今年も熾烈なオーディションを勝ち抜いて、ふたりのアニーが誕生!

「丸山果里菜×小野希子×藤本隆宏」スペシャルインタビュー取材日:2025.04.03
名曲「トゥモロー」で知られるミュージカル「アニー」は、今年、
1986年に日本テレビが上演をはじめてから40年目を迎える。
ファミリー層に絶大な人気を誇っているミュージカルだが、
近年では大人層のファンも急増している。
毎年非常に高い倍率であることで知られる
「アニー役/孤児役」のオーディションは一般公募によるもの。
今年のアニー役(ダブルキャスト)、
丸山果里菜(チーム・バケツ)小野希子(チーム・モップ)、
そしてアニーと出会い、心を通わせていく大富豪のウォーバックス役、
藤本隆宏に見どころを聞いた。
舞台は世界大恐慌直後のニューヨーク。
孤児院の前に置き去りにされたアニーはいつか
両親が迎えに来ると信じて、前向きに生きていく
毎年非常に高い倍率であることで知られる「アニー役・孤児役オーディション」に挑戦し、最終審査でアニーに決まった瞬間の気持ちは?
丸山:私は3度目の挑戦だったのですが、まさか選ばれるとは思っていなかったので、「本当に私がアニーなの?」と、とても驚きました。稽古が始まって、「いよいよだな」と現実感が湧いてきました。
小野:私は今回が2度目でした。選ばれたときは、まるで夢を見ているようでした。最初はただただうれしい気持ちでいっぱいでしたが、徐々に緊張感が湧いてきています。
アニーのオーディションに挑戦してみようと思われたきっかけは?
丸山:2022年の公演を見たことです。とても感動して、私もあんなふうに歌ったり踊ったりしたいと思い、そこから挑戦が始まりました。もともと歌うことは大好きなのですが、アニーの歌には高い音がたくさん出てくるので、どうやったらその高い音をきれいに歌えるかが難しかったです。
小野:私は2023年の公演を見て、アニーのひたむきな姿勢やいつも前向きなところを演じてみたいと思ったのがきっかけでした。そして、お客さまに感動を届けたいと思い挑戦しました。私も高い声を出すのが大変でしたが、その分、歌えるようになったときは充実感で満たされました。
アニーの衣裳、お似合いですてきです!
丸山:私もとても気に入っています。初めて着たときは「わぁ、本物だ!」と思いました(笑)。
小野:私も「アニーだ!」って思いました(笑)。この生地がふわふわとしているところが好きで、着心地も良いです。
藤本さんはウォーバックス役で8度めの出演となりますが、今年の稽古場の雰囲気はいかがですか?
藤本:とにかく明るいですね。笑いの絶えない、にこやかな雰囲気なのが今年の特徴だと思います。それから、これは関わっている全員がそうだと思うのですが、丸山さんも小野さんも純粋にお芝居が好きで、演じることが楽しい、という気持ちが全身から溢れているんですね。大人になるとどうしても、そうした想いをストレートに表に出すようなことがだんだんとなくなってくるように思うのですが、このミュージカル「アニー」に限っては、そうした「純粋さ」というのが最も大事な精神なのだということを、改めて、ふたりから教えてもらったように思います。
このインタビューが始まる直前、少し緊張された面持ちだった丸山さんと小野さんの表情が、藤本さんの姿が視界に入った瞬間にフワッと和らいだのが印象的でした。キャストの皆さんが、良好な関係を築かれているのがうかがえました。
藤本:大人キャストも子供キャストも皆、とても良い関係性が築けていると思います。でもそれ以前に、ふたりともすごくいい子なんですよ。だからこそそうした関係が築けるのだと思います。
丸山・小野:うれしいです!
おふたりは藤本さんのどんなところが好きですか?
丸山:全部だよね?
小野:うん、全部です!
藤本:僕もうれしいです(笑)。



皆さんそれぞれにイチオシの場面があると思うのですが、教えていただけますか?
丸山:私は最初の方に歌う「ハードノックライフ」のシーンが好きです。
藤本:第1幕が始まってすぐの2曲目ですね。子供キャストが皆で歌うシーンなのですが、とても伸び伸びと元気に歌っていて、今の時点で既に非常に高い完成度です。
丸山:元気いっぱいの歌なのですが、その裏に孤児であるアニーの辛さが感じられ、胸がギュッとします。
小野:私は「フリードレス」です。私自身は出ていないシーンなのですが、孤児たちが楽しそうに笑いながら歌っているところを見ていると、私も楽しくなります。
藤本:ラジオから流れてくるバート・ヒーリーというDJの話し方を孤児達が真似しながら歌って踊るシーンですね。このシーンも良いですね。どのシーンも子供たちが本当に一所懸命で、稽古では思わず聴き入ってしまうのですが、そうすると自分の演技ができなくなってしまうので感情移入し過ぎないようにいつも気をつけているんです。今こうして、これまでの稽古のことを振り返っても目頭が熱くなります。
子供達もプロとして真剣に取り組んでいるからこそですね。
藤本:勿論そうです。時には稽古で泣いてしまう子もいるのですが、決して厳しい現場ではないので怒られて泣くわけではないんです。できない自分に対して悔しくて涙が出てしまうんですね。「舞台に立つ」ということは大人も子供も関係なく、プロとして立ち向かっていかなければならないというのを子供達も皆、無意識のうちに理解しているのだと思います。私達俳優はさまざまな作品に取り組みますが、たくさんの子供達の成長と共に歩むアニーのような現場は、他にはなかなかありません。唯一無二だと思います。子供達が努力している姿を目の当たりにして、大人達も鼓舞され進化成長する。アニーにはそういう側面があります。
最後に読者の皆さんにメッセージを。
藤本:ブロードウェイミュージカルの中でも、1977年にトニー賞ミュージカル作品賞を授賞した名作ですから大人も楽しめる作品ですし、子供達が主役ということで子供達も楽しんでいただける。本当に幅広い層に感動をお届けすることができるすばらしい作品だと感じています。ファミリーは勿論のこと、大人の方々にもぜひ会場にお越しいただきたいです。丸山さんと小野さんは、どんなところに注目してほしい?
丸山:私はアニーの気持ちの変化に注目して見てほしいです。特に第1幕から第2幕にかけての変化に感動してほしいと思います。
小野:私は、「トゥモロー」を歌うとき、サンディー(犬)に「大丈夫だよ」と語りかけるシーンがあるのですが、そういう前向きなところに注目して見てほしいです。
藤本:アニーとサンディーとの絆は稽古の賜。深い部分で心が通わなければ、ワンちゃんとの演技はできませんからね。名古屋公演の頃には今以上に深い絆で結ばれていると思います。
丸山・小野:千秋楽まで、がんばります!
◎Interview&Text/向後由美 ◎Photo/中野建太
8/29 FRIDAY〜31SUNDAY
丸美屋食品ミュージカル「アニー」
■会場/愛知県芸術劇場大ホール
■開演/各日11:00、15:30
■料金(税込)/全席指定 S¥9,800 A¥7,800
■お問合せ/中京テレビクリエイションTEL.052-588-4477(平日11:00〜17:00)
「ムジークフェストなら2025」に豪華ソリストと共に登場!

