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青森の劇団「渡辺源四郎商店」が人気シリーズを携え、三重県に登場!

青森の劇団「渡辺源四郎商店」がツアー公演を再開させ、三重県文化会館に登場。
主宰・畑澤聖悟が2012年から取り組んできた青函連絡船シリーズの最新作
「Auld Lang Syne(オールド・ラング・サイン)」を上演する。
日本で「蛍の光」として親しまれてきた曲の元にあたるスコットランド民謡の変遷と
英スコットランドで建造された初代青函連絡船「比羅夫丸」「田村丸」の歴史が
第一次世界大戦を背景に、明治・大正・昭和をまたいで交差する物語だ。
作・演出を手掛ける畑澤に話を聞いた。

三重には結構お越しですね。

三重県文化会館にはお世話になっていて、「もしイタ~もし高校野球の女子マネージャーが青森の「イタコ」を呼んだら」という作品を高校生と作ったこともあります。青森中央高校と三重の選抜メンバーが総勢50人くらい集まって素敵な経験ができました。コロナになって県外での活動は控えてきましたが、今回やっと再開できることになったんですよ。しかも「Auld Lang Syne」は、つなぐ物語なんですね。北海道と本州をつなぐ青函連絡船が、物流で日本の英雄になろうとした話。そんな「つなぐ物語」で三重に行けるのは意義深く、巡り合わせも感じます。

青函連絡船を題材にしたきっかけは?

2012年に市民劇で取り上げたのが始まりです。青函連絡船は現存しているものが2隻あり、ひとつは青森埠頭にある八甲田丸、もうひとつは函館にある摩周丸です。八甲田丸はなぜずっと青森埠頭にあるのか。青森市は物流拠点の港町として発展してきて、青函連絡船は街の記憶そのもの、街の象徴みたいな存在だからなんです。青森市民は小学生の修学旅行で必ず函館に行きます。青森と函館には絆のようなものがあり、青函連絡船は1988年までは動いていたので馴染み深い人は多い。だから、青森市で演劇を創作していく立場として、青函連絡船について演劇で残していくことが必要だと考えました。青森市で生きていく者の矜持でもないですけど、きちんと語っていく覚悟をしたんです。

出演者が女性だけなのは意図がありますか。

これまでも青函連絡船のシリーズは女性だけで演じてきました。そもそもタイトルが「海峡の7姉妹」ですから。船はフランス語やドイツ語だと女性名詞。優美な船を貴婦人、同型船のことを姉妹船と呼んだりして、船は「女性」のイメージが強いように思います。今回は最初の青函連絡船・比羅夫丸だけ一人の俳優が務め、あとの4人は田村丸など青函航路に配属された船を入れ替わり立ち替わり演じます。


渡辺源四郎商店「Auld Lang Syne」青森公演より(提供:渡辺源四郎商店)


俳優が船を演じるんですね!

乗客や連絡船の関係者も登場しますが、擬人化された船が中心で、船同士の会話が展開されます。

新作の背景について教えてください。

始まりは日露戦争後の明治41年。その頃から第一次世界大戦を経て、第二次世界大戦が始まるあたりまでの話です。みんな、今は新しい戦前じゃないかと感じていますよね。実際にウクライナで戦争が始まり、ロシアという国の脅威について考えを新たにした。振り返ると、アメリカと戦争する前の仮想敵国はソ連だったし、いちばん近い隣国は韓国でも中国でもなくロシア。この作品はロシアとの関係が深かったり危うかったりした頃の話なので、妙に現在の状況とリンクします。ロシアの南下願望は100年前から変わっていない。第一次世界大戦前の状態が現在とマッチするのは気持ち悪いですね。テレビでも新聞でもウクライナ「侵攻」から「侵略」という言い方に変わってきましたが、見ようによっては当時の日本も周辺の国々を侵略していた。思えば、あの帝国主義に何の疑問も持たず、領土が増えて世界の一等国に仲間入りを果たし、日本という国が果てしなく大きくなっていくと信じて疑わなかった人々の姿は興味深いですよ。

この作品は今の私たちとどうつながりますか。

「Auld Lang Syne」は「蛍の光」の原曲にあたり、この歌の変遷が芝居の縦糸になっています。もとは乾杯の歌だったのに、なぜ卒業の歌になったのか。歌い継がれる中でどう変わっていったのかが日露戦争と関係します。ロシアも日本も当時から変わっていない。何か警鐘を鳴らしたいわけではないけれど、他人事ではないとも思っています。


渡辺源四郎商店「Auld Lang Syne」青森公演より(提供:渡辺源四郎商店)


世界情勢を考えると、青森の地理的環境には緊張を覚えます。

青森県というのは地政学的に難しい土地なんですよ。先日Jアラートが鳴ったのは青森県で、頭上をミサイルが飛んでいきました。三沢市には米軍基地があり、県内には原子力施設も多く、原発もある。米軍基地と原発の両方あるのは日本で青森県だけですよ。青函連絡船シリーズは、そういう青森県に住む我々の目から見た日本史だったり世界史だったりする。青森からは世界がこう見えているということを提示したいですね。

このシリーズは、県外ではどんな反応がありましたか。

全国に青函連絡船ファンがいるんですよ。青函連絡船は鉄道会社(JR)の所属で、鉄道ファンというのは多岐にわたっていて、連絡船ファンもいるんです。そういう方々が大挙して来てくださったことがありましたね。連絡船に乗らなければ北海道に行けなかった世代の方には、懐かしいとの声をいただきました。青函連絡船という言葉も知らない方は、歴史物を観る感覚らしいです。今回も楽しいお芝居になっているので、ぜひご覧ください。

◎Interview&Text/小島祐未子



1/28 SATURDAY・1/29 SUNDAY
Mゲキセレクション
渡辺源四郎商店「Auld Lang Syne」

■会場/三重県文化会館小ホール
■開演/各日14:00
■料金(税込)/整理番号付自由席 一般¥2,500 22歳以下¥1,000
■お問合せ/三重県文化会館チケットカウンター TEL059-233-1122
※未就学児入場不可




歯切れのいい語り口と華のある芸風で人気急上昇中の江戸の若手落語家

2019年、真打昇進を経て、ますます歯切れのいい語り口と華のある芸風で人気急上昇中の江戸の若手落語家、柳亭小痴楽。
江戸落語の“今”を魅せてくれる彼に22年度版全国ツアーの最終公演を迎える大阪について、話を伺った。

大阪との縁は?

前座時代から回数は多くないですが、行かせていただいてました。二つ目時代に瀧川鯉八、神田伯山らと「成金」というユニットを組んでいて、大阪の方の主催者さんに呼んでもらい、高座に上がらせていただいてました。でも、やっぱり一番大きいのは、今年残念ながらお亡くなりになった六代目・三遊亭円楽師匠の主催で博多を中心に毎年行っている「博多・天神落語まつり」という大きな会です。その会期中に楽屋周りのお手伝いをする役割で、修業期間が終わった若手クラスを呼んでくださるんです。

本当はいらないんだろうけど東西の大御所たちが一堂に会するイベントなんで、円楽師匠が僕ら若手にいろんな師匠方と出会える接点を持たせてやろうってお気持ちだったんだと思うんですけど、これが僕らには刺激になりましたね。

上方の師匠はもちろんでしたが、一緒に来てる上方のお弟子さんたちとお会いできるのが嬉しいんですよね。いわゆる僕と同世代の噺家さんたち。円楽師匠たちが「これでメシでも食ってきな」って小遣いくれて、その現場で仲良くなったちょっと上だったり下だったり、同期だったりの方たちと一緒に飲んでる中で、(笑福亭)鉄瓶兄さん、(桂)佐ん吉兄さん、(桂)二乗兄さんたちと仲良くなりまして、結果、東京から(三遊亭)朝橘兄さん、(春風亭)昇也さん、僕と6人で、もう7年前くらいですかね「東西交流落語会」というのが始まったりして、以降、随分と大阪の噺家さんたちと距離が近くなりました。

その後も、(桂)歌丸師匠の付き人もやってたので、師匠と仲の良かった(桂)文珍師匠や(桂)文枝師匠に会えて、そのお弟子さんの三幸兄さん、三四郎兄さん、三度さん、三語さんらと仲良くさせていただいてます。特に三語さんとは東西でふたり会をやらせてもらっていて一番仲良くさせてもらってます。また、文枝師匠の出られる会に呼んでいただいたりもしています。ある時に文枝師匠から「創作落語はやらないの?」って聞かれて、「いや、なかなか手を出せなくて」って答えたら「じゃぁやってごらん」って言われて作った噺を大阪で文枝師匠が定期的にやられてる「創作落語の会」にも出させていただき、初めて新作落語をやらせてもらいました。そういう意味では円楽師匠がこうやって若手たちにも交流する場を、東京でも大阪でもなく博多でスタートさせて、毎年続けていただいてるっていうのは本当にありがたいですね。お前たちもこうやってやっていくんだよって教えていただいたみたいで。この功績は本当にすごいし、大きいです。

初めて大阪の口座に上がられたことは覚えてらっしゃいますか?

