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人気エレクトーン奏者827askaが初めてのVRライヴを開催!VR×マルチアングル×立体音響で魅せる新たな音楽の世界とは。

エレクトーンの演奏動画を9歳の頃からYouTubeで公開し、「スター・ウォーズ」メドレーのカバーでブレイク。メジャーデビューも果たし、ライヴツアーなど精力的に活動の幅を広げている826askaが、10代最後の今年、新たな領域に挑戦します。中京テレビとタッグを組み、最新テクノロジーノVR技術や立体音響システムを駆使したVR配信ライヴ「VR LIVE〜Last Teenage」を開催。自宅にいながら臨場感たっぷりの演奏を楽しめる機会を見逃す手はありません。

360°のマルチアングルで撮影された映像を、視聴者はスマホやタブレットをタップしてさまざまなアングルで観たり、VRゴーグルをかけてリアルな没入感を体験できるVR配信ライヴ。収録ではどんなことを意識して演奏されましたか?

正面や真横など定点カメラがいくつかある中で演奏したのは新感覚でした。演奏中は表情に気をつけましたし、指の動きも、より強調しました。普段、演奏中の手元を俯瞰で撮影するということはありませんから。それに、やっぱりエレクトーンは足が活発に動くので、そこにも気を配りました。演奏中の私の真横の視点を感じられるポイントを「助手席」と呼んでいるのですが、そこから観ると足の動きがよくわかると思います。また、エレクトーンの装置がどのように動いているのかも観てもらえます。モニターやパネルがどんな動きをしているのか上から覗けるので。観ていると、「このスイッチは何?」とか「ここでカウントしてるんだ」とか、いろんな疑問や発見が出てくると思います。そこも楽しんで欲しいですね。実際どんな映像になっているのか、配信当日に私も楽しみたいと思っています。


音響にもこだわっているとか。

HPLという技術を使って立体音響を再現します。ヘッドホンやイヤホンをつけて聴いていただくと、本当にライブ会場にいるように立体的な音を楽しめると思います。

当日のセットリストはファン投票で決められたそうですが、askaさんのカバー曲のレパートリーは「ルパン三世のテーマ」や「宇宙戦艦ヤマト」など渋いですよね。

両親の影響ですね。映画音楽も好きで「ジュラシックパーク」や「パイレーツ・オブ・カリビアン」のテーマ曲などをカバーしていますが、それも小さい頃に両親と一緒に観てハマったのがきっかけです。「宇宙戦艦ヤマト」も最初は父にリクエストされて弾きました。音楽に関しては、同級生と話していてジェネレーションギャップを感じますよ(笑)

さまざまな曲をエレクトーンで演奏する醍醐味とはどんなものでしょうか?

私は、原曲に近い演奏をすることにこだわっています。エレクトーンは、ひとりオーケストラなんですよ。例えば、フルートの音をもう少し小さくしたいと思ったとき、吹奏楽だったら奏者に指示しないといけませんが、エレクトーンの場合は自分のさじ加減で自由に音色を調整できます。好きな曲を好きなように表現できるところがエレクトーンの楽しいところですね。最近、アニメ「鬼滅の刃」のサウンドトラックから「鬼殺隊」という曲をカバーするために、一から音づくりをしたんです。原曲はオーケストラの演奏なのですが、エレクトーンには鍵盤が3つしかありません。右手・左手・左足の3つにしかパート分けができない中で、オーケストラの多彩な音を再現しなきゃいけない。だから、大事なところ、聴こえてくるところを大きく3つに絞っていきました。その作業では、やはり原曲を聴き込むことが大切ですね。

譜面からではなく、耳で聴くだけで音を拾っていくのですか?

はい。まずは耳コピです。それから譜面を自分で起こして音色をプログラミングしていきました。まずメロディラインが一番で、そして左手で伴奏を弾くところとベース。それぞれのパートにコントラバス、トロンボーン、ストリングスなど、音を聴き分けながらどんどん重ねていって…なかなか大変です。「鬼殺隊」は音づくりだけで2週間、微調整と演奏の練習まで含めると1ヶ月以上かけて完成させました。

ライヴで「鬼殺隊」が聴けるかどうか、楽しみです。配信当日は演奏の合間にオリジナル企画もあるそうですね。

すごく面白いことを企画しています。その部分は生配信ですから、皆さんのコメントなども拾いながら楽しい時間を共有したいですね。リアルタイムならではの緩さもあっていいんじゃないかと思っています。

自粛期間中も自宅からエレクトーン演奏の生配信をなさっていましたね。

自分にできることは何だろうと考えて、やっぱり音楽を届けることだと思ったので。この状況はまだ続きそうですが、今回の配信ライヴのような機会を作って音楽を伝えていけたらいいなと思いますし、リアルのステージのための準備期間としても有効なものにしたいです。より進化したものを見せられるように。

今後、挑戦したい曲はありますか?

いっぱいあります!先日、誕生日の生配信で普段やらないようなポップスを演奏したら好評だったので、また弾いてみたいですね。あと、アニメのサントラで今ちょっと挑戦している曲があるので、それを早く作り上げたいと思っています。いろんな曲を演奏して幅広い世代の方にエレクトーンの魅力を知ってもらいたいです。


826aska VR LIVE 〜Last Teenage〜
■配信日時/9月20日(日)20:00〜
■料金(税込)/視聴チケット¥1,000 グッズ付チケット¥5,500(視聴チケット+Tシャツ&マフラータオル)
■お問合せ/視聴方法に関するお問い合わせはBlinkyお問い合わせフォームよりお願いいたします。
https://blinky.jp/support/mail.html

詳細はこちら



TSUKEMENの名古屋公演、間もなく名古屋にて開催!!

今年デビュー12年目を迎えた「TSUKEMEN」は、今やアジアや欧米でもコンサートを開催し40万人以上の観客を動員するWヴァイオリンとピアノの人気ユニット。最新アルバムは、クラシックの“時短”アレンジ・カバー!TSUKEMENならではの音作りで彼ららしい世界観を創出しました。さらに今回は“絆”をテーマに、世界中を音楽で人と人をつなぐようなコンサートになるようです。コンサートが間近に迫った中、3人に今の心境やコンサートにかける思いをききました。

コロナ禍でこれまで経験したことのないような自粛生活を強いられた時間を、皆さんはどのように過ごされていましたか?

TAIRIK:ツアーが続々キャンセルになり、準備に気持ちが入りませんでした。いかにステージでお客さんからパワーをもらっていたかを思い知りました。音楽家という行動時間がとても不規則な仕事をしてきましたが、この自粛期間中は人生で1番規則正しい生活をしたように思います。魚をさばけるようになったのが人としての1番の収穫です。

6月からオンラインライブも始まってたくさんの方に観ていただいていますが、手応えはいかがですか?

SUGURU:大前提として生で体験するライブに勝るものは絶対にないと思います。しかし考え方を少し変えると、視聴者全員が最前列から至近距離で観ているかのような環境で視聴出来ることや、生のライブではお見せする事のできない角度から観ることができるはメリットだと思います。例えばTSUKEMENの場合はピアノの左斜め後ろ、肩越しからのアングルだと演奏の手元が全員にしっかり見せられます。そして何よりこれは絶対にやって良かったと思った点は、様々な事情で会場に来ることのできないファンの方々にも音楽をお届けできることです。

今年はベートーヴェンの生誕250周年ですが、〈DANCE!ベートーヴェン・ シンフォニー〉などが詰まった最新作『JITAN CLASSIC』はとても素敵なアルバムですね。今回のコンセプトである「クラシックを“時短”する」という発想についてお聞かせください。

KENTA:僕たちはデビュー当時からジャンルにこだわらずに様々な曲をカバーしたり、オリジナル曲も演奏してきました。そのなかでこれまでもクラシックを短くアレンジした楽曲は弾いてきましたが、今年はより自分たちのルーツである、クラシックに注目してCD製作にとりかかりました。クラシック音楽には敷居が高いと感じたり、一曲が長いという印象を持つ方も多いと思います。そこで交響曲のような大曲を思い切って時短したり、楽曲と楽曲を組み合わせて新しい楽しみ方を提示したり僕たちにしかできないアプローチでさらに音楽を身近に感じてもらいたいという思いでこのアルバムを制作しました。「このメロディー知ってる!」「こんな曲に変化するんだ!」「もともとこれがオリジナルアレンジなんじゃないか!」など、たくさんのワクワクをお届けしたいです。

『JITAN CLASSIC』収録曲から薦めの曲とその聴き所を教えて下さい。

TAIRIK
「The Nights」
EDMが最近とても好きでよく聴くのですが、一見合わなそうなEDMとクラシックの楽器がこんなにマッチしたという所が興奮ポイントです。冒頭のメロディの裏で、特殊なカッティング奏法をしていたり、歌のパート以外にも耳を済ますと色んな音が聴こえてきます。
それぞれのソロのアドリブも聴きどころです!