「藤木大地」スペシャルインタビュー取材日:2025.02.22
本誌「MEG関西版」でコラムを担当する藤木大地が、
奈良県の大和高田さざんかホールに
「藤木大地&みなとみらいクインテット」として豪華ソリストと共に登場する。
今回のコンサートは奈良県が主催し、今年が12回目となる
「ムジークフェストなら2025」のメインのコンサートだそうだ。
コンサートの聴き所などを、このホールで
レジデント・アーティストを務める藤木大地に聞いた。
大和高田さざんかホールには、2022年以来3年間で4度も出演されています。「藤木大地&みなとみらいクインテット」としても2023年に出演されていますね。
ホールは来年で30周年だそうですが響きも豊かで美しく、とても丁寧に使用されていて、市民に愛されていることがわかります。ホールスタッフの皆さんのホスピタリティには頭が下がりますし、「しっかり演奏でお返ししよう」と出演者と話しています。
「みなとみらいクインテット」は藤木さんが横浜のみなとみらいホールのプロデューサー時代に作られましたが、反田恭平、石田泰尚とプロデューサーが代わっても続いています。
僕がプロデューサーの時に「つなぐ、むすぶ、のこす」をコンセプトに、全国のホール企画担当者が魅力的に感じる豪華メンバーによるクインテットを結成して、巡回する提案をしました。今回も豪華なメンバーですよ。前回と同じなのはヴァイオリンの成田達輝さんとヴィオラの川本嘉子さん。もう一人のヴァイオリンは、周防亮介さんから山根一仁さんに、チェロは上村文乃さんから遠藤真理さん、そしてピアノは加藤昌則さんから髙木竜馬さんに代わります。
今回、「ムジークフェストなら2025」の主催公演の一つに選ばれました。このメンバーでチケットが2,500円と格安なので、完売は必至ですね。
大和高田は大阪からも京都からも近いです。今回は「ムジークフェストなら」のフライヤーで大きく取り上げて貰っているので、大和高田さざんかホールの存在が広く知られると良いですね。前半にこのメンバーでブラームス「ピアノ五重奏曲」を全曲演奏し、後半は僕も加わってバラエティに富んだプログラムでお楽しみいただきます。
後半のプログラムを紹介してください。
僕がこのコンサートのホストとして、喜歌劇「こうもり」より「お客を招くのが好き」を歌う所から始まります。マスカーニ「アヴェ・マリア」、モリコーネ「ネッラ・ファンタジア」、村松崇継「生命の奇跡」などバラエティに富んだ名曲の数々を歌います。「みなとみらいクインテット」と僕の歌が一緒になるとどんな響きが生まれるか、どうぞ会場でお楽しみください。
藤木さんは2012年の「日本音楽コンクール」で、初めてカウンターテナーとして優勝されました。それ以降のご活躍もあって、カウンターテナーの概念が大きく変わりました。普段の会話と違う声で歌うのは大変だと思うのですが。
身体を楽器とする僕たち声楽家は、アスリートと同じです。音楽性や経験値は時を重ねることで豊かになりますが、筋肉は確実に衰えます。特にカウンターテナーの寿命は長くないと言われています。僕は自分で衰えを感じ、今まで出来ていたことが出来なくなってまで歌いたいとは思っていません。今はまだ、日々向上している実感があるだけに、ピークを迎えるまでにやれることは全部やりたいと思っています。
最後に「MEG関西版」読者の皆さまにメッセージをお願いします。
改めまして「ムジークフェストなら2025」にお招きいただき感謝申し上げます。日本を代表する豪華メンバーによる「藤木大地&みなとみらいクインテット」で、聴き応え十分なプログラムをご用意しました。しかも破格のお値段でお聴きいただけます。どうか大和高田さざんかホールにお越しください。皆さまのご来場をお待ちしています。
◎Interview&Text/磯島浩彰
◎Photo/安田慎一
◎Hairstyling/RINA YAMAHATA
5/31 SATURDA
ムジークフェストなら2025
藤木大地&みなとみらいクインテット
■会場/大和高田さざんかホール 大ホール
■開演/14:00
■料金(税込)/一般¥2,500
■お問合せ/さざんかホール TEL.0745-53-8200
※未就学児入場不可
多彩なジャンルで活躍が著しい森崎ウィンがミュージカル・コメディに挑む!!

「森崎ウィン」スペシャルインタビュー取材日:2025.02.01
舞台、音楽、映像、テレビ…、多彩な分野で活躍する森崎ウィンが
2021年に日本でも初演されたミュージカル「ウェイトレス」に初参加。
ヒロインと恋に落ちる産婦人科の医師ポマター役を演じる。
高畑充希ふんするジェナはダイナーの花形ウェイトレスだが
家庭では夫のモラルハラスメントに悩まされている。
やがてジェナは、自分が望んでいなかった妊娠に気づき…。
女性を取り巻く問題を、時に笑い飛ばし、時に切実に問いかけ、
大反響を呼んだ舞台について、一人の人間として森崎が語る。

初演をご覧になったそうですが、感想はいかがでしたか。
非常にポップで楽曲もキャッチー。舞台の彩りが鮮やかで美しく、まさにミュージカルでやるべき作品だと思いました。そんなハッピーな感覚でいたら、どんどん展開が重くなっていって…。結構ドーンときたんですけど、ちゃんと音楽ですくい上げてくれるんですよね。あらためて音楽の力を実感し、それに救われる自分もいたので、最後は「イェイ!」という気持ちになれました。充希ちゃんとは10年ほど前に映画でご一緒しているんですが、ミュージカルデビューをしているのを知っていても実際に見たことがなくて。ジェナというキャラクターと充希ちゃんが本当にマッチしていて、歌声も素晴らし過ぎると思ったのをすごく覚えています。それで高揚してしまって…。一人で行ったので共有する人もいなくて、とりあえず外の空気を吸うため幕間に劇場を一回出て頭を冷やしました(笑)。
ポマター医師はどんな人物ですか。
彼の妻はできた人で、彼は家では立場がないというか、否定されているわけじゃないけど勝手に被害妄想が大きくなっているというか。妻も同業だからこそ生まれてくる感情…、うまく言葉にできないんですけど、その気持ちはすごくわかるなと。彼は今回の不倫で何回目なのか考えると、いろんな役作りができると思ったりもします。何百回も出産に立ち会い、たくさんの女性を見てきただろうに、憧れていたウェイトレスの衣装などいろんな要因が合わさって、きっと一目惚れでジェナに心が動いてしまった。彼は「必要とされている」ことに敏感で、根底に「守ってあげたい」という意識がある。女性のほうが下とか男性が優位という意味ではなく、自分が必要とされる面があるとうれしいんですよ。パートナーとの関係性が薄くなっていって、自分がいてもいなくても相手は生きていくんだろうと感じた時、とてつもなく寂しくなると思うんです。彼がジェナに走ってしまった理由の一つでしょうね。