そうですねぇ、確かこの世界に入って2~3年目の前座の時で、古今亭 志ん輔師匠が道頓堀のトリイホールって小屋で定期的に独演会をやってらして、前座として入れていただいた時ですね。忘れもしない『桃太郎』をやりました。これ、当時一番自信のあるネタだったんですよ。

でもね、全然ダメで。昔から、大阪は江戸の落語家にとって本当に怖いところだぞって聞いてたので、「あ、この空気…このことかぁ」って思いましたね。でもまだ2~3年目の時にこの空気を味わえたのは、今となっては良かったと思います(笑)

ネタ数はどのくらいなんですか?

いやぁまだ80くらいで、少ないですね。同期の方だと150くらいネタありますから。僕、基本、サボり症で、遊びたがりなんで(笑)言い訳なんですけど、ネタ覚えた、はい次にいこうっていうのができないんですよね。一時期、ネタ数が少なかったんで、1~2年、噺を覚える時期にして、20~30席くらい覚えたんです。でもね、ただ覚えただけで体に入ってこない。こなしてるだけだなって自分でもわかるんですよ。それがどうにも気持ち的にしっくりこなくて、だからネタ数が未だ少ないです(笑)

今年、『天災』というネタを自分のものにしようって思って、ずーっと3ヶ月くらいかな高座に出るたびにそればっかりやらせてもらって、いい加減お客さんにも「またか!」って言われる始末で、それでも“すいません”って感じでやらせてもらって、それでやっと自分でもできるようになったなと。体にペタペタと触って染み込ませるようにして。自分にとって生涯の仕事なんでやっぱり納得したいんですよね。

だからコロナ禍は正直辛かったですね。無観客配信なんてのもありましたけど、僕のマクラって前もって考えないタイプで、その日のお客さんの様子なんてのを感じながらあーだこーだ話して、その日のネタに強引に降りていくので、お客さんがいないので反応もないじゃないですか。そしたらあっという間にマクラを話し終えちゃう(笑)あ、自分はお客さんありきの人間なんだということを実感してからは、無観客は断るようにしましたね。

今回の大阪は2022年版の全国ツアーの最終地ですが、どんなネタをやるかはもう決めてらっしゃいますか?

あれこれ考えてますけど、まだ考えあぐねてます。本当は人情噺である「文七元結」をやりたいなと思ってずっと稽古をしてきて、このネタ70分くらいあるんですけど、人物背景や、舞台背景とかを想像しながらやっと納得もいってやれるかなって思って、最終的に古今亭志ん朝師匠の『文七元結』を映像で見てみたんですよ。そしたら話してる上下(カミシモ)が逆だったり、細かく感情の解釈が違くて。あれ?って思って一回冷静になろうと思ったんですけど、そこからどうにも自分の中で気持ち悪くなっちゃって。上下をただ逆に直せばいいってのじゃなく、どうにもこうにも気持ちがいかなくなっちゃって。また改めて稽古中です。でもこれを大阪でできたらなとは若干の思いはあるんですけど先程も言いましたけど、年末の噺だし、長講なので、僕の中ではせっかくなんだから三席やりたいんですよ。でもこれやっちゃうと時間の関係で二席になっちゃうかもな、なんてことを試行錯誤してます。

ここ数年は、江戸の噺家に対して、大阪のお客さんが優しい感覚があって、それが本当に伝わるんですね。もう若手に対するウエルカムさは凄いです。昔感じた、あの時の大阪人はどこに行ったんだ?って僕なんて天邪鬼なんで思ったりするんですけど(笑)でも今回は、本来9月にやるはずだったこのツアーが中止になってしまった分、全力で頑張りたいと思います。今回は(月亭)八方師匠のお弟子さんの八織さんに出ていただいて、しっかり笑って帰っていただきたいですし、定期的に大阪に来て高座に上がらせていただきたいとずっと思っているので、その結果を今回の会で出したいのでぜひ、足を運んでやってください(笑)

取材・文/仲谷暢之(アラスカ社)




2023/2/24 FRIDAY【チケット発売中】
柳亭小痴楽全国ツアー「カチコミ’22」
出演/柳亭小痴楽
開場/18:00
開演/18:30
チケット/3,500円(全席指定)
会場/ドーンセンターホール(大阪府立男女共同参画・青少年センター7F)
京阪・OskaMetro「天満橋」駅1番出口より徒歩約5分




まらしぃが全国ツアー!名古屋は12/4(日)

名古屋市出身・在住で活躍を続けるピアニスト、marasy(まらしぃ)。ゲームからアニメ、ボーカロイド、J-POPなどの曲の「弾いてみた」動画で一躍広く知られるところとなり、オリジナル曲も含めジャンルに囚われない楽曲を披露する。昨年3月にはコロナ禍での日本武道館単独公演を実現し、今回はついに全国ツアーを行う。名古屋公演を前に近況やツアーへの思いを伺った。

先日はニコニコ動画最大のイベントである「超パーティ」にも出演されていました。

ニコニコ動画の投稿って昔から色んなジャンルの方がいらっしゃるんです。僕は楽器なんで「演奏してみた」ですけど、歌やダンス、面白い動画や作品を発表してる人たちも参加しますので、ライブだけではなくて展示もあったりして楽しめるイベントですね。リアルでないところが気軽で皆さん投稿を始めたんだと思うんですけど、それがまた巡って時間も場所も制約された環境に集結するというのは面白いですね。

出演者やお客さんの様子はいかがでしたか?

お客様は皆さんマナーがよくて、きっちり自分の席で思いっきり楽しんでらっしゃるのが伝わってきたので、なんかいいなーと思いました。僕の投稿歴も15年目なので、例えば10年ぶりに会う方もいて、軽い同窓会のような感じでした。そこに最近の新しい世代との交流もできましたし。



あとは東方Projectの楽曲のみを演奏する「幻想遊戯演奏会 2022」が京都・名古屋・東京の3年で開催されました。まらしぃさんは東方projectの「ネイティブフェイス」という曲が気に入って、ピアノ演奏を再開、動画配信をスタートされたんですよね。

4歳から始めたピアノを、スパルタなレッスンが嫌になって高校2年生くらいでやめてしまったんです。大学の1年の夏休みにオンラインゲームの友達に東方Projectの楽曲を教えてもらって気に入ってピアノで弾いてみようかなと思ったんです。弾けるようになったから友達に聴いてもらおうとしたときに、ニコニコ動画にアップしたのが最初です。僕にとってゲームミュージックは原点だし、この曲から僕の音楽活動が始まりました。弾幕シューティングゲームと呼ばれるのゲームの音楽で、東方ProjectのZUNさんがゲームの世界観からキャラクター、音楽まで全部お1人で作っていらっしゃるんです。いわゆる同人サークルなんです。僕は今回のツアーのようにメジャー流通でのライブ活動もやりますし、元々同人の出身なので、この「幻想遊戯演奏会」のように自分で主催することもあります。同人での活動は、やはり本当に好きなコアなファンが中心かもしれません。でもメジャー活動でのコンサートで東方Projectのことを知ってもらって、原作に触れてもらうようなこともあるんですね。そこで原作の素晴らしさが広まると僕も嬉しいですし、その助けができればなお幸せです。僕も一人のファンなので。

コロナ禍での音楽活動はいかがでしたか?