SUGURU
「トルコ天国地獄行進曲」
クラシックカバーの中から1曲選ぶとすればこの曲です。上手く説明できませんが、この曲は、言葉では言い表せない何かがTSUKEMENにジャストフィットしています。まだ聴いてない方は是非聴いてみてください。

KENTA
「ララカノン」
「カノン」と「Another day of sun」の融合、化学変化を楽しんで頂きたいです。ピアノのリズムに乗ってバイオリンがカノンになったり戻ったり。ドキドキワクワク、最後にはなんとも爽快な余韻が残ります。

オリジナル曲についてもお聞かせください。

TAIRIK
「All For One」「小さな奇跡」
2曲とも、曲のイメージに素直に沿ったタイトルをつけてあります。そして僕は、基本的にメロディを重視して曲を書きます。インストゥルメンタルなので、想像に無限の可能性があります。僕なりの想いを込めて作りました。自分なりの解釈でいいので、楽しんでみてください。想像して自分なりのイメージを膨らます過程にファンタジーがあると思っています。

SUGURU
「Starlight Ocean」
小さな命が懸命に生きる姿からは、夜空の星のような、またそれ以上の輝きを感じます。
曲中に「きらきら星」のメロディを交えつつ、一つ一つの生命の輝く光が溢れて交わり海のように広がって行く様を表しています。

KENTA
「5 red chateau」
これまでのオリジナル曲にはなかった大人の色気や味わいを表現した曲です。独特な5拍子に乗って漂うメロディーを感じながら、その世界に浸っていただけると思います。お洒落で大人な時間のお酒にもぴったりです。

"絆"をテーマにした今回のコンサート、楽しみにしているファンの皆さんにそれぞれメッセージをお願いします。

TAIRIK:今はどんなに徹底予防をしようとしても、リスクが付き纏います。こんな状況で来てくださるみなさんの為に、今なにを感じ、なにを届けたいのか、今一度自分たちに問うてステージを作りました。一緒に最高の時間を過ごしましょう!

SUGURU:毎年名古屋では素晴らしい声援を頂くことが大変有難く、音楽活動を続けて行く上で大きなモチベーションを頂いております。今年は大変なご時世ではありますが、コンサート関係者の皆様のご尽力、ファンの皆様の応援のおかげで年に1度の名古屋公演が開催できることを嬉しく思っております。演奏する側、参加する側、双方が同じ空間で音楽の波を感じられる事、また皆様の前で演奏ができる喜びを噛みしめながら、限られた時間をただただ皆様と楽しみたいと思います。今年も名古屋公演よろしくお願い申し上げます!

KENTA:今年は世界中のみんなが精神的にも経済的にもストレスや辛い思いを抱えていると思います。最新アルバムの魅力を伝えたいという思いも込めておりますが、演者、スタッフ、お客様のみんなで泣いたり笑ったり癒されたり、音楽を通して心で繋がり、寄り添うことが出来るステージを作ることが今僕たちの出来ること、役割だと思っています。あたたかくて優しい朝日を浴び、また今日も明日も頑張ろう。そう思えるメッセージ、コンサートをお届けします。


9/12 SATURDAY
TSUKEMEN CONCERT つなぐおと 
with JITAN CLASSIC

【チケット発売中】
■会場/日本特殊陶業市民会館ビレッジホール
■開演/①15:00 ②18:30
■料金(税込)/全席指定¥5,500
■お問合せ/中京テレビ事業 TEL 052-588-4477(平日11:00~17:00 / 土・日・祝休業)



岐阜市出身、ザルツブルグで学ぶ俊英が岐阜県多治見市でリサイタル!

宇野由樹子は2019年5月のエリザベート王妃国際コンクール・ヴァイオリン部門でファイナリストに選ばれた、岐阜市出身の俊英。9月に多治見市・バロー文化ホールで同市出身の古田友哉(ピアノ)とのデュオ・リサイタルが決定した。ザルツブルク・モーツァルテウム音楽大学で共に学んだ、注目の二人です。

コロナ禍という未曾有の事態に欧州の地で遭遇されました。

入試と卒業試験をちょうど控えていたため、ヨーロッパで過ごしました。当時は日に日に情勢が変わり、国境閉鎖が次々と決まっていく中、早くも2〜3月頃からアジア人やマスクをつけている人が理不尽に差別的な言動を受けることが増えるなど、非常事態だからこそ浮かび上がる人間の弱さも目の当たりにしました。街が全て警察の監視下におかれ、国境が閉鎖されたりして、今まで感じたことのないホームシックや不安を感じましたが、ネットで家族や友人と繋がれることの有難さを身にしみて感じました。
結局、入試は録音審査に早々に切り替わり、オーストリアで予定のコンサートも延期となってしまいましたが、自粛中は幸いにも教授の計らいで毎週2回ほどオンラインのクラス会合があったため、楽曲分析をしたり、クラス内で共有されていた記事や本を読んだりして忙しく過ごしました。息抜きで散歩をしたりケーキを焼いたりしつつ、普段の個人レッスンとはまた違う指導を受けられ、多岐にわたって学べた有意義な時間だったと思います。


ザルツブルクの音楽シーンの現状はいかがですか?

オーストリアは5月から制限緩和が始まり、6月中旬には国境も再開されました。いまだに行動制限は段階的解除の最中ではありますが、すでに従来の生活と変わらない日常が戻りつつあります。今年100周年を迎えるザルツブルク音楽祭もプログラムを再編して、感染対策を伴った上で8月に開催されることになりました。芸術が非常時には不必要なものと捉えられかねない中で、緊急事態下のドイツの文化相による「アーティストは必要不可欠であるだけでなく、生命維持に必要なのだ」という発言は、先行きが見えず不安な当事者達に多くの勇気を与えてくれましたね。また個人的には、コロナ禍のような特殊な事態にこそ、音楽をはじめ芸術が最終的に常に拠り所になってくれる力強さも感じていました。演奏者として、今まで培ってきた知識や経験、発見をどう社会に還元できるのかを模索しながら、作品のもつ素晴らしさを多くの必要とする人に伝えていきたいです。

モーツァルテウム芸術大学を6月に卒業されたとか?