女性を巡る社会課題を描いた作品でもありますね。
「ウェイトレス」の主要な3人の女性は本当に輝いています。彼女たちは問題に立ち向かうというより、どう生きていくかを体現しているので、そこに社会的なメッセージが詰まっていて感銘を受けました。夫アールのジェナへの発言などは本当に酷い。そういうことで悩んでいる人には勇気をもらえる作品だと思います。ただ、僕は女性の立場を経験したことがないので、薄っぺらいことは言えないという本音もあります。この劇中でジェナはある生き方を選びますが、その先にはたぶん壮絶なドラマが待ち受けている。でも、そこに彼女の強さを見る。自分の人生の大切さを伝えることは男女関係なくて、辛くても自分で選択する意志が生き抜く強さにつながるんじゃないかと。時代も変わっていく中、選択する強さが本当の幸せをつかむには必要なのかもしれない。この作品から得た教訓です。
再演から参加されますが、LiLiCoさんはじめ親しい方がいると心強い?
それはたぶん最初のうちだけなんですよ。役や作品と向き合ううち、どこかで苦しい瞬間が絶対くる。でも、それを越えた先が気持ちいいんです。だから早く苦しみたいし、早く解き放たれて面白い境地にいきたい。映像、舞台、音楽のレコーディングどれも、しんどくなかった経験は一度もありません。何かを作るにはエネルギーがいるし、人様の人生を演じるのも結構つらいことだと思うけど、それが楽しみでもあり恐怖でもある。からいけどもう一口食べちゃう、みたいな感じですね(笑)。
映画音楽を集めたアルバム「Win’sFilmSongs」をリリースされたばかりですが、オリジナル楽曲と背景のある楽曲で歌い方に変化はありますか。
その答えを探してる途中で、わかりません(苦笑)。例えば「ウエイトレス」で言えば前後にセリフがある。歌はセリフの延長線というのがベースとして、もちろん音楽にはピッチもあるので歌として成立させなきゃいけないけど、セリフでもある。そのリンクをもう少し密にしなければという意識はあります。ただ、音楽としてのみ歌う時でも、その音楽の物語を伝えるために演技、お芝居は乗っかっているはずなんですよ。最近出た歌番組での話ですが、中森明菜さんの映像を見て「あんなに涙ためながら歌います?」と思って。あれは完全に芝居じゃないですか。前後にセリフがなくても一つの世界観を見せられて、すごいと感じました。僕がオリジナル曲、例えば誰かとの別れの曲を歌うとします。でもハッピーな場でそのバラードを歌ってくださいと言われることもある。となると、一つ芝居が乗っかります。俳優でもある僕は、あまり違いがないのかもしれませんね。
映像の監督まで経験していらっしゃいますが、今後、挑戦してみたい分野はありますか。
人生一回じゃ足りないと思うほどやりたいことが多過ぎて(笑)。でもそういう時って危ないと身近な人に言われたことがあります。いっぱいやり過ぎて、どれも身につかず中途半端に終わっていくという…。何かの記事で読んだんですけど「やらないことを決める」というのは良くないですか。やりたいことって死ぬほど出てくるんですけど、「これをやらない」と決めることが今後は必要かなと。時間は有限だと理解して行動することが、もっと大人になる、ワンステップ上がるために大事なのかもしれないと思っています。
◎Interview&Text/小島祐未子
◎Photo/安田慎一
5/5 MONDAY・HOLIDAY 〜8 THURSDAY
ミュージカル「ウェイトレス」
■会場/Niterra日本特殊陶業市民会館フォレストホール
■開演/5月5日(月・祝)17:00
5月6日(火・振)12:00、17:00
5月7日(水)・8日(木)12:00
■料金(税込)/全席指定 S¥16,000 A¥11,000 B¥6,000
■お問合せ/サンデーフォークプロモーション TEL.052-320-9100(12:00~18:00)
京の春を彩る「三月花形歌舞伎」。5年目を迎える意気込みを語ってもらった。

「中村壱太郎」スペシャルインタビュー取材日:2025.01.23
京都の春の風物詩となった南座の「三月花形歌舞伎」が
今年も壱太郎とともにやって来る。
今や女方の歌舞伎俳優として確固たる存在感を放つ中村壱太郎。
2021年、コロナ禍を吹き飛ばす勢いで
平成生まれの俳優が中心となり始まった「三月花形歌舞伎」も今回で5年目を迎える。
自身が、1年で1番大切にしていると言っても過言ではない
本公演への意気込みを聞いた。
そもそも歌舞伎における花形〜という言葉には、どういった意味があるのですか?
歌舞伎の世界では花形という言葉は昔から使われて来ました。元は若手役者を指す言葉で、父(四代目中村鴈治郎)や叔父(三代目中村扇雀)はもちろん多くの先輩方も長く花形公演と銘打ってやっておられました。その魂を受け継いで、コロナ禍に負けないぞ!という意気込みで、平成生まれの役者を中心とした興行が5年前に新たに始まりました。
今回は中村米吉さん、中村福之助さん、中村虎之介さん、との共演となりますが、どんな雰囲気の公演になりそうですか?
2025年は松竹創業130周年という特別な年でもあります。そのような特別な年に刺激を受けて、京都でも「三月花形歌舞伎」があることでメンバーみんな気合いが入っています。米吉くんとは、お互いに女方ということもあり、それぞれの違った魅力をお見せできると思っています。福之助くんは、昨年の『スーパー歌舞伎ヤマトタケル」で共演させていただきました。舞台では独特のニヒルな面が際立つ希有な役者さんだと思います。虎之介は従兄弟ですが、実はこれまでガッツリ共演する機会があまりなかったのです。それもあって、虎之介との『伊勢音頭恋寝刃』(桜プログラム)での共演をとても楽しみにしています。
さて、今公演での見所のひとつはなんといっても『於染久松色讀販(おそめひさまつうきなのよみうり)』での壱太郎さんによる「お染の五役」ですが、これを演じようと思われたきっかけは?
昨年の『ヤマトタケル』、立川立飛歌舞伎での『玉藻前立飛錦栄(たまものまえたちひのにしきえ)』での九変化、そして南座の顔見世興行では『大津絵道成寺』での五役と、早替り(同じ俳優が衣裳、鬘、役柄を瞬時に変えて演じ分ける)の続いた一年で、だったらこの早替りを極めてみたいという思いになりました。この演目は舞踊となっていまして、今年の新春に大阪松竹座で片岡仁左衛門のおじさま、坂東玉三郎のおじさまが演じられたお芝居の続編の部分を舞踊というスタイルで新たに藤間勘十郎ご宗家と創り上げる演目です。
三月花形歌舞伎の定番である「松」と「桜」という2プログラム制となっています。この『於染久松色讀販』はどちらにもありますね。
「松プログラム」では、松竹座の新春公演で、仁左衛門のおじさま、玉三郎のおじさま達が演じておられた鬼門の喜兵衛と土手のお六の二役を、私がひとりで演じ分けるという早替りに挑戦をします。かつて二代目市川猿翁のおじさまがこのスタイルの五役で演じられていたというお話を聞いて、やってみたいと思いました。「桜プログラム」では、祖父(四代目坂田藤十郎)の演出に沿った形となります。雷のお役が追加されたり、猿廻しや船頭の役も変わりますから、どちらも雰囲気の異なる演出になると思います。お染、お光、久松の微妙な三角関係の気持ちの演じ分け、そして雷はコミカルに、土手のお六に関しては、こういったお役をすることが少ないですし、勝気でかっこいい女性の部分をしっかりと出せればと思っています。鬼門の喜兵衛は新境地です!
三月花形歌舞伎の楽しみは、演目もさることながら、芝居以外の企画が毎年評判ですが、今回はどんな事を計画されていますか?
定番となった手引き口上では4人それぞれの飾らない姿をお見せしようと思います。また今年もガチャガチャ感覚で楽しいグッズプランを考えています。ハズレなしで、全て揃えたくなる!期待していてください(笑)。
少し壱太郎さんのプライベートも教えてください。オフの時はどう過ごされていますか?
いわゆるオフはつくらない主義です。休みの日でも何かしら活動しています。強いて趣味といえば、美術館に行くことですね。海外公演に行っても美術館には必ず行くようにしています。今は、ラトビア出身のマーク・ロスコが一番お気に入りの作家です。歌舞伎も美術作品と同じで、私たちの演技から、お客様が何を受け(感じ)取ってもらえるか?が一番大事な部分ですから。
◎Interview&Text/石原卓
◎Photo/中野建太
3/2SUNDAY~23SUNDAY
「三月花形歌舞伎」
■会場/南座
■開演/11:00、15:30
■料金(税込)/全席指定 一等席¥12,000 二等席¥7,000
三等席¥4,000 特別席¥13,000
■お問合せ/南座 TEL.075-561-1155
ミュージカル初主演!韓国発の人気ドラマ「ミセン」の世界を深く描き出す。