元々オンライン配信からスタートしているのでそのあたりのスタンスは変わらなかったですし、僕の原点を噛み締めた時間でもありました。演奏に関してはやはり練習量が増えたこともあり、自分のピアノの弾き方がいい方向に向かったという実感があります。それを今度のツアーでも披露できるんじゃないかなと。

今回はどんなツアーになりそうですか?

2021年3月の日本武道館ワンマンライブ、これを全国各地の皆さんに観て頂きたいという気持ちがあるんです。遠方の方でこの公演にいらっしゃれなかった皆さんから、配信のコメントで「観に行きたかった」という声をたくさん頂いて。ただの再現ではこの1年半何も僕が進歩していない感じになってしまうので笑。先ほどお話しした演奏技術も含め、ブラッシュアップしたものをお見せできたらなと思います。

リアルでのコンサートの魅力というのはどう感じていらっしゃいますか?

同じ空気を吸いながら同じ音楽を同時に楽しむその時間と、その後の時間を共有できるのって特別だと思います。ただ僕は、ライブの進行にあまり縛られたくないと思っているところがあります。僕は僕のタイミングで演奏をするし、お客さんも好きなところで反応してくれればいいというか。もしお互いの息が合った瞬間が生まれたら、それはとても幸せなことだなと思います、くらいな感じです。



12/4 SUNDAY【チケット発売中】
marasy piano live tour
2022-2023

■会場/名古屋市公会堂 大ホール
■開演/18:00
■料金(税込)/全席指定¥6,000(当日¥6,500)
■お問合せ/東海テレビ放送 事業部 TEL.052-954-1107
*3歳以下は入場不可




ギリシア悲劇「メデイア」にフェミニズムの視点から迫る

三重に拠点を置く第七劇場が、代表・鳴海康平の演出で「メデイア」を上演する。
ギリシア三大悲劇詩人のひとり、エウリピデスが遺したこの傑作は
蜷川幸雄演出のもと、平幹二朗や大竹しのぶが主演した舞台としても有名だ。
主人公メデイアは夫に裏切られ、復讐として夫婦の間に生まれた子どもを殺す。
魔女の血を受け継ぎながら、人間的な振る舞いも目立つメデイアは
男と女、親と子、愛と憎しみ、怒りと悲しみ、理性と感情……
相反する狭間に立たされながらも、自らの意志で人生を選択していく。
この強烈すぎるヒロインがフェミニズムの視点で生き生きとよみがえる!

今、なぜギリシア悲劇、「メデイア」を?

2017年にイプセンの「人形の家」を上演した時、フェミニズムを視点として取り入れ、女性の自立や家族の在り方をテーマに作品を制作しました。私は男で、フェミニズムの視座で見れば加害側になることが多いですが、だとしても、この立場からの差別や不平等、マイノリティなどの問題を作品に取り入れることは続けなければいけないとも考えてきたんです。それで文献をあたるうち、演劇の原点とも言えるギリシア悲劇の「メデイア」がフェミニズムの視点から研究対象となっていることを知り、取り組むことにしました。

セネカ、コルネイユが翻案した戯曲も織り交ぜるんですね。

セネカとコルネイユのほかに、フランスの作家アヌイの戯曲も参考にして、それぞれのメデイアを比較対照しながらミックスしています。そうするとメデイアには夫への愛情とは別に、男性社会とか世間とか、自分を縛るものへの愛憎みたいなものが見えてきます。それらに復讐するメデイアという存在は、いつまでたってもジェンダーギャップ指数が上がらない日本で生きる私たちにとって、どう映るでしょうか。顔をそむけたくなるような暴力性や、口にはできない清々しさを感じるひともいるように感じます。

稽古の手応えはいかがですか。

「メデイア」には「子殺し」というモチーフがあるので、フェミニズムの切り口で捉えると複雑なところがあります。ただ、女、母、妻、そのすべての立場にあるメデイアが、自分の子どもを殺すことで復讐という目的を果たすことは、凄惨なことではあるけど、引き換えに自分の人生に対して意味づけ、価値づけをしています。子殺しは決して良いことではないですが、その大きい代償と引き換えにしてまで、自分の人生を選ぶ勇気は、私たちにとって大きな影響を与えるんじゃないかと感じます。個人的な問題として、私が男性であるということ。それでも自己批判を含め男性から描く視点があってもいいんじゃないかとか、男性からの視点のフェミニズムについて考え続けられるのかなとも思っています。これから日本でフェミニズムへの理解が良い方向に進むかどうかは私も不安ですが、自分たちがこれ以上傷つけられないためにも、後ろに下がらないためにも、まずは顔を上げて立つしかない。もちろん心が折れたら一回下がっていいとも思うんですよ。きっと他の誰かがやってくれる。チームプレイでいいんです。必ず次の世代は来るし、彼らが疲れたらまた交代する。そうすれば戦線を下げずに済むんじゃないかと思います。

今回、小ホールから中ホールに移った理由は?

ひとつは、ギリシア悲劇という大きな物語なので中ホールの大きな空間で舞台機構も活かし、スケールの大きい作品にしたいということ。もうひとつは私も43歳になり、小ホールに居座るのも良くないなと(笑)。後進に場を譲っていくことも考えるべき年齢だとも感じています。2020年に三重県文化会館がコロナ禍の中でも劇場を動かそうという企画を実施しました。その中で第七劇場も中ホールで小作品を公演したことがあって、盆を回したりバトンを昇降させたり、セリを使ったり、とにかく見た目が楽しい趣向にしたんです。その時、空間的な変化の可能性も感じたんです。「メデイア」でも、また舞台機構の“全部乗せ”というのか(笑)、舞台機構をフル活用するつもりです。機構が全部動く作品って、そうそうないですから。

幅広い観客に向けた舞台になりそうですね。

これが普通だ、当然だ、善だと思われることの外側にいると感じている人、どこか疎外を感じている人には、良くも悪くもこの物語はすごく響いてしまうと思います。響いた分、辛い気持ちになるかもしれないけど、自分の人生や子ども、家族やパートナーに対する目線をもう一度、発見、獲得できる機会になればいいなと思います。今のお母さんたちの中にも苦しんでいる人がいると思うんです。自分の子どもを愛せない人、どう接していいかわからない人はきっといるはず。それはストレスからであったり、周囲の無理解や非協力によるものだったり、経済的な理由だったり、パートナーとの関係だったり……、いろんな原因が重なって、自分の子どもを死なせてしまったり、一緒に死んでしまったりする事件がしばしば起きていますよね。ただ、わが子を愛せなければ人間じゃないみたいな決めつけも違うんじゃないかとも思います。メデイアは、悲しんでいる状況をどうにもできなくて、それをどう解決すればいいのかもわからなかった。だから彼女の怒りと辛さもどこに行けばいいのか全くわからない。それが子どもに向かってしまったのはもちろん悲劇ですけど、今の私たちの悲しみや辛さも何が原因なのかわかりにくくなっていますよね。また、何かひとつが改善されれば悲しみがすぐに解消されるかと言うと、そうじゃないことも多分にある。何がどう組み合わさって結晶化しているのか、自分でもわからない悲しみは誰しも抱えている時代に、私たちは生きていると思います。それはメデイアが抱えていた悲しみと同じだと感じています。

◎Interview&Text/小島祐未子




12/10 SATURDAY・12/11 SUNDAY【チケット発売中】
第七劇場「メデイア」
■会場/三重県文化会館中ホール
■開演/14:00
■料金(税込)/全席指定 前売一般¥3,000 当日一般¥3,500 22歳以下¥1,500
■お問合せ/三重県文化会館チケットカウンター TEL059-233-1122
※未就学児入場不可




トロンボーンの音色でめざすのは、クラシック音楽のボーダレス化。

名古屋フィルハーモニー交響楽団の首席トロンボーン奏者・田中宏史が、在団20周年を記念したリサイタルをおこないます。トロンボーンのオリジナル曲や珍しい編成でのアンサンブルなどが披露される、貴重な演奏会。11月の本番を目前に、その楽しみ方を聞きました。

トロンボーンに焦点を当てた曲の楽しみ方とは、どのようなものでしょうか?例えば、ラヴェルの「ボレロ」のソロパートなどは印象的ですね。

「ボレロ」のソロはトロンボーン奏者にとってリスクが高いパートです。金管楽器は音域がどうしても限られるし、個人差がけっこう出てしまうので。その上でどんな表現をするかというのが、聴く側の楽しみだと思います。オーケストラではトロンボーンの出番が非常に少なく、出ていても木管楽器のように常にソロがあるわけではありません。だから僕らも、オーケストラだけでなくソロやアンサンブルの演奏会をして日頃の不満解消をしています(笑)。トロンボーンを人の声に例えると、テノールやバリトン。そこに管楽器らしいちょっとパリッとした空気が音になる感じやすごく温かい音色があって、そのメリハリのある音が魅力だと思います。だから、やっぱり1曲丸々しっかりとトロンボーンの音でいろんな音楽を聴いてもらいたいと常々思っているんです。

トロンボーンをメインにしたアンサンブルやソロの曲はたくさんあるのですか?