モーツァルテウム芸術大学も今年の6月に無事に卒業し、今秋からは、引き続きライナー・シュミット教授の下で場所を移り、スイスのバーゼル音楽院にてソリスト・マスターとして勉強を続ける予定です。留学を始めた5年前は物事全般を白か黒かで捉えがちでしたが、多様性に溢れる環境で、どんなところにもグレーの可能性や“あそび”があることを受け入れられるようになり、音楽自体へのアプローチも変わりましたね。そして、素晴らしい室内楽奏者でもあるライナー先生のおかげで、ドイツ系作曲家の作品に多く触れることができ、ドイツ語の韻やアクセントと音楽との関係性の深さに毎回気づかされました。アカデミックな側面からも技術面からも、また細かな表現上のニュアンスまで、作品を理解する過程で色々と自由に試させてもらい、視野が広がりました。まだ道のりの半ばですが、多くのアイデアや方向性を見出せたので、時間をかけてこれからもより深く追求していきたいと思っています。

今一番興味を持って取り組んでいる作曲家や作品について教えて下さい。

今は特に前述したように、ベートーベンやシューベルト、シューマンなどのドイツ系作曲家の作品について、掘り下げて取り組んでいます。最近は主にヴァイオリン・ソナタが多いのですが、作品を分析するにつれて、和声や形式面を初めとして細かいところに独自の革新的なアイデアが散りばめられていることに改めて気づかされ、様々な要因が類稀なる作品を生み出していることにいちいち感動させられます。

9月の多治見市文化会館でのコンサートで演奏予定のシューマン: ヴァイオリン・ソナタ 第1番とラヴェル: ツィガーヌについて、それぞれ聴き所を教えて下さい。

シューマンのソナタは、ドレスデンからデュッセルドルフに移り住み、作品の制作でも多忙を極めていた1851年にわずか16日の短期間で作曲されました。シューマンは結婚後しばらくして、過労や経済上の苦労、妻であり優れたピアニストであるクララへの劣等感など様々な要因から精神を崩し、長年にわたって精神障害による幻聴や妄想に悩まされていました。この作品を作曲した前後からその症状が酷くなり、その影響がこの作品にも見られ、全体を通して悲劇的で苦痛に満ち、常に何かに追われているかのような強迫観念に苛まれている印象を受けます。その中で、もの懐かしさを彷彿とさせる第2楽章は、前後楽章の焦燥感から対照的に、繰り返し現れるテーマは不完全なメロディーながらその純真さに聴くものの心を打ちます。
一方、フランスの印象派を代表するラヴェルは、民族性に憧れを抱き、ハンガリー系ロマの音楽としてツィガーヌを構想しました。チャルダッシュの形式をもち、前半のテンポの緩やかな「ラッサン」と後半の速く情熱的な「フリスカ」から構成されます。ジプシーの情感のこもった独白のようなカデンツァ、そしてピアノのアルペジオと共に展開される情熱的で早い舞曲のヴァリエーションは息つく間もつかせず、華々しくクライマックスを迎えます。作曲にあたり、パガニーニのカプリスに触発されたというラヴェルのヴァイオリン技巧への純粋な探究心が随所で見られ、ピアノとの響きと相まって魅力的な音響効果を発揮しているところも聴きどころの一つだと思います。

共演の古田友哉さんも同じモーツァルテウム芸術大学で学ばれています。

古田さんは多くのことに造詣が深く、音楽も多様で繊細な音色を持ちあわせたピアニストだという印象がありました。在学中からソロでも各地をまわって忙しくされていたのに加え、様々な演奏家と室内楽も多く意欲的に活動されているのを見て、いつも刺激をいただいておりました。地元の大先輩で、同じ出身の縁でいつか岐阜で共演できればと願っていたものが早くも実現することになりとても嬉しく思っています。
今年は、直接ホールで演奏を聴く機会が減った方も多いかと思いますが、久しぶりの音楽は、日々に活力を与えてくれ、生活に彩りを添えてくれることと確信しています。今回プログラムに組んだ素晴らしい作品たちの魅力をお届けできるよう全力で準備しております。バロー文化ホールで皆さんをお迎えできるのが、今からとても楽しみです!

取材・文:東端哲也


9/4 FRIDAY 【チケット発売中】
岐阜の若きヴィルトゥオーゼン
宇野由樹子・古田友哉 デュオリサイタル

◼︎会場/バロー文化ホール(多治見市文化会館)小ホール
◼︎開演/19:00
◼︎料金/全席自由 一般¥2,000 高校生以下¥1,000
◼︎お問合せ/バロー文化ホール(多治見市文化会館)TEL.0572-23-2600
※未就学児入場不可(託児有・要申込)

8/21 FRIDAY 【受付終了 ライブ配信あり】
100人de名演(全6回)
第4回 宇野由樹子(ヴァイオリン)

◼︎会場/サラマンカホール
◼︎開演/12:00
◼︎料金/お申込み先着100名様無料ご招待(受付終了)
◼︎お問合せ/サラマンカホールチケットセンター 058-277-1110
※同日同時刻にYouTubeよりライブ配信いたします。以下のリンクよりご覧ください。
https://www.youtube.com/channel/UCOTVt9wDpBfz7tXlDe9jhPA



庭劇団ペニノが三重に初登場。舞台と客席が同化し独特な世界が生まれる<一体・没入型>音楽劇とは?

庭劇団ペニノが三重に初登場。劇場内に建てられた“お堂”で繰り広げられる不思議な儀式に観客も参加しているうちに、いつしかその世界に取り込まれ、没入していく。そんな異次元の参加型音楽劇「蛸入道 忘却ノ儀」を体感する日が、いよいよ迫ってきました。まったく新しい劇体験で、主宰のタニノクロウがめざすこととはー。

「蛸入道 忘却ノ儀」での劇体験は、実際に参加してみないと想像しづらいものですね。

そうかもしれません。ストーリーもなく決められた台詞もない中で、俳優たちはキャラクターを演じることなく、自分自身としてその空間にいます。そして、念仏を唱えながら “儀式”を執りおこなうんです。観客の皆さんにも、あらかじめ置いておいた楽器を自由に手に取って奏でながら、儀式に参加してもらいます。どんな音が鳴るのか俳優たちはもちろんわかりませんし、観客がお堂を囲むように居並び全方位から見られている状態でパフォーマンスを続けなければならない。そこで彼らが何をどう体感するのか。それを求めて作ったのが、この作品です。例えば、台詞を間違えないようにとか、音がズレないようにとか、パフォーマンスをする上で守るべき優先順位がありますよね。それを全部なくして、その先に行く…俳優たちが自意識から脱却するための儀式を見せたいんです。

初演、再演でその経験をして、俳優さんたちに変化はありましたか?

「変わった」という人は何人かいますよ。舞台上での俳優の理想的な状態は、物事を自在に見ながら想像力豊かでいられることだと思います。どういうことかを説明するのは難しいのですが…。以前、舞台上に赤ん坊が出てくる作品を観たときに、どうしても赤ちゃんに目が行ってしまうということがありました。別の作品で演出家が役者として出てきたときも、なぜかその人のことを目で追ってしまった。一方は、それが演劇なのかさえわかっていない人、つまり作品に対する情報が圧倒的に少ない人。もう一方は、膨大な情報を持っている人です。両極端ですが、舞台上で観客の目を引き付けるのは、そういう存在なんだと思います。では、俳優はどうするか。当然ですが情報量ゼロというのはあり得ません。そのプロダクション、関わっている人、稽古中の昼飯…なんでもいいのですが、自分を取り巻くあらゆるものに対して好奇心と想像力を発揮して世界を作っていく。一見、自分にはまったく関係ないことでも、「あるんだろう」と仮説を立てるという作業を、俳優は稽古の段階でおこないます。それを踏まえ、情報をできるだけたくさん持った状態で舞台にいたほうがいいと僕は思っているんです。そういう状態が、決められた台詞や動きを超え自在に物事を見られる、舞台上での理想的な俳優のあり方なのではないかと。ゼロと無限が同居するという、仏教思想の「空」に通ずる状態かもしれません。


撮影:井上嘉和 提供:KYOTO EXPERIMENT事務局

そういう状態に観客も取り込まれていくのですね。昨年、「KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭2019」で上演された際には、一緒にお経を唱える人もいたそうですが。

上演する場所によってムードがまったく変わる作品だと思います。何が起こるかわかりませんし。京都の場合は国際演劇祭でしたから、お客さんの空気も独特でした。すごくノリノリの人もいたし…。今回も、お客さんの反応がとても楽しみです。俳優と観客が影響し合ってできる作品、しかも、そのことを観客が感じながらその場にいられる作品ですから、面白いんじゃないかな。とても音楽的に作られている作品ですし、聴き応え、見応えもあると思います。単純に楽しんでもらいたいです。