「前田公輝」スペシャルインタビュー取材日:2024.11.07
韓国で社会現象にまでなった大人気ドラマ「ミセン」が、
世界で初めてミュージカル化。2月には名古屋でも上演されます。
「ミセン(未生)」とは、「死んでもいないし、
生きてもいない石」を意味する、韓国特有の囲碁用語。
プロ棋士になる夢が絶たれ商社のインターンとして
働くことになる主人公チャン・グレは、
囲碁で培った洞察力を武器に、組織で生き抜く術を身につけていきます。
現代社会を生きる全ての人への賛歌ともいえる作品で主演を務めるのは、前田公輝。
作品世界をより深く描き出すため、ミュージカルならではの表現を追求します。
「ミセン」の世界をミュージカルで描くことの良さは、どんなところにあると思われますか?
「ミセン」という作品は、積み重ねに魅力があると思うんです。コミックは10巻(日本語版は9巻)、ドラマは20話ありますから。僕自身、コミックもドラマも1話ずつ継続して観るという経験をしたので、その積み重ねによって感動が増していったような気がしています。そんな世界を2時間半に凝縮して生で届けるということに、最初はちょっと不安もあったんです。でも脚本を読んで作品の世界にしっかり浸れたので、安心しました。「ミセン」の世界を描くのに、歌というエンタメが効果を発揮すると思うんですよ。楽曲が仕上がっていない段階でミュージカルナンバーも台詞として読みましたが、音楽に乗せて台詞を繰り返しても違和感がないですし。「ミセン」とミュージカルの相性はいいと思います。
脚本を最初に読んだ段階で、どんな台詞が印象に残りましたか?
僕が演じるチャン・グレのソロ部分だと、割と後ろ向きな言葉も出てくるんです。その都度、自分の弱い心にムチを打って前に進んでいくような構成になっていて、そこで使われる言葉のセンスは好きですね。自分の生き方にも加えたいと思えるような台詞がありますし。韓国語で2時間半にまとめた脚本を日本語に翻訳する際に、とても時間がかかったと聞いています。それは恐らく、ちょっとしたニュアンスの違いで「ミセン」の世界が変わらないようにしたり、一度しか言わない台詞にすごく引き寄せる力があって、それを取りこぼさないようにする作業があったんだろうなと。そういう細かいところを僕は本を読んで文字で理解していますけど、観客の皆さんは字幕も歌詞も見ずにご覧になるので、ちゃんと気持ちを乗せて伝えられるといいなと思っています。
台詞の意味や細かいニュアンスを音楽に乗せて伝えるのは、難易度が高そうですね。
そうなんですよ、ストレートプレイよりも制限がありますから。今回、特に難しいのは、チャン・グレのキャラクターと楽曲のギャップを埋める作業です。チャン・グレは、表面上は割とクールな人物なのですが、想像以上のエネルギーで表現するナンバーもあって。そんな部分に対する自分の中の違和感を早く払拭したいと思っているところです。
ミュージカル、ストレートプレイ共に、これまで多くの舞台作品に出演なさっています。体力づくりや健康管理など、気を配られていることはありますか?
僕の場合、より体力を使うのはミュージカルです。だから、稽古が始まる1週間前には有酸素運動を取り入れたトレーニングを始めます。そうしないと、頭が追いつかないというか…。チャン・グレも、夜のランニングを欠かさないんですよ。劇中で囲碁の師匠から、まず体力をつけないと精神が疲労してすべてが悪い方向に進んでしまう、という教訓をもらって。僕もそれを実践しています。今日これから東京に帰って、そのままジムに行くのもありだな、とか。
ジャンルを問わず、演じる上で一貫して大事にしているのは、どんなことですか?
表現に関しては、やっぱり生きているかどうかというところですね。僕が演じる人物が、日常的に存在しているように思ってもらえるかどうか…そこだけです。むしろ、そこ以外は気にしていないかもしれません。舞台でも、自分自身がわかりきった芝居をしたくないという思いが強くあって。自分にサプライズがないのに、お客さんにサプライズがあるんだろうか、と思っちゃうんですよ。


表現が「生きている」とは、どんなイメージでしょうか?
僕は、その役とのバランスだと思っています。例えば、日常ではなかなか口にしないようなすごくドラマチックな台詞を言うときに、芝居の上での気持ちは全部削がない方がいい場合もあると思うんです。ここはカッコつけた方がいいとか、もう少し感情が乗ってるように見せた方がいいとか、そういうことはTPOによってあると思います。決める台詞を言うときに、ドラマチックな息づかいをするとか…。でも、例えば日常的にちょっといいことを言うときに語尾に息が混じるかというと、そうじゃないですよね。普通に居酒屋やカフェでみんなが話しているような息づかいでドラマチックな台詞が言えたときが、芝居というフェーズを越えられる瞬間なのかなと思っています。本当に細かいことなんですけどね。生きていると、吸って吐いて、無意識に呼吸という行為をしていますけど、人の言葉を借りるとできなくなることがあるんですよ。例えば長台詞だったら、ブレスのポイントをちゃんと考えておく方がスムーズに呼吸できたりします。基本的には明瞭な状態で台詞を言って、舞台の場合は見え方のバランスを取る感じですね。そこはパフォーマンスに近いと思います。だから、生きている表現というのは、いろんな細かいことの複合的な積み重ねの結果かもしれません。
日常で経験したことも演技に反映されますか?
そうです。だから僕、本当はあんまり自分の話をしたくないんです。人の話を聞いた方が、もしその人みたいな役が来たときに使えるじゃないですか。だから、自分が喋ったらもったいないと思って。自分の感覚は一番わかってるから、そこに違うものを足したら新しい役が生まれそうな予感がするし。今、ラジオのトーク番組を持たせていただいていますが、ゲストでいらっしゃるさまざまな分野の専門家とお話しするのは、とても有意義な時間です。皆さん、自分の専門分野のことを話し始めると、キラキラするんですよね。それが俳優のスイッチとも似ていて、すごく影響を受けています。
◎Interview/福村明弘
◎Text/稲葉敦子
◎Photo/来間孝司
2/1 SUNDAY・2 SUNDAY
ミュージカル『ミセン』
■会場/愛知県芸術劇場大ホール
■開演/2月1日(土)14:00
■料金(税込)/全席指定 S¥13,500 A¥11,000
■お問合せ/中京テレビクリエイション
TEL.052-588-4477(平日11:00〜17:00)
初の主演ミュージカルは韓国ドラマの話題作!舞台ヘの想いを語ってもらった