トロンボーンの世界で有名な曲はけっこうあって、それらを積極的に紹介しているトロンボーン奏者はたくさんいます。でも僕は、トロンボーンに特化した音楽だけじゃなく、弦楽器やピアノの曲、歌のある曲など、もっといろんな音楽をトロンボーンで表現したいんです。実は、トロンボーン奏者がそういう音楽を知らなかったりするんですね。だから、トロンボーンの人にいろいろな素晴らしい曲を紹介したいという思いもあります。一方で、一般の方にもなじみのある曲を演奏することで、トロンボーンの楽しみ方をたくさんの人に知っていただきたい。両サイドの人にトロンボーンで音楽を聴いてもらいたいという思いで演奏活動をしています。めざしているのは、クラシック音楽のボーダレス化なんです。クラシック音楽も楽器によってジャンル別されているところがあるので、その垣根を取り払いたいと。

11月のリサイタルにも、その思いは反映されていますか?

そうですね。僭越ながら、クラシックにおけるいろんなジャンルの音楽を聴いていただきたいという思いで選曲しました。アレンジものとトロンボーンのオリジナル曲を同居させたプログラムになっています。

アレンジものでは、ストラヴィンスキーのバレエ音楽「プルチネルラ組曲」を弦楽器、ピアノ、トロンボーンで披露されます。

もともとは歌も入っている珍しいバレエ音楽です。オーケストラでよく演奏されますが、ヴァイオリンとピアノ、チェロとピアノなど、いろいろなバージョンにもアレンジされています。室内楽的なサウンドが合う曲なんですね。トロンボーンソロとピアノというアレンジもあるのでやってみようと思って、名フィルのヴィオラ奏者・吉田浩司さんに編曲を依頼しました。せっかくだからピアノに加えて弦楽器とも一緒にやれるようにお願いして、素敵なアレンジに仕上がっています。トロンボーンの表現力が弦楽器やピアノとどのようにマッチするか。そこが聴きどころかなと思っています。

フェルヘルストの「カレイドスコープ」は、トロンボーンのオリジナル曲ですか?

トロンボーンソロと8人のトロンボーンアンサンブルの曲で、僕が会長を務める名古屋トロンボーン協会が、2016年の発足時にオランダの作曲家スティーヴン・フェルヘルストに委嘱した作品です。初演は、発足記念の演奏会「第1回名古屋トロンボーンフェスティバル」。ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の首席奏者ヨルゲン・ファン・ライエンをソロに招き、僕を含めた8人のアンサンブルと一緒に披露しました。トロンボーンの伸びやかで歌うような音色が大いに生かされた曲です。今回は僕がトロンボーンソロで、アンサンブルのパートはピアノ。シンプルだけど力強い演奏にしたいですね。

そして、ジャズの曲もラインナップされています。吉田浩司さん編曲の「明るい街角でLove for Sale!」。

ヤバい題名ですよね(笑)。「On The Sunny Side of The Street」「Love for Sale!」「How High the Moon」という3つのスタンダードナンバーを組曲にして、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロのアンサンブルと演奏します。先日、初めて音合わせをしましたが、弦楽器の伴奏が入るとちょっとありがたい音がしました(笑)。金管だけよりエレガントな感じになるというか。僕はジャズも好きでアレンジを勉強したり、ジャズの人とバンドを組んだりもしているんです。そうした、これまでの活動で得たものを今回のリサイタルにはすべて組み込んだつもりです。

田中さんの名フィル在団20周年の記念公演です。20年を振り返り、印象深いのはどんなことですか?

現在の音楽監督・小泉和裕さん、正指揮者の川瀬賢太郎さんはもちろん、小林研一郎さん、モーシェ・アツモンさん、ティエリー・フィッシャーさんなど国内外の名指揮者たちのいろいろな音楽的アイデアが蓄積されて、今の名フィルがあるのだと思います。僕が入団した頃は創立直後からのメンバーがたくさんいらっしゃって、音楽的な影響を受けました。その後10年ぐらいで世代交代が進み、今は20代や30代の若手演奏家からとてもいい刺激をもらっています。どちらも経験できた、とても充実した20年でした。今回のリサイタルはその集大成…と、どんどん自分にプレッシャーをかけてしまいますが(笑)、じっくり楽しみたいと思っています。




11/17 THURSDAY 【チケット発売中】
名古屋市民芸術祭2022参加 名フィル在団20周年記念
田中宏史 トロンボーンリサイタル
◎トロンボーン:田中宏史 ◎ピアノ:金澤みなつ 
◎ヴァイオリン:瀬木理央、山洞柚里 ◎ヴィオラ/編曲:吉田浩司 ◎チェロ:幸田有哉
■ 会場/電気文化会館ザ・コンサートホール
■ 開演/18:45
■料金(税込)/全席自由 一般 ¥3,500 学生(社会人を除く)¥2,500
■お問合せ/クラシック名古屋 TEL.059-678-5310(平日11:00〜16:00)
※未就学児入場不可




ドイツ正統派の名門オケで堪能するオール・ベートーヴェン・プログラム

2014年よりNDR北ドイツ放送フィルハーモニー交響楽団を主席指揮者として率いるアンドリュー・マンゼ。11/18(金)のオール・ベートーヴェン・プログラムによる名古屋公演を目前に控え、マエストロの考えるベートーヴェン像、交響曲 第3番「英雄(エロイカ)」についてなど、盛りだくさんに語って頂いたインタビューをお届けします。

―今回、多くの公演がオール・ベートーヴェン・プログラムになっています。このプログラムの魅力やマエストロにとっての思いをお伺い出来ますか?マエストロにとって「ベートーヴェン」という作曲家は、どのような存在でしょうか。

私にとってベートーヴェンは最も偉大な作曲家の1人です。同時にNDR北ドイツ放送フィルハーモニー交響楽団(以下NDR)と共に取り組んだ最初の作曲家でもあります。私が首席指揮者に着任した時、最初にオーケストラに「まずはベートーヴェンの交響曲を全曲やろう!」と言い、最初のシーズンにそれを実現し、その後もずっと共にベートーヴェンを演奏してきました。ベートーヴェンは私にとってとても大切な存在です。私は音楽が大好きですが、それがベートーヴェンのおかげだと言っても過言ではないのです。
幼い頃、ベートーヴィンのエロイカ(英雄)交響曲をよく聞きましたが、本当に大好きでした。先程もお話ししましたが、ベートーヴェンは私と私のオーケストラとの友情を築いた重要な存在ですが、今日のクラシック音楽界においても欠くことのできない存在です。ベートーヴェンは本当に素晴らしい作品の数々を作曲し、今日に至っても人々はそれを聴きたいと言う気持ちにさせられます。でも聴きごたえのあるものを聴くためには良いオーケストラが必要です。つまり、ベートーヴェンこそが良いオーケストラを生み出した、オーケストラを成長させた、とも言えるのです。ですから私はベートーヴェンに深く感謝していますし、ベートーヴェンはまさにクラシック音楽界に多大な貢献を果たした存在なのです。ベートーヴェンの存在なくしてハノーファーに管弦楽団は存在しなかったかもしれないし、こうして日本に伺うことだってなかったかもしれませんね。