庭劇団ペニノは、三重県初登場です。

三重県文化会館のことは、東京の演劇人の間でも話題になっていますよ。各地の小劇場やフリーシーンの作品をこんなに頻繁に上演している公共ホールは、あまりないと思います。
やっぱり、そういう土壌のあるところでやりたいですよね。土地柄や箱の環境というよりも、そこで働いている人や観に来てくれる人が醸し出すものだと思うのですが。今回は良い機会をいただきました。

ペニノもそうですが、今の演劇シーンでは所属の俳優を持たずユニットスタイルで作品を作る劇団が多いですね。

ほとんどそうじゃないですか?好きなときに好きな人たちを集めてやればいいと思っています。今は、人が集まるのも情報を集めるのも簡単ですし。家を買うか賃貸を続けるか、みたいな差だと思います。演劇なんて、いつ転覆するかわからないことをやっているわけですから、賃貸にしておいたほうがいいんじゃないかな、と(笑)。


3/7 SATURDAY 3/8 SUNDAY
庭劇団ペニノ「蛸入道 忘却ノ儀」
チケット発売中
◎ 作・演出/タニノクロウ
◎ 出演/木下 出、島田桃依、永濱佑子、西田夏奈子、日高ボブ美、森 準人、森山冬子、山田伊玖磨
■ 会場/三重県文化会館 小ホール
■ 開演/3月7日(土)14:00、19:00 3月8日(日)14:00
■料金(税込)/
全席指定(整理番号付)前売 一般 ¥2,800 高校生以下(要証明)¥1,000
当日 一般 ¥3,100 高校生以下(要証明)¥1,300
■お問合せ/三重県文化会館 TEL.059-233-1100
※未就学児入場不可



城田優がコンサートツアーで名古屋に登場!

真っ黒なスーツがよく似合う、長身の紳士。
かと思えば、突然重低音が効いた声を大音量で響かせ、人をお茶目に驚かせる一面も。サービス精神が旺盛で、まるで無垢な少年のような城田優。クリエイターとして、エンターテイナーとして、腕が立つ彼が手掛けるコンサートは、全曲“恋の歌”で彩られます。

昨年はデビュー20周年を迎えられましたね。

そうですね。芸能活動を始めたのは13歳からです。でも最初からドラマやミュージカルに出ていたということではなくて、お仕事として人前で歌を歌うようになったのは、16歳のときの初舞台です。「美少女戦士セーラームーン」が、初ミュージカルでした。


歌うことについて、ご自身で大事にされていることはありますか。

歌詞が一番大事だと思っています。僕が歌う曲や作る曲、選ぶ曲は曲の中に物語がちゃんとあるものが多いので、その曲のメッセージを届けられるように目指しています。ちゃんとしたヴォーカルレッスンは、実は受けたことがないんです。ミュージカルのレッスンはしますし基礎的なものは今までやってきましたので、ある程度経験の中で培ってきたものもありますが、今でも全然足りないものがたくさんあると思いながら活動しています。ただ、練習することだけがうまくなることではないと思うところもあります。真面目に向き合いすぎると、違う方向性に行ってしまうというか、凝り固まってしまうというか。歌い方は変化していいと思っているので、あまり型にはめすぎない方がいいかなと。やりすぎると、毎回それをすることが正解のようになってしまって、あまり面白くなくなるんじゃないかと。歌うその時々によって、歌い方が違っていいところもあると思っています。

シンシアさんと共演されて、学んだことはありますか。
※シンシア…第92回アカデミー賞で主演女優賞と歌曲賞にノミネートされた、女優で歌手のシンシア・エリヴォ

もともとのスタンスの違いというか。シンシアに限らず、今までご一緒した海外のスーパースターたちは、みんな自信を持っています。我々は普通パフォーマンスの際に、自分のスイッチを切り替えることが多い。でもそれが結果的に気負いとなって喉を閉めたり負担をかけてしまって、いいパフォーマンスにつながらないこともあるんです。シンシアたちは、本番とリハがいい意味であまり切り替わらない。圧倒的な歌声ですけど、それは過度に緊張しないことが大事なんだろうなと思います。メンタルコントロールが上手なんですね。僕なんて、カラオケ歌っている時が、一番うまいと思いますよ(笑) 誰にも迷惑をかけず、責任をとらなくてもいいですし、失敗しようが成功しようが、楽に歌えて、単純に楽しいですよね。カラオケで歌っているときの自然なマインドで舞台に立てると、よりリラックスした状態で喉もよく開いた状態で声が出るのだと思うのですが。

では、緊張しないために行っているルーティンワークはありますか。

深呼吸。あと、「人」って3回書いて飲む(笑) 本当にやりますよ。20歳でミュージカルに出演した頃は、ルーティンワークをたくさんやっていました。体幹トレーニング、ストレッチ、発声、音楽を聴いてからステージに出る、みたいな。でも、あるとき音楽の再生機器が壊れて、本番直前に聴けなくなって。そうすると今までおまじないのようにやっていたルーティンワークが崩れたことで、「今日できないかもしれない」「声が出ないかもしれない」とか思い始めて、勝手に失敗するかもしれないというマインドになっちゃったんですよ。そういうのを経験してからは、必要の無いものをやめようと全部取り払って。直前の発声も最低限で十分だと海外のスターたちと共演して気づいたし、いろんなものを排除した結果、残ったものは「深呼吸」と「人って3回書いて飲むこと」。いつでもどこでもできるし、吊られていてもできますし。すべての作品で緊張しているときにやっていますね。あとは人に背中をたたいてもらうとか。公演ごとにキャストにやってもらっていましたね、シンプルです。海外のスターたちは楽屋に戻るかのようにステージに行くから、それがいいんだろうなって思います。気持ちをオンにしなければいけないときに、オフにするっていう。僕は外国人でもあり日本人でもあるので、マインドはその中間。どちらかというとマイナス思考が強くて、すごく複雑な性格なんですよ。


今回のツアーサブタイトル「Mariage(マリアージュ)」について、コンセプトをお聞かせください。

文字通り「結婚」を意味しますが、「食事」と「お酒」のMariage(組み合わせ)と同じように「城田優の歌」と「楽曲」のMariageを楽しんでもらうことをテーマにしています。ひとつのショーの中で一生分の恋愛と言いますか。片思いをして、ふられて、つらい思いをして、立ち直って、また恋をして、そして結ばれる、みたいなストーリーが2時間のショーの中にギュッと詰め込まれていると思います。すべての曲が恋の歌で形成されているショーにする予定です。こんなにラブソング歌う!?っていうくらい歌いますので、最終的には、お客さま1人1人が結婚することを想像できるくらいの表現力をもって歌うつもりでいます。皆さん是非、おめかしして来て頂きたいですね。

ツアーの4公演(東京・大阪・福岡・名古屋)ともゲストが違い、名古屋公演のゲストは、加藤和樹さんですね。

同じ楽曲を歌うことがあったとしても、ゲストによって感じることが変わってくると思いますが、それも“Mariage”の1つとして、楽しんで頂けたら。和樹とは、10代、20代、30代と、必ず節目で共演しています。仕事とプライベートのバランスが一番とれている、付き合いの長い人なので、僕のすべてを知っていると言っても過言ではないです。エンターテイナーとしての僕、クリエイターとしての僕も、彼はよく知っていますし、先日「ファントム」というミュージカル作品でも一緒だったので、そのときの熱量が高いままの彼との化学反応が楽しみです。今まで、距離を縮めて一緒に歌うことがあまりなかったですし。

最後に、東海エリアのみなさんへメッセージをお願いします。

なかなか東海エリアに足を運ぶ機会がなくて、名古屋公演は久しぶりです。ミュージカル以外ではおそらく8、9年ぶり。ただ10代の頃、岐阜市の長良川の近くの旅館に1か月間泊まって生活しながら、岐阜のメモリアルセンターで撮影していたことがあり思い出もある場所です。まだ僕のミュージカルやコンサートに行ったことがなくて興味のある方、一期一会でご縁を大切にしたいのでぜひこの機会に。もしお時間がありご縁だと思って来てくだされば、みなさんにとってプラスになるようなエネルギーにして、確実に素敵なものをお届けできる自信はあるので是非足を運んで頂きたいです。

◎Interview&TEXT/LeeSa


3/15 SUNDAY
「城田優 Concert Tour 2020~Mariage~」
チケット発売中
■会場/日本特殊陶業市民会館 フォレストホール
■日時/3月15日(日) 17:00開場、18:00開演
■料金(税抜)/全席指定 S席¥9,500、A席¥6,300
※小学生以上有料、未就学児童は入場不可
■ゲスト/加藤和樹



ミュージカル「フランケンシュタイン」、3年ぶりの再演!