「前田公輝」スペシャルインタビュー取材日:2024.10.01
韓国のウェブコミックで累計300万部の大ヒット、
ドラマは韓国ドラマ賞を総なめにし、ミセンシンドロームなる社会現象を誘発。
日本でも2016年にドラマ化された『未生(ミセン)』が、
前田公輝主演で初のミュージカル化、大阪・新歌舞伎座で世界初演される。
商社を舞台に、働く意味や成長と葛藤などを描いたヒューマンドラマだ。
ミュージカル初主演ですね。ご出演が決まった時の心境を教えてください。
まさか自分の名前が「主演」の位置に置いてもらえるなんてと思いながらも、感謝の気持ちでいっぱいでした。以前、ミュージカルに出演した時も、思ってもいないような嬉しい言葉をいただく機会が本当に多くて、そういったお声もこの作品につなげてくれたのかなと思っています。
嬉しい言葉というのは?
初めてのミュージカル作品はミュージカル『ロミオ&ジュリエット』(2021年)だったのですが、SNSなどで「本当に初ミュージカル?」というようなことを書かれている方がいて嬉しかったのと、キャストの方々も「回を重ねるごとに歌がどんどん良くなっている」と言ってくださって。2本目の『スリル・ミー』(2023年)は木村達成さんとの二人芝居で、「10年ぐらいやっている作品にもかかわらず、真新しい2人だった」と言ってもらえたり…。自分が思う以上の反響をいただきました。
『ミセン』の原作マンガや韓国版ドラマ、日本版ドラマをご覧になって、どんな印象でしたか?
僕も社会人経験がないのですが、それでも共感しましたし、このミュージカルでも僕の上司となるオ課長の短いセリフに込められたメッセージがグッと刺さりました。なので、会社にお勤めの方は僕以上に共感されることが多いのだろうなと思います。商社が舞台という未経験の世界を体験する楽しさもありますが、観客の皆様に共感してもらえるものを作ることはチャレンジでもあります。
前田さん演じるチャン・グレはプロの囲碁棋士の夢が絶たれて、商社のインターンで働くことになるという役柄ですが、前田さんは囲碁のご経験はありますか?
経験はないのですが、1つ前の作品が囲碁をやっている役でした。それで囲碁の指し方も知っていたので、ビジュアル撮影で囲碁を指すポーズをしてみたら、メインビジュアルに使ってもらえて。それも嬉しかったです。
チャン・グレという役柄については、どのようにお考えですか?
チャン・グレは囲碁でいろんな方と戦っているので、何かあっても表面上は動じません。表情がそんなに豊かじゃないように見えるのは、囲碁棋士という勝負師の一面も持っているから。チャン・グレは表面的には燃えていないように見えるけど、心の中で常に闘志を燃やしていて、トラブルに直面しても常に冷静なところがすごく素敵だなと思います。僕、今年の4月に33歳の目標を聞かれたのですが、その時に「果敢に冷静に」と言ったんです。偶然ですが、チャン・グレに近いですよね。「果敢に冷静に」という部分も大事にできたらいいなと思います。
この作品は挫折も描かれています。前田さんに挫折の経験があれば、それをどう乗り越えたのかということも含めて教えてください。
の初めての挫折は7歳の時でした。2回目のオーディションだったのですが、初めてのオーディションで受かったものだから、「僕のためにみんな集まってくれてありがとう」みたいな感じで天狗になっちゃって…(笑)。で、一次審査で落とされて。「もう、この世の終わりだ〜!」というぐらい挫折を感じました。でも、その時に「負けることがある」ということを知って、それでもどんどんチャレンジしていきたいと思って、今につなげてきました。
考え方が後ろ向きになった時、前田さんはどう対処されますか?
僕は、何かあってもその1週間後までには無理やりでも気持ちを前向きにさせたい人間ではあるので、参考になるかわかりませんが、自分のキャパシティが狭いがゆえにいっぱいいっぱいになった時なんかは、瞑想して、湯舟に浸かって、有酸素運動をします。この3つが基本的な僕の乗り越え方です。
この取材の時点では歌稽古が始まったばかりですが、本作ではどういった楽曲を歌われますか?
先程もお話したようにチャン・グレはあまり気持ちを顔に出しません。なので、そんな彼の心の声を歌に乗せています。楽曲も、歌詞や曲調を繰り返す部分が多いので、劇場を出るころには鼻歌で歌えるくらいには覚えてもらえるのではないかと思います。また、1幕と2幕ではチャン・グレの環境や状況ががらっと変わるのですが、1幕の音楽を2幕でもちょっと使っていたりして、そういう融合も面白いですね。
世界初演の作品が大阪から幕を開けるのも嬉しいニュースです。
ミュージカル『ミセン』は商社のオフィスで起こる出来事を描いていますが、そこにミュージカルというエンタメが乗ることによって、さらなる広がりを見せています。「ミセン」とは韓国の囲碁用語で、碁盤上で「死に石」にも「完全に生かされた石=ワンセン(完生)」にも転ぶ石ということを意味しています。登場人物はまさにミセンなキャラクターばかりなので、皆さんが劇場に来てくださることでワンセンになると思っています。皆さんと一緒にミュージカル『ミセン』を育めるよう頑張ります!
◎Interview&Text/岩本和子
◎Photo/来間孝司
1/10FRIDAY〜14TUESDAY
新作ミュージカル『ミセン』
■会場/新歌舞伎座
■開演/1月10日(金)・14日(火)13:00
1月11日(土)17:30
1月12日(日)・13日(月・祝)12:00、17:30
■料金(税込)/全席指定
S(1・2階中央)¥14,000 A(2階左右)¥13,000
B(3階)¥9,000 特別席¥15,000
■お問合せ/新歌舞伎座テレホン予約センター TEL.06-7730-2222(10:00~16:00)
昔も今も変わらぬ、人の情けを講談で伝える。

「一龍斎貞鏡」スペシャルインタビュー取材日:2024.07.08
今年で17回目を迎える「大名古屋らくご祭2024」。
岡谷鉄機名古屋公会堂 4階ホールで開催される「若手落語会」に、
今年も講談界から艶やかな華が登場する。
お祖父さまの代から続く講談一家に育ち、お父上である八代目一龍斎貞山先生(1947-2021)に入門してこの道に…。
はい。でも子どもの頃、父の稽古場は立ち入り禁止でしたし、客席に家族の顔があると気が散るから会にも来るなと言われていましたので、講談に触れる機会もなく、まったく興味もありませんでした。それが二十歳の夏に父の高座を初めてこっそり聴きに行き、「父の高座姿、佇まい、言葉、全てが美しい」と衝撃を受け、私の人生が決まった。
前座、二ツ目修行を経て昨年、真打に。現在、東京の講談界でも多くの女性講釈師が活躍されていますが、4人のお子さんの母親という点でも注目を集めています。
夫が6つ歳下というのも図らずも話題を呼びましたが(笑)。ただ、高座(舞台)では赤穂浪士の大石内蔵助になったり八百屋お七になったり色々な人物の演じ分けをするので、高座にはなるべく“家庭”を持ち込まないように、マクラでも余計なことは言わないようにしていました。やはり「この人、4人の母ちゃんなんだ…」との印象が強くなりすぎると、お客様が講談の世界に浸っていただく妨げになってしまう気がして。
子育てとの両立は、働く女性にとっても励みとなるのではないでしょうか。
講談という夢の世界をお客様に全力で楽しんでいただきたいので、高座では飽くまでも涼しい顔をしていますが、実際は毎日がとんでもなく目まぐるしく、子供たちのお弁当は作りますが自分の食事はままならず、駅のホームでバナナを口に詰め込んだり、タクシーの中で着替えて会場まで駆けつけたり、一秒も余裕なんてありません。でも高座に上がったらお客様にあくまでも夢を見ていただきたい。その一心です。

歴史上の人物や過去の出来事を、まるでその場で見てきたかのように語るのが面白いです。特に軍記物の堂々たる場面を、あの独特の高調子で流れるように読み聞かせる「修羅場」が見事でうっとり聴き惚れてしまいます。
いろんな登場人物になりきって声色を変えて演じ分けるのではなく、その人の了見(考えや気持ち)になって語れと教えられます。地の文(会話ではない説明文)にも独特の調子と音階があって、地の文の音階が「ミファソ、ミファソ」や「ドミファソファミファソファミファソ」に近い一門があったり、我々一龍斎の一門は「ドドシラソファミレド」の音階で大きな調子だったり、講談は音楽のようでとても面白い。そして聴いていて気持ちがいい。それにはとにかく日々の稽古が大切。何回も書いて読んで口と耳を使って、身体全体で覚えるしかないのです。

