間ぐらいかけたりします。だいたい話っていうのは、きれいに話そうとすると、つまらなくなりますよね。私は、各地に足を運んで怪談の断片を集める「心霊探訪」をして話をまとめていくんですが、お年寄りに話を聞いたりすると、皆さん、きれいに話そうなんて思ってやしません。でも聞いてると、すーっと引き込まれていくんです。「うまい話」と「いい話」って違うんですよね。一度、小学校3年生の男の子が手紙をくれましてね。「お父さんから聞いたとっても怖い話があるから、よかったら怪談ナイトで使ってください」って。読んだらそれ、私の話なんですよ。お父さんは毎回、私のライブに来てくださっていて、会場で聴いた怪談をその通りに息子さんに伝えてるんです。「私がいなくなっても話はちゃんとつながっていくな、生きていくな」と思ったらうれしかったですね。以前、月亭八方さんに「弟子を取ったら?」と言われましたが、その必要はないんですよ。誰かが私の話を語ってくれるから。

ホラーとは異なる怪談の魅力とは、どんなものでしょうか?

怪談の怖さっていうのは、じわ〜っと、ひんやりと迫ってきますよね。そして、切なさや人への思い、優しさがあったりする。よく手紙をいただきますよ。「怪談を聞いて、泣いて帰りました。ありがとうございました」って。時には自分で涙ぐんじゃうこともあります。いろんな話を調べる中で現場に行って「そうか、ここだったんだな」と思ったりすると、何かをふーっと背負ったような気がしますよ。怪談と自分の人生がひとつになってるんですね。



「稲川淳二の怪談ナイト」が始まったのは1993年。30年の間に世の中は大きく変わりましたが、観客の反応などに変化はありますか?

私は、お客様がたとえ1,000人いても、一対一の気持ちで話しているんですよ。みんなに囲まれて、じいさんが話しているようなイメージ。ですからステージにセットを組むんです。今年は、ボート小屋や桟橋がある湖畔のような世界観。そこに皆さんが遊びに来て、じいさんの話を聴きながら時間が過ぎていく感じですね。全作書き下ろしの怪談をいくつかと、心霊写真解説。ライブ全体がひとつの大きなストーリーと思っていただけるような構成を心がけています。それを皆さんが共有してくださるんです。ホラーのようにドキドキする体験だけを求めるんじゃなくて、物語の世界を感じてくださる。30年の間にお客様のセンスが磨かれて、怪談の聴き方がすごく上手になってきたという感じはしますね。

今年のツアーも完走間近、11月19日(日曜日)の稲沢公演がファイナルとなります。

今年は、実際に起こった、ある事件の話がメインなんですよ。今まで、したことなかったんです。事件にまつわる話特有の乾いた怖さって、嫌なんですよね。ただ、その事件との接点がありまして。今にして思えば、私が高校生のときに事件の兆候のようなものがあったり、その後、芸能界に入ってからもちょっとした関わりがあったり…。いろいろなつながりをたどって、話としてまとめました。これは面白いですよ、評判いいです。今年のツアーは、初日からお客様の盛り上がりがすごくて、どの会場も完全に一体化していました。「ひとりで入ったけど、みんなと一緒に怖がったり笑ったりしてるうちに孤独じゃなくなって、帰りには親戚ができたような気持ちになりました」と、おっしゃる人もいて。嬉しいですよね。孤独な人、寂しい人は、ぜひ来てほしいですよ。温かい気持ちで帰っていただけると思いますよ、きっと。

◎Interview & Text /稲葉敦子



11/19 SUNDAY
MYSTERY NIGHT TOUR 2023
稲川淳二の怪談ナイト

チケット発売中
■会場/名古屋文理大学文化フォーラム(稲沢市民会館)大ホール
■怪宴(開演)/16:00
■料金(税込)/全席指定 前売¥6,600 当日¥7,000
■お問合せ/名古屋文理大学文化フォーラム(稲沢市民会館)TEL.0587-24-5111




画面と相反する音楽が浮き彫りにする、スリリングなジャズの世界。

ジャズミュージシャン・南博の原作を大胆にアレンジして映画化した「白鍵と黒鍵の間に」。池松壮亮が1人2役で主演を務め、昭和末期の銀座を舞台にふたりのジャズピアニストの運命が交錯し大きく狂い出す一夜を描きます。このスリリングな作品の音楽を手がけたのが、ジャズピアニストの魚返明未。公開を前に、制作の裏側や自身の音楽について語っていただきました。