―マエストロも何度も演奏されたことがある交響曲第3番「英雄(エロイカ)」ですが、
マエストロが思うこの曲についての魅力や聴き所をお教えください。

確かに度々指揮をしてきました。そして数ある交響曲の中でもお気に入りの作品です。さらには、日本においては過去にNHK交響楽団でこの作品を指揮しました。本当に素晴らしいオーケストラで、素晴らしいひとときを過ごしたのをよく覚えています。
では、交響曲はどのようなものか、といえば、音楽史において非常に重要かつ、素晴らしい音楽作品だと言うことです。第7番同様、聴いていて本当に面白い交響曲です。この作品を通して、ベートーヴェンは西洋におけるクラシック音楽を大きく一歩先に進めたのです。古典時代のハイドンやモーツァルトは美しく、完ぺきなまでの世界を築きましたが、そこからさらに先に歩を進めたのが、ベートーヴェンであり、この作品にそれを見て取ることができるのです。彼はロマンティックで、勇気があり、さらには我々に問いかけてくる音楽を作曲しました。「音楽とは何か?」と言ったことに留まらず、「世界はいったいどういったところなのか?」といった問いかけです。とても政治的な交響曲といえます。彼は政治的な決意とその表明をしました。私たちは厳しい管理のもとにある世界に住んでいるが、世界は変われるのだ、変えられるのだ、私たちは自由なのだ!と。そうです、この音楽は私たちが自由であることを歌っているのです。
例えば今生きている社会にルールがあるのなら、彼はそれに対してNOと言っています。NOと言う自由が我々にはあるのだと言っているのです。この交響曲の前半で、音楽が突然止まり、オーケストラがパニックになったかような状態になります。オーケストラの半分が演奏するメロディに対抗するように、残りの半分が異なるメロディを演奏をし、調性があたかもぶつかり合うような、そんなカオスのような状態を私たちは聴きます。異なるアイディアの衝突です。ここでベートーヴェンはたとえカオス状態に陥っても解決策は見出されるのだと私たちに示しているのです。
この英雄交響曲が登場するまでは、人々は音楽を聴いて、「素晴らしい」とか「美しかった」と感想を述べましたが、英雄交響曲を聴いた後に人々は「驚くべき、素晴らしい音楽だ、今私には世界が異なって見える。」「考え方が変わった。人々に対する考え方が変わった」と、感想を述べるようになったのです。ですからこの交響曲は本当に重要な交響曲なのです。


NDR北ドイツ放送フィルハーモニー交響楽団©️Axel_HerzigNDR


―それでは、マエストロから見たこのオーケストラの魅力をお聞かせいただけますか?

ハノーファーを拠点とするラジオ放送響であるNDRは、名前の通り北ドイツのオーケストラであり、今まで何度も日本に伺っていますが、その折には必ずクラシック音楽を演奏してきました。でもオーケストラ自身は一か月に一週間ほどはクラシック音楽以外のレパートリーを演奏します。それはバロック音楽、古楽だったり、ジャズや映画音楽だったり、そして時にはポップスも演奏します。このような活動を通して、オーケストラは素晴らしい柔軟性を培うことができました。これはオーケストラにとって価値のあることです。異なる様式に対する認識力が優れているのです。
オーケストラによっては、自分たち独自の音を生み出し、それをあらゆるレパートリーにおいて用いることがあります。でも私がNDRでとても好きなところは、彼らがレパートリーによってふさわしい音色を生み出すことができるところです。画一的ではないのです。モーツァルトならモーツァルトの音色、ベートーヴェンならベートーヴェンの音色を、ブラームスの音色、現代音楽でも、彼等ならそれぞれの音楽において求められるすばらしい音色で奏でられるのです。実は今日(9月17日)、私たちはホルストの『惑星』を演奏します。英国で作曲された広大なる交響曲で、大編成のオーケストラによって演奏されます。SFを連想させるような様々な音色、きらめくような音とかが次から次へと出てくる作品です。ベートーヴェンとは大きく違います。つまり、このオーケストラの素晴らしいところは、この作品にはどんな音色が良いのか、常に考えているところなのです。ですから私のこのオーケストラは、今日はベートーヴェン、明日は全く違うレパートリーを演奏できて、聴いた人が「これって同じオーケストラ?」と思うほどそれぞれの様式を表現できるほどその音色は柔軟性に富んでいるのです。
それからもう一点、これは私にとってとても大切なことなのですが、今回、日本に伺って同じプログラムも何度か演奏しますが、私たちは決して同じコンサートを10回繰り返すのではなく、それぞれの聴衆のためのコンサートを行い、それが結果的に10回ある、ということをとても大切にしているということです。それぞれのコンサートは聴衆にとって特別なものであり、私たちにとっても特別なものです。それぞれのホールの音響も違えば、聴衆の方々も違う方々です。もしかしたら、オーケストラ音楽を今までに一度も聴いたことがない人がいるかもしれない、とか、ベートーヴェンの交響曲を初めて聴いたのかもしれない、とか、そのように考えて、どのコンサートも特別なものでなくてはならないと、常に自分に言い聞かせ、実践しているのです。それぞれのコンサートで私たちが生みだす音は、そのホールの音響、そして聴衆の皆さんがいらしているからこその音色であり、特別なものなのです。
私はオーケストラに、かくあるべきだし、必ずこのようにしなさい!と言うタイプの指揮者ではありません。まずはそのホールの雰囲気を感じ、そして聴衆を感じながら音楽作りをしていきます。これは特にツアーでは大切なことです。楽団員にも、「昨日と同じ曲を演奏するんだな」なんて、決して考えないように、と話しています。今日のコンサートは、新たなる、特別なコンサートなのです。これこそが私が最も大切にしていることです。実は私自身、コンサートに行くのが大好きなんですよ。ですから、もし指揮をしていないなら、きっと聴衆の中に座っていますよ。だから私自身が聴衆の一人として充分に楽しめるコンサートにしたいし、そうでなければなりませんね。

―今回のソリストであるゲルハルト・オピッツとの共演は今回が初めてとお聞きしています。

ゲルハルト・オピッツ©️HT/PCM

オピッツ氏との共演は、今回のツアーでとても楽しみにしていることの一つです。ドイツには豊かなピアノ音楽、演奏の伝統があります。私自身幼いころからヴィルヘルム・ケンプやアルトゥール・シュナーベルのレコードを聴いて、深い感銘を受けていました。ゲルハルト・オピッツはそのドイツのピアノ芸術の伝統を継承する演奏家です。ブレンデルもそうですね。彼をスペシャリストと表現すると語弊があるので嫌なのですが、…。実際に彼はスペシャリストと呼ばれたら、「私はドイツ音楽以外も弾きますよ。」とおっしゃると思います。でも、やはり彼のブラームス、ベートーヴェン、シューベルト、シューマンは、特別なのです。彼はこれらの作品と長く取り組んでいて、重要な教授でもあります。とにかく楽しみですね。彼の演奏は今、この時の現代の演奏でありながら、同時に素晴らしいドイツ・オーストリア音楽の歴史を感じさせてくれるものとなることでしょう。彼をソリストに迎えることはとても光栄なことです。

―最後に、日本のお客様へメッセージをお願いいたします。

日本に伺えることは幸せで、とても恵まれた機会を与えていただいたと思っております。日本には素晴らしいコンサートホールがあることは私もよく知っています。そしてそれ以上に素晴らしい聴衆がいらっしゃいます。皆様の集中力と音楽に対する強い関心、そしてコンサートの雰囲気を今でもありありと思い出すことができます。本当に日本はクラシック音楽の世界においても特別な国です。それだけに日本に伺って、実際に皆様を前に演奏するのを今からとても楽しみにしております。そしてただ音楽の美しさを楽しむのでなく、音楽と言う共通の言語を通して、みんなで一つの時を分かち合い、コミュニケーションを交わすことができたら、と思っております。残念ながら私は日本語を話せないのでお話はできないかもしれませんが、音楽と音楽の伝えんとすることを共に分かち合いたいですね。皆様とお目にかかるのを心より楽しみにしております。




11/18 FRIDAY 【チケット発売中】
Meitetsu BMW Presents
第40回 名古屋クラシックフェスティバル
NDR北ドイツ放送フィルハーモニー交響楽団
指揮:アンドリュー・マンゼ ピアノ:ゲルハルト・オピッツ
◼️会場/愛知県芸術劇場コンサートホール
◼️開演/18:45
◼️料金(税込)/S¥16,000 A¥13,000 B¥9,000 C¥7,000 D¥5,000 学生券¥2,000
◼️お問合せ/中京テレビクリエイションTEL:052-588-4477 (平日11:00~17:00)