ゴシックロマンの名著『フランケンシュタイン』を、大胆なストーリー解釈とメロディアスな音楽でミュージカル化した、韓国発の作品。
人類の「生命創造」への飽くなき探求と「愛と友情」をテーマにした、壮大でスピード感あふれる衝撃の物語です。
心優しい人間「アンリ」と、死から甦らされアンリの記憶を失った「怪物」の2役を演じる加藤和樹の思いとは-。
1月リリースの配信シングル第3弾『片想い』についても伺いました。


ミュージカル『フランケンシュタイン』の再演が決まり、すでに東京公演が始まっていますね。

はい、現在公演中です。

3年前に名古屋で、初演の大千秋楽を迎えられましたが、ステージから見た景色はいかがでしたか。

すごかったです! あれだけ大きな劇場(愛知県芸術劇場大ホール)で満席というのはなかなかないので。あの景色をもう一度見られるかもしれないと思うと、楽しみです。劇場が減り、名古屋の大きな会場でミュージカルができることが少なくなってきたので、とても光栄です。地元でもありますし。

再演が決まった時のお気持ちは。

わりと早い段階で再演のお話を頂き、嬉しかったですね。いろいろな作品を経ての再演なので、パワーアップしなければいけない部分もありましたし、またあの大変な役を演じるのかと思うと、気持ちを1つも2つも入れ直さなきゃなと思いました。

その大変な「怪物」を演じるにあたり、稽古場ではどうでしたか。

楽しみの方が大きかったですね。楽曲もセリフもほとんど覚えていました。思い出しながらやることももちろんありましたが、頭が忘れていても、体が初演の動きや感覚を覚えていますので、それを新たに上書きしなければいけないという葛藤はありました。自分では新しいことをやっているつもりだけど、あまり変わり映えがしなかったりも。無理に変える必要はないんですけど、いいところは残しつつ。

初演の課題は再演に活かし、よかった部分は残して、と。

そうですね。初演の時は楽曲にふれるのも初めてだったし、とにかくみんなで試行錯誤しながら作り上げていった勢いがすごくあったと思うんですね。今回の再演では、その勢いだけではなく、深みのある、楽曲の理解や芝居の解釈をみんなで目指しました。無駄なものが削ぎ落されて、ブラッシュアップされていると思います。

実際に東京公演が始まり、出演者のみなさんの様子はいかがですか。

みんな、楽しんでいますね。演出家の板垣さんが、とにかく「楽しんでやってください」と言ってくださるし、再演から参加の新たなメンバーが新しい風を持ってきてくれているので、すごくいい化学反応を起こしていると思います。

怪物は苦しいシーンもありますが、楽しめていますか。

僕は虐げられたりいじめられる方ですが、どちらかというと、逆のいじめる立場の方が難しいと思います。人って、普段汚い言葉を吐かないし、人に唾を吐いたりしないじゃないですか。だから、みんな最初は稽古で躊躇するんですね。そこで、過去に「魔女狩り」があった話を演出家の板垣さんがされて、何かしら理由を付けて人を祀り上げることが歴史的に繰り返されていたことを理解しながら、みんな演じています。

怪物を演じることで、引きずったりしませんか。

初演の時ほどではないです。初演の時は、公演が終わってもしばらく魂が戻ってこないことがあったんですけど、今回は、いい意味で抜きどころというか、スムーズに戻るというか。それは、初演を経験したからこそだと思いますが。今回は、楽しんでやれていると思います。なかなかまだカーテンコールでは戻れないですけど(笑)


友だち思いの優しい「アンリ」から「怪物」に至るまで、気持ちの振り幅が大きいと思われますが、気持ちの持って行き方は、稽古で培ったものですか。それとも、役のエネルギーに引っ張られているのでしょうか。

どちらかというと、後者ですね。自分が物語にちゃんと没入できれば、そこへ行けるという感覚です。シーンが飛んだり、間が描かれていない部分をいかに埋めるかということが、ひとつの手だと思います。

初演時は、闘技場でアドリブのシーンがありましたが。

今回はほとんどないです。全くないわけではないですが。そのシーンは、演出家の板垣さんがフリーに演出をつけられていますが、初演に比べて再演は無駄なものを削ぎ落して、実質公演時間も短くなっています。

初演後から3年の間に多くの主演作品を経験されることで喉の使い方が変わってきたと思いますが、歌い方に違いや新しい発見はありましたか。

初演の時に比べると、再演の方が、自分が思う表現ができるようになりました。今までいろいろな楽曲に触れてきたことによって、成長してきたんだな、と。自分でも感じる瞬間がありました。初演の時は、自分が表現したいことがあっても、テクニカル的なところが追いついていなかったりしましたが、今は、より音楽に寄り添った芝居の歌い方ができるようになったと感じます。曲のレンジ(範囲)が広く、高いところに合わせて全体のキーを下げると、今度は低いところが出なくなったりして、初演ではキーの問題がありました。初演ではキャストによってキーを変えていましたが、再演では、キャスト全員が同じキーで歌っていると思います。役にあったレンジが絶対にあると思うので、その中で自分がどう役の気持ちを表現するかが一番大事だと思います。お芝居として歌うわけですから、ミュージカルとしてそこが楽しいところでもあり、難しいところでもあるんですけど。

「くま、おいしい」という怪物のセリフが、初演から名物になっています。「熊カレー」が商品化されたり、初演時は各劇場に「熊の置き物」が設置してありましたが。

なかなかないですよね、こんな熊推しの作品も(笑) 一切、熊は出ないのに(笑) 今回も、熊の置き物ありますよ。初演の時、劇場が変わるたびにだんだん置き物が大きくなっていって。博多には、等身大の熊の剥製(はくせい)が楽屋にあって驚きました(笑) 嬉しいですけどね。

「怪物」と「熊」はセットなんですね。

こちらは、「くま、おいしい」ってセリフを言わなきゃいけないじゃないですか。だから、複雑な気持ちですね(笑) 再演の初日、「くま、おいしい」って言ったら、客席で笑いが起きていましたから。「やっと聞けた!」て感じなんでしょうね(笑) でも、そのセリフを怪物が発することで、言葉を少しずつ取り戻していく大事なシーンなんで。感情がなにもつながっていないところに、「熊」という名称や、「おいしい」という感情が、全部つながった瞬間のセリフでもあります。


切ない最後のシーンは、どのようなお気持ちで迎えていますか。

人によって解釈は違うと思いますが、僕は、怪物としてハッピーエンドだと思っています。なぜなら、ビクターに復讐が果たせたからです。ビクターの大事なものを1つ1つ奪っていって、孤独を味わわせることが望みだったので。そして、ビクターにとって怪物(=アンリ)は大切な人なので、最後に怪物を殺させることで、ちゃんと復讐が果たせるということだと思っています。自分の死によって復讐が完結するというか。ビクターのお芝居や、ビクターと怪物の関係性にもよりますが、そのあとのビクターはお客さんに委ねています。あのまま北極で息絶えるのか、怪物を連れ帰ってまた生き返らそうとするのか。いろいろな想像はできると思うので、そこも楽しんでもらえれば。