映画音楽の制作を進める上で、冨永昌敬監督とはどんなお話をされましたか?監督も相当なジャズ好きでいらっしゃるとか。

今回、初めてお会いしましたが、僕のライブにもお越しいただいて距離を詰めてくださって。音楽の話をたくさんして、すごく盛り上がりました。映画の音楽に関しては、例えば劇中で使われている曲の歌詞についてとか。本当に酷い内容の歌詞なんですけど、それがいかにこの映画を表しているかを話し合ったり。また、冨永監督が以前に作られた映画で使ったエリック・ドルフィーの「HAT AND BEARD」と、僕が今回サウンドトラック用に作った曲のイメージがたまたま合っているそうで、「こういうのが好きなんだよね」と話してくださったりして、嬉しかったですね。

今回のような作品の場合、劇中で俳優が演奏するシーンの音楽や演奏自体にも関わられるのですか?例えば、主人公がデモテープを作るためにセッションするシーンもありましたね。

劇中の音楽は、ほとんど僕が担当しています。演奏シーンとそれ以外の音楽では関わり方も少し違ってきますね。演奏シーンは演出の範疇になってくるので、冨永監督が具体的なイメージをお持ちです。選曲の会議でも「ここに、こういう曲を入れたい」という明確なディレクションがありました。アレンジの内容などは僕に任せてくださいましたが。演奏シーンがある池松壮亮さんと仲里依紗さんのピアノ指導は、友人のピアニスト・鈴木結花さんにお願いしました。



BGMに関しては、どのような工程で制作されたのですか?

絵が出来上がってから作りました。「このシーンには、この曲」などと僕の方から決めず、なんとなく映画の雰囲気に合いそうな曲のアイデアをできるだけたくさん出して、その中から冨永監督にピックアップしていただいた感じです。デモ音源もしっかりは作らず、割とラフな状態でお渡ししていました。最終的にはジャズミュージシャンの演奏で録音するので。冨永監督は以前、菊池成孔さんと映画を作られたときにも同じ手法で音楽を選んでいらしたそうで、話がすごく早かったです。僕にとっては、普段のライブと変わらない気持ちで作って、その中から確実においしいところを取っていってもらえるという。

映画音楽の制作にはいろいろな制約もあると思います。アーティストとしてのご自身の中で、クリエイティブにおける葛藤のようなものはありましたか?

今回は、まったくなかったですね。この作品は、例えば、感情が高まると同時に音楽も高まっていく…というようなものがないタイプの映画だと思うんです。冨永監督からも「ここには画面と相反するような音楽が欲しい」というような要望がありました。その辺りのバランス感覚が少し難しかった部分はあるかもしれませんね。僕は音楽側の人間なので「このシーンにこの音楽で本当に大丈夫なのかな?」と、不安を覚えながら作っていましたが、完成した映画を見たら「こんなに合うとは思わなかった!」というシーンがいくつもあって、とても勉強になりました。



魚返さんご自身は、高校生のときにジャズピアノに転向し、東京藝術大学の作曲科に進まれました。演奏より作曲に魅力を感じていらっしゃったのですか?

小さい頃から、ピアノを弾くことと作曲することが分かれていなかったんです。音楽することイコール自分の好きなメロディを考えて表現すること、みたいな感覚で。その手段がピアノだったのかもしれません。最近は、自分が身につけてきた理論とか技術を取り払って音楽をやらないと、という気がしています。小さい頃から作曲しているので、自分の設計図の中で音楽をやろうとしちゃうところがあるんですよ。ジャズの演奏が目指すところはバンドですから、一人ひとりが輝いているけど音楽はひとつ、みたいな感じになりたいと思うようになってきました。

今、東京で活躍しているミュージシャンは、魚返さんと同世代の方が多いですね。

東京の音楽シーンは今、すごく面白い気がします。同世代のミュージシャンで付き合いの長い人もいますし、お互いが進化していくのを見ていると面白いです。ジャンルを超えた交流も活発ですし、いいシーンにいるなと感じています。

◎Interview/福村明弘 ◎Text/稲葉敦子



10/6 FRIDAY公開
映画「白鍵と黒鍵の間に」
◎監督・脚本/冨永昌敬 ◎原作・エンディング音楽/南 博 ◎脚本/高橋知由
◎音楽/魚返明未
◎出演/池松壮亮、仲里依紗、森田剛、クリスタル・ケイ、松丸契、川瀬陽太、杉山ひこひこ、中山来未、福津健創、日高ボブ美、佐野史郎、洞口依子、松尾貴史/高橋和也
◎配給/東京テアトル
Ⓒ 2023 南博/小学館/「白鍵と黒鍵の間に」製作委員会



日本を代表するバレリーナと、東海地方の未来を担う若手たちが夢の大共演

世界的に活躍するダンサーが、オーディションで選ばれた東海地方の若手たちと共演する
「グラン・ドリーム・バレエ・フェス2023」の開幕が迫ってきた。
そこで、昨年に引き続き出演する上野水香が若手の稽古場をサプライズ訪問!
幅広い年齢層が参加する稽古に立ち会い、身振り手振りを交えてアドバイスも贈った。
その感想も含め、同イベントに対する想い、ダンサーとしての信条など尋ねた。

ゲスト出演の経緯をお聞かせください。

「グラン・ドリーム・バレエ・フェス2022」の時に初めてオファーを受けたんですけど、東海テレビさん、名古屋と言えば、私は世界バレエ&モダンダンスコンクールの時から本当に馴染み深く、来る度に「帰ってきた!」という感覚があるので「名古屋で踊れるのなら、ぜひ」とお受けしました。愛知県芸術劇場もすごくいい空間ですし、(中村)祥子ちゃんと踊れる機会もなかなかないので、楽しそうだなという想いもありました。

同じくゲストである中村さんとの出会いは?