多様な編成で弦楽器の魅力を最大限に引き出す、意欲的な企画。コントラバスやホルンをフィーチャーした貴重な名曲もラインナップ。

名古屋フィルハーモニー交響楽団のコントラバス奏者・坂田晃一がプロデュースする演奏会シリーズが始動します。第1回のテーマは「弦」。彼が絶大な信頼を寄せる名フィルメンバーが集結し、さまざまな編成で弦楽器の楽しみを広げてくれます。今回は、6人の出演者のうち4人が意気込みを語ってくれました。

弦楽器の魅力、楽しみ方を改めて教えてください。

坂田晃一(コントラバス):弦楽器といっても種類は様々で、大小さまざまな楽器から出る音の違いがまず面白いところだと思いますし、それぞれの役割を生かした編成で、多彩なパターンの弦楽器の音を楽しめるのが魅力です。今回の企画では、皆さんになじみの深い弦楽四重奏はもちろん、コントラバスがメロディを弾くパターンなど、さまざまな編成で多彩な弦楽器の音を楽しんでいただけるプログラムを用意しています。また、弦楽器に焦点を当てつつホルンを取り入れているのも、大きなこだわりのひとつです。管楽器がひとり入ると、いいスパイスになるんです。ホルンがソロで弦楽器が伴奏を担当する楽曲もあるんですよ。いずれにしても、1楽章のみなど短い曲をたくさん聴いていただいて、弦楽のバリエーションの豊かさを感じてもらえたらと思っています。

今回、唯一の管楽器奏者である安土さんから、それぞれの楽器とメンバーの魅力についてお話しいただけますか?

安土真弓(ホルン):ホルンという楽器は、オーケストラでもいろいろな楽器と一緒に演奏することが多いんです。私たちが頼りにしているのは、全体のベースラインを担うコントラバス。坂田さんには私が名フィルに入団した当初からお世話になっていて、人間的にも頼りにしています。家にゴキブリが出た時に退治しにきてもらったりとか(笑)。ヴィオラはホルンと音域が近いので、同じ動きをすることが多いんです。ヴィオラの旋律に対してホルンが肉付けをする時もあるし、逆にホルンの旋律に対してヴィオラがふわっと柔らかく支えてくれたり…。お互い一緒に歩いているパートナーという感覚です。今村さんにも昔からお世話になっていて、勝手に親戚のように思っています。ヴァイオリンは、オーケストラの中で主旋律を担うことが多い楽器ですが、ホルンとも密接な関係にあります。ヴァイオリンとホルンの室内楽もたくさん残されているんです。どちらも4オクターブカバーできるので、両者が絡むとすごくいい響きがする。そのことをいろいろな作曲家が実感し、多くの曲を書いたんでしょうね。小泉さんともご近所づきあいをさせていただいたり、親しい仲です。


室内楽の場合、演奏家同士の関係性はやはり重要ですか?

安土:大事だと思います。少人数で演奏する時は、いろいろディスカッションしながら進めていくので、変な気遣いや遠慮が生まれてしまうと楽しくないですし。気心が知れたメンバーで音を作っていくというのが、室内楽の一番の魅力だと思います。

ロッシーニやハイドンの曲が予定されていますが、それぞれオペラや交響曲のイメージが強い作曲家です。彼らにとって、室内楽の曲はどのような位置付けだったのでしょうか?

今村聡子(ヴィオラ):貴族が自宅のサロンなどを会場に、仲間内で開いたのが室内楽の演奏会。そのための楽曲を作曲家に依頼していたんですね。弦楽四重奏というものに対して作曲家が挑戦的になっていったのは、ロマン派以降になってからだと思います。

坂田:今回、ロッシーニ「チェロとコントラバスのための二重奏曲より第1楽章」を演奏予定です。チェロとコントラバスのデュオというのは珍しい編成で、ロッシーニのような名作曲家が書いてくれたのは、コントラバス奏者にとっては本当にありがたいことです。ふたつの低音がどのように響き合うのかを楽しんでいただきたいですね。


イザイ「2本のヴァイオリンのためのソナタ」もラインナップされています。

小泉 悠(ヴァイオリン):ヴァイオリンのデュオはバッハの時代からたくさんありますが、この曲は5本の指に入るほど難しい曲だと思います。2本のヴァイオリンでずっと和音を引き続けるシーンが多く、超絶技巧としていろいろな技術が必要です。イザイは和音もハーモニーも、とても不思議な独特の味を持っている作曲家で、ヴァイオリニストでもあります。ヴァイオリン2本で細部までいろいろな音色やフレーズを作っていくのが難しい曲ですが、ふたりのヴァイオリニストが個性をぶつけ合うところに面白みがあると思います。今回は、僕と植村太郎さんが演奏します。


ドヴォルザークの「弦楽五重奏曲 第2番 ト長調Op.77より第1楽章」も演奏予定です。ドヴォルザークはヴィオラ奏者だったのですね。

今村:はい。ヴィオラにすごく魅力的な旋律がたくさん出てくるのが特徴です。ドヴォルザークは、どんなジャンルでもヴィオラの見せ場を作ってくれるので、ヴィオラ奏者にとっては弾きがいのある作品が多いですよ。

坂田:この曲にもコントラバスが入っているのが肝です。コントラバスが入った室内楽の曲は本当に少ないのですが、ドヴォルザークのこの五重奏はコントラバスがオリジナルとして取り入れられています。今回は第1楽章だけですが、それでも10分以上ある大曲なので、弦楽五重奏の魅力を存分に堪能していただけるはずです。

安土さんが入られるのがモーツァルト「ホルン五重奏」です。

安土:モーツァルトは弦楽器やピアノの協奏曲をたくさん書いていますが、管楽器に関しては各楽器1曲ずつぐらいしかありません。その中でホルンの曲は4曲も書いているんです。その理由は、仲のいいホルン奏者がいたからだと言われています。彼のおかげでホルンの名曲がたくさん残されているんですね。「ホルン五重奏」は、私たちホルン奏者がやってみたいけどなかなか演奏する機会のない曲です。当日は、曲が生まれた背景などもお話しできるといいなと思っています。

今後、このシリーズをどのように育てていきたいですか?

坂田:いろんなパターンを作っていけると思っています。例えば、ピアノを入れてみるとか、合唱と一緒にやるとか、最終的には室内オーケストラまで行くとか…。まずは第一弾として弦楽器のメンバーを主軸にしましたが、今後、新たなメンバーをどんどん加えてチームにしていきたいですね。

今村:「クラシックの演奏会を聴くなら名古屋」というイメージがあると思いますが、「稲沢にもいいホールがあって質の高い演奏を聴ける」という証明ができるものにしたいと考えています。名古屋から電車で10分程度という立地ですし、私も含めメンバーの多くが稲沢にゆかりがあって、この街に大いに親しみを持っています。このシリーズが、市民の皆さんが気軽に楽しめる音楽文化のひとつに育っていくといいなと思います。


10/9 SUNDAY チケット発売中
稲沢の音楽家シリーズ 坂田晃一プロデュース公演vol.1
「弦」

◎出演/コントラバス:坂田晃一、ヴァイオリン:植村太郎、小泉 悠、ヴィオラ:今村聡子、チェロ:アイリス・レゲヴ、ホルン:安土真弓
■ 会場/名古屋文理大学文化フォーラム(稲沢市民会館)中ホール
■ 開演/16:00
■料金(税込)/全席指定 ¥3,000
■お問合せ/名古屋文理大学文化フォーラム(稲沢市民会館)TEL.0587-24-5111
※未就学児入場不可



ピアニスト松本和将がリストをテーマに、リサイタルを開催。

『松本和将の世界音楽遺産 シリーズ第6回 フランツ・リスト編』が、全国6都市で開催される。松本が得意とするリストを取り上げたという本シリーズの幕開けとなる名古屋・しらかわホールでの公演を前に、このリサイタルに向けた思いを聞いた。

シリーズ「世界音楽遺産」について教えてください。

2016年に始めたシリーズで、今回が第6回になります。シリーズは、毎回決まった国や作曲家の音楽を取上げて演奏するというコンセプトで開催しています。今回のリストは、ハンガリー人ですが、若い頃からフランスで育ち、その後はドイツで活動し、ローマにも住んだというコスモポリタンなので、ハンガリー編ではなく、フランツ・リスト編ということにしました。

なぜリストを選ばれたのですか?