ずばり、一龍斎貞鏡の目指す講談とは?
世間一般の講談に対するイメージは、何だか難しそうとか、堅苦しい、古臭い、歴史に詳しくないと楽しめないんじゃないかとか、まだまだネガティヴなものが多く、かく言う私もずっとそう思って聴かず嫌いでしたが、実際にちゃんと聴いてみると、とても深くて面白い。ですのでまずは講談に興味を持っていただけるよう、お届けする私自身がもっと皆さんにとって身近で魅力的な存在になること。講談師にもこんなのがいるよって、講談の品位を下げずにお一人でも多くの方に知っていただけたら嬉しいです。講談で申し上げる、家来が主君を慕う気持ちや、親が子どもを想う心、人の情けというものは、昔も今も普遍ですので、令和の感覚を吹き込みながら、今現在を生きる人にもわかりやすくお伝えしていきたいです。
今回の「大名古屋らくご祭2024」のようなイベントは絶好の機会ですね。
この凄いメンバーに加えていただけ、とても光栄です!講談って、実は人が人を褒める芸能なんです。こういう失敗もしたけれど、この人はこういう尊い志があったからこそ、後に一国一城の主になれた、出世できたのだ…とか、講談師が案内役となって誰かを褒めることで盛り上げる。昨今、自分が何処の何者なのかを名乗らず、他人の悪口や心ない言葉をSNSで投稿するのが問題視されていますが、我々講談師は人をディスらない。講談はもともと武士が始めたものなので、そこは武士の心意気だと誇りに思っています。ぜひ沢山の方に足を運んでいただけますように!〈※1.正式なタイトルは「てんとてんを、むすぶせん。からなる、立体。そのなかに、つまっている、いくつもの。ことなった、世界。および、ひかりについて。〉
◎Interview&Text/東端哲也
◎Photo/安田慎一
12/19 THURSDAY〜22 SUNDAY
「大名古屋らくご祭2024」
■会場/岡谷鋼機名古屋公会堂 大ホール
■開演/12月19日(木)18:30 12月20日(金)14:00、18:30
12月21日(土)・22日(日)12:00、17:00
[4階ホール土曜の会]12月21日(土)13:30
[4階ホール日曜の会]12月22日(日)13:30
■料金(税込)/全席指定
[12月19日(木)・21日(土)・22日(日)公演]¥6,000
[12月20日(金)公演]¥5,000
[4階ホール土曜の会、日曜の会]¥3,500
■お問合せ/東海テレビ放送事業部 TEL.052-954-1107(平日10:00〜17:00)
神戸の港を舞台に人々の営みを描く物語。舞台ヘの想いを語ってもらった!

「南野陽子」スペシャルインタビュー取材日:2024.10.01
劇作家・演出家の土田英生の書き下ろし作『神戸の湊、千年の交々』。
港神戸の始まりとなった大輪田泊(おおわだのとまり)。
この地で千年の間に起こった出来事をオムニバス形式で描いていく。
物語の軸となる夫婦を演じるのは南野陽子と大谷亮介。
兵庫県出身の南野は、思い出の多い神戸に思いを馳せる。
土田英生さんの作品は、2022年に上演された朗読劇『アネト』以来ですね。
土田さんとはドラマ「日曜劇場『半沢直樹』」(2020年/TBS)での共演がご縁で、『アネト』も本当にいいお話でした。その時、「今度はお芝居でやりたい」とおっしゃってくださって、この『神戸の湊、千年の交々』を書いてくださいました。台本を読むうちに、ページをめくるスピードがだんだん速くなっていくような、“土田マジック”がすごく面白いのですが、それだけに留まらず、見終わって数日後に作品について考える日が続くのではないかなと思います。
“土田マジック”とは?
一言で言うと“夕焼け”です。「空が青いでしょ!」と言っていたら、いつのまにかオレンジ色になっているみたいな感じです。土田さんは「感謝の恩返しスペシャル企画 朗読劇『半沢直樹』」(2020年/新国立劇場)の脚本も書かれて、序盤は「このままふざけて進むのかな」と思うような展開なのですが、急に壁が崩れて視界が広がるというか、「こういう深い意味があったんだ」とか、「こんないいお話なんだ!」とハッとするような感じで。面白いんだけど、最後はちゃんといいお話に着地されるところですね。
夫役の大谷亮介さんとは初共演だそうですね。
そうなんです。すごく楽しみです。絶対的な安心感がありますよね。でも大谷さんはやりにくいと思う、こういうタイプの人は。
南野さんとですか!?それはなぜでしょう。
私はすごく緊張しいなのですが、セリフを忘れた時は振り絞ってでも出すというタイプではなくて。どちらかと言うと「無理!」と投げちゃう。そうやって私が真顔で立っているから、相手役の方があたふたされるんです。だから、意外と大谷さんもあたふたされるかもしれない(笑)。
土田さんの作品は、人と人がちゃんと向き合っていて、登場人物がじっくりと対話を重ねながら関係性を構築していきます。南野さんが人間関係を築く上で大事にしていることは何かありますか?
今は自分のままでいることだなと思います。合わなければ合わないでいいと思う。昔は無理して合わせたり、相手の顔色をうかがったり、「自分はこうでなくてはいけない」と思っていたのですが、人と向き合うときも、とにかく自分のままでいること。その分、「今日はうまくお話ができなかった」と思うこともありますし、誤解されたかもしれないと落ち込んで、家に帰ってテレビを見ながら急にそのことを思い出して「あー!」と大きい声を上げてしまうこともあります。でも、私はこれから先もそんな感じで行くのだろうなと思います。お芝居もそうで、そういう後悔があるから、次こそはと思いながら続けている気がします。

お芝居の魅力は何ですか?
人の感情に深く入っていけることです。お芝居はお稽古で何度もセリフを繰り返すので、脚本を初めて読んだ時から感情や気づきなどがどんどん変わっていきます。自分のこともそこまで考えていないのに、なんでこんなに人のことを考えるんだろうと思うくらい深く入っていけることが、お芝居の楽しさかなと思います。
『神戸の湊、千年の交々』は千年という時間を行き来する物語です。「千年」と聞いて思い出すことは何かありますか?
『唐招提寺1200年の謎天平を駆けぬけた男と女たち』(2009年/TBS)という時代劇で唐招提寺を作った人を演じたのですが、歴史上の人物を演じたなかでは、それが一番古いかな。あと、昔、『源氏物語』を自分で訳したいと思った時期がありました。結果を先に言えば全然できなかったのですが、まずいろんな人の現代語訳を読もうと思って、10冊は読みました。
なぜ『源氏物語』を訳したいと?
最初は漫画の『源氏物語あさきゆめみし』(大和和紀)を読んで面白いなと思って。あとは、昔、住んでいた家が作家の田辺聖子さんのご自宅の数軒先だったんです。田辺さんの書かれた『新源氏物語』もすごく分かりやすくて、面白くて。同じ『源氏物語』でも作家さんによって違うから、「私だったら、どうなるかな?」と思ってやってみましたが、まったくお手上げでした(笑)。
『神戸の湊、千年の交々』に出演されるにあたって、現時点(2024年10月)で楽しみされていることはありますか?
お稽古が兵庫であるので、私はそれだけで「やったー!」という気持ちで、ご褒美のような感じでいます。もう兵庫にいるというだけでうれしいです。私は東京でお仕事をしている時も、頭の中は関西弁でしゃべっているんですね。でも言葉に出すとイントネーションが東京に変わります。関西にいると、頭の中のイントネーションがそのまま出ちゃうから、より本音でいられる気がします。何も考えなくても10代の頃の私に戻れる感覚でもあります。
最後に神戸の思い出を教えてください。
父とのデートが神戸でした。その時は父と私と2人で、ドライブして、ディズニー映画を観て、パフェを食べさせてもらったりして。私はお父さんっ子だったので、「今日は私がお父さんを独り占め」みたいな感じでうれしかったです。
◎Interview&Text/岩本和子
◎Photo/安田慎一
12/7 SATURDAY
兵庫県立芸術文化センタープロデュース
「神戸の湊、千年の交々」
■会場/兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
■開演/14:00
■料金(税込)/一般¥4,500 U-25¥2,000
■お問合せ/兵庫県立芸術文化センターチケットオフィス TEL.0798-68-0255
マームとジプシー2年ぶりの新作「equal」の全国ツアー後半がスタート!