配信シングル第3弾として、浜田省吾のカバー曲「片想い」をリリース。曲への想いなども、語っていただきました。

選曲は、どのように決められましたか。

以前、自分のカバーライブで歌ったことがあったんです。とてもシンプルですけど、深みもあるし、そこに込められている想いに、自分も共感できるというか、感銘を受けたんですね。昔の名曲を今カバーすることで、知らない世代の人たちにも届けたいという思いもありました。
原曲の良さを活かしつつ、自分が感じたままの想いを込めて、レコーディングさせていただきました。

歌詞に「あの人」とありますが、どのようなイメージでレコーディングされましたか。

今まで片想いが多かったので、片想いの気持ちはものすごく分かります。実際には、片想いをしていた人を「あの人」にはめるというより、片想いしていた頃の想いを込めるという感じです。「あの人」は、もう手の届かないところにいるんだろうな、と。それが、結婚なのかは分かりませんが、絶対叶わないと悟る瞬間って、絶対あると思うんですよ。それに気づいた時の曲だと思います。忘れたくても忘れられないんですよね、人って。いつかは忘れるんでしょうけど、恋のエネルギーって、本当にすごいなって思います。だからこそ、恋愛の曲が多いと思いますし。

ミュージカルや音楽アーティスト、声優など、多岐に渡って精力的に活動されているご自身に、もしふさわしい肩書きがあるとしたら、なんでしょうか。

「チャレンジャー」、ですかね。自分の好きな言葉が、「やればできる」なので。やりたいと思ったことはやりたい。でも、やるからには、足りないものが多い。やりたいことに挑戦するからには、知識を身につけ、経験を積んでいないと決して成功しないので、そこに付随するトレーニングを、ちゃんとしなければいけないと思うんですね。人生、チャレンジだと思っています。今回も、『フランケンシュタイン』の再演があることでまたチャレンジできると思えることが嬉しいです。

取材・文・写真/LeeSa
写真提供/東宝演劇部


2/14 FRIDAY~2/16 SUNDAY
ミュージカル「フランケンシュタイン」
チケット発売中
◎出演/中川晃教 ・ 柿澤勇人 (Wキャスト)
加藤和樹 ・ 小西遼生 (Wキャスト)
音月 桂、鈴木壮麻、相島一之、露崎春女、ほか
■会場/愛知県芸術劇場 大ホール
■開演/2月14日(金) 18:00(中川晃教、小西遼生)
2月15日(土) 12:00(柿澤勇人、加藤和樹) / 17:00(中川晃教、加藤和樹)
2月16日(日) 12:00(柿澤勇人、小西遼生)
■料金(税込)/全席指定S席¥13,500、A席¥10,500、B席¥7,500
■お問合せ/キョードー東海 (052)972-7466



百年前、空気を読まずにマジで論争した女性たちの群像劇、登場

劇作家・演出家の永井愛率いる「二兎社」の最新作『私たちは何も知らない』は、平塚らいてうや伊藤野枝らが活躍した雑誌『青鞜』の編集部を舞台に、若き女性たちが熱い論争を交わす姿を描いた群像劇です。

雑誌『青鞜』の編集部が舞台となった作品です。

『青鞜』については中心人物である平塚らいてうや伊藤野枝が取り上げられることが多いですが、森まゆみさんの『青鞜の冒険』という本を読んで“編集部”という考え方を教えられたんですね。明治末期から大正初めという時代に、何も知らない若い女性たちが集まり、議論を交わして雑誌を作っていったということを、森さんが、ご自身も雑誌の編集人を務めていた経験から書いていて。そのとき、昔々の話ではないなと感じたんです。百年前、若い女性たちが、貞操問題、堕胎問題、廃娼問題、今の“MeToo”につながる問題などを、『青鞜』の誌上で、自分の体験も交えながら堂々論争していたということがちょっと驚きで。彼女たちは、因習的な家制度の中にとどまりたくないという思いはあったけれども、先駆者がいたわけではない。自分たちがたまたまぶち当たった女の問題に取り組んでいった感じなんですね。結果、女の身体についてマジで論争していくことになった。それはすごいことだったと思うんです。


今日でも未だ解決されていない多くの問題が描かれていきそうですね。

日本はまだまだ「ジェンダーギャップ指数」も世界的に低かったりしますし、女性の身体をめぐる問題について語ることを、女たちが避けて通ってきたというか、上手に逃げてきたようなところがある。でも、『青鞜』の人たちはそこに正面からもろぶつかって行ったんだなと思うんです。
私自身、特にフェミニズムに目覚めていた人間というわけではないんです。ただ、演劇界ってすごく男社会なんですね。私が芝居を始めたころには、リーダーはみんな男で、芝居の登場人物も男が多くて、女はリーダーの男に気に入られていい役をもらうみたいな感じだった。女の演出家は珍しかったですから。大石静と「二兎社」を立ち上げたとき、男に仕切られるのではなく、稚拙ながらも自分たちで歩んでいきたいという思いがあった。女性が劇団をいかに運営していくか、行き当たりばったりで歩んできたという意味、そして、そのときどきで心に引っかかる問題を取り上げるうち、次第に女

性の抱える問題を書きたいという方向に進んでいったという意味では、『青鞜』にちょっと重なるところがあるかもしれません。そして、そういう問題があるところに、劇作家としてものすごく人間ドラマを感じるんです。そこを描くことが、人間を描くということにつながっていると感じます。

百年以上前の女性たちが、現代の服装で演じられるという趣向も楽しみです。

シェイクスピアをジーンズでやるみたいな感覚ですね。着物を着て、当時の髪型にすると、過去のお話になってしまうなと。衣装はジーンズだったりですが、持っているものはそろばんだったり、そして携帯は出てきません。女性の可能性について、楽しみつつ考えることのできるきっかけとなったらいいなと思っています。

取材・文=藤本真由(舞台評論家)


二兎社公演43「私たちは何も知らない」
〈名古屋公演〉
’20 2/1SATURDAY

チケット発売中
■開演/12:00 、17:00 ■会場/ウインクあいち 大ホール
■料金(税込)/全席指定¥7,500
■お問合せ/中京テレビ事業 TEL.052-588-4477(平日10:00~17:00)

〈三重公演〉
’20 1/10FRIDAY

チケット発売中
■開演/19:00 ■会場/三重県文化会館 中ホール
■料金(税込)/全席指定 S¥4,500 A¥3,500
■お問合せ/三重県文化会館 チケットカウンター TEL.059-233-1122

〈豊橋公演〉
’20 1/13MONDAY・HOLIDAY

チケット発売中
■開演/13:00 ■会場/穂の国とよはし芸術劇場 PLAT 主ホール
■料金(税込)/全席指定 S¥5,500 A¥4,500 B¥3,000
U24(B席)¥1,500 高校生以下(B席)¥1,000
■お問合せ/プラットチケットセンターTEL.0532-39-3090
(休館日を除く10:00〜19:00)



義理人情、気持ちが優しくなるような噺を講談で。

12/21に岐阜市文化センターで開催の「ぎふ文化センター寄席」に出演する講談師、神田昌味さんへのインタビューです。神田昌味さんは岐阜県恵那市山岡町在住。陶芸家のご主人とともにこの地に移り住みました。今年2月に自宅が火事になるという災難にも遭いましたが、ご家族一丸となって再建に励んでいらっしゃいます。今回の取材は、その再建中のご自宅でお話を伺いました。


講談師を志すきっかけは?