ここ1、2年くらいリストを弾いていると、今まで見えなかった世界が見えてきて、久しぶりにリストを演奏してみたいと思いました。ピアニストにとってリストは、非常に大きな存在であり、楽器の魅力を存分に引き出してくれる作曲家です。

新しく見えたリストの世界とは?

リストの音楽は、時に華々しさや勢いで弾かれてしまうと思うんです。表面的とまでは言いませんが、そこに散りばめられてるテクニック通りに弾けば、曲として成り立つよう巧く作られているからです。だから指が赴くままに弾いているピアニストの演奏が多く、自分も若い頃は、そうやって演奏していたと思います。けれど今考えると、この場面はそうではないのではないかとか、ここでゆっくり演奏するのはおかしいのではないかということが、いろいろ見えてきました。それで、もう1度楽譜を読んで構成し直したら、新しい世界が見えてきたのです。

今回のプログラムでは、具体的にどのようなところですか?

ピアノ・ソナタですね。この曲は、長い単一楽章の作品です。これまでは、色々な場面が続く短編集のような作品だと思っていたのですが、実は同じメロディーが使われていたり、違う場面になると思っていたところが、前の物語の続きだったことが新しく見えてきました。今では1つの場所の1つのシーンだけで物語が進んでいくような長編映画のように思え、最後まで1つの緊張感で演奏できるような気がしています。

「リストの感覚があまりにも分かりすぎて怖い」と仰っていますが、具体的にはどのような部分ですか?

そんな風に思ったのは、10年あるいはもう少し前のことです。リストの音楽は、どこまで掘り下げても仮面なんじゃないかという感覚がありました。ただ、どこからどこまでが仮面で、どこからが素顔なのかよくわからない。もしかしたら、全部仮面かもしれないし、全部素顔なのかもしれない。おそらくそれはリスト自身もわからなかったのではないかと思うのですが、そのようなリストの感覚が、私には凄くわかる気がしていました。リストは、あまり充実した年の取り方をしてないと思います。世間的には大成功して、彼を慕う人が山ほどいて、幸せな人生だったはずなのに、晩年は魂が抜けて絞り粕みたいになった曲がたくさんあります。なんでこんな風になったのかという事も含めて、実は仮面なんじゃないかと感じたわけです。

プログラムの中で特に思い入れがある曲は?

ソナタもそうですが、《オーベルマンの谷》です。この曲は、ホロヴィッツが1966年のカーネギー・ホールのライブで弾いている録音があるのですが、その演奏が本当に素晴らしくて、特に美しい一部分があって、ああ、こんな音出せたらなあと、そこばかりリピートして聞いていました。この曲を弾くとリストが敬虔なクリスチャンだったことがわかります。例えば、バッハ作品の受難の場面のような、神の前で懺悔をしているような趣を感じさせるのです。リストの作品は、1つの曲の中に聖と俗の部分や悪魔の誘惑のようなキャラクターが混在していて、それが見事にドラマになっている。例えばピアノ・ソナタの最後は、浄化されて天に登っていく感じですが、本当は悪魔が隠れていて、最後は悪魔が勝つ話だと思っています。《オーベルマンの谷》とは逆ですね。ただ《オーベルマンの谷》の最後で、最初の嘆きのテーマが出てくる意味は、まだわからずにいます。

最後に、名古屋公演に向けメッセージをお願いします。

実は、今回のコンサート・シリーズ開催のきっかけになったのは、名古屋公演会場のしらかわホールなんです。今年の1月にヴァイオリンの前橋汀子さんと、しらかわホールで演奏をする機会があり、その時、このホールでリサイタルをしないと一生後悔すると思って今回の公演を打ち立てました。しらかわホールは、とにかく響きがいい。どんな音も受け止めてくれるホールだと思います。ぜひいろいろな方に聞いていただいて、リストの世界、ピアノの音色、このホールの音色、そういうものをたくさん受け取っていただきたいなと思ってます。




10/10 MONDAY・HOLIDAY【チケット発売中】
松本和将の世界音楽遺産 シリーズ第6回
フランツ・リスト編 ー悪魔の調べー

■会場/三井住友海上しらかわホール
■開演/13:30
■料金(税込)/全席指定 一般¥4,500 学生¥2,500
■お問合せ/クラシック名古屋 TEL.052-678-5310




誰かの人生のエピソードから立ち上げる特別な舞台。作為的にドラマを求めなくても、誰もが絶対に面白い話を持っている。

バックボーンの異なる4人の表現者が立ち上げた演劇ユニットさんぴんが、6年ぶりに三重にやって来ました。10日間の三重での滞在制作を経て、本番は目前。その土地で、そこに暮らす人たちから聞いた大切なエピソードをもとに、さまざまな表現スタイルで立ち上げる唯一無二の舞台は必見です。

ユニット結成の経緯を教えてください。

さんぴん2022_福原冠

福原:2015年、僕と北尾君が共演する作品を三重県文化会館で滞在制作していたんです。その時、劇場のプロデューサーに「地方の劇場で生まれた作品が全国を回る企画があったら面白いと思うんです」と話したら、「いいじゃないか、考えてみたら?」と言ってくださって。自分で考えることになっちゃったと思いながら東京に戻って、板橋君に相談したのが始まりです。そこで一緒に考えたのは、俳優に特化したものとは何かということ。世の中には俳優発信の企画はたくさんありますが、古典や既存の戯曲を上演したり、作家や演出家を招いて新作に取り組むのが一般的なスタイルです。作家など、ある人のメッセージを観客に届ける媒介者であることが俳優の役割なんですよね。そう考えると、家族や友人など自分の身近にいる人たちの中にも題材は無数にあるんじゃないかと思ったんです。アウトプットする手段を持たない彼らの代わりに、いろいろな考えや悩み、感情が揺れた瞬間などを僕らがカタチにしてみたいなと。もうひとつこだわったのは、各地に滞在して、その土地の人たちと作品をつくるということです。三重での滞在制作を通して、純粋にお芝居に向き合う時間の大切さを実感したので。

板橋:それで、いろんな土地でいろんな人にインタビューして物語をお借りして、その土地でしか生まれない作品を立ち上げていくというスタイルにしました。俺たちはみんな役者やダンサーですからストーリーを作ることは難しいけれど、人からお話を聞いて、その思い出をお借りすることならできるんじゃないかと思って。結成した当時は、ちょうどみんなが疲弊している時期だったんですね。頑張らなきゃいけないけどなかなか使ってもらえなかったり、やりたいことはあるんだけどうまくカタチにできないとか。そんな時に、この企画にたどり着いて「これなら俺らにできる!」という思いを強く持つことができました。

永島:僕はずっと役者をやってきましたが、脚本を書いてみたいと思っていた時期もありました。自分の中にふつふつと沸いていた“やりたかったこと”を、さんぴんで叶えているような気がしています。

北尾:メンバーはみんな所属する劇団も違うし、僕はカンパニーを持っています。表現方法も違えば興味があることもそれぞれです。いろんな方向にを向いているベクトルを、さんぴんに集わせている感じですね。

地域の“普通の人”のエピソードを、一人芝居や講談、落語、ダンス、ラップなどで表現する独自のスタイルはどのように生まれたのですか?

福原:せっかく4人が集うんだから、得意技を惜しみなく出していこう思って。

板橋:「俺ら、いっぱいやれることあんだ!」っていうギラギラ感が集約されちゃったのかも(笑)。

北尾:でも、「俺が、俺が」という主張はないですよね。4人がお互いを信頼し合って、晒し合って語り合って作っていくので。例えば、駿谷さんが得意なラップを僕と敬三に受け渡すとか、「ダンスをやってみたいから」と冠さんが言えば、僕は踊らずに振り付けを担当するとか…。得意なことをシェアし合って作品づくりができるというのは、発見でした。


2016年仙台公演より

インタビューはどのようになさっているのですか?例えば、もし私が皆さんの取材を受けても、演劇の題材になるようなドラマチックなエピソードを披露できません。

さんぴん2022_永島敬三

永島:皆さん、同じことをおっしゃいますよ。

板橋:作為的にドラマを求めるようなインタビューの仕方はしないようにしています。自分では気づかないかもしれないけど、誰でも絶対に面白い話を持ってるんです。例えば、以前80歳の男性にインタビューした時、人生で楽しかったのは「すべての乗り物を見られたこと」と答えてくださいました。大八車から始まって、自転車、バイク、自動車、新幹線、そしてスペースシャトルまで見られた、って。「僕は乗り物が好きだから本当に幸せだ」とおっしゃって、すごく素敵だなと思いました。それで、「乗り物歴史」といって、乗り物の名前を朗読するだけの作品を作ったんです。

自分の話したエピソードが作品になったものを見て、皆さんはどんな反応をなさいますか?