「藤田貴大」スペシャルインタビュー取材日:2024.07.08
藤田貴大率いるマームとジプシーが2年ぶりの新作
「equal」の全国ツアー後半を開始する。
今日マチ子の同名漫画をもとにした代表作「cocoon」で
沖縄戦を長く取材している藤田だが
「equal」では自身の故郷である北海道伊達市を1年以上かけてリサーチ。
幾多の史実や証言から、あらためて土地の記憶と出会い、創作へと駆り立てられた。
同じセリフやシーンが何度も繰り返される「リフレイン」の手法を駆使しながら
世界や歴史という大きな概念と人間一人ひとりの存在を誠実に対峙させてきた藤田は
今、何を考え、演劇を生み出しているのか。率直な想いを語ってくれた。
創作の経緯をお聞かせください。
2022年の「cocoon」ツアーは北海道も公演地だったので帰る機会があったんですよ。北海道は戦争の傷跡が少ないと聞いてきたんですが、調べてみると北海道にも戦争の時代はあった。戦争を調べることは数字と向き合うことでもあり、沖縄戦では何万人も亡くなっています。その上で「cocoon」では何万人という括りではなく一人ひとりの顔を描きました。そういう公演が終わって伊達市界隈の戦争を調べ始めたんです。隣町の室蘭は製鉄所があったので艦砲射撃が2日間行われて八百何十人が死んだとか、伊達も高校の最寄り駅が空襲にあって二十数人死んだとか。僕らの通学路でも誰かが死んだかもしれないという歴史を知りました。最初は直感的に始めたけど、2回目はもうカメラを持って伊達や室蘭の風景を押さえていました。図書館に通ったり、かつて製鉄所に勤めていた方や伊達に住むいろんな職業の方に話を聞いたり、1年半ぐらい続けたのかな。20代も伊達を描いている自覚はあったけど、当時は子どもの頃の曖昧な記憶をもとにフィクションを立ち上げていたので、「equal」ではより史実に近いところで向き合えたらと考えました。

取材を経て作品の核はどこに?
リサーチしていた時期はウクライナやパレスチナで起こっていることもあって世界中の戦争という響きが耳に入り、戦争に伴って起こっていること、例えば子どもが殺されるとか、女性たちはどういう扱いを受けているかとかニュースで知ることになります。そこでパレスチナやガザ地区に関する本を読むと、ひと段階遅れて何かを知るじゃないですか。それは海外だからかと思っていたけど、もしかしたら身近な、ここ伊達でも起こっていたんじゃないかと……。「=」で結ばれてしまってはいけないことが世界中どこにでもあると思い始めたら、予感が的中したというか。室蘭にも遊郭はあったとか、なんとなく聞いていたことが具体的に調べると的中していって。そこで史実を堅苦しく言葉にするだけじゃなく、リサーチした時の自分の中のザワつきや感触を舞台にあげられるかが重要だなと。どの史実が核というより全体に受け取るものが大事だったんです。
故郷の取材は主観的になりませんでしたか。
結果それがいちばんやりたかったんじゃないかと思うんですよ。沖縄戦を調べる時はやっぱり客観性がある。何十年も住んだ経験があるわけではないし、もしかしたら何十年過ごしてもわからないことに触れているので、知った気にはなれません。だから距離がある。舞台は一つの距離をもった客観性や物事を冷静に観察する感覚みたいなものが成立してないとデザインできないんですよ。ただ、距離があっていいと言い続け、主観性や自分の本当の手触りで描かなくていいのかとも…。辛いことだけど自分の中を一回通して込み上げてくるもの、アーティストとしてじゃなく個人的な怒りみたいなものに触れてみるのも大切だと思い、「equal」でやってみたんです。どういう感情になるのか緊張もあったし、稽古は正直、嫌なものに触れている感覚でした。そこで描いているのは史実だけじゃないので…。コロナ禍で身近な人が自死したり、病気で亡くなったりしたんです。その感触も敢えて舞台にあげて、その人たちと僕が今どういう距離でいるのか、自分を削るような覚悟で描いたのが「equal」なんです。
友人の失踪を描いた2013年の作品「てんとてん」〈※1〉の設定を踏まえた「equal」は、より重層的なリフレインとも言えますね。
最近、本当の意味で話せていたのか、話せていたようで話せていなかったということに引っかかっていて。人とちゃんと話せたことって極論、無いような気がする。そして、ちゃんと話せたと思える人間だったら作家になっていないと思うんです。あるラッパーも言ってたけど、普段ちゃんと人と話せていないから言葉を精査したり推敲できる表現をやってるんじゃないかと。言葉に満足している人は台本や小説を書く行為をしないと思う。言葉を作品にしようとする人なんて少しおかしいに決まってるじゃないですか(苦笑)。言葉に対するコンプレックスにバグが起こっているんです。その構造をなんとかできないかと思ってリフレインを複雑化してきたけど、今はもっとシンプルにしたい。僕自身まだ受け止め切れてないんですよ、自死のことも喪失みたいなものも…。自分の中で全然整理できてなくて、自分のコンディションが鏡のように作品に出てしまう。先日また帰郷して違う観点もできたので、次の公演はもうちょっと自分に正直にいけるかもしれない。作品の印象は変わると思います。
〈※1.正式なタイトルは「てんとてんを、むすぶせん。からなる、立体。そのなかに、つまっている、いくつもの。ことなった、世界。および、ひかりについて。〉