私は栃木県の宇都宮市の出身なんですが、高校の時に演劇をやっていて当初はお芝居の道に進みたかったんです。親にも高校を卒業したら東京に行って劇団に入るんだと伝えていたのですが、芝居で食べていくことの厳しさを諭されて、芝居以外の舞台芸術も観てみることにしたんです。そんな中で講談を勧めてくれる方がいて、高校3年生の夏休みに新宿の末廣亭で初めて聴いたんです。それが後に私が弟子入りする二代目神田山陽。後に姉弟子となる神田紅さんとの掛け合いで「牡丹灯籠」の立体講談でした。師匠が語りをしながら紅さんと二人で登場人物を演じる、という形の立体講談です。師匠の山陽は新しい試みにも積極的で、女流講談師も多く育てた方でした。

師匠の講談のどんなところに惹かれましたか?

鳥肌が立ちました。師匠の声の独特な張り。あとは一人で語りながら、何人もの人物を演じ分けること。そして動きもほとんどないじゃないですか?演劇をやっている身としては、それがとても新鮮で。師匠の声と雰囲気にやられてしまいました。「これだ!」って。4月を待たずして師匠の元に行って、もうすぐに稽古をつけてもらいました。より早く一人前にするっていうのがうちの師匠のやり方でした。

昌味さんの得意な噺はどんなものでしょうか?

二つ目の頃に勉強を重ねながら色々な噺を身につけ、真打の今に至るのですが、その中でも自分が演っていて気持ちいい噺というものがあります。私が好きなのは、男と男のひねたやり取りであったり、言わずとして心の中で語っていくというようなロマン。赤穂浪士などはその最たるものですね。今の時代だと、殺されたから殺しに行くなんておかしい道理ですよね。私も20代くらいまではそう思っていました。それが30代になって良さがやっと分かってきて、物語が巧みに作られていることにも感心しました。


思い入れのある噺などはありますか?

「正直車夫」という明治時代の噺も好きですね。私は今年2月に山岡町の自宅が火事に遭って、着物から自分が書いた台本まで全部失ってしまったんです。東京での仕事もキャンセルせざるを得ず、しばらく講談は二の次にして自宅の再建に専念しようと思っていたんです。火事から3日後くらいに寝泊まりさせて頂いていたお寺に応援してくれる方々が集まってきて、「昌味の講談会をやろうよ!」という話が出たんです。“こんな時にいいのかな?”という迷いもあったんですが、翌3月に山岡町で講談会を開いたんです。その時演ったのが「正直車夫」で。義理人情、助けてもらった恩を忘れないという噺です。

聴く人も優しい気持ちになるような噺ですね。

そういう話が自分に合っているような気がします。もともと声の質が明るいのですが、頑張ってドスの効いた声を出して、毒婦伝とか女泥棒の噺ももちろん演ることもあるんですよ(笑)。人によっては、そういう意外性も面白くていいんだと言ってくれることもあります、でも、まだまだ足りないことばかりです。男性ですと70歳、80歳、90歳と芸が熟していく世界だと言われているんです。女性はどうなんだろうと女流講談師同士で話すこともありますけど、終わりのない世界です。


12/21 SATURDAY
市民スタッフ企画 vol.17
「ぎふ文化センター寄席」

チケット発売中
◼️会場/岐阜市文化センター 催し広場
◼️開演/13:00
◼️料金(税込)/全自由席¥1,000(当日¥1,500)
◼️お問合せ/岐阜市文化センター TEL.058-262-6200



林正樹とのDUOアルバム「spectrum」リリースツアー!

日本のジャズシーンにおいて、幅広い音楽性を持ちながら独自の世界観を紡いでゆくakiko。この8月には作曲家でピアニストの林正樹とのコラボレーションによるアルバム「spectrum」をリリースしました。ミニマルでありながら詩的で奥行きのある音楽で、また自身の新たな側面を披露しました。今回は林さんとのアルバム制作作業や作詞について、そこからご自身の人生観まで話が広がりました。名古屋ブルーノートでの公演は10/29(火)です。

ピアニストであり作曲家の林正樹さんとのコラボレーション。素敵な世界観のアルバムになりましたね。

私がもともと林さんのファンだったんですが、林さんはとても多忙な方でやっと共演が実現しました。林さんのピアノはどんなシチュエーションでもしっくりくるし、外でイヤフォンで聴いていたりすると、景色が映画のように感じられるような音楽。本来の意味でのアンビエント・ミュージックなんだと思います。ブライアン・イーノの定義した「聞き流せるけれど興味深い音楽」。その音楽の在り方に私も共感しています。でも、最初はこんなアルバムになるって思っていなかったんです。林さんの曲やピアノのタッチが私にインスピレーションを与えてくれて、結果的にこのような内容になりました。

そのインスピレーションはどのような形になりましたか?

例えば「The Flower Of Life」というのは自然界にある幾何学模様の一種を指していいます。この模様には5つ全ての正多面体(正四面体、正六面体、正八面体・正十二面体、正十六面体)が内包されているんです。私は子供の頃から数字や幾何学的なことがとても気になっていて、頭の中でそんな模様を思い描いたりしていました。「私はなんでこんなことを考えているんだろう⁇」と、自分でも不思議だったんですが。こういうことって結局哲学に集約されるんだと思うのですが、そういうことも含めて今回のアルバムは私の人生観を反映した内容になっています。また、「Teal」という曲は色について書いたんですが、例えば「赤」という色はイメージとしては存在するのですが、実際に「赤」として決まった色はないし見る人によって赤の見え方は千差万別で。ただ、「The Flower Of Life」もそうですが日本語で表すと直接的になってしまうんですね。英語だともう少しこちらの想像力に委ねられる余地もあって、聴く方々に行間や言葉と言葉の裏にある意味を味わってもらえるといいなと思いました。

akikoさんの頭の中を覗いているような気分になります。

そもそも林さんのピアノが、「あなたのことが好きで夜も眠れない!」というような詩を許さないところがあるから、自然と抽象的で詩的で哲学的な内容になるんですが、唯一「If」という曲は恋を歌っています。でも私の中ではただの恋愛の歌ではなく「平行現実」のことを示唆しています。例えば「もしもこの世に月が二つあったら」とか「時計の針が逆戻りするのなら」ということ。こういうことをもしある人が想像できるのであれば、その世界はその人にとって存在していることになると思うんです。「ある」「ない」「時間」「空間」といったことは私がいつも考えているテーマでもあり、この曲はそんなことも詩にしています。それぞれの曲に、私の普段考えていることを色濃く反映しています。

曲調のバリエーションも多彩ですね。八重山民謡の「月ぬ美しゃ」も印象的です。

そうですね。それも最初から意図していた訳ではないんです。参加してくれた二人のミュージシャンについても本当に必要だと思うパートで演奏してもらっているのですが、とても音楽的な広がりが生まれたと思います。「月ぬ美しゃ」は「I Love You, Porgy」「Corcovado」と共に3曲あるカヴァー曲のうちの一つですが、最初にこの曲のカヴァーを決めました。八重山に行った時に友人が歌ってくれたのがきっかけなんですが、その友人は民謡歌手ではないから普通の節回しで歌ったんですが、その友人の声やその日の夜空のイメージがとても心に残っていたんです。林さんのピアノとならきっとうまく表現できるだろうなと思っていましたし。

名古屋ブルーノートでの公演も楽しみです。

もちろんアルバム「spectrum」のリリース・ライヴで、その世界観をたっぷり味わってもらえると思います。そして名古屋ブルーノートは唯一、orange pekoeの藤本一馬さんも参加して3人でのライヴになります。林さんと藤本さんも共演は沢山していますから、特別な演奏をお聴かせ出来ると思います。


10/29 TUESDAY
akiko「spectrum」Release Live
akiko×林正樹 feat.藤本一馬

ご予約受付中
■会場/名古屋ブルーノート
■開演/[1st]18:00 [2nd]20:45
■ミュージックチャージ(税込)/¥6,900
■お問い合せ/名古屋ブルーノートTEL.052-961-6311(平日11:00~20:00)



ニューヨークを拠点に活躍するジャズ作曲家がブルーノートに登場!