私は東京で、彼女は海外で踊っていたので、お互い名前は知っていても接点はなかったんですけど、ウラジーミル・マラーホフさんが芸術監督を務めるベルリン国立バレエ団に彼女がいた時、「マラーホフ・フレンズ」というプログラムでベルリンに呼ばれ、初めて会ったんです。以来10年以上のお付き合いですね。めったに会えないんですけど、時間ができるともう……、前回の帰り道は新幹線の中でずっとしゃべっていました(笑)。

若手の稽古はいかがでしたか。

私も緊張しましたけど、みなさん、固まってましたね。引いていたと言ってもいい(苦笑)。でも、緊張する場面は逆に力が出るというか気持ちが入るというか……。緊張する人が来ることでピリッとして、やる気も百倍になって、いい踊りができちゃうこともある。そういう力になれていたらうれしいですね。まだ稽古は3回目くらいとのことでしたが、結構もう仕上がっていて、これから本番に向けて何回も練習があるので、もっと練られていくんだろうなと。一人ひとりがしっかり踊っていて、その中に入るのがすごく楽しみになりました。みなさん、キャリアを始める段階にいて、すごく純粋な気持ちでバレエにのぞんでいるのが一緒に舞台に立つとわかる。その空気は、普段のカンパニーの公演とは違った魅力があります。自然と応援したいなとも思いますよね。前回すごく喜んでくれているのがわかりましたし、私のほうも癒され、エネルギーをもらいましたよ。


2022年公演の様子


上野さんの演目は、スペインを舞台にした恋物語「パキータ」ですね。

構成上、全幕ではなくグラン・パ・ド・ドゥでもなく、ある程度の尺がある作品となると、そんなにたくさんはないんですね。その中で「パキータ」は華やかですし、最近ずっと踊っていなかったこともあり、やってみたいなと。今回お見せする場面は、バレエの様式美であったり、技術的な華やかさが前面に出る場面なので、きちんと決めて見せることが大事。主役に関しては、出てきた瞬間に舞台人の風格や格調、器量の大きさみたいなもので空間を埋めなければいけない。そこが「パキータ」という作品のやりがいでもありますね。

東京バレエ団の正団員からゲスト・プリンシパルとなり、変化はありましたか。

踊りを辞めたわけではないので、心境も生活も特に変わった感じはないんですよ。それに、この職業は身体を使うので、明日どうなるかわからない。常にそう考えて生きているので、ゲストになったから大変とか楽とかもない。たぶん引退したら初めて変わるんでしょうね。稽古をしなくなり舞台に立たなくなれば、それこそ変わると思います。

ダンサーは365日、身体を動かしているイメージもありますが……。

そんなことはないですよ(苦笑)。休みは取りたいタイプなので、土日は休みです。気持ちの切り替えには、運転が好きなので車に乗るのが気分転換になってますね。上手かどうかはわかりませんけど、運転は好きです。身体は使わず、別の意識を働かすところがいいのかも。ダンサーはみんな、何かしら息抜きの方法を持っていると思いますよ。

最後にメッセージをお願いします。

東海地方でバレエを頑張っているダンサーたちが一生懸命に練習してのぞむ舞台なので、みんなの想いが舞台にのっていることは間違いありません。ぜひ良い「気」を感じるために劇場へお越しください。気を感じることは劇場のいちばんの醍醐味。流行りのAIやロボットは、スタイルが良くて足もクルクル回るようなバレリーナを作ることができるかもしれませんが、そこに気はないですよね。オーラや魂、人を揺さぶるような何かは、生身の人間だけが生み出せる。劇場空間で生身の人間が発するものを感じてもらえる時間になればいいなと思っています。

◎Interview&Text/小島祐未子



10/8 SUNDAY~10/9 MONDAY
東海テレビ放送開局65周年記念
グラン・ドリーム・バレエ・フェス2023

チケット発売中
■会場/愛知県芸術劇場大ホール
■開演/10月8日(日)16:00、9日(月・祝)14:00
■料金(税込)/全席指定 S席¥10,000 A席¥8,000 B席¥6,000 C席¥4,000
■お問合せ/東海テレビ放送 事業部 TEL052-954-1107(平日10:00~18:00)
※3歳以下入場不可