「会いたい人は会えない人だ」というセリフもありましたが、死者は記憶の中で生き続けても、声を聞けない悲しさが残ることを「equal」で再認識させられました。
音のレベルで人と向き合えているかはハラスメントの問題なども同じですよね。本当にその人の言葉、声を聞いていたのか。コロナ禍でいろんな距離が生まれたじゃないですか。声を聞くって人間関係の原点みたいなところがありますよね。劇場の方とも話していたんだけど、なんでライブに行くかというと、人の声を聞きたいからだと。僕たちは会わなくていいと思わないから演劇をやっていて、そこに賭けている。会わなくていい、電話、LINEで済ませればいいってことがどんどん増えている中、会わなきゃわからないことを信じているから演劇をやっているんです。演劇も映像化が進んでいるけど、劇場に来てもらう未来を想定していないのであれば演劇にとってマイナスでしかないと思います。その中の声は過去の声でしかないから。演劇は今その瞬間その人が発したことを聞くもの。映画には、例えば笠智衆の声が聞ける良さはあります。故人の笠智衆さんは演劇にはもう出られません。半面、映画というのは、例えば昨日の都知事選〈※2〉のことを知らないんですよね。映画の中の人は知らない。でも演劇の登場人物は知っています。演劇は重い芸術のようで最速のメディア。台本を変更しなくても「今朝また熊が出たらしいね」って役者と話すだけで、声や声色、セリフの言い方が変わる。それを感じるには演劇をライブで観るしか無理なんです。
〈※2.取材日は2024年7月8日〉
戦争を描き続けるのはなぜですか。
「cocoon」で大切にしていた言葉に「過去にとっての未来は今」があります。過去の人たちが思い描いた未来は今だとして、そんな言葉が浮かんだんです。沖縄戦で亡くなった人たちは、こんなことはもう起こらない、友だちが目の前で死ぬようなことが起きてはいけないと思ったはず。でも連日、パレスチナで子どもたちが亡くなる映像がSNSで流れる。例えばひめゆり学徒隊のみなさんはこんな未来を望むはずはないのに、なんで過去から見た未来と今は矛盾するのか。矛盾するのが不思議だから、未来に対する手紙として戯曲を書いているんです。「cocoon」や「equal」は平和だったら生まれない。こんな作品、本当は無いほうがいいんです。本当に平和だったら表現も愉快なものだらけかもしれない。でも、そうじゃない世界だから、映画も演劇もずっとあるんだと思います。こう語る時、未来に対してどういう態度をとるのか試されている気がするんですよ。僕だけじゃなく、大人みんなが試されている。何かを誰かに見せることは、相手が「今日見ていた風景とちょっと違う風景を見るかもしれない」という可能性を秘めた客商売。結局は未来に対してやっているんですよね。
◎Interview&Text/小島祐未子
◎Photo/安田慎一
マームとジプシー「equal」
〈三重公演〉10/26 SATURDAY・27 SUNDAY
■会場/三重県文化会館小ホール
■開演/10月26日(土)18:00 10月27日(日)14:00
■料金(税込)/整理番号付き自由席
一般¥4,000 25歳以下¥2,000 18歳以下¥1,000
■お問合せ/三重県文化会館チケットカウンター TEL.059-233-1122
〈豊橋公演〉12/7 SATURDAY・8 SUNDAY
■会場/穂の国とよはし芸術劇場PLAT アートスペース
■開演/各日14:30
■料金(税込)/全席指定
一般¥4,000 25歳以下¥2,000 18歳以下¥1,000
■お問合せ/プラットチケットセンター TEL.0532-39-3090
オフィシャルサポーターが語る、軽やかな気分になれる印象派展

「鈴鹿央士」スペシャルインタビュー取材日:2024.01.25
印象派がヨーロッパやアメリカへもたらした影響をたどる展覧会が開催される。
アメリカ・ボストン近郊にある
ウスター美術館のコレクションからモネの睡蓮にくわえ、
ドイツや北欧、アメリカの知られざる印象派作品が一堂に会している。
展覧会のオフィシャルサポーターに就任した俳優の鈴鹿央士が、
絵画の魅力や自身のアート体験を語った。
オフィシャルサポーターに選ばれたお気持ちはいかがですか。
すごくわくわくしています。僕は作品を写真でしか見たことがなかったのですが、実際に見てみると大きさや質感、立体感などがこんなにも違うものなのかと驚きました。モネの睡蓮や日本初上陸の作品もあるので、この機会に絵画の温度感や匂いみたいなものを感じる体験をしていただきたいです。
鈴鹿さんが印象に残った作品はありますか?
20世紀前半に活躍したアメリカ人画家のデウィット・パーシャルがグランドキャニオンを描いた作品、《ハーミット・クリーク・キャニオン》が好きです。雲の流れ方に躍動感があって、「パーシャルが描いたときは風が強かったのかな」とか、想像を膨らませるのが面白かったです。
音声ガイドのナレーションにも初挑戦されています。
収録はわりとスムーズに進んだのですが、ところどころ出身地である岡山弁のイントネーションが出てしまって苦労しました(笑)作品を所蔵しているウスター美術館は地域密着型の美術館なので、僕も聞いてくださるお客様と一緒に展覧会を回っているような気持ちで、リラックスした雰囲気を出せるように心がけました。おすすめポイントは「央士クイズ」です。絵についてプラスアルファの知識を増やせる、優しいクイズを出題しているので楽しみにしていてください。
展覧会のグッズも充実しています。お気に入りはありますか?
グッズはたくさんの種類があるので、お土産を選ぶのが楽しくなりますよね。僕が欲しいなと思ったのはノートです。モネの睡蓮が表紙と裏表紙にプリントされているのですが、ページを開くと一筆書きのような睡蓮のイラストが入っていてお洒落なんです。僕はいつもノートに、スケジュールや仕事で気になったこと、役作りについて考えたことなどを書いていますが、みなさんも自由に使ってみてほしいです。
ご自身は、絵を描くのは得意ですか?
僕は本当に絵心がないんです…。今年の干支を描いてくださいと頼まれたときに、龍を描いたつもりがミジンコになってしまったくらい(笑)。

絵は描くより、見る方がお好きなんですね。
はい、家のインテリアとしてポスターや絵を飾っています。古いポスターが好きで、海外ファッション系の広告などをポスター屋さんや通販で探して買っています。一時期は服のブランドが出しているポスターを集めていたこともありました。ただ丸が描かれているだけの、よくわからないデザインだったりするんですけど、なぜか惹かれるものがあったんですよね。いま飾っているのは熊のモンスターの版画です。カワコワい(可愛い+怖い)ところが気に入っています(笑)。
日常でアートに触れるのは、どんなときですか。
SNSで気になったアーティストの作品を見に行くこともありますし、散歩の途中でふらっとギャラリーに入ることもあります。知らない街を歩いていて、新しいアートに出会えると嬉しいです。
写真を撮るのも趣味だと伺いました。
写真を撮るときは、自分が綺麗だなとか好きだなと思った瞬間に、直感的にシャッターを押すようにしています。印象派は自然や風景の一瞬の美しさを切り取っているので、写真と似ているなと思います。
役作りも直感型?
どうだろう、直感で動くときもあるし、考えてつくり込むときもあります。でも、撮影現場では直感を優先しているかもしれない。監督が芝居に求めることや、相手の役者との間合いなど、いろんなことに柔軟でいることが大切なのかなと思います。
展覧会のテーマのひとつとして「フランス印象派がアメリカ絵画に与えた影響」があります。鈴鹿さんが役者として影響を受けた人はいますか
僕は影響を受けやすいタイプの人間なので、共演者の方々や、自分が見た映画の俳優さんなどから、その時々でインスピレーションをもらっています。ただ、自分がなりたいというとおこがましいですが…憧れるのは、俳優のトニー・レオンさんです。独特の雰囲気があって、すごく惹きつけられて、かっこいいです。僕も唯一無二の個性や存在感を出せるような役者になりたいです。
海外でも活躍したいという夢はありますか。
まだアメリカも行ったことがないのですが、海外に行ってみたいという気持ちはすごくあります。最近では韓国や台湾とエンターテインメントの交流が深まっている印象があるので、いつか作品で関わることができたらと思います。
展覧会はあべのハルカス美術館で開催されます。大阪のどんなところがお好きですか?
たこ焼きが大好きです。仲良くしている監督さんが関西出身の方なので、よくタコパしたりするんですけど、いつもこだわりの美味しいたこ焼きを作ってくれるので感謝しています。
来場者のみなさまにメッセージをお願いします。
僕が感じたのは、見た後に元気になれる展覧会だということ。“印象派”とか“展覧会”というと、神経を使って疲れるイメージがあるかもしれませんが、ぜんぜんそんなことありません。1枚1枚の絵からパワーをもらって、爽やかで穏やかな気持ちになれます。本当に気軽に見ることができる展覧会なので、ショッピングのついでにふらっと来ていただけたら嬉しいです。
◎Interview&Text/北島あや
◎Photo/中野建太
10/12 SATURDAY〜’251/5 SUNDAY
印象派モネからアメリカへ
ウスター美術館所蔵
■会場/あべのハルカス美術館
■時間/火~金10:00~20:00
月・土・日・祝10:00~18:00
※入館は閉館30分前まで
■お問合せ/あべのハルカス美術館 TEL.06-4399-9050(10:00~17:00)