自身のバンド「m_unit」を率い、昨年リリースの3rdアルバム「ダンサー・イン・ノーホエア」でもその活動の充実振りを見せつけた挾間美帆。今年はニューズウィーク日本版「世界が尊敬する日本人100」にも選ばれるなど一段と評価を上げています。そしてこの10月からは、デンマークラジオ・ビッグバンド(DRBB)の首席指揮者にも就任。これは日本人女性音楽家としては初めての快挙です。そんな彼女が、これまでの音楽体験から人のつながり、そして10/17(木)の名古屋ブルーノート公演への意気込みを語ってもらいました。

挾間さんのバンドである“m_unit”には弦楽器が入っていますね。弦楽器を起用している理由は?

サクソフォン、トランペット、トロンボーンといったホーンセクションと、リズムセクションであるピアノ、ギター、ベース、ドラムから編成されるのがビッグバンドの編成なんですが、m_unitの特徴は、そこにヴァイオリン、ヴィオラ、チェロが加わることです。私は幼い頃からクラシック音楽を聴いて育ってきたので、頭の中で鳴る音楽がオーケストラの音色なんですよ。だから、それを再現しようと思ったら、弦楽器が必要だったんです。


弦楽器の入ったビッグバンドの編成は珍しいのですか?

今のジャズシーンで、ビッグバンドを含む「ラージアンサンブル」と呼ばれるような大編成のジャズバンドで弦楽器を入れているのは、メトロポール・オーケストラ・ビッグバンド(オランダ)くらいだと思います。弦楽器の入ったジャズの編成となると、おそらくガーシュウィンやバーンスタインまで遡ります。グレン・ミラー、カウント・ベイシーなどのスウィングジャズのビッグバンドには弦楽器は加わりませんでした。スウィングジャズはダンスホール・ミュージックですから、音のインパクトが欲しかったんだと思います。そこからダンスミュージックではなくて、アート寄りのビッグバンド・ジャズがなかなか派生できなかったんです。

挾間さんは元々はクラシック音楽を勉強されていたのですね?

そうですね。私は子供の頃からクラシックを中心に勉強してきたのですが、国立音楽大学に入学した時にひとつ転機がありました。国立音大にNEWTIDE JAZZ ORCHESTRAというサークルがあるのですが、その新入生歓迎演奏会がとっても良くって、吸い込まれるように入部しました。私はクラシックの作曲科を専攻していたので、弾けるのはクラシックのピアノだけ。最初は見様見真似でジャズを弾いていました。でもその頃は今私がやっているような音楽を目指していたわけではなく、漠然と作曲家になろうと思っていたんです。だから映画のサウンドトラックや大河ドラマの音楽を手掛けてみたいなとも思っていました。

在学中には山下洋輔さんとの交流も生まれましたね。

国立音大の3年生の頃ですね。山下さんはご自身のピアノコンチェルトのオーケストレーションを、私の作曲科の先生に依頼していたのですが、ある時先生がそれを、私にやらせてみたらどうかと山下さんに紹介なさったんです。コンチェルトはだいたい3つの楽章から構成されているんですが、第2楽章までは山下さんから楽譜が届いたので大丈夫だったんですが、第3楽章はゴニョゴニョって書いたメモみたいなものが届いたんです(笑)。ストーリーやイメージが書いてあったのですが、私はそれを楽譜にしました。山下さんは私との会話の中で、「脳内旅行」という言葉をよく使われます。自分たちが脳の中で何を考えているのか、どうしてこういうスケッチに至ったのか、そしてそれをどのように具現化するか。それをコンチェルトのオーケストレーションで実践させて頂いたのだと思っています。そしてそのコンチェルトのコンサートで指揮をして頂いたのが佐渡裕さんで。その時に山下さんと佐渡さんに「君は裏方としてではなくて、アーティストとして作曲家や編曲家を目指してみたらどうか」と背中を押してくださったんです。当時ちょうどマリア・シュナイダーという、自身のオーケストラを持つジャズ作曲家が話題になっていた頃で、私の憧れでもありました。そこで「ジャズ作曲家」という職業を意識するようになりました。

そして大学院でニューヨークへ。マンハッタン音楽院(MSM)を選んだ理由は?

大学のサークルで演奏している時に、その演奏曲がとても気に入ったんです。調べたら、その曲の作者がまだ生きているということが分かってびっくりして。クラシックの作曲家は亡くなっていて当たり前じゃないですか?会えないんですよ。でも「ジャズだと会えることもあるんだ」と思った瞬間、それってすごいなって思ったんです。それでその作曲家が教鞭を執っている学校を探したらMSMに辿り着いたのです。

その作曲家はどなたですか?

ジム・マクニーリーです。彼はビッグバンドのサド・ジョーンズ / メル・ルイス・ジャズ・オーケストラ(通称:サドメル)の流れを受け継ぐ、ヴァンガード・ジャズ・オーケストラ(ニューヨークのジャズクラブ、ヴィレッジ・ヴァンガードを本拠地とするビッグバンド)のコンポーザー兼アレンジャーをしばらく務めていた作曲家。私は彼の下で勉強したくて、マンハッタン音楽院(MSM)に入学しました。この10月からは、以前ジムが首席指揮者を務めていたデンマークラジオ・ビッグバンド(DRBB)の首席指揮者を務めることにもなりました。


マリア・シュナイダーとの交流はあるのですか?

マリアは大学で教鞭を取っていないので、MSMで開かれたマスタークラスに参加して、その時に挨拶したくらいだったんです。その後、日本のジャズの雑誌の企画でマリアさんのご自宅に伺って対談させて頂いて。リリースしたばかりの私の1stアルバムを聴いて喜んでくださって、そこから交流が始まりました。

山下さん、佐渡さん、ジム・マクニーリー、マリア・シュナイダーと、10年余りの間に素晴らしい音楽家の皆さんと非常に濃密な時間を過ごされたんですね。

運の良さには自信があります(笑)。ラッキーな部分もありますが、その時々で転機になったり成長のタイミングを迎えたりしていますから、とても感謝しています。

挾間さんの作品は、主旋律が中心になるようなポピュラーミュージックのような構造ではなくて、音が複雑に重なり合っていたりと、奥行きを感じさせます。

もともとピアノを習っていたからかもしれません。歌を歌ったりサックスを吹いたりする場合は単音ですが、ピアノは一度に10の音を出すことができますよね。先ほども言いましたが、私の頭の中にはオーケストラの音が鳴っていますから、元々サウンドが散らかっているのだと思います。それを取捨選択したり整理するという作業が常に伴ってきます。あとは、左利きなのでベースラインが際立ってくるのもあります。

では、作曲のモチーフになるのはどんな事柄ですか?

思い出や経験によるとことが大きいです。あとは、例えば数字とか形とか規則性のあるものを題材にして制約を作って、その中で作曲を進めるというようなこともあります。作曲当時96歳だった(現在は97歳)私の祖父が「巡回数」という言葉をウィキペディアを印刷して教えてくれて(笑)。142857×1=142857、142857×2=285714、142857×3=428571と、くるくる数字が回って、7をかけたら999999になる。今回のアルバムの「The Cyclic Number」は、この数を使ってラインやリズムを構成して作った曲なんです。それより96歳のおじいちゃんがウィキペディアを使いこなしている方がびっくりですけどね(笑)。あと、m_unitに関しては、それぞれのプレイヤーに対してあて書きすることが多いですね。

10/17(木)の名古屋ブルーノートでの公演は、そのご自身のバンド“m_unit”での演奏ですね。

私は委嘱されて作品を作ることもありますが、それに対してm_unitは私のホームグラウンドなんです。だからこのグループは、今私が最も演奏したい音楽を創造する場所。13人のこの編成ならではの音楽を皆さんに楽しんで頂ければと思います。


10/17 THURSDAY
挾間美帆 m_unit
ご予約受付中
■会場/名古屋ブルーノート
■開演/[1st]18:00 [2nd]20:45
■ミュージックチャージ(税込)/¥7,400
■お問い合せ/名古屋ブルーノートTEL.052-961-6311(平日11:00~20:00)