さんぴん2022_板橋駿谷

福原:「過去の自分に励まされた」と言ってくださった方がいらして、やってよかったなと思いました。人を癒す効果があるんだなと思って。

板橋:演劇療法なんだよね。過去の失敗談などを誰かに話して、それを客観的に捉えることでトラウマ解消につなげるような。

北尾:それを狙っていたわけじゃなく、その方の人生の断片をお届けしたいという思いで夢中になってやっていたら、そういうことが自然に起きていた感じですね。

三重公演は6年ぶり。2016年に三重大学の教室で上演して以来ですね。

さんぴん2022_北尾亘

福原:“オールタイム・ベスト盤”として、これまでに上演したものを中心に、新たに三重でインタビューもおこなってエピソードを追加します。6年前に三重大学で一緒に作品づくりをした当時の学生さんなどにもお話をうかがいます。

北尾:今回は、上演前に劇場ロビーで「さんぴん presents★夏祭り」も開催します。物産展のようなコーナーがあったり、一般の方が特技を披露するショータイムがあったり、お祭り気分で楽しんでいただけるイベントです。参加無料で出入り自由ですから、ぜひ遊びに来てください。僕らも、ずっといますから。そのあと劇場に飛び込んでいただくと、演劇のお祭りが待っています!



8/27 SATURDAY 8/28 SUNDAY
ドリーム夢街道★夏祭り巡業2022
「ALL TIME HERO’S 〜東西南北プチョヘンザッ!!」

<チケット完売>
■ 会場/三重県文化会館 小ホール
■ 開演/各日 15:00
ロビー開場12:00 <さんぴんpresents★夏祭り>開催(参加無料)

■料金(税込)/全席自由・整理番号付 一般 ¥2,500 22歳以下¥1,500 小学生以下 無料
■お問合せ/三重県文化会館 TEL.059-233-1122
※未就学児入場可
※22歳以下要身分証提示



“一五一会”の広くて自由な音の響きを感じてもらいたい。

ブルースから島唄まで、多彩な音楽性でファンを魅了し続けてきたBEGINが、9年ぶりに可児に登場。世界に名だたるギターメーカー“ヤイリギター”と共同開発した楽器をフィーチャーした「一五一会なコンサート」で、名曲の数々を聴かせます。

一五一会という楽器の魅力は、どんなところにありますか?

比嘉:日本の三味線や三線には3度の音が指定されていません。だから、明るいも暗いも弾いている人が決めるんです。楽器じゃなくて。そういうところが日本人の気質に合っているような気がします。シンプルだけど逆に奥深くなっていくのは必然ですよね。一五一会は19年前に生まれた新しい楽器ですから、弾き方や音の可能性はこれから育てていくものなんだと思っています。ボーカルとしては、従来の西洋の音楽理論に当てはまらないところに可能性があると思っているし、指1本で歌っていると、とっても自由でメロディがどこにでも行けるような感じがします。曲の作り方も変わりましたよ。「三線の花」をはじめ、一五一会で作った曲もたくさんあります。

上地:和音の性格を決定づけるのは3度の音ですが、一五一会にはそれがない。なのに、耳では聴こえるんです。それと、ボディはギターより小さくて音のボリューム感も少ないけど、鳴ったときの音の広がりは大きい。不思議でしたね。「狭いコード」「広いコード」という言い方があって、ヴァイオリンの音色は広いんです。その感じが一五一会には出ているんじゃないかな。だから音色が心地いいんだと思います。

アーラのステージに立たれるのは9年ぶりだそうですね。

島袋:そんなに経ちますか?その間も、一男さん(ヤイリギター前社長・矢入一男さん)のお孫さんの結婚式に呼んでいただいたり、名古屋でのライヴにヤイリの職人さんが来てくれたり、可児の人たちとは毎年のように会ってたから。

上地:可児はもうひとつのホームタウンだからね。

比嘉:完全に親戚気分(笑)。ちゃんと顔出して挨拶しないと、みたいな感じです。10月のコンサートでは、一五一会じゃないと成り立たない楽曲を中心に披露しながら、ほかの楽器の音色と混ざり合いながら楽器としてどう響くかを聴いていただきたいと思っています。また前日には、一般の一五一会プレイヤーが参加する「一五一会世界大会」が予定されていますから、みんなで楽しめるといいですね。

島袋:前回は、alaの庭で演奏を楽しんでいる人もいました。笑い声がいたるところに響いて、幸せな空間でしたね。

今年は沖縄本土復帰50年という節目の年。BEGINはデビュー32年目を迎えました。故郷への思いや今後のビジョンについてお聞かせください。

島袋:音楽的には、沖縄って本当に特別なところだと思います。日本各地に民謡はありますが、島の唄がこんなに生活に入り込んでいる県はほかにない。例えば、結婚式に行ったら座びらきがあって、民謡からエイサーからいろんな出し物が繰り広げられる…という経験を、沖縄出身のアーティストはみんなしてきているはずです。音楽の垣根が低いんですよね。そんな沖縄という特別な場所に甘えちゃいけないという思いと、感謝の思いを強く持っています。

上地:僕たちは最初、ブルースが好きで音楽を始めましたが、そのうち三線の魅力に気づいて沖縄民謡をやったり、ブラジルのマルシャというリズムを知って取り入れたり、いろいろな音楽と出会ってきました。これから何に出会うかわからないし楽しみですが、ひとつ言えるのは、これからもBEGINの音楽は生の音が基本だということ。だからライヴは大切にしていきたいですね。

比嘉:僕は今、石垣に住んでいるので、特別な思いがなくなってきています。「石垣の海はきれいでいいですね」とよく言われますが、僕にとっては、湘南の海もブラジルの海も石垣の海も同じように愛おしさを感じます。土地じゃなくて人なんだと思います。BEGINもデビュー当時は、まさかこんなにたくさんの仲間ができるとは思ってなかったし、今もこうして全国ツアーを回ってるなんて想像もできませんでした。これからも皆さんに少しでも喜んでもらいたいし、もっと言えばウケたい。これやったら笑ってくれるかなとか、そんなことを思いながらこれからも活動していきたいです。

◎Interview & Text/稲葉敦子


10/2 SUNDAY
BEGIN「ビギンの一五一会なコンサート」
<チケット完売>
■会場/可児市文化創造センターala 主劇場
■開演/14:00
■料金(税込)/全席指定 一般¥6,000 25歳以下¥3,000
未就学児入場無料(お席に座られる場合はチケットが必要)
■お問合せ/可児市文化創造センター インフォメーション
TEL.0574-60-3050(9:00〜19:00 火曜休館)

10/1 SATURDAY
「第三回一五一会 世界大会」開催!
<チケット発売中>
■会場/可児市文化創造センターala
■開演/16:00
■料金(税込)/全席指定 ¥2,500
■お問い合わせ/可児市文化創造センターala インフォメーション
Tel.0574-60-3050 (9:00~19:00 / 火曜休館)
※未就学児入場無料(お席に座られる場合はチケットが必要)
詳細はこちら

【2日間ご来場のお客様へのキャッシュバックについて】
■10月1日(土)開催「第三回一五一会世界大会」、10月2日(日)開催「ビギンの一五一会なコンサート」のチケットを両方、ご購入の方を対象に当日会場にて500円キャッシュバックいたします。
<キャッシュバック注意事項>
※10/1(土)開催「第三回一五一会世界大会」、10/2(日)開催「ビギンの一五一会なコンサート」のチケット両方を会場にてご提示ください。
※当日、ご来場いただけなかった場合、チケットをご提示いただけない場合、キャッシュバックの対応は致しかねます。